近年、私たちの何気ない生活習慣が将来の認知症リスクに深くかかわっていることが科学的に明らかになってきました。言い換えると、「認知症は避けられない病気」という従来のイメージとは異なり、普段の生活習慣を見直すことで、将来に認知症を発症するリスクを大きく抑えることができるのです。
本記事では、国際的な医学研究が特定した「予防可能な12の危険因子」に基づき、今日から始められる認知症予防について考えていきます。
人類が長寿になるにともない、世界中で患者数が増加しているのが認知症。そのため、認知症予防の研究はさまざまな機関でおこなわれています。
その中でも特に権威があるのが、医学雑誌「The Lancet」の委員会報告です。この委員会は世界的な認知症の専門家から構成され、日々認知症に関する最先端の知見が集まっています。
ランセット委員会の報告によると、全認知症の約4割は事前に対策を講じることで予防、あるいは発症を遅らせることが可能だとしながら、以下の「12の危険因子」を特定しました。
1.低教育
2.難聴
3.頭部の損傷
4.高血圧
5.アルコール
6.肥満
7.喫煙
8.うつ
9.社会的孤立
10.運動不足
11.糖尿病
12.大気汚染
この中でも特に、「難聴」が認知症の発症リスクになりやすいとされています。ランセット委員会の報告では、聴力に問題がある人はそうでない人に比べて認知症リスクが1.9倍高まるとのこと。これは、聴覚からの情報が減ることで、脳への刺激が少なくなることなどが理由だと考えられています
ランセット委員会が示した、認知症発症の危険因子の多くは、私たちの生活習慣と深く関わっています。例えば、過度の飲酒と喫煙は血管を傷つけるため、脳梗塞などが起こりやすくなり、結果的に脳血管性認知症のリスクも高まることで知られています。また、甘い食べ物や飲み物の摂りすぎで起こる糖尿病も認知症の大きなリスクとなります。
見方を変えれば、日々の生活習慣を見直すことで、認知症の発症リスクを減らせるとも考えられるのではないでしょうか。
例えば、通勤中に大音量で音楽を聞く習慣を見直せば耳が休まり、難聴対策になります。また、これまでより多く歩く習慣をつけることで、運動不足も解消するでしょう。さらに禁煙すれば、お金も浮きますし一石二鳥です。
認知症の約4割は予防可能だとランセット委員会は指摘しています。まずは12の危険因子の中から自分の生活で見直せそうな項目をひとつ見つけて、改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。
参考
Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission-The Lancet
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