長年、老人ホームの施設長として活躍していた内田さん。だからこそ、認知症の方の気持ちに寄り添った対応ができるそうです。今回は、内田さんが実際にご案内して老人ホームに入居された、認知症のお客様について話を聞きました。
また、見学の際には施設長さんにポリシーを必ず聞いているそう。どうしてポリシーを聞く必要があるのでしょうか?詳しく聞きました!
―内田さんは大手の介護施設の運営会社で働いていたと伺いました。どんなお仕事をしていたんですか?
「エリアマネージャー」として、老人ホームの入居相談員の責任者をしていました。その前は、現場で介護職を経験してから老人ホームの副施設長・施設長を任されていました。大体、16年ほど介護に携わっているでしょうか。
―介護に携わる前はどんな仕事をしていたんですか?
その前は、テレビショッピングの会社で働いていました。でも、その会社が倒産。そのときに改めて自分に向いている仕事について考えたんです。そこで、数字ばかり追い求める仕事よりも社会的意義を感じる仕事の方が良いなと思いまして。それで介護の世界に飛び込んだ形ですね。
―そこから介護業界に15年以上携わっているわけですが、「いい介護」の入居相談員になったのはどういう理由だったんですか?
老人ホームの施設長をしていたので、介護施設のことはよく理解できました。次は施設に入れない方のお手伝いもしたいと思ったんです。
「いい介護」では施設探しだけではなく、グループ会社である鎌倉新書の終活サービスを活用したサポートもできます。そのため、老人ホームに入る手前や施設に入れない方のサポートもできるんじゃないかと思ったんです。
具体的には、身元保証サービスがあります。入院や施設入居のときに必要な身元保証をしたり、亡くなったあとの葬儀などの事務手続きをサポートしてくれるものです。今後、独身のご高齢者が増えてくると言われているので、社会的価値も高いサービスだと考えています。
―身元保証人がいなくて老人ホームの入居を断られてしまう、というケースもあるみたいですね。
そうなんです。
それと、不動産売却もご要望の多いサービスです。持ち家がある方は、売ったお金によって老人ホームに入れるようになったり、よりグレードの高い施設に入居できたり、介護の選択肢が広がるので、とても重要なサービスだと考えています。
ただ、自宅を売るという選択肢を知らない方も多いんです。その選択を知らずに「お金がないから」と施設に入らず、孤独死してしまう…なんてケースも。そこで、鎌倉新書のサービスをご案内することで、老後の時間を少しでも良く過ごしていただくためのお手伝いをできるわけです。
―内田さんがこれまでご案内したお客様で印象に残っている方について教えてください。
老人ホームに入ることへの拒否感が強い、とある男性のお客様が印象に残っています。
その方は、ご相談を受けたときは入院中。退院して自宅に帰ってもご家族が介護できる身体状態ではなかったので、ご家族は老人ホームに入居をお考えでした。歩行が不安定でトイレに行くだけでも転倒している状態だったので常に見守りが必要なんですが、ご本人は「施設には入らん!」と強く拒否されていたんです。
これはじっくりお話していかないと、と思い、はじめは退院後すぐに老人ホームに入っていただく予定でしたが、いったんご自宅に帰ることに。でも、ご家族が介護するのはめちゃくちゃ大変な状態だったんですよ。「わしのことはほっとけ!」と介助を拒否して、ご家族に手をあげていましたし…。
―それはご家族も介護のしようがないですね…。
ご自宅に帰られたあとも、定期的にご家族に連絡したり、お宅に伺ったりしていました。
ある日うかがったら、お部屋のなかはしっちゃかめっちゃか、ご本人がベッドから落ちて床に横たわっている、という大変な状況になっていまして(笑)。だから、私が抱きかかえてベッドの上に戻っていただいて、お部屋の中も片づけたんです。
そんなことをしていたおかげか、ついにお客様が心を開いてくださって。「内田さんになら任せられる」と言っていただけたんですよ。それで老人ホームをご案内して、入居していただきました。
―へぇー!これまでずっと入居を嫌がっていたのに、「内田さんが選んだところなら」と入っていただけたということですね。
そうだと思います。その方は認知症でしたが、私の顔を覚えていただけたみたいで。認知症になると人の顔を覚えるのが苦手になりますが、何度もお会いしたことで私の顔を覚えて信頼していただけたんだと思います。娘様はとても驚いていましたね、「あの父が心を開くなんて」と。
―ご家族の介助も拒否する方だったんですもんね。
本気でその方と向き合ったからこそ心を開いていただけたんだと思います。これを仕事だと一歩引いてお話ししていたら、信頼していただけなかったでしょうね。良い意味でも悪い意味でも気持ちは伝わるので。
それに、私は長年、老人ホームの施設長をしていたので、認知症の方の特性や心理状況をよく理解しています。相手の気持ちに寄り添って話をするから心を開いてくださったんだと思っています。
―施設長としての経験とお客様に真剣に向き合う気持ちがあったから、お客様が心を開いてくださったんですね。
そうかもしれないです。私がお客様と関わるときは、ご家族以上にご本人に向かっていくようにしています。このケースだと、娘様よりもぐいぐいお父様に向かっていく感じで。そうでないと、本気さが伝わらないんですよ。その結果、家族の一員みたいになっていますね(笑)。
―内田さんがご相談を受ける際に、心がけていることはありますか?
見学で見るべきポイントを事前にお客様にお伝えすることですね。
残念ながら、パンフレットではきれいに見えても実態は…という施設があるのが実情なんです。ですから、検討から外れる可能性のある施設を見抜くためのポイントをお話ししています。
なかでも特に私が重要視しているのが、施設長さんの介護の理念ですね。
―施設長さんの理念、ですか。
施設長さんがどういった思いを持って取り組んでいるのかは、施設運営に大きく影響が出ますから。お客様が施設長さんに聞けない様子があれば、私の方から「どういった思いで介護の仕事をされているんですか?」と、質問するようにしています。
施設長さんの理念があいまいで、はぐらかすような施設はおすすめしません。人の命を預かる仕事なので、老人ホームの施設長は覚悟がないと。覚悟のある施設長さんがいる老人ホームでなければ、お客様を任せられませんね。
―内田さん自身が同じ施設長として覚悟を持って仕事をしていたからこそ、厳しく見ているんですね。
施設長さんの理念って、いろんなところに現れるんです。スタッフさんが立ち止まって挨拶してくれるかとか、館内の清掃が行き届いているかとか、忙しいなかでも工夫してイベントをしようとしてくれているかとか。ひどいところだと、イベントがほとんどなくてご入居者をほったらかし、なんて施設もありますからね。
そこで、館内の様子を見たり施設長さんの理念を聞いたりして確認するわけです。お客様だけだと難しいかもしれませんが、そこは私が一緒に見て回ってお客様に伝えます。これまでにたくさんの老人ホームを見てきて、見る目は肥えてますから(笑)。
老人ホームは最期のときを過ごす場所。ですから私は、「お客様の人生の最後の数年間をこの人に任せられるのか」と、施設長さんの目をジッと見て確かめています。もはや目で”圧”をかけています(笑)。そんな思いで施設探しのお手伝いをしていますね。
【プロフィール】
内田 征吾
実は、もともとはミュージシャン志望。バンドを組んでプロを目指していたこともあったそう。意外にも(?)、ジャンルはハードロック!最近は英語と中国語を勉強しており、50歳になるまでには話せるようになりたいと猛勉強中。
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。