高齢化社会が進展するにともない、日本の医療費は過去最高を更新し続けています。増え続ける医療費を、現役世代と高齢者世代はどう分かち合っていくべきなのでしょうか。
現状では、一定以上の収入がある世帯を除き、75歳以上の後期高齢者の医療費は1割負担ですが、これについて賛否両論の意見が飛び交っています。
本記事では、公的データをもとに、現役世代と高齢者世代の経済状況を比較し、後期高齢者医療制度の今後を考えていくことにします。
高齢者世帯がいくら医療費を負担するべきかについて議論する際、重要になってくる論点が「高齢者の収入」です。厚生労働省の「国民生活基礎調査」によると、高齢者世帯の平均所得は312.6万円であり、現役世代を含む「その他の世帯」の664.5万円と比較すると約半分になっています。
以上のデータを見ると確かに高齢者の収入は少ないですが、これだけで「多くの高齢者は経済的に困窮している」と結論づけてしまうのは早計かもしれません。
収入以外に注目すべきは「高齢者世帯の資産」です。J-FLEC(金融経済教育推進機構)の2024年の調査によると、70代の平均金融資産保有額は1923万円に上ったことが明らかになりました。これは資産形成期である40代の約2倍の額です。
もちろん、だからといってすべての高齢者が裕福ではないことに注意が必要です。同調査では、70代のうち約20%が「金融資産がゼロ」であるという厳しい現実も明らかになっています。つまり、高齢者内でも経済的格差が大きい実情があるのです。
現行の後期高齢者の医療負担で考慮されるのは収入のみであり、金融資産は加味されません。つまり、潤沢な金融資産があったとしても、現時点で収入がなければ1割負担になるのです。これは、2022年におこなわれた後期高齢者医療制度の改定後も変わっていません。
高齢化社会が進むにつれて、社会保障費の負担額も年々増加しており、このままでは現役世代の負担が限界に達してしまうという懸念の声が上がっています。
制度改定の際、医療費の負担増加が受診控えにつながるのではという意見が根強くあり、日本医師会も反対の意を示していました。しかし、その後の厚生労働省の調査では、負担増加による受診への影響は限定的であったと報告されています。
以上のような現状を踏まえて、近年議論されているのが所得だけでなく金融資産なども含めて総合的に負担額を判断する「応能負担」の考え方。これなら、対象者の支払い能力によって負担額が決定されるため、経済的な余裕のない高齢者も安心して医療を受けられるでしょう。
負担が増え続ける中で今後も持続可能な制度にするためにも、未来志向的な議論を進めていきたいですね。
参考
「家計の金融行動に関する世論調査」J-FLEC(金融経済教育推進機構)
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