ニュース
新たな研究で、早歩きなどの中強度の運動を1日15分間おこなうだけでも心臓病やがんなどの生活習慣病の予防や改善につながることが示されました。 この研究はイギリスのケンブリッジ大学によっておこなわれ、その研究結果は「British Journal of Sports Medicine」という学術誌に掲載されています。 1日15分の運動習慣が生活習慣病を予防 研究グループは94件の大規模研究を対象とした196件の論文を分析。対象となった研究参加者の人数は3000万人以上に上りました。 分析の結果、早歩きなどの中強度の運動を1日15分間おこなうだけで、心筋梗塞などの心血管疾患の発症リスクが17%、がんの発症リスクが7%低下することが明らかになったのです。 がんの部位別にみると、肺がんや肝臓がん、乳がんなどのリスクは3~11%、血液のがんである白血病などのがんのリスクは14~26%それぞれ低下したこともわかりました。 ケンブリッジ大学医学研究評議会に所属するジェームズ・ウッドコック氏は「運動は1日10分しかできない人であっても、毎日10分しっかり運動する習慣を続けていれば、その分、生活習慣病のリスクは減らせる」としています。 どんな運動が効果的か では、どんな運動が効果的なのでしょうか? ケンブリッジ大学医学研究評議会のソーレン・ブラージ氏によると、心拍数が上がり息も切れるが会話はできるくらいの強度が目安だと言います。具体的には、ダンスやサイクリング、ハイキングなどです。もし運動にウォーキングを取り入れるのであれば、なるべくきびきびと早歩きくらいの速さで歩くと良いそうです。 さらに「運動に慣れてきたら、少しずつ運動の時間と強度を上げていくとより効果が高められる」としています。 ブラージ氏は「何もしないより、少ない運動量であっても何か運動したほうがずっと良い」と言います。健康のためにも、自分にもできそうな運動を見つけて、それを長く続けていきたいですね。
2023/03/13
新たな研究で、糖尿病の人はがんによる死亡リスクが糖尿病でない人に比べて高いことが明らかになりました。 この研究は、イギリスのレスター大学糖尿病研究センターが主導するグループによっておこなわれ、その研究結果は「Diabetologia」と呼ばれる欧州糖尿病学会が刊行している医学誌に掲載されています。 糖尿病になるとがんによる死亡リスクが高まる 研究グループは、1998~2018年にイギリスの医学データベースに登録され、新規に糖尿病と診断された成人13万7804人のデータを解析。その結果、糖尿病の人のがん死亡率は、そうでない人に比べて18%高いことがわかりました。 さらに、がんの種類ごとに分析すると、肝臓がんや膵臓(すいぞう)がん、子宮内膜がんの死亡率は特に高く、約2倍にまで上昇したことが判明したのです。 この結果を受けて、研究グループは「糖尿病の人は長期間にわたって血糖値の高い状態が続き、炎症にもさらされている。そうした状態ががんによる死亡リスクの上昇につながっているのではないか」としています。 糖尿病の人ががんを予防するために 別の研究によると、糖尿病の人であっても、良好な血糖管理を続ければがんの発症を大幅に減らせると言います。 スウェーデンのヨーテボリ大学は、スウェーデン国内のがん統計や「スウェーデン肥満研究」などの医学データを解析。その結果、血糖値を適切にコントロールできていて、肥満治療も受けている人は、がんの発症リスクを約60%減らせることが判明したのです。 この結果を受けて、ヨーテボリ大学の分子医学部に所属するマグダレナ・タウベ氏は「今回の研究で、糖尿病を治療するとがんが予防できる可能性が高まることが明らかになった」としています。 糖尿病の人であっても、うまく血糖値をコントロールできればがんの発症リスクを大幅に減らせることがわかりました。健康に長生きするためにも、糖尿病がある人は日々の生活を見直してみてはいかがでしょうか。
2023/02/01
新たな研究で、ウォーキングなど適度な運動を続けると腸内の細菌バランスが整い、大腸がんの進行を抑制する可能性が示されました。 この研究はアメリカのユタ大学がん研究所が発表したものです。 腸内の細菌と健康 人の腸内には、人間のすべての細胞の数60兆個よりはるかに多い、約100兆個とも推定される細菌が棲んでいます。その種類は1000種類ほど。これらの腸内細菌は健康と密接に結びついていて、腸内菌の種類が多様でバランスが取れているほど好ましいとされています。 しかし、食事が肉食中心になると、動物性タンパク質を好む悪玉菌の数が増え、腸内細菌のバランスが崩れてしまいます。腸内細菌のバランスが崩れると、下痢や便秘、大腸がんなどさまざまな腸疾患の原因になると考えられています。 運動が腸内細菌のバランスを向上? 今回の研究では、大腸がんの患者を対象にした研究に参加した179人の男女を対象に実施されました。 研究グループは、対象者の運動や身体活動の状況を調査し、採取した便から腸内細菌を検査しました。その結果、運動を活発にしている人ほど腸内細菌の種類が多様で、大腸がんの進行を促す細菌の種類が少ないことが判明したのです。さらに、運動している人ほど、がんから保護する細菌の量も多かったそうです。 この結果を受けて、ユタ大学人間科学部に所属するキャロライン・ヒンバート氏は「今回の研究で、運動を習慣にすると腸内細菌のバランスが整うことがわかった。運動は体格に関係なく、すべての人に恩恵をもたらす」と述べました。 またヒンバート氏によると、激しい運動ではなくても日常的に適度に身体を動かすことで効果があるそうです。 ではどれくらいの運動量が適度なのでしょうか? アメリカの運動ガイドラインでは、1日20分くらいのウォーキングが目安だとされています。 ユタ大学の人間科学部所属のコーネリア・ウルリッヒ氏は「大腸がんを発症した人でも、適度な運動をすることで腸内の状態が改善され、長生きできる可能性があることを多くの人に知ってもらいたい」と運動の重要性を訴えました。
2022/12/15
高齢者の骨折において、骨折した部位が体の中心に近い場合や、骨折した高齢者に基礎疾患がある場合に死亡率が高まることが研究で明らかになりました。 この研究は、オーストラリアのカーヴァン医学研究所に所属するJacqueline Center氏が牽引しておこなわれました。 研究の詳細 この研究の対象者は次の通りです。 対象者は直近14年の間に骨折した50歳以上のデンマーク人30万7870人 対象者のうち、男性は9万5372人で、女性は21万2498人 対象者はさらに4つのグループに分けられました。グループはそれぞれ、比較的健康なグループ、心疾患を患っているグループ、糖尿病を患っているグループ、がんを患っているグループとなっています。 平均して約6年間にわたって追跡したところ、男性の約43%と女性の約39%にあたる人が死亡。また、死亡者のうち半数近くが、2つ以上の疾患を持っていました。最も多くの人が患っていたのは心疾患で、次に多かったのはがんだったそうです。 さらに、各グループの骨折部位と骨折後の死亡率、基礎疾患の有無を照らし合わせました。すると、太ももの骨にあたる大腿骨(だいたいこつ)、股関節にあたる大腿骨近位部、骨盤、肋骨(ろっこつ)、鎖骨などの体の中心に近い部位を骨折し基礎疾患がある人は、そうでない人に比べて骨折後の死亡率が上昇したことが明らかになったのです。 特に死亡率が高かったのは、がんのグループの大腿骨近位部を骨折した男性で、40.8%の人が死亡しました。 一方、手や前腕などといった体の中心から離れた部位を骨折した、比較的健康なグループでは、死亡率の増加はほぼ見られませんでした。 研究を通して考えられること なぜ、基礎疾患がある人が骨折すると、死亡率が上がったのでしょうか? この研究をリードしたCenter氏は具体的なことはまだわかっていない、としながらも、「骨と免疫系の相互作用によるものである可能性が高い」と考えています。基礎疾患があると、骨折による炎症を引き起こしている原因分子をうまくコントロールできず、結果として骨折が基礎疾患を悪化させているのではないかと推測しました。 今回の研究論文の筆頭著者であるThach Tran氏は、「この研究は、骨折と基礎疾患が相互に関連していることを明らかにしたもので、リスクが高い患者を特定しやすくするものかもしれない」と話しました。 高齢者は骨がもろくなり、骨折しやすくなります。骨折の原因になりやすい転倒を減らす工夫が大事ですね。
2022/11/11
ピザやケーキ、インスタントラーメンなどの人が何らかの形で加工した食品はおいしいですよね。最近は食べ物の西洋化が進み、若い世代だけでなく、高齢者も加工食品を食べている姿を見かけます。 このように世代を問わず食べられる加工食品ですが、実は食べすぎると大腸がんになりやすくなるという研究結果があります。 この記事では、将来がんを発症するリスクが高い食品と、逆にがんの発症リスクを下げる食品を紹介していきます。 大腸がんのリスクが高い食品 アメリカのタフツ大学とハーバード大学の研究によると、ピザやケーキなどの加工食品をよく食べている男性は、ほとんど食べない男性に比べて大腸がんのリスクが29%高いことが明らかになりました。 さらに、ソーセージやベーコンなどの加工肉を食べている男性の大腸がんのリスクは、そうでない男性グループに比べ44%も高かったのです。 つまり、加工肉の食べすぎは腸内環境を悪くし、がんの発症リスクを上昇させる可能性があることがわかります。 大腸がんのリスクを高める加工食品の特徴は、全体的に塩分や脂肪、添加物が多く含まれており、食物繊維が少ないこと。その結果、大腸がんだけでなく、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病のリスクも上昇します。 大腸がんのリスクを下げる食品 では、大腸がんのリスクを下げる食品にはどのようなものがあるでしょうか? 腸内環境の悪化ががんの発症リスクになるのであれば、逆に腸内環境を良くすれば、がんの発症リスクが抑えられるかもしれません。 実際、先述したタフツ大学とハーバード大学の研究で、ヨーグルトをよく食べている女性は大腸がんのリスクが17%減少したことが判明。ヨーグルトや納豆などの発酵食品には、腸内環境を改善する効果があることがわかりました。 もちろん、発酵食品は一度に多く食べる必要はなく、毎日継続して摂取することが大切。一日の献立に発酵食品を取り入れ、腸内環境を改善していきましょう。
2022/11/04
診断精度が高くなったことや化学療法の質の向上により、がん治療が進歩しています。それによって、がん患者の寿命が改善し、病状が安定しました。 その一方で、循環器疾患(高血圧や心不全、血栓症など、心臓・血管に関する疾患)を合併するがん患者が増えています。 どうしてがん患者が循環器系の合併症を起こしやすいのか詳しく説明します。 どうして高血圧になりやすいのか? がん患者が高血圧になりやすい理由のひとつは、がん患者の高齢化が進んだことから、高血圧、糖尿病といった病気のリスクを多く抱えていることが挙げられます。そのため、がん発症時にすでに循環器疾患を合併しているケースもあるのです。 さらに、がんと循環器疾患は日本人の死因の1位と2位。2つの病気を併せ持つ方も必然的に多くなります。 また、抗がん剤を使用する副作用として高血圧を引き起こすことも原因のひとつであり、「がん」と「循環器疾患」は切っても切り離せない関係です。 ”高血圧ぎみ”でも心不全リスクが上昇 そうした背景のもと、東京大学や佐賀大学などの共同研究グループががんと高血圧の関連についての研究を実施しました。 その結果、がん患者の場合、高血圧の診断基準よりも低い「軽度高血圧」の状態でも心不全のリスクが高くなることが判明。具体的には、いわゆる”上の血圧”である「収縮期血圧」が140mmHg以上または”下の血圧”の「拡張期血圧」が90mmHg以上でも心不全リスクが上昇したそうです。 普段からできる高血圧の予防 重い病気につながる「高血圧」。普段から予防をすることが大切です。ここでは、日常でできる高血圧予防についてご紹介します。 食生活の見直し 野菜や果物を多く摂りましょう。野菜や果物には血圧を下げる効果があります。さらに塩分も控えるようにしましょう。 禁煙をする、たばこの煙を避ける たばこに含まれるニコチンは血圧を上昇させます。 お酒は適量を守る アルコールを大量に摂取すると 血圧が上昇します。 適度な運動をする 日頃からウォーキングなど有酸素運動をすることで血圧が下がります。 十分な睡眠をとる 睡眠中は副交感神経が活発化するため、血圧が下がります。 がんと高血圧、今まで関連づけて考えることのなかったテーマですが、これからはこの2つと上手く付き合うことが長寿の秘訣となりそうですね。
2022/09/27
がん患者には、身体の痛みや治療、生活への不安から心身ともに負担がかかります。負担が大きいと、痛みや将来の心配から眠れなくなったり無気力状態になってしまうこともあります。 そのため、がんの治療と並行して痛みの緩和やメンタルのサポートなどの緩和ケアがおこなわれます。 そこで、国立がん研究センターは、がん患者の人生の最終段階の療養について、遺族にアンケートを実施。この調査をもとに、患者の療養場所や医療に関する意思決定支援などの具体的な政策の提言につなげたいとしています。 がん治療の実情とは 国立がん研究センターが、がん患者の遺族に対しておこなった調査の結果を公表しました。 この調査は、がん患者が人生の最期で利用した医療サービスや療養生活の実態を明らかにするため実施されたものです。 その結果、最期を療養する場所として、症状の重い患者はがん治療を中心におこなう病院を選択し、症状が比較的落ち着いており高齢な患者の場合は介護施設を選択していたことがわかりました。 さらに、死亡時の年齢が80代以上だったがん患者は約5割。多くの人が高齢になってから亡くなったことがわかっています。 また、遺族の約8割が「患者の苦痛に対して医療従事者はよく対応していた」と回答している一方で、「身体の苦痛が少なく過ごせた」と回答したのは約4割にとどまりました。 この結果から、緩和ケアの際、痛みへの基本的な対応はされているものの、それだけでは緩和されない症状がある場合やがん以外の症状が混在するなど複雑なケースがあることが判明。そのため、緩和ケアの効果が十分に得られなかった可能性があるそうです。 こうしたことを受けて、国立がん研究センターは「がん患者の苦痛緩和は改善の余地」があると指摘。医療従事者への緩和ケアへの教育と同時に、複雑な場面での診断方法や治療の難しい症状への新しい治療法の開発を検討する必要性を伝えています。 患者が自分らしい生活をできるように 特にがん治療において、痛みの制御や精神的な支援などの緩和ケアが重視されています。 というのも、がん患者は痛みや倦怠感などの身体的な症状や、がんと診断されたことによる落ち込みや悲しみを経験するから。苦しみや無力感によって治療する気力をうばうこともあります。それを抑えて、自分らしい生活を送れるようにするのが緩和ケアの役割です。 今回の調査で、緩和ケアは完全に痛みを取ることもできる一方で、基本的な対応だけでは痛みを緩和しきれないこともあることがわかりました。多様なケースに対応できるように、治療や緩和ケアの選択肢が増えることに期待したいですね。
2022/05/23
がんや脳梗塞などで神経が傷つけられると、痛みが出ることがあります。神経が過敏になって、痛みの信号が出過ぎてしまっている状態です。 こうした痛みは、慢性的になると鎮痛剤などの一般的な薬では抑えられないほどになることも。ときにはモルヒネなどの強い薬を使って痛みをコントロールすることもありますが、それでも痛みが抑えられない場合もあります。 今回、こうした痛みを回復させる細胞があることを九州大学などの研究グループが発見。その細胞が痛みをやわらげるホルモンを作っていることもわかり、将来的には新たな鎮痛薬の開発につながる可能性があるそうです。 「痛みが引く」メカニズムが明らかに 九州大学などの研究グループは、痛みを回復させる細胞とホルモンを発見しました。 この研究グループは、神経がダメージを受けると脊髄で「ミクログリア」という細胞が活性化して痛みを発生させることを明らかにしていました。 しかし、実験で神経を損傷させたマウスは傷が治っていないのにも関わらず、痛みが弱くなっており、このメカニズムが詳しくわかっていませんでした。 そこで今回の研究で、自然に痛みがやわらぐ仕組みについて調査しました。 その結果、ミクログリアの一部が変化して「IGF1」というホルモンを作るようになり、痛みをやわらげていることを発見しました。 今回の実験では、マウスから変化したミクログリアを取り除いてマウスの痛みもチェック。すると、通常は徐々に収まっていくはずの痛みが非常に長く持続することもわかりました。 つまり、「変化したミクログリアがIGF1を作り出さないと痛みが収まらない」ということも同時に明らかになったのです。 今回の結果から、変化したミクログリアを増やしたりIGF1を増やすことで痛みをやわらげるような治療薬につながる可能性があるそうです。 新しい痛みの治療法が開発される? 神経が傷つけられることで発生する痛みの治療をしている人は、国内で約600万人いるとされています。 特にがん末期となると約7割の人が痛みがあり、そのうちの約8割は激痛に苦しんでいるそうです。 そうしたときに麻薬のモルヒネを使用することもありますが、耐性がついて薬が効かなくなったり吐き気などの副作用が起こるおそれもあります。 そこで今回の研究をもとに新しいタイプの鎮痛薬が登場すれば、こうした激痛で苦しむ人が減る可能性もあるので、今後の研究に期待したいですね。
2022/04/13
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。