家庭での高齢者虐待数が最大に。コロナ拡大で介護負担増大が原因か
更新日
2022/01/27
厚生労働省が、高齢者虐待の防止などに関する2020年度の調査結果を公表しました。その結果、
家族からの虐待件数が17,281件と、これまでで最も多くなったと伝えています。新型コロナウイルス拡大の影響で、介護サービスを受けられなくなり家族の負担が増加したことが原因のひとつと考えられます。
感染拡大で虐待数が増加か
厚生労働省の調査結果によると、家族・親族などによる虐待は2020年度で17,281件。2019年度の16,928件から353件も増加しています。最も多かったのは「身体的虐待」で68.2%、「心理的虐待」と「介護放棄」が続きます。
また虐待をした家族で多いのは、息子が39.9%、夫が22.4%、娘が17.8%。特に家族と高齢者が2人きりで暮らしているケースが半数以上となりました。他に家族がいないという閉じられた環境で虐待は起きやすいことがわかります。
虐待の
原因で最も多いのは「虐待した家族の性格によるもの」が57.9%。「
認知症の症状や介護疲れによるもの」がそれに続きます。
感染拡大の影響で、
デイサービスの利用を自粛したり地域の集まりがなくなったりして、外部とのつながりが薄くなっている傾向があります。それにより家族の介護負担が増大。
家族がストレスをため込みやすくなったために、虐待が増えたのかもしれません。
一方で
介護施設の職員による虐待は、前年より減少しています。2019年度では644件だったのが、2020年度では595件になっています。しかし
感染症対策のために面会が制限された施設が多く、施設内の様子がわかりにくくなったことが件数減少の一因ではないかと厚生労働省は分析しています。
虐待の認識がないことがある
高齢者虐待というと、高齢者をストレスのはけ口にするようなイメージがあります。しかし、それだけでなく家族が専門知識を持っていないために、
虐待をしていることを認識していないケースもあります。
例えば「おばあちゃんは認知症だから…」と現金を使ったり、土地や家などを売却することもあるかもしれません。しかし、これを無断でしてしまうと「経済的虐待」にあたります。また、排泄に失敗した罰として下半身裸で生活させる、認知症のために同じ話を繰り返すので怒るといったことを、家族が“しつけ”として捉えている場合もあります。
家庭内で起きる高齢者虐待は表に出にくいため、発見されにくいのが特徴。加えて「よそ様の家庭のことだから」と、地域の人が口出しするのをためらってしまうかもしれません。このようなことが理由で、虐待がエスカレートしてしまう可能性もあります。介護に悩む家族に積極的に声をかけたりして、悲しい事件に発展させないようにしたいですね。
この記事の執筆者
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