「あれ取って」「あの人、誰だっけ?」。日常生活で具体的な言葉が出てこない経験は年齢とともに誰しもが経験することですが、代名詞の多用などの「脳のサボり癖」を放置していると、将来の認知機能の状態が危ういかもしれません。
というのも、最近の研究で、長期間勉学に励んだり知的活動に参加したりといった「頭を使う行動」をどれだけおこなったかどうかが、将来の認知機能の状態につながることがわかってきているのです。
本記事では、知的活動と認知機能の関係と、認知機能の維持に役立つ具体的な習慣について、考えていくことにします。
なぜ、知的活動が認知機能の低下予防につながるのでしょうか。
そのカギを握るのが、「認知予備能(コグニティブ・リザーブ)」です。これは、長期間の勉学などを通じて「知的な貯金」を蓄えておくことで、加齢や病気によって脳に多少のダメージが生じても、その機能を補い、症状として現れるのを防いでくれる能力のことを指します。
この認知予備能の重要性は国内外のさまざまな研究で示されています。例えば、認知症予防のエキスパートが集う「ランセット委員会」の報告では、認知症の発症リスクを挙げる危険因子のひとつとして、「教育歴の短さ」が挙げられていました。さらに、国内の研究機関である「日本老年学的評価研究機構(JAGES)」の調査でも、教育年数が長い人はそうでない人に比べて、認知症の発症リスクが低いことが明らかになっています。
認知予備能は大人になってからでも、ちょっとした生活習慣の工夫で高めることが可能だとされています。特に会話は、相手の話を聞いて新しいことを覚え、相手に自分が伝えたいことを探して伝える、高度な知的活動のため、認知予備能の強化に役立ちます。
認知症予防研究者の大武美保子氏は、認知症予防に役立つ会話メソッドとして「共想法」を開発。大武氏は「鉄板ネタではなく、新しいネタを話すようにすると良い」といい、その理由を次のように解説しています。
「何十年も語ってきた鉄板ネタばかりを話していると脳はサボってしまう。最近身の回りで面白いと感じた『新ネタ』を脳に上書きすることで、脳がはたらくようになる」
また、認知機能が低下してくると聞く力が弱くなるため、「話題が広がりそうな質問を考えながら話を聞く」「話の内容を批判・評価しないで聞くことに集中する」ことも大切だといいます。
会話以外にも、新しい趣味を始めてみたり体験を日記にしたりすることも認知機能の維持に役立つとされています。もちろん、勉学も非常に有効なので、気になる学問がある人はこれを期に学んでみても良いかもしれませんね。
参考
Cognitive reserve in ageing and Alzheimer’s disease-The Lancet Neurology
Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission-The Lancet
認知症リスクは 教育年数6年未満で男性34%、女性21%増 ~所得・最長職に比べ教育年数が最も強い関連~
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