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特集

Q&A

老人ホームに入居する、なんていう経験は人生でもそうあるものではありません。当然、わからないこと、不安なこと、疑問などなど、頭の中が「?」マークでいっぱいになっていることでしょう。そんなアナタに、自称“日本一、老人ホームの入居相談を受けてきた男”こと「いい介護」入居相談室の室長・北野が、みなさんの疑問・質問にお答えします!
認知症 在宅介護

認知症の母が食べ物以外のものを食べてしまうのは、どうやって防いだら良いですか?

認知症の母が、ビニール袋やティッシュを食べるようになってしまいました…。すぐに私が口から離させるので飲み込むことはないのですが、何を食べてしまうのかわからなくて常に目を離せなくて困っています。 今後、もっと危険なものも食べてしまうかもしれません。どうしたら母は食べ物以外のものを食べるのを防げますか? (奥村さん・会社員・63歳) もしかしたら、空腹やストレスから食べ物以外のものを食べてしまうようになったのかもしれません。なので、軽食を食べてもらったり、ストレスの原因を取り除くなどの対策をしてみましょう。もし、食べ物ではないものを飲み込んでしまったときは、できる範囲で飲み込んだ量を把握したうえで病院を受診してくださいね。 認知症のせいで食べ物以外のものを食べる!?予防法は? 認知症の母が、ちょっと目を離した隙に食べ物以外のものを口にするようになってしまいました。特に多いのがビニールやティッシュです。しかも、この間は服から取れたボタンを食べようとしていたんです。いつ、何を食べてしまうかわからないので母を家に一人にできないですし、常に目を離せないので私は疲れてしまいました。どうしたら食べ物以外のものを食べるのを防げるのでしょうか? 食べ物以外のものを口にしてしまうのは、とても危険ですよね。ちなみに、食べ物以外のものを食べてしまうことを「異食」と言い、認知症の周辺症状のひとつです。認知症の人が食べ物以外のものを口にするのを防ぐ方法には以下のようなものがあるので、参考にしてみてください。 おやつを食べてもらう 食べると危険なものは手の届かないところに置く 食べ物ではないことをわかりやすくする 食べられるものと入れ替える おやつを食べてもらう お母様は、お腹が空いていて食べ物ではないものを口にしている可能性があります。なので、その対策としては、軽食を食べてもらうこと。せんべいやクッキーなどのおやつを食べて、次の食事までの間の空腹を紛らわしてもらうんです。 えっ、でも、そんなに食べてしまったら、食事が摂れなくなってしまうんじゃないですか? もちろん、量の調整は大切です。食事に影響が出ないくらいの量に抑えたり、おやつを食べた分は食事を減らしたり、といった調節はしてくださいね。 食べると危険なものは手の届かないところに置く 認知症の方が異食をしてしまうことが多いもののなかでも、乾電池や洗剤などは飲み込んでしまうと大変危険です。なので、手の届かないところや棚の中にしまいましょう。 確かに。口にしないように、食べ物以外のものはすべてしまっておかないと。 ただ、飾り物をすべてしまって、あまりにも殺風景になってしまうのも刺激がなくて脳に良くありません。手が届かないところに飾るなど、うまく調整してくださいね。 食べ物ではないことをわかりやすくする 「食べ物ではないことをわかりやすくする」ってどういうことですか? ストレートに「これは食べ物ではありません」と書くのはどうでしょうか?認知症の方でも文字が読める方であれば、効果があるでしょう。食べてしまうものにもよりますが、洗剤や薬品類などのパッケージに大きく書いておくと効果があるかもしれません。 食べ物と入れ替える お母様がティッシュやビニールを手に持っていたりして、「食べてしまうかも」と思ったときには、食べられるものと交換してみるのも良いでしょう。 今までは、急いで母の手から取り上げていたのですが、それではいけないんですか? お母様としては、手に持っているものは「食べても良いもの」と理解しているので、それを急に取り上げられると驚きますし、混乱しますよね。そうしたことが繰り返されると、混乱からストレスを感じてさらに異食をする頻度が上がってしまう可能性があります。 そうなんですか!?食べたら危険だと思って、急いで取り上げていたのは良くないことだったんですね…。 なので、食べ物を手渡してさりげなく食べてはいけないものと交換しましょう。「こっちの方がおいしいよ」と食べ物を手渡してみると、意外とすんなり交換してくれるかもしれません。認知症の方に言ってはいけない言葉については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 食べ物以外のものを食べてしまったら もし、母が食べ物以外のものを飲み込んでしまったらどうしたら良いんでしょうか? もし、食べ物以外のものを飲み込んでしまった場合、無理に吐き出させようとせずに、口の中を確認しましょう。口にしたものの大きさによっては、口の中に物が残っていることがありますから、それを取り除きましょう。ただ、ティッシュやビニールといったものは気管をふさいで窒息する危険性があります。電池や洗剤なども中毒のおそれがあるので、危険なものを飲み込んでしまった場合はすぐに病院を受診してください。 ティッシュやビニールで窒息する可能性があるんですね!それには気が付きませんでした。本当に危険ですね…。 食べると危険なもの ティッシュやビニールなどの、家の中に当たり前にあるものでも食べたら危険なものがあるんですね…。他に、食べると危険なものにはどんなものがあるんですか? 食べると危険なものには、以下のようなものがあります。 ティッシュ ビニール 電池 洗剤 漂白剤 防虫剤 殺虫剤 ガソリン・石油 除光液 薬 タバコ マニキュア 針・刃物 上記のものは、口にしてしまうととても危険なので、認知症の方が手が届かない場所に保管しておきましょう。便を食べてしまう場合については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 認知症の人が食べ物以外のものを食べる理由は 母は「まだ飲み込んでいないから大丈夫」と思っていましたが、異食がとても危険なことだとよくわかりました。そもそも、どうして母は食べ物以外のものを食べるようになってしまったんでしょうか? 認知症の影響だと考えられます。具体的には、以下のような理由で食べ物以外のものを食べてしまっているのかもしれません。 食べ物かどうか判別できない 食事の時間だと勘違いしている お腹が空いている 不安やストレスを発散している 食べ物かどうか判別できない 認知症の影響で、目の前のものがどういった役割のものなのかを理解できなくなることがあります。この症状を「失認」と言い、認知症の症状のひとつです。具体的には、「ティッシュが何かわからない。わからないから手に取ってみる。それでもわからないから口に入れてみる」といった具合です。また、洋服のボタンやビー玉などを飴玉と勘違いしているケースもあります。食べ物と勘違いしているのであれば、自然と口に入れてしまいますよね。 うちの母も、ティッシュやビニールを食べ物と勘違いしていたのかもしれませんね。 食事中と勘違いしている また、認知症になると現在の日時、季節といった時間に関する感覚があいまいになることがあります。これは「見当識障害」と言って、認知症の症状の代表的なものです。見当識障害の影響で時間感覚があいまいになり、食事の時間と勘違いして近くにあったものを食べてしまった、ということもありえます。 お腹が空いている 母は食欲旺盛で、3食しっかり食べています。それでもお腹が空いているんですか? 実は、認知症の影響で満腹感を感じにくくなっている可能性があります。認知症によって脳の満腹を感じる部位が損傷を受けることで、満腹になりにくいんです。そのうえ、認知症によって食べ物以外のものを食べ物と思い込んでしまっていれば、自然と食べようと思ってしまいますよね。そうした理由が合わさって、食べ物ではないものを食べてしまっているのかもしれません。 不安やストレスを発散している 認知症ではない私たちも。「やけ食い」などでストレス発散することがありますよね。それと同じように、認知症の方も食べることで不安やストレスを解消しようとしているのかもしれません。また、誰でも何がなんだかわからない状況に置かれるのはストレスですよね。認知症の方は、それ以上に認知機能の衰えによって物事が理解できず、不安やストレスを感じやすい状態にあります。なので、ストレスを発散させようと異食をしてしまっている可能性があります。 母が食べ物以外のものを食べるのを止めさせることばかり考えていましたが、いろんな理由があって異食をしていたんですね…。母の異食の原因を減らせるように、対策をしていきたいと思います。 おやつを与えたり、危険なものを届かないところで保管して予防して 食べてしまったら、無理に吐き出させようとせず、口の中を確認して 空腹やストレスから食べ物以外のものを食べてしまうことも pre { margin: 40px 0; background: ...

2023/09/08

施設入居 在宅介護 介護のお金

親の介護をするお金がない!一人っ子だから兄弟からの支援もありません。どうしたら良い?

母が亡くなってから、急に父の様子が変わってしまい、介護が必要になってしまいました。もともとはマメな性格で掃除を率先してやる人だったのに、母が亡くなってからは無気力になって、家の中は荒れ放題に。ぼーっとしていることも増えました。 そのため介護サービスを使い始めたのですが、支出が増えて家計が苦しいです。でも、私は一人っ子でお金の工面をしてくれる兄弟もいません。親の介護をしたくてもお金がないときはどうしたら良いですか? (大森さん・パート・63歳) 介護にかかるお金や老人ホームの利用料を軽減する制度があります。そうした制度を上手く活用していきましょう。もし、費用の軽減制度の対象にならない場合や、制度を利用してもなお介護のお金が足りない場合は、生活保護の受給も検討してみてください。一人っ子の介護は、介護の負担が集中しやすいです。大森さんが体調を崩してしまっては元も子もないので、介護サービスを上手く活用していきましょう! 一人っ子で親の介護のお金がない!どうする? 母が亡くなってから父の様子がおかしくなって、介護サービスを利用するようになりました。でも、父の年金が少なくてこれまでの生活を維持するので手一杯。介護のお金が捻出できません。私も自分の生活でギリギリで、お金の支援はあまりできそうにありません。それに、私は一人っ子でお金の工面をしてくれる兄弟もいませんし…。父の介護をしたくてもお金がないんです。介護のお金がないときはどうしたら良いですか? 一人っ子の介護はお金の面でも大変ですよね…。例えば、介護にかかる費用を軽減する制度があるので、それを利用してみるのはどうでしょうか? 費用が抑えられる制度があるんですか!ぜひ教えてください。 では、介護や医療費全般が軽減される制度と、介護施設の利用費が軽減される制度についてお話ししますね。 介護費用の軽減制度を利用する 介護費や医療費の軽減制度には、以下のようなものがあります。 福祉用具購入費 居宅介護住宅改修費 高額介護サービス費 高額介護合算療養費制度 医療費控除 福祉用具購入費 「福祉用具購入費」は、福祉用具を購入した場合に、介護保険が適用されて一部の費用が手元に戻ってくる制度。以下の特定の福祉用具を購入した場合に、費用の助成を受けられます。 腰掛便座 自動排泄処理装置の交換可能部品 入浴補助用具(入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、入浴用介助ベルト) 簡易浴槽 移動用リフトのつり具の部分 排泄予測支援機器 費用の助成を受けるには、事前の申請が必要なので忘れないでくださいね。 居宅介護住宅改修費 「居宅介護住宅改修費」は、介護リフォームの費用を助成する制度です。介助が必要な方が暮らしやすいように自宅を改修した場合に、最大20万円が支給されます。 20万円も!最近、父が段差でつまづくことが多くなったのでリフォームしても良いのかも。 それは良いですね!以下のリフォームが対象となりますので、念のため確認しておいてください。 廊下や階段、浴室、トイレ、玄関まわりなどへの手すりの設置 段差解消目的のスロープ設置、浴室床のかさ上げなど 滑り防止および円滑な移動のための床材変更(畳・じゅうたん・板材など) 扉の取り替え(開き扉・引き戸・折り戸など、ドアノブ交換など) 洋式便座などへの便器の取り替え 上記の住宅改修に付帯して必要となる改修(下地補強、給排水設備工事、壁・柱・床材の変更など) 高額介護サービス費 「高額介護サービス費」は、所得に応じた介護サービス費の自己負担額の上限を超えた場合、超えた分のお金が払い戻される制度です。高額介護サービス費の負担限度額は、以下のように定められています。 区分負担の上限(月額)生活保護を受給している方など15,000円(個人)前年の「公的年金等収入額」と「その他の合計所得金額」の合計が年間80万円以下24,600円(世帯)15,000円(個人※1)世帯の全員が市区町村民税を課税されていない方24,600円(世帯)市区町村税課税~課税所得380万円(年収約770万円)未満44,400円(世帯)課税所得380万円(年収約770万円)~課税所得690万円(年収約1160万円)未満93,000円(世帯)課税所得690万円(年収約1160万円)以上140,100円(世帯) 「高額介護合算療養費」は、介護保険と医療保険の自己負担額の合計が、限度額を超えたときに超えた分が戻ってくる制度です。限度額は、以下のように所得に応じて定められています。 70歳以上70歳未満年収約1160万円以上212万円212万円年収770万~1160万円141万円141万円年収370万~770万円67万円67万円年収156万~370万円56万円60万円市町村民税世帯非課税31万円34万円市町村民税世帯非課税(所得が一定以下)19万円34万円 なるほど。この費用を上回ったときに、超えた分のお金が戻ってくるんですね。 医療費控除 「医療費控除」は、医療費が一定額を超えた場合に控除が受けられるものです。通院などにかかった医療費だけでなく、介護サービスの中でも以下のサービスであれば対象となります。 居宅サービス 訪問看護 訪問リハビリテーション 居宅療養管理指導 通所リハビリテーション 短期入所療養介護 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 看護・小規模多機能型居宅介護 施設サービス 特別養護老人ホーム(支払った額の2分の1が控除対象) 介護老人保健施設 指定介護療養型医療施設 介護医療院 介護施設の費用の軽減制度を利用する 介護施設の居住費や食費を軽減する「特定入所者介護サービス費」という制度もあります。すべての介護施設に適用されるわけではなく、以下の公的施設であれば制度を利用できます。 特別養護老人ホーム(特養) 介護老人保健施設(老健) 介護医療院 加えて、所得に応じて以下の5段階に分けられており、段階ごとに各施設の金額が設定されています。 第1段階:生活保護受給者、老齢福祉年金受給者で本人及び世帯全体が市民税非課税第2段階:世帯全員が住民税非課税かつ本人の合計所得金額+課税年金収入額+非課税年金収入額が80万円以下第3段階(1):世帯全員が住民税非課税かつ本人の合計所得金額+課税年金収入額+非課税年金収入額が80万円より大きく120万円以下第3段階(2):世帯全員が住民税非課税で、本人の合計所得金額と課税年金収入額と非課税年金収入額の合計が年額120万円を超える人第4段階:上記以外の方 出典:「特定入所者介護サービス費」(厚生労働省) 特別養護老人ホーム 特養は、要介護3以上の方が入居できる施設。寝たきりなどの要介護度が高い方や看取りの方にも対応しているので、「終の棲家」として人気があります。「特定入所者介護サービス費」を利用すると、特養の費用は以下のようになります。 負担限度額(日額) 第1段階 第2段階 第3段階① 第3段階② 食費 300円 390円 650円 1360円 居住費 多床室 0円 370円 370円 370円 従来型個室 320円 420円 820円 820円 ユニット型個室的多床室 490円 490円 1310円 1310円 ユニット型個室 820円 820円 1310円 1310円 部屋のタイプによっても費用がかなり違うんですね。父はまだ要介護2なので、入居はできないですが、ゆくゆくは検討しないといけないのかも…。 介護老人保健施設 老健は、リハビリや医療ケアが充実している施設です。リハビリを重点的におこなって、在宅復帰することが前提の施設のため、入居期間は基本的に3~6ヵ月と短いのが特徴です。老健も居室タイプによって料金が異なります。詳しい料金は、以下の表のとおりです。 負担限度額(日額) 第1段階 第2段階 第3段階① 第3段階② 食費 300円 390円 650円 1360円 居住費 多床室 0円 370円 370円 370円 従来型個室 320円 420円 820円 820円 ユニット型個室的多床室 490円 490円 1310円 1310円 ユニット型個室 820円 820円 1310円 1310円 介護医療院 介護医療院は、かなり充実した医療体制が特徴。医師が常駐しており、胃ろうなどの経管栄養やたん吸引といった、常に医療ケアが必要な方も入居可能です。介護と医療のサポートが必要な方を対象とした施設のため、要介護1以上で医療ケアが必要な方が入居対象です。「特定入所者介護サービス費」を利用したときの介護医療院の費用は、以下のとおりです。 負担限度額(日額) 第1段階 第2段階 第3段階① 第3段階② 食費 300円 390円 650円 1360円 居住費 多床室 0円 370円 370円 370円 従来型個室 490円 490円 1310円 1310円 ユニット型個室的多床室 490円 490円 1310円 1310円 ユニット型個室 820円 820円 1310円 1310円 どうしても親の介護のお金がないときは生活保護も検討して いくつか費用の助成制度をご紹介しましたが、制度の対象にならなかったり、制度を活用しても経済的に厳しい場合もあるでしょう。そういうときは、生活保護の受給も検討してください。 えっ、生活保護ですか?生活保護でも介護サービスは利用できるんですか? もちろんです!生活保護になった場合、介護保険料や介護サービス費は生活保護費の中から支払われます。なので、自己負担はありません。生活保護を受給するためにはいくつもの条件がありますので、簡単に決断できるものではないかもしれませんが、介護のお金がない場合には、一度検討してみてください。 介護のお金がないときは、費用の軽減制度を活用して 公的施設なら所得に応じて利用料が安くなる どうしても介護のお金がないときは生活保護の検討を ...

2023/09/07

排泄 在宅介護

高齢の母親がトイレに間に合っていないようです。粗相を防ぐ対策を教えてください

最近、高齢の母がトイレに間に合わず粗相をするようになりました。母が使った後のトイレの床が尿で濡れているので、間に合っていないのだと思います。 毎回、トイレの掃除をするのも大変ですし、何より臭いがこもるようになりました。母が粗相をしないような対策はありますか? (福井さん・自営業・57歳) 例えば、排泄のタイミングを把握して、トイレの声掛けをしてみましょう。「食事の前」「寝る前」など、トイレに行くタイミングで「トイレに行っておこうよ」と声をかけるだけでも、粗相の回数が減るかもしれません。ただ、トイレはとてもデリケートな話題ですから、声掛けやトイレの介助を嫌がる可能性が十分あります。そのため、嫌がられたら無理をせずに見守ることも大切ですよ。 高齢者がトイレに間に合わないときの対策は? 最近、高齢の母がトイレに間に合わないことが増えたようで、母がトイレを使うと、床が尿で濡れているんです。尿で汚れた床を掃除するのも嫌ですし、何より臭いがこもるようになってしまって…。床だけでなく、ズボンも濡らしているようで、服も臭うんです。母が粗相しないような対策ってありますか? 尿で汚れると臭いますから、本当に大変ですよね。粗相を予防するには、以下のような方法があります。 トイレの声掛けをする 着脱しやすい下着に変える ポータブルトイレを設置する オムツを使う トイレの環境を整える トイレの声掛けをする まずやっていただきたいのが、トイレの声掛けです。お母様の毎日の排泄のタイミングを把握して、タイミングに合わせて少し早めに声をかけるんです。 なるほど…。例えば、どんな風に声掛けをすれば良いんですか? 「ご飯の前にトイレに行っておいたら?」「出かけるからトイレに行っておこうよ。私も後で行くから」など、気軽な言い方がおすすめです。「トイレに行っておかないと、また漏らしちゃうよ」といった、自尊心を傷つけるような言い方は控えてくださいね。 着脱しやすい服に変える ズボンや下着などを着脱しやすいものに変えるのもおすすめです。高齢になると、指先の動きが鈍くなってズボンや下着の脱ぎ着が難しくなることが多いです。そのため、チャックとホックやボタンのズボンの場合はウエストがゴムのものを、締めつけの強いガードルのような下着の場合は普通の布パンツに変えましょう。 ポータブルトイレを設置する お母様のお部屋にポータブルトイレを置くのはどうでしょうか? ポータブルトイレって何ですか? ポータブルトイレは、任意の場所に設置できる簡易トイレです。歩行が不安定などの理由でトイレまで行くのに時間がかかる方におすすめです。特に、夜にトイレに行く場合、足元が暗かったり、寝ぼけて歩行がより不安定になることが多いので、夜間に使うために設置している方も多いですよ。 オムツを使う オムツですか?まだ母には早い気がします。オムツ交換するのも大変そうだし…。 実は、パンツタイプの紙おむつがあるんです。普通の布パンツを使うのと同じ感覚で使用できます。また、尿漏れ用のパッドよりも大きな尿とりパッドも売られています。毎回、紙パンツを取り替えるのは経済的な負担が大きいので、中にパッドを入れている人が多いですね。1~2回分の尿なら吸収できますから、トイレを汚してしまう心配がかなり減ると思いますよ。 へー!そんな便利な物があるんですね。買ってみようかな。でも、母は「オムツ」と言うととても嫌がって使わない気がします…。 はじめは紙パンツを使うのに抵抗があると思います。そういうときは、普段使っている布パンツの中に尿とりパッドを入れて使うのも手。これなら紙パンツを使うよりも抵抗が少ないと思います。おむつ外しについては、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 トイレの環境を整える スムーズに排泄ができるように、トイレの中の環境を整えることも大切です。もし、トイレのマットを尿で濡らしてしまうのであれば、防水タイプに変えるのも良いでしょう。 それは良いですね!トイレマットに防水タイプがあるなんて知りませんでした。 それと、足元に物を置かないようにするのも、スムーズにトイレに座れるようになるポイント。トイレットペーパーのストックや掃除用具を室内に置いておくことが多いと思いますが、それが歩行の妨げになっている可能性があります。なので、足元に物を置かないようにしましょう。今回、紹介した方法も含めて、トイレの室内の環境を整える方法がいくつかあるので、以下を参考にしてみてくださいね。 防水のトイレマットに変える 足元に物を置かない 消臭剤を使う 手すりをつける トイレ介助するときのポイント 母がトイレに間に合わないことが増えたので、そろそろ私が介助した方が良いのかな、と思っているのですが、北野室長はどう思いますか? うーん、そうですね。おひとりでトイレに行けるようにさまざまな工夫をした結果、それでもトイレに間に合わないようだったら、福井さんがお手伝いしても良いかもしれないですね。ただ、トイレの問題はかなりデリケート。うまく進めないと介助を拒否される可能性が高いです。 そうか…そうですよね。 トイレの介助をされることが「恥ずかしい」「情けない」と感じる方は多いです。特に排泄中は見られたくないと思っている方がほとんどでしょう。ですので、まずはトイレの声掛けから始めてみてくださいね。 トイレ介助を拒否されたら もし、トイレ介助を母に嫌がられたらどうしたら良いですか? 無理に介助をしようとしないことが大切です。介助に入れそうなところだけをお手伝いしてみてください。例えば、部屋からトイレまでの移動が大変そうであれば、手を引いたりして歩行の介助だけをします。無理にトイレ介助をしようとすると、「トイレ」という言葉だけで嫌がるようになってしまう可能性もあるので、慎重に進めると良いでしょう。 トイレの介助の前に、歩きの介助をするんですね。 トイレの中での介助ができるのであれば、ズボンや下着を下ろして排泄している間はトイレの外で扉を閉めて待つ、という対応が良いでしょう。まどろっこしいように思いますが、完全にトイレ介助を拒否されてしまうと、今後の介助が大変になってしまいます。段階を踏んで進めていきましょう。 トイレに間に合わなかったときは? ご高齢者に対しては、トイレに間に合わなかったときの対応も重要です。 汚れた床を掃除したり、濡れた服を洗濯するだけではないんですか? それも大切なのですが、粗相をしてしまったご家族への対応も大切です。トイレに間に合わなかったときは、粗相したことを責めるのは避けてください。毎回、「また間に合わなかったの?」といった、責める言葉を掛けたり嫌な顔をしてしまうと、粗相をしないように摂取する水分量を減らしてしまうことがあります。摂取する水分量が減ると、脱水症状になるリスクが高まります。トイレのことを気にして体調を崩しては元も子もありませんから、お母様が粗相をしても落ち着いて片付けをするように気をつけてみてください。については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 高齢者がトイレに間に合わない原因は? そもそも、どうして母は粗相をしてしまうようになったのでしょうか?ここ最近まで、そんなことはなかったのですが…。 お母様が粗相をするようになったのは、つい最近のことなんですね。もしかしたら、以下のような理由でトイレに間に合わないようになってしまったのかもしれません。 移動に時間がかかる 蓄尿機能が衰えている 筋力が低下している トイレの場所が分からない 年齢を重ねることで、誰しも身体機能が衰えてきます。例えば、以前よりも歩くのに時間がかかるようになって、トイレに行くまでの間で我慢の限界が来てしまうのかもしれません。また、尿を溜めておく膀胱の機能が衰えたり尿道周辺の筋力が低下することで、気づかぬうちに尿もれをしていることもあるでしょう。 言われてみれば、このところ母の歩き方がぎこちないかもしれません。トイレに行く道中も壁を伝ってなんとか歩いているような感じですし…。これまで尿もれの話はなかったのですが、私に言わないだけで尿もれがあったのかもしれません。 お母様には当てはまらないかもしれませんが、場所がわからなくなって、トイレにたどり着けないために粗相をしてしまうことも。こうしたケースは、認知症の方に多いですね。 認知症ですか…。まだ認知症のような様子はないと思います。うちの母の場合は「トイレの場所が分からない」は当てはまらなさそうですね。 トイレの問題はとてもデリケートな問題ですから、その方の粗相の原因を突き止めて適切な対応をしていきましょう。けして無理にトイレ介助をしようとはしないでくださいね。 トイレの声掛けやポータブルトイレの設置をしてみよう トイレ介助はとてもデリケート。拒否されても無理強いしないで 加齢や認知症の影響でトイレに間に合わなくなることがある pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; ...

2023/09/05

認知症 在宅介護

高齢の父親が怒りっぽくなったのは病気の前触れ?認知症の可能性はありますか?

先日、帰省したところ、高齢の父親の様子がおかしくて気になっています。具体的には、一緒に外食をしたら、料理にお箸がついていないことで店員を怒鳴りつけて大騒ぎしたんです。ちょっとしたことですぐ怒るようになっているようで…。 昔はここまですぐに怒るような人ではありませんでしたから、何かの病気の前触れなのかと心配です。もしかして、認知症の可能性もありますか? (松原さん・会社員・58歳) 認知症の可能性もありますね。ただ、認知症以外にも、うつ病や脳梗塞の後遺症、加齢などによって怒りっぽくなることはあります。認知症にはいくつか初期症状がありますから、他の症状も当てはまったら、病院で検査することをおすすめします。 高齢者が怒りっぽいのは病気の前触れ? 先日、久しぶりに実家に帰省したら、一人暮らしの父が怒りっぽくなっているような気がして気になっています。一緒に外食に出かけたところ、食事にお箸がついていないことに激怒し、店員を怒鳴りつけたんです。以前は、こんなことで怒るような人ではありませんでした。急な変化だったので、何かの病気の前触れなのではと心配です。もしかして、認知症になってしまったのでしょうか? 現時点では、はっきりとしたことは申し上げられませんが、認知症も可能性のひとつです。ただ、認知症も含めて、ご高齢者が怒りっぽくなる理由は以下のようなことが考えられます。 認知症 うつ病 脳梗塞 加齢 認知症 認知症の初期症状のひとつに怒りっぽくなることがあります。認知症によって、感情をコントロールしている前頭葉が萎縮すると、気持ちの制御ができなくなって怒りやすい性格になってしまうと言われています。また、認知機能の低下によって状況が理解できない、適切な判断ができない混乱が怒りにつながることもあります。 やっぱり、認知症の可能性もあるんですね。一人暮らしだから心配だな…。 認知症の影響で暴言を吐いてしまう方については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 うつ病 うつ病の可能性もあります。うつ病の症状というと、気持ちが落ち込んでふさぎ込むようなイメージがありますが、実は怒りっぽくなるのも症状のひとつなんです。というのも、幸せホルモンとも言われる「セロトニン」が減少することで気持ちが落ち込むと同時に怒りっぽくもなります。「落ち込みながら怒る人」も多くいるんです。 脳梗塞 脳梗塞を経験している人は、その後遺症として怒りっぽくなることがあります。これも、脳の一部がダメージを負ったために、感情のコントロールができなくなってしまうんです。また、反対に脳梗塞の前触れにも怒りやすくなることも。脳の血流が徐々に減少していくなかで、脳梗塞の症状が出ることがあります。高血圧の方は、脳梗塞の可能性も疑った方が良いかもしれません。 父は高血圧です。母が亡くなって一人暮らしをするようになってから、食事が乱れているみたいで血圧が上がっているようなんです。血圧の薬もきちんと飲んでいるのか確かめないと…。 加齢 年齢を重ねることで怒りやすくなることもあります。こうした方は、もともと怒りっぽい気質だったケースが多いですね。特に一人暮らしの場合、人との交流が減ることで日常生活でストレスを発散する機会も減る傾向があります。そのため、ちょっとしたことでも、怒りにつながってしまうんですね。 なるほど…。父もそうなのかな。このところ、趣味の将棋サークルも行かなくなったみたいですし…。家にこもりきりみたいなんですよね。 認知症のせいで怒りっぽいのか見分ける方法 認知症以外にも、父に当てはまりそうな理由がいくつかありました。認知症かどうか、見分ける方法はないですか? ひとつの方法として、「怒っている理由を聞く」ことがあります。認知症の方の場合、ご本人自身も何に対して怒っているのかわかっていないことも多いんです。なので、「どうして怒っているの?」と聞いてみて、はっきり答えられない場合は認知症の可能性が高いです。また、以下のポイントにも注意してみてください。 今まで怒っていたか 外出時も怒るようになったか 頻度が増えているか これらに当てはまったら、認知症や脳梗塞などの病気の前兆かもしれません。病院での検査をおすすめします。 「怒りっぽい」以外の認知症の初期症状 怒りっぽくなるのは認知症の初期症状のひとつ、とお話ししましたよね。その他にも初期症状があるので、「怒りっぽい」以外の症状にも当てはまっていないか、確認しておきましょう。主な認知症の初期症状は、以下の通りです。 同じことを何回も話す・質問する お金の管理ができない 料理や買い物に手間取る 物をよく探している 周りの出来事に関心がない 趣味を止めた 物や人の名前が出てこない だらしない服装になる これらに当てはまったら、認知症の可能性が高いということですね。うーん…。そういえば、「明日は何時に家を出るんだ」と、外出する時間を何度も聞かれたような。帰省の期間が短かったから、その他の症状はわからないですね。 普段、一緒に過ごしていないとわかりにくいところではありますよね。もし、初期症状にいくつか当てはまるようでしたら、病院で検査してもらってくださいね。認知症の影響で怒りっぽくなってしまった方についても、以下のご質問でお答えしています。参考にしてください。 高齢者が怒り出したときの対応方法 先日の帰省のときは、店員さんだけでなく、私も何度も怒鳴られて。近々、また帰省する予定があるんですけど、次も同じように怒鳴られるかもと思うと気が重いです。 怒鳴られるというのは、ストレスですよね。それに、自分が怒られているわけではなくても、怒っているのを見るだけでも気が滅入ってしまうと思います。そういうときは、「顔を背ける」「別の部屋に移動する」といった方法で、怒りから離れましょう。ストレスの元から逃げることも大切です。 顔を背けるって、それだけでも良いんですか? はい。物理的に離れるのが難しい場面では、顔を背けて、怒っている人を視界に入れないだけでもストレスが軽減されます。怒っている人をなだめるのは大変ですから、毎回、相手の気持ちを落ち着けようとするのはかなりの負担です。「手を付けられない」と思ったら、逃げるのもひとつの手ですよ。 逃げても良いんですね。ちょっと安心しました。とはいえ、まずは父が認知症や脳梗塞を発症しているのか確認しないとですね。 怒りっぽくなったときは、単なる加齢のほかに認知症やうつ病なども考えられる 昔より怒りっぽくなった、怒る頻度が増えている傾向があったら認知症の可能性も 怒り出したら顔を背ける、別の部屋に移動するなど、ストレスを避ける対応を pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: ...

2023/08/31

認知症 在宅介護

認知症の父親が便を食べるのがもう嫌!目を離せなくて本当にしんどい…

認知症の父親が自分の便を食べるようになってしまい、どうしたら良いかわかりません…。 先日、家に帰ったら父が便で手を汚した状態で廊下に立っていました。よく見ると口の中にも便が入っていて…。 それ以降、同じように便を食べてしまうことが何度かあって。いつ便を口にしてしまうかわからず、常に目を離さないようにしているのがしんどいです。 (川島さん・会社員・56歳) 便を食べてしまったときに叱ったり怒ったりするのはNGです。ストレスを感じて、余計に食べるようになってしまう可能性があります。便が下着の中に残っていることで肌が不快で触って、手に着いた便を食べてしまった可能性があります。なので、排便のタイミングを把握して、下着の中に便が残っている時間を短くしましょう。空腹やストレスなどから便を食べてしまっている可能性があります。原因を把握して対応していきましょう。 認知症の親が便を食べてしまったら? 先日、家に帰ったら父が手を便で汚して廊下に立っていたんです。よく見たら口の中にも便があって…。たぶん食べてしまったんだと思います。それ以降、便を食べてしまったり、食べようとしたところを私が止めたことも何度かありました。ずっと目を離せないので、しんどくて…。毎回、父を叱るのですが食べるのを止めないんです。 実は…便を食べてしまったときに叱ったり怒ったりするのはNGなんです。 えっ、そうなんですか!?どうしてですか? 叱られるというのは誰しもストレスを感じますよね。そのうえ、認知症の方の場合、なぜ怒られているのか理解できない可能性があります。「なぜかわからないけど怒られる」というのはとてもストレスを感じることですよね。そのストレスが原因で、余計に便を食べるようになることもあるんです。 えぇ!?では、どうしたら良いんですか? 落ち着いた口調で、「便を食べるのは危険」と伝えましょう。便とわかっていない場合、「おしりに付いているものを食べるのは危険なんだよ」という伝え方でも良いでしょう。便を触っていたり、食べてしまっているのを見ると、どうしても怒りたくなると思います。が、そこはぐっと気持ちを落ち着けてから、話をしましょう。認知症の方との関わり方については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 認知症の親が便を食べるのを予防するには 父が便を食べるのを止める方法はありますか?もう、どうしたら良いかわからないんです。 いくつか方法があります。ひとつずつ試していきましょう。 排便タイミングの把握 皮膚を保護する 汚れも予防する 排便タイミングを把握する まずは、お父様の排便のタイミングを把握しましょう。同じルーティンで生活していることが多いご高齢者は、排便のタイミングもある程度決まっています。そのため、1日の排便のタイミングや、毎日、排便がない場合や何日間隔で排便があるのかを把握してみましょう。トイレ介助をしている場合は、比較的、把握しやすいと思います。お父様がお一人でトイレに行く場合、いつもよりもトイレが長いときに排便していることが多いです。意識して記録しておきましょう。 排便のタイミングですか…。記録するのは良いんですが、タイミングを把握してどうするんですか? 排便のタイミングが把握できると、下着の中に排便してしまったときにすぐに確認できますよね。下着の中に便があると、気になって触ってしまうことがあります。それに手についた便を口にしてしまうことを防げるんです。できるだけ便が肌に触れている時間を減らすと、便を食べてしまう回数が減ると思いますよ。手で便をいじってしまうときの対応については、以下のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 皮膚を保護する また、肛門やおしりの周りにワセリンなどの保湿クリームを塗っておくのも効果があるかもしれません。というのも、下着やパッドの蒸れによって肌がかぶれ、おしりをかいてしまって便が手につくことがあります。あらかじめ、クリームで皮膚を保護しておくとかゆみの予防になるでしょう。 汚れも予防する お父様が便に触っているということは、お家の中が汚れやすいことはありませんか? そうなんです!特に父の部屋が汚れやすいんです。便がついた手でいろんなところを触ってしまうみたいで…。 便は臭いますから、掃除も大変ですよね。便を食べるのを予防するだけではなく、汚れの予防もすることで、相談者さんの負担も大きく減ると思いますよ。例えば、便がつきやすい場所にビニールの保護シートを貼ったり、シーツが汚れる場合は上から敷く防水シートもあります。 へー!そんなものがあるんですね。 もし、畳の部屋の場合、畳の目に汚れがつまりやすくて掃除が大変だと思います。そういうときは、畳の上に敷くフローリングカーペットがあります。それだけでもとても掃除が楽になると思いますよ。 認知症の親が便を食べる理由は? そもそも、どうして父は便を食べるようになってしまったんでしょうか? いくつか理由が考えられます。便を食べてしまう主な理由は以下の通りです。 肌に違和感がある 食べ物だと勘違いしている お腹が空いている 肌に違和感がある 下着やオムツの中に便があると肌がかぶれてかゆくなります。そのため、おしりが気になってかくことで便が手についてしまうことがあります。手についた便が何だかわからなくて、口に入れてしまうんですね。 父はリハビリパンツを使っているのですが、最近、濡れたパンツやパッドを自分で捨てられなくなってしまいました。もしかしたら、それで肌がかぶれているのかも…。 食べ物だと勘違いしている 便を食べ物だと勘違いしていることも考えられます。認知症の影響で、物を認識していてもそれが何だかわからなくなることがあります。手についた便が汚いものなのか、食べ物なのか何なのか理解できなくなってしまうんですね。 でも、おいしいものではないでしょうし、口の中に入れたらわかるものだと思いますが…。 いえ、加齢や認知症の影響で、味覚が鈍くなることがあるんです。なので、口に入れても食べ物なのかどうかがわかっていない可能性があります。 お腹が空いている お腹が減って便を食べてしまうんですか?食事は十分に食べさせているんですが…。 実は、認知症によって脳の一部が損傷することで、満腹を感じにくくなることもあるんです。なので、食べても食べても満腹感は薄く、常にお腹が減っている状態になることも。目についたものは何でも口に入れてしまうんです。こういう場合は、軽食を渡すことで便を食べる回数が減るかもしれません。 便のほかにも食べてしまいがちなもの 便のほかにも、食べ物ではないものを口にしてしまうことを「異食」と呼びます。認知症の症状のひとつです。 便以外にも食べてしまうことがあるんですか?何を食べてしまうんですか? その人にもよりますが、よく異食してしまうものには以下のものがあります。 ゴミ・ほこり 薬の袋・パッケージ ティッシュ 電池 タバコ 洋服のボタン・飾り 洗剤 いろいろあるんですね…。今のところ、父はこれらのものを食べてはいませんが、いつか口にしてしまうかも…。気をつけておかないと。 異食の危険性 異食をしてしまうと、以下のようにさまざまな危険性があります。 窒息する 中毒症状が出る 食道や内臓を傷つける 薬の袋などのビニール類、服のボタンなどは、気管に詰まって窒息してしまう可能性があります。また、洗剤を飲んでしまった場合、中毒症状が出る危険性も…。 中毒!?それは危険ですね。 そのうえ、当然ながら食べ物ではないものは胃の中で消化できずに残ってしまうことが多いです。すると、胃や腸などの消化器官を傷つけてしまうことも。口に入れてしまいやすいものは、手の届かないところにしまっておきましょう。異食があると常に目が離せなくて負担が大きいと思います。適度に気を抜けるように介護サービスの活用もしてくださいね。 便を食べたときに叱るのはNG.落ち着いて対応しよう 排便タイミングに合わせてトイレに座るなど、便が肌に触れる時間を減らそう ボタンや洗剤などを口にすることも。手の届かないところに置こう pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; ...

2023/08/31

認知症 在宅介護

認知症の母親に我慢の限界!睡眠不足で体がきついので、どうにかする方法を教えてください。

もう、母の認知症に我慢ができません!私や私の妻が母のトイレやお風呂の介助をしようとすると、大声で叫んで嫌がるのは毎日のことで、ときには手が出ることもあります。 それに、夜中に家から出ようとすることもあり、その度に私や妻が起きてなだめているのですが…。常に寝不足で体力的にももう限界です。 こんな状況をどうにかする方法はありませんか? (小泉さん・会社員・64歳) 在宅介護サービスは活用していますか?デイサービスやショートステイなど、一時的に介護施設で過ごすサービスがあるので、小泉さんご夫妻の負担がかなり減ると思います。また、介護施設への入居も合わせて検討してください。認知症ケアはかなり難しいです。なので、介護のプロに任せることも、ご家族ができる介護のひとつです。我慢の限界を超えてしまうとご家族が「介護うつ」になってしまうリスクがあるので、無理をせずに、介護サービスを活用しましょう! 認知症の親に我慢の限界!どうしたら良い? もう限界です。母の認知症がどんどんひどくなってきて、妻も私も疲れ切っています。以前からお風呂とトイレの介助が必要だったのですが、最近になって嫌がるようになりました。それも、大声で「助けて!」と叫んで抵抗するんです。気持ちが高ぶっていると手が出るときもあります。それに、夜中に起き出してきて家から出ようとするので、毎晩、私や妻が母をなだめないといけなくて…。ゆっくり眠れないので、いつも寝不足なんです。 それは本当に大変な状況ですね…。ちなみに、介護サービスを利用していますか? いえ、していません。以前、利用した訪問ヘルパーさんと母が折り合いが悪くて、訪問介護を使うのを止めてからは、何もサービスを利用していません。 お母様の状況を聞いていると、ご家族だけの介護はもう厳しいと思います。というのも、認知症ケアはかなり難しく、ご家族の負担がとても大きいんです。ですので、できれば介護サービスを利用することをおすすめします。 そうなんですよね…。私と妻だけでは、介護を続けるのは難しいと思います。でも、どのサービスを使えば良いんでしょうか? 介護サービスは、在宅介護サービスと施設介護サービスに分けられます。それぞれお話ししますね。 在宅介護サービスを使う お母様にぜひ使っていただきたいのは、次の在宅介護サービスです。 デイサービス ショートステイ デイサービスでは、日中の間、介護施設に通って介護サービスを受けられます。具体的には、食事、入浴、レクリエーションなどを提供しています。もちろん、必要であれば食事介助、入浴介助、排泄介助も受けられます。 デイサービスって聞いたことがあります。お風呂やトイレの介助も任せられるんですね! その次のショートステイは、1日から介護施設に宿泊できるサービス。もちろん、宿泊している間の食事や入浴、レクリエーションなども提供しています。最大30日連続で宿泊できることもあり、ご家族のリフレッシュや介護施設に入るまでの順番待ちの間に利用されることもあります。 介護施設に入居する 在宅介護ではなく、施設入居を検討するのもひとつの手です。むしろ、小泉さんと奥様が限界を迎える前に、早めに検討することをおすすめします。 介護施設か…。いろんな種類がありますよね?よくわかっていないんですよね。 はい。介護施設にはたくさんの種類があります。認知症の方だったら、以下の施設がおすすめです。 特別養護老人ホーム グループホーム 介護付き有料老人ホーム 特別養護老人ホームは聞いたことがあります。でも、詳しくは知らないです。 そうでしたか!特別養護老人ホームは、要介護認定3以上の方が入居できる施設。介護が必要な方のための施設で、「終の棲家」として入居される方も多いです。ただ、公的施設ということもあって料金が安いので、入居の順番を待たないといけないことがほとんどです。なかには数年待つケースもあるようです。 人気なんですね…。ただ、うちの母は要介護2なので入居できないですね。その次のグループホームというのは? グループホームは、認知症の方向けの施設です。「ユニット」と呼ばれる最大9名の少人数のグループで生活をするのが特徴。掃除や料理などをご入居者が協力しながらおこなっています。もし、お母様がアットホームな施設が合いそうであれば、グループホームがおすすめです。 アットホームなところか…。母は人の好き嫌いがはっきりしているので、合わない人がいたらなじめなさそうです。 でしたら、介護付き有料老人ホームも選択肢のひとつです。比較的、大規模な施設が多く、合わない人がいたらフロアを変えるなどの対応もしてもらえるかもしれません。また、介護付き有料老人ホームも看取りなどの対応ができる施設ですので、最期までお母様を任せたい場合はおすすめです。 接し方を変えれば認知症の症状は緩和される? 介護サービスを利用すれば、私たちの負担が減りそうで安心しました。ただ、在宅介護サービスを使うにしても、介護施設に入居するにしても、しばらくは私たちが介護をしないといけませんよね。母の状態がこのままだと、どちらにしろ気が休まらない気がして…。 うーん。もしかしたら、お母様への対応を変えることで、認知症の症状が緩和するかもしれません。 えっ、私たちの対応を変えるだけで、症状が緩和するんですか? 認知症を進行させる原因のひとつにストレスがあります。認知症の方は、認知機能が低下することで不安を感じていることが多いんです。その不安感が和らぐことで、症状が緩和すると言われています。 へぇ!そうなんですね。具体的にはどうしたら良いんでしょう? では、詳しくお話ししていきますね。 認知症の人の関わり方のポイント 認知症の方は認知機能の低下や、加齢によって耳が遠くなっていることがほとんどです。なので、以下のようなことに気をつけてコミュニケーションを取りましょう。 話し方 話を否定しない ゆっくり話す 大きな声で話す 目線を合わせて話す 話をよく聞く 接し方 ペースを合わせる 無視をしない 役割を持ってもらう 特に気をつけていただきたいのが、「話を否定しない」です。認知症の方は、症状の影響で事実と異なる話をしたり、何度も同じ話をしたりします。でも、それに対して「それは違うよ」「さっきも言ったでしょ」と、認知症の方を否定するのは禁物なんです。 そうなんですか!?毎晩、母が「仕事に行かなきゃ」と言って出かけようとするので、「もう仕事はしていないでしょ!」と止めていたのですが…。いけないことだったんですね。 おそらく、お母様の中では仕事に行っているのが事実です。なので、それを否定してしまうと、混乱して不安になってしまうんですね。なので、「仕事は今日休みだよ」「まだ仕事の時間には早いから、もう一度寝よう」などの声掛けをすると、納得してもらえるかもしれません。認知症の方とのコミュニケーションは、その方の”世界観”に合わせるのが基本。事実と異なっていても否定をせず、話を合わせていると症状が穏やかになっていくと思いますよ。認知症の方に言ってはいけない言葉については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 我慢の限界を超えると「介護うつ」になってしまう!? 今の状況が良くなりそうで良かったです。このままだと、私も妻もどうにかなりそうだったので…。 認知症の方の介護は大変ですよね。我慢の限界を超える前に、負担を減らす工夫をしていきましょう!限界を超えてしまうと、「介護うつ」になってしまうこともあるので…。 介護うつですか? はい。介護うつは介護が原因で起こるうつのことです。介護によって心身に大きな負担がかかり続けていると、発症してしまうことがあります。長期的に食欲や気力がなくなっていると、危険なサイン。趣味や好きなことを楽しめなかったり、気分が晴れない状態が続いている場合、介護うつの可能性が高いです。そうした状態になる前に、ショートステイを使うのもおすすめです。まとめて数日間ショートステイを利用して、ゆっくり休む時間を作りましょう。 介護サービスには、そういう使い方もあるんですね。私や妻が限界を迎える前に、介護サービスを活用していきたいと思います。 認知症の親の介護に限界を感じたら、介護サービスを積極的に使おう 関わり方を変えると症状が緩和されることも 我慢し続けると「介護うつ」になってしまう可能性も pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; ...

2023/08/30

在宅介護

部屋が狭いのですが、介護ベッドは入りますか?本格的に父親の介護が必要になったので、介護ベッドを使おうと思っています

最近、父の足腰が弱ってきたので父の部屋に介護ベッドを入れようと思っています。ただ、部屋が4畳しかなく、かなり狭いです。 4畳だと介護ベッドを入れるのは難しいですか? (南さん・パート・63歳) そんなことはありませんよ!標準的な介護ベッドのサイズは、「幅91cm×長さ191cm」ですので、このサイズが入れば問題ありません。ベッドを配置するときは、両側にスペースがあることが理想です。もし難しいようであれば、壁に片面を付ける形にしましょう。また、物を減らすことで意外と部屋が広くなることも。捨てる以外にもフリマアプリやリサイクルショップで売る方法もありますから、お父様と相談しながら断捨離することも検討してみてください。 部屋が狭くても介護ベッドは入る? 同居する父の足腰が弱ってきたので、介護ベッドを検討しています。ただ、父の部屋は狭くて4畳しかありません。こんなに狭いと、介護ベッドは使えないでしょうか? いえいえ、そんなことはありませんよ!介護ベッドが収まるスペースがあれば、基本的には利用できます。介護ベッドには、レギュラー、ミニ、ロングの3種類があります。それぞれのサイズは以下の通りです。 レギュラー 幅91cm×長さ191cm ミニ 幅91cm×長さ180cm ロング 幅91cm×長さ205cm 介護ベッドも普通のベッドと同じように、大きさにバリエーションがあるんですね。選ぶときは、どうやって選べば良いんでしょうか? 利用する方の身長を基準に考えると良いでしょう。目安は、「レギュラーは身長150~175cm」「ミニは身長150cm未満」「ロングは身長175cm以上」です。 でしたら、うちの父はレギュラーで良さそうです。ちなみに、うちの玄関もかなり狭いんですが、介護ベッドを運びこめますか? 介護ベッドには、組立て式のものが多くあります。組立て式のベッドを選べば問題ないでしょう。 介護がしやすい部屋の位置、レイアウトは? 実は、おうちの中でも在宅介護がしやすい部屋の位置があるんです。また、介護がしやすい部屋のレイアウトもあります。 介護がしやすい部屋の位置とレイアウト…。ぜひ教えてください! 介護がしやすい部屋の位置 おうちの中でも介護がしやすい部屋の理想は、以下の条件を満たしている部屋です。 トイレから近い部屋 換気のしやすい部屋 1階にある部屋 ご高齢になるとトイレが近くなりますよね。なので、ご自分でトイレに行く方の場合は、できるだけトイレに近い部屋が良いでしょう。また、反対にお部屋でオムツ交換をしたりポータブルトイレを利用する方の場合、換気をしやすい部屋がおすすめ。匂いなどがこもりやすいので、こまめに換気が必要だからです。 「1階にある部屋」というのは、2階以上の部屋だと階段の昇り降りがあるからですか? おっしゃる通りです。階段の昇り降りは、ご高齢者にとって大変危険。転倒のリスクがあるので、なるべく1階の部屋が良いでしょう。 介護がしやすい部屋のレイアウト そろそろ、本格的に介護が必要になりそうなので、介護ベッドを利用するのを機に、父の部屋を模様替えしようと思っています。どんなレイアウトだと介護がしやすいんでしょうか? 介護ベッドについては、両側にスペースがあるのが理想ですね。ベッド上で介助が必要になったときに、やりやすいんです。部屋の広さの関係で難しければ、ベッドの片側を壁につけて設置してください。もし、ポータブルトイレを利用するのであれば、ベッドのすぐ横に設置しましょう。夜間に起きてトイレに行く場合に、すぐに座れますから。 なるほど!ポータブルトイレも使おうと思っていました。ベッドのすぐ横ですね。 また、ベッドの上で過ごすことが多い場合は、ベッドの前にテレビを置くと見やすいですね。寝る前までテレビを見るご高齢者は多いですからね。 部屋が狭いのは物が多いせいかも? できることなら、今の狭い部屋ではなくて広い部屋に移させたいんですよね。最近、父の足元がおぼつかなくなってきて、物につまづいたりすることが多くなって…。 歩いているときにふらつくようになったら、歩行スペースの確保が重要です。なので、まずは今のお部屋の物を減らすことから始めてはどうでしょうか? 確かに…。長年、物があふれている家に慣れてしまっていましたが、物を処分する必要があるのかも…。 ご高齢者は、物を大切にする方が多いので、ご自宅の物が多くなりがちです。でも、体力の衰えから物を管理するのも難しくなりますし、何より転倒の原因になることもあります。それに、物を最低限にしたら、意外とお部屋が広くなることもありますよ。 北野室長の言う通りです!でも、父は物を捨てるのが苦手な人で、なかなか片付かないと思います。 確かに、「捨てる」と言うと抵抗のあるご高齢者は多いです。なので、捨てる以外の方法で処分するのはどうしましょうか?例えば、以下の方法です。 友人にあげる フリマアプリで売る リサイクルショップで買い取ってもらう 単に捨てるよりもひと手間かかる方法もありますが、「捨てる」ではなく「あげる」「売る」と言った方が、お父様の抵抗感も薄まるかもしれませんよ。 介護リフォームは介護保険の補助金が出る ご自宅で本格的に介護が始まる前に、在宅介護がしやすいように介護リフォームをするのもおすすめです。 介護リフォームって手すりをつけたりするものですよね?お金がけっこうかかりそう…。 実は、介護リフォームは、介護保険が適用されて補助金が出るんです。申請をすれば、お金が最大20万円戻ってきますよ。 20万円!それは嬉しいですね! ちなみに、介護保険が適用されるリフォームについて、厚生労働省は以下の内容のものと定めています。念のため確認しておいてください。 手すりの取付け 段差の解消 滑りの防止及び移動の円滑化等のための床又は通路面の材料の変更 引き戸等への扉の取替え 洋式便器等への便器の取替え その他前各号の住宅改修に付帯して必要となる住宅改修 引用元:「介護保険における住宅改修」(厚生労働省) 補助金が出る条件や申請方法などが決められています。介護リフォームをしたい場合は、ケアマネジャーさんに相談してみてくださいね。 介護に適した広さは6~8畳だが、狭い部屋でも介護ベッドは使える 物を減らすことで部屋を広く使えることも。断捨離も検討して pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: 1.1; } ...

2023/08/30

在宅介護 介護認定

介護認定の結果が遅い!認定前に介護サービスを利用できませんか?

介護認定の結果がわかるまで介護サービスを利用できませんか? 母親の介護認定の申請をしているのですが、結果が出るまでかなり時間がかかると言われました。でも、母が認知症ということがわかって、1日でも早く介護サービスを利用したいんです。 (小西さん・会社員・57歳) 暫定ケアプランを作ってもらえば、介護認定の結果が出る前に介護サービスを利用できますよ!介護保険は申請した日に遡って適用できますから、申請さえしてしまえば介護サービスを利用できます。ただ、想定よりも介護度が低くなってしまった場合、介護保険の利用上限額を超えた分は全額自己負担になるので、注意してください。 介護認定の結果が遅い!早く介護サービスを使うには? 先日、実家で一人暮らしをしている母が保護されたと警察から連絡がありました。様子がおかしいと思って検査をしたら、認知症ということがわかりました。これ以上、一人暮らしは難しいと思うのですが、同居は厳しい状況です。かかりつけ医に勧められて、介護認定の申請をしたのですが、結果が出るまで2ヵ月かかると言われてしまって…。介護認定の結果が出る前に介護サービスを使うことってできないんですよね? 高齢化の影響で介護認定の結果が出るのが遅くなっている地域もあるんですよね…。介護認定の結果が出る前に介護サービスを利用できますよ!それには「暫定ケアプラン」が必要です。暫定ケアプランとは、仮のケアプランのこと。見込みの介護度に基づいてケアプランを作成することで、介護サービスを利用できるようになるんです。 そういえば、介護認定の結果が出る前に介護サービスを利用したら、費用は全額負担になってしまうんですか?介護保険が適用されないと、1割負担にはならないですよね? いえいえ、介護保険は申請時に遡って適用できるんです。なので、介護認定の結果が出る前に利用した介護サービスも、介護保険が適用されて費用を1割負担に抑えられるんです。 それならよかった!それで、その暫定ケアプランってどうやって作ってもらえば良いんでしょうか? 暫定ケアプランは、既に担当ケアマネジャーさんが付いている場合はケアマネジャーさんに。初めての介護認定の場合はお住まいの役所や地域包括支援センターに相談すれば、暫定ケアプランを作ってくれますよ。 介護認定の結果の前に介護サービス使う注意点 暫定ケアプランは、介護認定の結果が出る前に介護サービスを利用できるので便利な反面、注意が必要なこともあります。 注意が必要なこと?どんなことですか? 想定していた介護度よりも低い結果になった場合、一部が全額自己負担になる可能性があるということです。 全額自己負担ですか!?どういうことですか? 介護保険には利用限度額が決められており、所得に応じて自己負担割合も定められています。この利用限度額を超えた分は、全額自己負担になります。以下の表は、在宅介護サービスの利用限度額と自己負担分です。 利用限度額1割負担2割負担3割負担要支援15万320円5032円1万64円1万5096円要支援210万5310円1万531円2万1062円3万1593円要介護116万7650円1万6765円3万3530円5万295円要介護219万7050円1万9705円3万9410円5万9115円要介護327万480円2万7048円5万4096円8万1144円要介護430万9380円3万938円6万1876円9万2814円要介護536万2170円3万6217円7万2434円10万8651円 参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省) 例えば、要介護2と想定して暫定ケアプランを作ったのに、要介護1の結果になってしまった場合、要介護2の上限額まで介護サービスを利用していたら、超えた分の費用は全額自己負担になってしまいます。 えっ、じゃあこの表に基づいて考えると、3万円近く追加で支払わないといけないということですか? おっしゃる通りです。想定していた要介護度と異なる結果になることはあり得ますから、暫定ケアプランで介護サービスを利用するときには頭に入れておいてくださいね。 認定調査には同席しよう 介護認定の結果が思っていたよりも低くなってしまったらどうしよう…。予想よりも要介護度が低かったら、お金の負担が大幅に増えてしまう可能性があるんですよね? その通りです。なので、適切な要介護度と判定が出るために、認定調査には同席してください。 認定調査って、母の状態を調査するものでしたっけ。役所で説明を受けた記憶があります。私が遠方で暮らしているので同席するつもりはなかったのですが、同席は必要なんですか? はい。というのも、同席しないと実際の要介護度よりも低い結果になる可能性が高いんです。 えっ!そうなんですか!? 認定調査では、認定調査員がお母様の心身の状態を聞き取り調査をします。「今日は何日ですか?」「今日の朝食は何でしたか?」といった認知機能に関わる質問から、立ち上がりや歩行などの身体機能に関わる質問がされます。こういった質問に対して、理解している風に嘘をついたり、普段はできていないことも「できます」と回答してしまうご高齢者が多いんです。初対面の認定調査員に、できないことを話すことに抵抗があるのだと思います。 母も、話をよくわかっていないのにわかったふりをすることがあります。母も認定調査で見栄を張って「できます」と言ってしまうような気がします。 できないことを「できる」と言ってしまうと、要介護度は低く算出されてしまいます。となると、介護保険が適用される金額が減るので、古賀さんの負担が大きくなってしまうことに…。なので、古賀さんが同席して普段のお母様の様子や、介護をするうえで困っていることを伝えましょう。 そう考えると、確かに私が同席しないと適切な要介護度が出ないと思います。なんとか時間を作って認定調査には同席するようにします。 要介護度に納得いかないときは? もし、思っていたよりも要介護度が低い結果になってしまったらどうしたら良いんでしょう?介護サービスがあまり使えないのは本当に困るのですが…。 介護認定の結果に納得がいかないときは、「審査請求(不服申立て)」と「区分変更」という2つの方法で、介護認定のやり直しができます。ただ、審査請求の方は、認定結果が再度出るまでに数ヵ月かかるので、ほとんどの人は区分変更をしていますね。 区分変更の手続きはどうすれば良いんですか? まずは、役所や地域包括支援センターで区分変更申請をしましょう。その後の流れは介護認定の流れと同じです。認定調査を再度おこない、その結果や専門家の意見を元に要介護度を判定します。 また同じように認定調査をするんですね。 やはり、この認定調査でしっかり実情を伝えることが大切です。また、合わせて大切なのが医師の意見書です。介護認定にも区分変更にも医師の意見書は必要です。特に要介護度に納得が行かずに区分変更をするときは、想定と違う結果になってしまった旨を医師に伝えましょう。意見書の内容を充実させて、実情に合わせた要介護度が出るように計らってくれるでしょう。 医師の意見書も要介護度の判断には大切なんですね。とりあえず、早く介護サービスが利用できるように、役所に相談してみます! 介護認定の結果が出る前に介護サービスの利用ができる 予想よりも低い介護度になった場合は全額自己負担になる可能性も 介護度に納得いかないときは、区分変更をするのもアリ pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: 1.1; } pre:before { content: '[sample]'; ...

2023/08/29

在宅介護 介護の基礎知識

親の面倒を見るのに疲れた…。父親の世話のために片道2時間の実家に通うのはもう無理!

父親の世話をするために、片道2時間かかる実家に週2回通っています。父はまだ介護が必要な状態ではないのですが、家事が一切できない人なので、私が掃除や洗濯、食事の準備をすべてしている状態です。 でも、父は「親の面倒を子どもが見るのは当たり前」と言って感謝の言葉もありません。むしろ、少しでも実家に着く時間が遅くなると怒鳴りつけるような人です。 私はフルタイムで働いていますし、自分の家のこともしないといけません。父の面倒を見るのに疲れてしまいました…。どうにかこの状況を変える方法はないでしょうか? (小西さん・会社員・57歳) お父様のお世話とご自宅の家事に仕事…。本当に大変ですよね。少しでも負担を減らすために、介護サービスを活用してみてはどうでしょうか?例えば、訪問介護なら掃除や洗濯、食事の支度をしてもらえます。他にも、デイサービスに通えば、食事や入浴サービスの提供を受けられますし、運動する機会を増やせるでしょう。無理をすると、介護離職や介護うつになってしまう可能性もあります。そうならないためにも、適度に力を抜いてくださいね。 親の面倒を見るのに疲れたら介護サービスを使おう 父親が家事がまったくできないので、週2回、片道2時間かけて実家に帰っています。母が生きていたころは、母に家のことを任せっぱなしだったせいで、掃除、洗濯、食事の支度もろくにできず、すべて私がやっているんです。私はフルタイムで働いていますし、自分の家のこともやらないといけません。まともに自分の時間も取れなくて、もう疲れました…。この状況を変える方法はありませんか? お父様のお世話とご自宅の家事とお仕事…。本当にお忙しいと思います。小西さんの負担を少しでも減らすために、介護サービスを活用するのはどうでしょうか? 介護サービスですか?でも、父は介護は必要ありませんよ。確かに最近、足元がふらついてきたり、自宅で転倒したことはありますが…。 実は、介護サービスは、直接体に触れる介助以外にも利用できるんです!例えば、以下の2つのサービスがお父様におすすめです。 訪問介護 デイサービス 訪問介護 訪問介護では、「生活支援」と「身体介護」の2つのサービスを提供しています。そのうち、お父様におすすめなのは生活支援サービスです。 具体的にはどんなサービスなんですか? 生活支援サービスは、掃除や洗濯、料理などをおこないます。買い物の代行もやってくれますし、小西さんが帰省される回数を減らせるのではないでしょうか? それは助かります!特に料理と買い物がネックになっていて、食事をレンジで温めるだけにしておいてくれると父も食べられると思いますし…。帰省する回数が、週2回から週1回になるだけでもだいぶ負担が減りますね。 デイサービス デイサービスの利用もおすすめです。デイサービスは、日中に介護施設に通ってサービスを受けるもの。食事や入浴、レクリエーションなどを提供してくれます。なかには介護度が高い人が多いデイサービスもありますが、運動やリハビリに力を入れている施設であれば、お元気な方も多いです。他のご利用者と交流する機会も作れますよ。 良いですね!父は実家にこもりきりでろくに外出もしないので、良い気分転換になりそうです。 おっしゃる通りです!お一人暮らしのご高齢者は運動不足やうつになりやすい傾向があります。デイサービスを活用して、出かける機会を作るのがおすすめです。それに、デイサービスの日の分の食事を準備しなくて良いですし、転倒の危険性のある入浴が介護職員の見守りがあるところでできるのが安心ですよね。 介護認定を受けよう 介護サービスを使うことをまったく考えていなかったので、盲点でした。介護サービスの知識がほとんどないのですが、どうやって利用すれば良いんでしょうか? 介護サービスを利用するには、まず介護認定を受ける必要があります。介護認定を受けると、介護の必要性を「要支援1」から「要介護5」の7段階で判定されます。その要介護度によって利用できる介護サービスの量や種類が決まります。まずは介護認定を受けるための申請をしましょう。お父様がお住まいの地域の役所などで申請ができますよ。 まずは役所ですね。わかりやすい場所で良かった。 申請をしたら、以下の流れで調査と判定がおこなわれます。 ここでポイントとなるのが、「訪問調査」。ケアマネジャーなどの認定調査員がご実家を訪問してお父様の心身の状態を調査します。できれば、この訪問調査には小西さんも同席してください。 都合がつけば同席しますが…。なぜ同席した方が良いんですか? お父様お一人で訪問調査を受けた場合、実際にはできなくて困っていることも「できます」と答えてしまって、要介護度がつかない可能性があるんです。要介護度がつかないと介護サービスは利用できませんから、介護サービスを使って小西さんの負担を減らすことができなくなってしまいます。 それは同席しないと!父のことなので、見栄を張って何でも「できる」と言ってしまいそうですし。でも、私が同席しても、何をすれば良いんでしょう? お父様が日常生活でできなくなっていることや、小西さんがお父様のお世話で大変な思いをしていることを率直に伝えましょう。お父様がいる前だと言いにくいと思うので、お父様がいないところで認定調査員に伝えると良いと思いますよ。 なるほど!そうすれば良いんですね。 訪問調査の後は、調査の結果をもとに一次判定がおこなわれ、二次判定が専門家によって実施されます。その後に認定結果が出るので、申請から結果が出るまではおおよそ1ヵ月程度かかります。 疲れたまま親の面倒を見続けるとどうなる? 介護サービスを利用したいですが、介護認定の手続きがあったり利用するまでもいろいろと大変なんですね。大変とはいえ、すぐに介護サービスを使わないといけない状態ではないので、しばらく様子見かな…。 無理をしていませんか?無理が続くと、小西さんの方が倒れてしまって小西さんの将来の生活にも影響しかねないので、無理はしないでくださいね。疲れたままご家族のお世話を続けていると、以下のような危険があるので心配なんです…。 介護離職 介護放棄 介護うつ 介護離職 ご家族の介護をする方のなかには、仕事を辞めてしまう人がいます。「介護に集中するため」というのは良いことですが、私は介護離職をおすすめしていません。 なぜですか?私は、今はフルタイムで働けていますが、父が本格的に介護が必要になったら、仕事の量を減らすか、仕事を辞めることも考えていました。 介護離職をおすすめしない理由はいくつかあります。まずは収入が減ること。介護に集中することで介護サービスを使う量が減り、介護の費用を減らせると思いますが、それ以上に収入が減ります。経済的な負担が大きくなるでしょう。また、いったん仕事を辞めてしまうと、介護が終わった後の再就職が難しくなる可能性があります。介護のために仕事のブランクが10年あった場合、年齢によっては再就職が難しくなるかもしれません。キャリアアップも難しくなることも考えられます。 そうか…。もし、今、退職して10年介護をしたら私は70歳近くになります。そうなると、再就職は難しいかもしれませんね…。 それに、仕事を辞めて介護に集中すると、精神的な負担も増えることがわかっています。次のグラフを見てください。 経済的負担が増えるのはわかります。が、精神的な負担も増えていますね。仕事との両立をしなくて良い分、精神的な負担が減りそうに思えますが…。 実は、仕事を辞めると生活が”介護一色”になります。常に介護のことを考えていたり、介護の対象である親御さんなどと一緒の時間が増えて、ストレスに感じることが多くなるようです。仕事を辞めると、時間に余裕ができても息抜きができなくなってしまうのかもしれません。 確かに…。もし、仕事を辞めて父と一緒にいる時間が増えたら、時間ができても息が詰まるかもしれません。 介護放棄 介護放棄とは、介護をすべて投げ出してしまうことです。「ネグレクト」とも呼ばれます。親御さんなどが介護が必要な状態と知りながら放置することを指します。この介護放棄は、罪に問われる可能性もあります。というのも、子どもやきょうだい、配偶者などの家族には、扶養義務があると民法で定められています。ちなみに、以下の人に扶養義務があります。 つまり、この範囲の人が介護を放棄したら、罪に問われるかもしれないということですね。 おっしゃる通りです。ただ、扶養義務とは必ずしも直接的に介護をしないといけないものではありません。忙しかったり、身体的な理由から直接の介護ができない場合は、経済的な支援だけでも良いとされています。お父様の生活を支援するのは、何も家事を代わりにすることだけではありません。お金の援助をしたり、介護サービスの手続きをすることも支援につながりますから、小西さんご自身の負担が少なくて済む方法を選んでくださいね。 介護うつ 介護うつは、介護が原因でうつになってしまうことです。在宅介護というのは、介護をするご家族の心と体の負担が大きくなりがちです。大きすぎる負担が続いた結果、何も手につかない無気力状態になってしまうこともあるんです。 最近、ニュースでも介護が大変で追い詰められて虐待してしまう話を聞きますよね…。 はい。介護は一時的なものではなく、長期に渡ることが多いです。負担がかかり続けてしまうと、心を壊してしまうんですね。加えて、介護のせいで介護をする人が体を壊してしまうことも…。「親御さんを優先してご自分の体調を後回しにした結果、病気に気が付かずに倒れてしまう」ということも珍しくありません。 確かに。介護が本格的に始まったら、病院に行く時間もなさそうですし…。 介護をする人が倒れてしまったら、介護が必要な親御さんは生活ができなくなってしまいます。親御さんの暮らしが立ち行かなくなり、最悪の場合、亡くなってしまうケースも…。まだお父様は、本格的な介護が必要な状況ではないとは思います。ですが、今のうちから介護サービスを積極的に活用して「楽な介護」をしていきましょう! 親の面倒を見るのに疲れたら介護サービスを活用して! 介護サービスを使うために介護認定を受けよう そのままだと介護離職・介護うつなどになる可能性も pre { margin: 40px 0; background: #333; padding: 20px; color: white; overflow: scroll; line-height: 1.1; } ...

2023/08/28

認知症 在宅介護

認知症の親に言ってはいけない言葉はありますか?代わりにどんな言葉をかければ良いですか?

先日、認知症の親御さんを介護している友人に、「認知症の人に言ってはいけない言葉」があると聞きました。具体的には、どんな言葉を言ってはいけないんでしょうか? 私も認知症の母の介護をしており、このところ急に症状が悪化しているような気がしています。汚れたパッドが部屋に投げ捨てられていたり、着替えを手伝おうとすると大声で叫んで暴れるようにもなってしまいました…。 言ってはいけない言葉を使うと、どうなってしまうんですか? (松原さん・自営業・65歳) 認知症の人を否定したり、急かしたり、責めるような言葉はNGです。というのも、こうした言葉によって、不安が強くなってストレスを感じ、認知症が進行してしまうことがあるからです。なので、食事をしたのに「ご飯を食べていない」と言われたときは、「今作っているから待っていてね」と言ったり、「壁に虫が這っている」と幻覚を見ている様子があれば、「追い払っておいたよ」と声掛けをしましょう。認知症の人の言葉が現実と異なっていても、それを指摘せずに、話を合わせることが大切です。 認知症の人に言ってはいけない言葉がある? 認知症の親御さんの介護をしている友人から「認知症の人に言ってはいけない言葉」があると聞きました。私も認知症の母を介護しているので気になっていて。どんな言葉を言ってはいけないんでしょうか? 認知症の方が不安になってしまうような言葉は、言ってはいけません。具体的には以下のような言葉です。 否定する言葉 脅かす言葉 急かす言葉 責める言葉 できることを奪う言葉 否定する言葉 認知症の人自身や、その人の言葉を否定する言葉はNGです。例えば、以下のような言葉です。 (「仕事に行く」と言われて)「もう仕事は辞めたでしょ」 (食事後に「ごはんを食べていない」と言われて)「さっき食べたばかりでしょ」 (虫がいないのに「虫がいる」と言われて)「虫なんてどこにもいないよ」​ (「家に帰る」と言われて)「ここが家でしょ」 認知症になると直近の記憶を忘れてしまいやすくなるので、食事を摂ったことを忘れてしまうことがあります。そのため「まだご飯を食べていない」と言うこともあります。それに対して、「さっき食べたでしょ」と否定してしまうと混乱させてしまうことがあります。 なぜでしょうか?実際には、ご飯を食べているんですよね? 認知症の方にとっては、「ご飯を食べていない」のが事実です。認知症による物忘れの場合、「さっき食べたでしょ」と伝えても思い出せないことが多いんです。 だから、事実を言っても不安を感じるだけになってしまうんですね。 脅かす言葉 (お風呂に入らなくて)「頭がかゆくなっても知らないよ」 (食事を拒否されて)「あとでお腹減っても食べ物ないからね」 これらの言葉は、認知症の人に介護を拒否されたときに言ってしまいがちな言葉です。介護をしていると忙しいので、どうしてもいらだってしまいます。そのうえ、介護を拒否されて家事などが上手く進まないと、脅かすような言葉を使って、思い通りに動いてもらおうとしてしまうこともあるでしょう。ただ、こうした言葉は認知症の人にとって大きなストレスになりかねないので、使ってはいけない言葉なんです。 急かす言葉 在宅介護をしていると、忙しくて以下のような言葉を使ってしまっているかもしれません。 「早くして」​ 「いつまでやっているの?」​​​​ 「まだ?」 加齢によって身体機能が低下して体が思うように動かせなくなったり、認知機能の低下によってより動作に時間がかかるようになります。着替えをしたり、食事をしたり、靴を履いたり…。これまで当たり前にできていたことに、時間がかかっていると、思わず「早くして」と言ってしまうこともあるかもしれません。 そうなんです!何をするにも時間がかかるようになってしまって。特に朝はぐずぐずしてなかなか着替えないので、「早くして」と言ってしまいます。私が手伝おうとしても怒鳴って拒否されるし…。私が言ってはいけない言葉を言っていたからかもしれませんね。 そうだったんですね…。忙しくてなかなか難しいかもしれませんが、時間がかかることを予想して余裕を持って行動するのが良いかもしれません。 責める言葉 責めるような言葉も、認知症の人に言ってはいけない言葉のひとつです。例えば、以下のような言葉です。 「そんなこともできないの?」 「さっきも言ったよね」 「同じ話を何度もしないで」 あ…。これも心当たりがあります。病院の予約日時や、道具の使い方を教えても母が覚えていないので、「さっきも言ったよね」と責めてしまうことがよくあります。 認知症になるとできないことが増えていきます。それを認知症の方ご本人も自覚していることが多いんです。なのに、そのうえ、ご家族から責められると自信がなくなってしまいますよね。責めるような言葉は、プライドや自尊心を傷つけてしまうのでNGなんです。 できることを奪う言葉 「できることを奪う言葉」ってどんな言葉ですか? 具体的には、こんな言葉です。 「私がやるから手を出さないで」 「危ないから触らないで」 認知症になってできないことが増えていくご家族を見ていると、心配する気持ちから「やらないで」と代わりにやってしまいがちです。なかには本当に危険なこともあるかもしれませんが、ご本人ができることは見守って自分の手でやってもらうことが大切です。 うーん、でも私がやった方が早いことも多いんですよ。母に任せているとやたら時間がかかって。 そういうこともありますよね。でも、そうしてお母様のできることを奪ってしまうと、さらにできることが減ってしまう可能性があるんです。時間がかかっても、ご自分の手でできることであれば、できるだけお母様に任せましょう。 かける言葉によって認知症が悪化する!? そういえば、「認知症の人に言ってはいけない言葉」を言い続けていると、どうなってしまうんですか? 認知症の症状が進行してしまう可能性があります。 えぇ!?そうなんですか!なぜですか? 認知症の人に言ってはいけない言葉は、認知症の人にとってストレスを感じる言葉だからです。ストレスを感じると、脳の細胞が死滅することがわかっています。つまり、脳の機能低下が加速するというわけです。脳の機能低下が進むと、認知症の状態が進行し、症状も悪化してしまいます。 えぇ…そうなんですね。このところ、母の認知症がひどくなっているように感じていましたが、それは私が認知症の人に言ってはいけない言葉を言っていたからかもしれません…。 認知症の人にはどんな言葉をかければ良い? 母に、認知症の人に言ってはいけない言葉をたくさん言ってしまっていたのがよくわかりました。言わないようにしたいのですが、だからといって、どんな言葉をかければ良いのかわからなくて…。 認知症の方への受け答えは難しいですよね。なので、認知症の方によくある発言と、それに対する返答をリストアップしてみました。 「ご飯を食べていない」には「今作っているところだよ」 「財布を盗られた!」には「一緒に探そう」 「家に帰りたい」には「車を呼んでるからお茶を飲んで待っていて」 「虫が這っている!」には「追い払っておいたよ」 「今作っているところだよ」 認知症の症状のひとつに、直前の出来事を覚えられないことがあります。そのため、食事を食べたばかりなのに「ご飯を食べていない!」と言うことがあるんですね。 聞いたことがあります。うちの母はそういったことはありませんが…。 そのときに、「さっき食べたでしょ!」と返すのはNG。「なんでご飯を食べさせてくれないの!」とさらに興奮させてしまう可能性があります。そこで、「今、食事を作っているところだから待っていてね」と声をかけたり、軽食を渡すのがおすすめです。時間を空けて、「ご飯を食べていない!」と興奮した気持ちが落ち着くのを待ちましょう。認知症の方が食事をしたことを忘れてしまうときの対処法については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 「一緒に探そう」 認知症の方の訴えでよくあるのが、「財布が盗まれた!」というものです。特に一番近くにいるご家族が犯人にされてしまうケースが多いんです。そのため、「盗んでないよ!」「自分でどこかにしまったんでしょ!」と言うのは良くありません。認知症の方の頭の中では、盗まれたと思い込んでいるからです。そこで、「まずは家の中を一緒に探そう」と声をかけましょう。また、一緒に探すうちに財布が見つかっても、ご家族の手から渡すのもNGです。 どうしてですか? ご家族から財布を渡すと、「盗んだ犯人だから財布の場所を知ってるんだ」と思い込みが強くなってしまうことがあるからです。「やっぱりあなたが犯人なんでしょ!」と言われてしまうかもしれません。なので、財布の場所がわかったら、ご本人が見つけられるようにそれとなく誘導するのがベターです。「物盗られ妄想」については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 「車を呼んでいるからお茶を飲んで待っていて」 自宅にいるのに「家に帰りたい」と言われたときは、「ここが家でしょ」と否定するのではなく、「車を呼んでいるからお茶を飲んで待っていてね」と、認知症の人の世界観に合わせた返事をしましょう。もちろん、実際に車を呼んでいるわけではありませんが、「車を呼んでいるから」と言われれば認知症の人の気持ちが落ち着きます。不安な気持ちから「家に帰りたい」と言っているので、不安な気持ちを取り除くことが大切なんです。 事実を伝えるんじゃなくて、気持ちが落ち着くような言葉をかけるんですね。 認知症の方が「家に帰りたい」と言うときの対応については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてください。 「追い払っておいたよ」 認知症の影響で、幻視や幻聴が起こることがあります。壁紙の模様が虫に見えたり、「庭に知らない人が立っている」といった現実にはないものを見る症状です。そこで「虫なんてどこにもいないよ」などと返すのはおすすめできません。認知症の人にとって、「虫」や「知らない人」も存在していますから、それを否定するとさらに不安になってしまいます。 実際には見えないものなのに、どうやって対応したら良いんですか? 否定せず、世界観を合わせます。例えば「追い払っておいたよ」と言えば落ち着くかもしれません。それでも怖がっている様子があれば、「追い払っておくから向こうの部屋に行こうか」と場所を移動するのが良いでしょう。いずれにしても、幻視や幻聴の内容に合わせて対応すると、納得してくれることが多いですよ。幻視や幻聴の対応については、以前のご質問でも詳しくお話ししています。参考にしてくださいね。 認知症になってから、母が今までと大きく変わってしまって、思い通りにならないことが増えてきました。何をするにも時間がかかったり、トンチンカンなことを言いだしたり…。でも、それを責めるのはいけないことだったんですね。まずは母の感じていることを否定しないで話をするように心がけます。 否定・急かす・責める言葉などは認知症の人に言ってはいけない 言ってはいけない言葉をかけることで認知症が悪化することも 認知症の人の世界観に合わせた声掛けをしよう pre { margin: 40px 0; ...

2023/08/25

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介護付き有料老人ホームとは│提供されるサービス・費用・入居条件などを解説

介護付き有料老人ホームは、介護スタッフが24時間常駐している介護施設。介護サービスや身の回りの世話を受けられます。 この記事では、介護付き有料老人ホームの種類及び入居のための条件や必要な費用、サービス内容などを詳しく説明しています。 https://youtu.be/oK_me_rA0MY 介護付き有料老人ホームの特徴 介護付き有料老人ホームとは、有料老人ホームのうち、都道府県または市町村から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。24時間介護スタッフが常駐し、介護や生活支援などは施設の職員により提供されます。 主に民間企業が運営しているため、サービスの内容や料金は施設ごとに異なります。また、入居基準も施設により異なり、自立している方から介護が必要な方まで幅広く受け入れている施設も。選択肢が幅広いため、自分に合った施設を選ぶことができます。 看取りまで対応している施設も多数あり、「終の棲家(ついのすみか)」を選ぶうえでも選択肢のひとつとなります。 全体の概要をまとめるとこのようになります。 費用相場 入居時費用 0~数千万円 月額利用料 15~30万円 入居条件 要介護度 自立~要介護5※1 認知症 対応可 看取り 対応可 入居のしやすさ ◯ ※施設の種類によって異なります。 特定施設入居者生活介護とは 特定施設入居者生活介護は、厚生労働省の定めた基準を満たす施設で受けられる介護保険サービスです。ケアマネジャーが作成したケアプランに基づき提供される食事や入浴・排泄など介助のほか、生活支援、機能回復のためのリハビリなどもおこなわれます。指定を受けてこのサービスを提供する施設は、一般的に「特定施設」の略称で呼ばれています。 介護付き有料老人ホームの種類と入居基準 介護付き有料老人ホームには「介護専用型」「混合型」「健康型」の3種類があり、それぞれ入居条件が異なります。 介護度 ...

2021/11/10

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グループホームとは|入居条件や費用、入居時に気をつけたいポイントを解説

認知症の方の介護は大変です。「そろそろ施設への入居を検討しよう」と思っても、認知症の症状があると、入居を断られてしまうのではと心配もあるでしょう。 グループホームは認知症高齢者のための介護施設です。住み慣れた地域で暮らし続けられる地域密着型サービスであり、正式な名称を「認知症対応型共同生活介護」といいます。 こちらの記事では、グループホームについて解説します。また、グループホームで受けられるサービスや費用、施設選びのポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。 https://youtu.be/EofVO7MRRDM この記事を読めばこれがわかる! グループホームの詳細がわかる! グループホームを選ぶ際のポイントがわかる! グループホームへ入居する際の注意点がわかる! グループホームとは グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。専門知識と技術をもったスタッフの援助を受けて、要支援以上の認知症高齢者が少人数で共同生活をおくります。 「ユニット」といわれる少人数のグループで生活し、入居者はそれぞれ家事などの役割分担をします。 調理や食事の支度、掃除や洗濯など入居者の能力に合った家事をして自分らしく共同生活を過ごすところが、ほかの介護施設や老人ホームとは異なるポイントです。 グループホームの目的は、認知症高齢者が安定した生活を現実化させること。そのために、ほかの利用者やスタッフと協力して生活に必要な家事を行うことで認知症症状の進行を防ぎ、できるだけ能力を維持するのです。 グループホームは少人数「ユニット」で生活 グループホームでは「ユニット」と呼ばれるグループごとに区切って共同生活を送るのが決まり。1ユニットにつき5人から9人、原則1施設につき原則2ユニットまでと制限されています。 少人数に制限する理由は、心穏やかに安定して過ごしやすい環境を整えるため。環境変化が少なく、同じグループメンバーで協力して共同生活することは、認知症の進行を防ぐことに繋がります。 認知症の方にとって新しく出会う人、新しく覚えることが難しいので、入居者やスタッフの入れ替わりが頻繁にある施設では認知症の高齢者は心が落ち着かず、ストレスを感じ生活しづらくなってしまいます。その結果、認知症症状を悪化させるだけでなく、共同生活を送る上でトラブルを起こすきっかけとなります。 慣れ親しんだ場所を離れて新しい生活をするのは認知症の方には特に心配が尽きないもの。その心配を軽減するため、より家庭にできるだけ近づけ、安心して暮らせるようにしています。 グループホームの入居条件 グループホームに入居できるのは医師から「認知症」と診断を受けている方で、一定の条件にあてはまる方に限ります。 原則65歳以上でかつ要支援2以上の認定を受けている方 医師から認知症の診断を受けている方 心身とも集団生活を送ることに支障のない方 グループホームと同一の市町村に住民票がある方 「心身とも集団生活を送ることに支障のない」という判断基準は施設によって異なります。入居を希望している施設がある場合には、施設のスタッフに相談しましょう。 また、生活保護を受けていてもグループホームに入ることは基本的には可能です。しかし、「生活保護法の指定を受けている施設に限られる」などの条件があるので、実際の入居に関しては、行政の生活支援担当窓口やケースワーカーに相談してみましょう。 グループホームから退去を迫られることもある!? グループホームを追い出される、つまり「強制退去」となることは可能性としてゼロではありません。一般的に、施設側は入居者がグループホームでの生活を続けられるように最大限の努力をします。それでも難しい場合は、本人やその家族へ退去を勧告します。「暴言や暴力などの迷惑行為が著しい場合」「継続的に医療が必要になった場合」「自傷行為が頻発する場合」etc。共同生活が難しくなった場合には追い出されてしまうこともあるのです グループホームで受けられるサービス グループホームで受けられるサービスは主に以下です。 生活支援 認知症ケア 医療体制 看取り それぞれ詳しく見てみましょう。 生活支援 グループホームでは以下の生活面でのサービスを受けられます。 食事提供 :◎ 生活相談 :◎ 食事介助 :◎ 排泄介助 :◎ 入浴介助 :◎ 掃除・洗濯:◯ リハビリ :△ レクリエーション:◎ 認知症を発症すると何もできなくなってしまうわけではなく、日常生活を送るだけなら問題がないことも多いです。 グループホームには認知症ケア専門スタッフが常駐しています。認知症進行を遅らせる目的で、入居者が専門スタッフの支援を受けながら入居者の能力(残存能力)に合った家事を役割分担して自分たち自身でおこないます。 食事の準備として買い出しから調理、配膳、後片付けまで、そして洗濯をして干すといった作業や掃除も、スタッフの介助を受けながら日常生活を送ります。 グループホームでは、入居者の能力(残存能力)に合った家事を役割分担して自分たち自身でおこなうことになります。 例えば、食事の準備として買い出しから調理、配膳、後片付けまで。また、そして洗濯をして、干すまで…など。そのために必要な支援を、認知症ケアに長けた専門スタッフから受けられるのが、グループホームの大きな特徴です。 グループホームは日中の時間帯は要介護入居者3人に対して1人以上のスタッフを配置する「3:1」基準が設けられています。施設規模によっては、付き添いやリハビリなどの個別対応が難しいので、入居を検討する際は施設に確認しましょう。 認知症ケア 施設内レクリエーションやリハビリのほかに、地域の方との交流を図るための活動の一環として地域のお祭りに参加や協力をしたり、地域の人と一緒に公園掃除などの活動を行う施設も増えてきました。 グループホームとして積み上げてきた認知症ケアの経験という強みを活かし、地域に向けた情報発信などのさまざまな活動が広がっています。 地域の方と交流する「認知症サロン」などを開催して施設外に居場所を作ったり、啓発活動として認知症サポーター養成講座を開いたりするなど、地域の人々との交流に重きを置くところが増えています。 顔の見える関係づくりをすることで地域の人に認知症について理解を深めてもらったり、在宅介護の認知症高齢者への相談支援につなげたり。 こうした活動は認知症ケアの拠点であるグループホームの社会的な価値の向上や、人とのつながりを通じて入所者の暮らしを豊かにする効果が期待できます。 医療体制 グループホームの入居条件として「身体症状が安定し集団生活を送ることに支障のない方」と定義しているように、施設に認知症高齢者専門スタッフは常駐していますが、看護師が常駐していたり、医療体制が整っているところはまだまだ少ないです。 しかし近年、高齢化が進む社会の中で、グループホームの入居者の状況も変わってきています。 現在は看護師の配置が義務付けられていないので、医療ケアが必要な人は入居が厳しい可能性があります。訪問看護ステーションと密に連携したり、提携した医療機関が施設が増えたりもしているので、医療体制について気になることがあれば、施設に直接問い合わせてみましょう。 看取り 超高齢社会でグループホームの入所者も高齢化が進み、「看取りサービス」の需要が増えてきました。 すべてのグループホームで看取りサービス対応しているわけではないので、体制が整っていないグループホームの多くは、医療ケアが必要な場合、提携医療施設や介護施設へ移ってもらう方針を採っています。 介護・医療体制の充実度は施設によってさまざまです。介護保険法の改正が2009年に行われ、看取りサービスに対応できるグループホームには「看取り介護加算」として介護サービスの追加料金を受け取れるようになりました。 看取りサービスに対応しているグループホームは昨今の状況を受け増加傾向にあります。パンフレットに「看取り介護加算」の金額が表記されているかがひとつの手がかりになります。 グループホームの設備 グループホームは一見、普通の民家のようで、家庭に近い雰囲気が特徴ですが、立地にも施設基準が設けられています。 施設内設備としては、ユニットごとに食堂、キッチン、共同リビング、トイレ、洗面設備、浴室、スプリンクラーなどの消防設備など入居者に必要な設備があり、異なるユニットとの共有は認められていません。 入居者の方がリラックスして生活できるように、一居室あたりの最低面積基準も設けられています。このようにグループホーム設立にあたっては一定の基準をクリアする必要があります。 立地 病院や入居型施設の敷地外に位置している利用者の家族や地域住民と交流ができる場所にある 定員 定員は5人以上9人以下1つの事業所に2つの共同生活住居を設けることもできる(ユニットは2つまで) 居室 1居室の定員は原則1人面積は収納設備等を除いて7.43㎡(約4.5帖)以上 共有設備 居室に近接して相互交流ができるリビングや食堂などの設備を設けること台所、トイレ、洗面、浴室は9名を上限とする生活単位(ユニット)毎に区分して配置 グループホームの費用 グループホーム入居を検討する際に必要なのが初期費用と月額費用です。 ここからは、グループホームの入居に必要な費用と、「初期費用」「月額費用」それぞれの内容について詳しく解説していきます。 ...

2021/11/15

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2021/10/28

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