高齢ドライバーによる交通事故のニュースが報道されるたび、「早く免許を返納すべきだ」という声が高まります。しかし、特に地方在住の高齢者にとっては「車がないと生活が不自由だ」と感じるケースも多く、簡単な決断ではありません。
本記事では、データをもとに高齢者が運転するリスクを客観的に分析し、高齢ドライバー本人も周りの人も納得できる、円滑な「運転卒業」を迎えるためのヒントを探っていきます。
警視庁の統計によると、2023年時点での交通事故件数は3万1385件で、そのうちの15.4%にあたる4819件が高齢ドライバーによる交通事故でした。
高齢ドライバーによる事故発生件数・事故全体に占める高齢ドライバーの事故割合ともに最多だった2017・2018年と比較すると減少傾向にはありますが、それでも依然として高齢ドライバーによる事故は少なくありません。
どうして、高齢ドライバーによる事故が起きてしまうのでしょうか。
警視庁が交通事故の人的要因を75歳以上のドライバーと75歳未満のドライバーで比較したところ、75歳以上のドライバーでは「ブレーキとアクセルの踏み違い」の割合が大きいといいます。75歳未満では0.5%程度だったのに対し、75歳以上だと7%にも上るためその差は歴然です。
一方で、交通心理学の専門家である九州大学の志堂寺和則氏は、「高齢者の運転事故で亡くなる方の約7割は、運転していた高齢者本人や同乗者であり、歩行者などを巻き込むケースはそれほど多くない」と指摘しています。
このことからも、「高齢ドライバーが他者を危険にさらしている」という一面的なイメージだけで問題を捉えるのではなく、多角的に考えることが重要です。
自身の運転能力の低下を自覚していても、車主体の移動が当たり前になっていると、なかなか返納の決断ができないこともあるかもしれません。ここでは円滑な「運転卒業」を実現するためにおこないたいアクションについて考えていきます。
まずは、免許返納後の生活を具体的にシミュレーションしてみると良さそうです。家族や周りの人も協力して地域の交通機関のルートやネットスーパーの活用法などを具体的に調べ、「車がなくても生活できる」ことをイメージできると運転卒業に近づくかもしれません。
また、免許を返納を返納した高齢者に対し、多くの自治体で公共交通機関の割引パスを提供するといった支援制度が設けられています。このような「返納による特典」を提示することも、免許返納の後押しになるのではないでしょうか。
高齢ドライバー自身も周りの人も納得できるような道筋を、社会全体でつくっていきたいですね。
参考
「高齢運転者事故発生状況」警視庁
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