在宅介護は、家族と一緒に生活できる安心感がある一方で、経済的な負担が大きいのも事実です。
この記事では、在宅介護をおこなう家族を経済的に支援する制度である「介護手当」について、支給条件や申請方法の実例を紹介しています。
ほかにも、費用負担を減らせる補助制度を複数解説していますので、併せて検討してみてください。

介護手当とは、各自治体から在宅介護をおこなっている家族へ支給される現金のことで、「要介護高齢者手当」や「在宅介護者福祉手当」と呼ばれることもあります。
介護には多くの費用がかかることに加え、介護が大変で仕事を減らさざるを得ないケースもあり、経済的に困窮してしまうことも少なくありません。
介護手当は、このような状況にある方々の支援を目的としています。なお、介護手当の制度内容や実施の有無は自治体によって異なります。
介護手当の用途に決まりはありません。介護保険サービス利用時の自己負担分に充あてたり、介護用品の購入にあてるなど、必要に応じて自由に利用できます。
日頃から介護にあたっている家族が息抜きとして出かけたり、外食時に利用するのも良いでしょう。
このように介護手当は要介護者のためだけでなく、介護者や家族のためにも使える給付金です。非課税所得となるため、領収書や報告書を提出する必要もありません。

介護手当の支給額は自治体によって異なりますが、おおよそ10万円〜12万円程度が相場となっています。ここでは、越谷市と富山市の支給額を実例として紹介します。
越谷市では「在宅介護者福祉手当」として月額5,000円、2人の介護にあたっている場合は月額1万円が支給されます。支給月が決められており、年に3回の支給です。
富山市の介護手当は、市町村民税非課税世帯で月額10,000円、課税世帯で月額5,000円が支給され、支給月は年に4回となっています。
支給条件および実施の有無は自治体によって異なりますが、参考例としていくつかの自治体の支給条件を紹介します。
越谷市では「市内に住んでいる65歳以上の要介護4・5の方を在宅で常時介護している方」を対象としています。
一方、鹿児島市では下記のような条件があります。
また富山市では、常時介護が必要とする状態が6ヵ月以上続き、今後も継続すると認められる方(一定の条件あり)の在宅介護している方を対象としており、介護を必要とする方を含め世帯全員の前年所得合計額が1,000万円未満の場合に限られています。
このように自治体によって支給条件はさまざま。まずは住んでいる自治体の制度内容を確認してみましょう。

介護手当の申請方法や申請書類も自治体によって異なりますが、越谷市を例にすると、手当を申請する際は「申請書」を提出することになっています。この申請書には、いつから在宅介護を始めたか、要介護者の介護状態区分や現在の状態、利用中の介護サービスなどを記入します。
そのほか、越谷市では介護手当受給中でも年に1度、介護者・要介護者の状況に変化があるかを確認する「現況届」が必要な場合があります。
自治体によっては、申請にあたって民生委員または地域包括支援センター職員の状況確認が必要な場合があります。
介護手当のほかにも、介護の費用負担を軽減できる制度は複数あります。ひとつずつみていきましょう。
介護休業給付は、介護休業を取得したときに一定の条件を満たしている方が、申請によって給与の67%を受給できる制度です。なお、給付金を受け取れるのは介護休業の終了後となります。
受給条件は以下の通りです。
ただし、会社から休業手当が支給される場合や、休業期間中に賃金が発生し受け取っている場合、休業前と同等の賃金が支払われた場合などは受給できないこともあるので、休業期間中の給与支払いについては事前に確認しておきましょう。
家族介護慰労金とは、要介護度の高い高齢者を在宅介護している家族へ支給されるお金で、自治体へ申請することで受給できます。ただし、「介護保険サービスを利用せずに、自宅で1年以上要介護度4・5の要介護者を介護している同居家族であること」が受給条件になっている自治体もあります。
介護保険サービスは、要介護者が家族以外の方と交流できるものであり、介護者が休息する目的で利用するものでもあります。
家族介護慰労金を受給するために介護保険サービスの利用を控えてしまうと、かえって心身の負担になることもあるので、本当に活用すべき制度なのかはよく考える必要があるでしょう。
居宅介護住宅改修費は、家を介護に適した状態へ改修した際に、自治体から受けられる給付金のことです。具体的には、トイレや廊下、浴室への手すりの取り付けや、段差を解消する工事などが対象になります。
自己負担の割合は、65歳以上なら1〜3割、40歳から64歳までの方は1割となり、要介護度にかかわらず支給限度額は20万円です。支給は原則1回きりですが、要介護度が大幅に上がった場合や、引っ越しをした場合は再度20万円まで受給申請ができます。

介護保険を利用して購入できる福祉用具を「特定福祉用具」と呼びます。特定福祉用具の購入費は、要介護度別に決められた介護保険サービスの月々の利用上限額とは区別され、年間10万円まで補助を受けることができます。
購入時は全額自己負担で支払うことになりますが、後日、自治体に申請することで費用の最大9割を介護保険給付分として受給できます。ただし、10万円を超えた分の費用に関しては全額自己負担となるので注意が必要です。
なお、特定福祉用具購入費の支給対象者は要介護1~5の方となります。
特定福祉用具は以下の5種類です。
高額介護サービス費制度とは、介護保険サービスを利用している方の経済的負担を軽減するための制度です。
介護保険サービスの1ヵ月の自己負担額に上限を設け、限度額を超えたときは超過分が払い戻される仕組みになっています。自己負担の限度額は、サービスを利用する方の世帯所得または個人所得に応じて定められています。
なお、対象となる介護保険サービスは以下の通りです。
詳しい負担限度額については表の金額を参考にしてください。
| 区分 | 負担の上限(月額) |
|---|---|
| 生活保護を受給している方など | 15,000円(個人) |
| 前年の「公的年金等収入額」と「その他の合計所得金額」の合計が年間80万円以下 | 24,600円(世帯) 15,000円(個人※1) |
| 世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方 | 24,600円(世帯) |
| 市区町村税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満 | 44,400円(世帯) |
| 課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1160万円)未満 | 93,000円(世帯) |
| 課税所得690万円(年収約1160万円)以上 | 140,100円(世帯※1) |
高額介護合算療養費制度とは、医療保険と介護保険の両方のサービスを利用している世帯に対し、年間の自己負担額を軽減するために設けられている制度です。
医療保険・介護保険の1年間に支払った自己負担額の合計が、基準額よりも501円以上多かった場合、自治体に申請することで超過分が高額医療・高額介護合算療養費として支給されます。
なお、高額介護合算療養費制度の限度額は、年齢や所得に応じて決められています。例えば、70歳以上の世帯で年収156万~370万円であれば、限度額は56万円。年収の範囲は同じで70歳未満の世帯であれば限度額は60万円です。医療保険・介護保険の負担が重い方は、この制度を大いに活用しましょう。
| 70歳以上 | 70歳未満 | |
|---|---|---|
| 年収約1,160万円以上 | 212万円 | 212万円 |
| 年収770万~1,160万円 | 141万円 | 141万円 |
| 年収370万~770万円 | 67万円 | 67万円 |
| 年収156万~370万円 | 56万円 | 60万円 |
| 市町村民税世帯非課税 | 31万円 | 34万円 |
| 市町村民税世帯非課税 (所得が一定以下) |
19万円 | 34万円 |
医療費控除は、年間の医療費が一定の基準を超えた場合に受けられる所得控除です。介護サービス利用時にかかった費用でも、以下の医療系サービスであれば控除の対象になります。
なお、訪問介護や通所介護、看護・小規模多機能型居宅介護などのサービスも、上記の介護サービスと併せて利用する場合は医療費控除の対象となります。
また、居宅サービスなどで使用したおむつの費用も、かかりつけ医に「おむつ使用証明書」を発行してもらうことで医療費控除が受けられます。
介護手当の制度内容や金額は自治体によって異なりますが、相場はおよそ年額10万円~12万円程度です。月額では5,000円〜1万円程度で、決められた月に支給される自治体もあります。また、住民税非課税世帯と課税世帯とで支給額が異なる自治体もあります。
介護手当は、自治体から在宅介護を行う家族に支給されるお金のことで「要介護高齢者手当」や「在宅介護者福祉手当」と呼ばれることもあります。
介護手当の目的は、在宅介護の経済的な負担を軽減することです。
自治体が財務状況に合わせて支給するものなので、この制度を実施していない自治体もあります。また、制度内容もさまざまなので、住んでいる地域の介護手当についてまず確認してみることをおすすめします。
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