加齢とともに、多くの人が実感するようになるのが「もの忘れ」。しかし、そのもの忘れは単なる加齢による自然な変化ではなく、認知症の始まりである可能性もあるため、見極めは非常に重要です。
そこで本記事では、論文などの一次情報や専門家の知見をもとに、もの忘れと認知症の違いや認知機能の改善方法を見ていくことにします。
加齢による「もの忘れ」と病的な認知機能低下である「認知症」は何が違うのでしょうか。
早期からの認知症予防(ブレインケア)を提唱している医師の今野裕之氏は、単なるもの忘れと認知症の違いについて、次のように話しています。
「もの忘れは、加齢によって脳の機能が低下し、記憶力の低下や、思考の整理がうまくいかなくなる状態のこと。体験したことの一部を忘れることもあるが、忘れているという自覚があり、日常生活には支障をきたさない。一方、認知症になると脳の機能の低下が進み、記憶障害に加えて判断力や実行機能なども低下するため、日常生活に明らかな支障が生じる。また、体験したことそのものを忘れ、忘れている自覚がないことも特徴だ(Webメディア「HALMEKup」より)」
「もの忘れ」と「認知症」の中間を指す「軽度認知障害(MCI)」にも注意が必要です。軽度認知障害は生活への支障はそれほど大きくはないものの、単なるもの忘れ以上に記憶力の低下などが顕著になった状態のことをいいます。
MCI研究の第一人者であるPetersen氏の研究によると、健常な高齢者が1年で認知症に移行する割合は1〜2%ですが、軽度認知障害の人では1年で10%程度が認知症に移行するそうです。つまり、軽度認知障害の状態のまま放置すれば、高い確率で認知症に移行するため、早期からの対策が重要です。
今野氏によると、軽度認知障害の段階で適切な対策を講じることで、認知機能の改善や、認知症への進行を遅らせる効果が期待できるといいます。また、認知機能の改善には以下のような対策が有効だそうです。
1.ウォーキング:少し息が上がるくらいの運動は、脳の神経細胞の成長を促す「BDNF(脳由来神経栄養因子)」という物質を増やす
2.新しい趣味に挑戦する:楽器演奏や絵画などの新しいことへの挑戦は、脳の神経ネットワークを豊かにし、認知機能の低下を補う「認知予備能」を高める効果が期待できる
3.質の良い睡眠の確保:深い睡眠中に、脳の老廃物であるアミロイドベータなどが排出される「グリンパティック・システム」が活発に働くことが、近年の研究で明らかになっている
もの忘れや軽度認知障害の段階で生活習慣を改善することで、より長い期間豊かな老後を過ごせる可能性が高まります。ぜひ家族や周りの人と話し合いながら、生活習慣を見直してみてくださいね。
参考
Mild Cognitive Impairment Clinical Characterization and Outcome-JAMA Neurology
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