母が骨折して入院している間に寝たきりになってしまいました。入院前は何とか歩いていたものの、今はほとんど歩けません。それに、おむつ交換やお風呂の介助も必要です。
母は「早く家に帰りたい」と言っているので、自宅で介護したいとは考えているのですが、このような状態で在宅介護はできるのでしょうか?
うーん…。正直なところ、寝たきりの状態の在宅介護はおすすめはしませんが、「絶対にできない」とも言えませんね。
在宅介護サービスを積極的に活用しながらであれば、ご自宅での生活は可能ではあると思います。が、ご家族の介護の負担が大きくなる可能性は高いです。
そうですよね…。入院前はデイサービスと訪問介護を利用していました。たぶん、デイサービスはもう通えないと思うのですが、どんな介護サービスを利用すれば良いんでしょうか?
そうですね…。寝たきりの人も利用しやすい在宅介護サービスというと、以下のようなものがあります。もちろん、これ以外のサービスが全く利用できないというわけではありませんよ。
訪問介護は、訪問ヘルパーさんが家に来てくれて身の回りの世話や介助をしてくれるサービスです。お母様が利用していたので、よくご存知ですよね。
そうですね。入院前は週2回、来てもらっていました。
今後はもっと回数を増やしても良いかもしれません。おむつ交換が必要となると、介護するご家族の負担が一気に増えますから。おむつ交換は腰をかがめないといけないので、身体的な負担が大きい介助です。なので、介護のプロにお願いするのが良いでしょう。
それはそうですね。おむつ交換なんて、子どもが赤ん坊のとき以来ですので、上手くできるか不安ですし…。
夜間対応型訪問介護とは、夜間の時間に限定した訪問介護が受けられる介護保険サービスのことです。
高齢化が進み、老老介護が増えたことなどから夜間の介護ニーズが高まり、2006年から始まった地域密着型サービスです。介護スタッフが定期的に訪問する「定期巡回訪問サービス」と、利用者から通報を受けて都度訪問する「随時対応サービス」があります。
あと、ぜひ活用していただきたいのが訪問入浴サービスです。訪問入浴では、横になったまま入浴できる大きな浴槽を自宅に運び込んで入浴介助をおこないます。家庭のお風呂では寝たきりの人がお湯に浸かるのはまずできませんから、お母様も喜ばれると思いますよ。
訪問入浴とは、看護師1名を含めた2〜3名の介護スタッフが入浴のサポートをおこなってくれる介護サービスのことです。
要介護度が高く自力では入浴が困難な方や、家族の手だけでは入浴が難しい場合などさまざまなケースで利用されています。
訪問入浴サービスは専門の浴槽が使われるため寝たきりの方でも安心して利用できます。さらに看護師による入浴前後の健康チェックがおこなわれるなど、入浴サポートだけではないサービスがあるのも魅力です。
へぇ!そういうサービスもあるんですね。今の母の状態では、家でお風呂に入れるのはとても危険ですし、助かりますね。
また、今後、リハビリをして再び歩けるようになりたいときには訪問リハビリも有効です。専門家が自宅で一対一でリハビリをしてくれますよ。
訪問リハビリテーションとは、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士が自宅を訪問してリハビリテーションをおこなうサービスのことです。
リハビリテーション施設や病院への通院が困難な方や、退院後の日常生活がまだ不安な方などが主に利用します。訪問リハビリテーションは主治医の許可が必要です。許可がないと利用できないので注意しましょう。
また訪問リハビリテーションでは、リハビリをするだけではなく、自宅環境の改善提案、介護している家族へのアドバイスなどもしてくれます。
利用者の身体機能向上や通所の負担軽減に加え、家族を含めた心理的サポートをおこなってくれるサービスとして人気です。
このようにいくつかの介護サービスを組み合わせながら、寝たきりでも自宅での生活を続けている人は多くいます。まずは、ケアマネジャーさんと相談しながら今後の介護について考えてみてくださいね。
その他の在宅介護サービスについては以下のご質問でもお答えしているので、ぜひ参考にしてみてください。
在宅介護サービスを上手く活用すれば、寝たきりの状態でもご自宅で生活できると思います。ただ、やはり寝たきりの人の介護は注意するべき点が多くありますので、ポイントを以下にまとめました。
「床ずれ」は聞いたことがありますね。皮膚がかぶれてしまうんでしたっけ?
始めのうちはかぶれたように赤くなるだけですが、進行すると皮膚の一部が壊死して剥がれ、重度の場合は骨まで皮膚がえぐれることもあります。
これは、皮膚の同じ場所に圧力がかかり続けることで起きるので、2時間に1回程度、体の向きを変える体位交換が必要です。また、栄養をしっかり摂ることで皮膚の弾力が保たれて、床ずれを予防できます。
床ずれってそんなに大変なんですね…。そんな頻繁に体位交換なんてできるかな…。
また、寝たきりで体を動かさないことで起こる「廃用症候群」にも要注意です。
「廃用症候群」は、初めて聞きました。
廃用症候群は、体を過度に安静にしていることで起こるさまざまな体調不良の総称です。例えば、筋肉がやせ衰えたり、関節の動きが悪くなったりすることに加えて、うつ病なども含まれています。
寝たきりになると、心も体も刺激や動きがなくなるので、心身ともに衰えてしまうんですね。
廃用症候群とは、活動量の減少によって身体機能が衰えることを指します。病気や怪我などで安静にする時間が長かったり、運動量が減ったりすることをきっかけに、引き起こされる疾患です。
特に高齢者は、もともと筋力や体力が低下しているため、廃用症候群になりやすい傾向があります。例えば、安静な状態で1週間過ごすと、約10〜15%の筋力が低下すると言われており、廃用症候群の回復に長期間を要する可能性もあります。
長期的な安静状態をなるべく避け、積極的に身体を動かすことで日頃から廃用症候群の予防をすることが重要です。
体だけでなく、心の調子も悪くなるんですね…。
また、寝たきりでいると座る筋力が衰えてしまうので、食事のときに座位が保てなくなります。すると、姿勢が悪くなって食べ物を誤嚥することも。もちろん、加齢によって飲み込む力も衰えているので、さらに誤嚥しやすい状態です。
ご高齢者で誤嚥が怖いのは、誤嚥性肺炎になるリスクが高いから。最悪の場合、命に関わることもあるので、食事にも注意が必要なんです。
母は、今のところ自分でごはんを食べられているみたいです。ただ、自宅では誤嚥しないように見守りが必要そうですね。
その通りですね。また、排泄介助については先ほども言いましたが、かなり負担が大きい介助です。介護する人の体の負担はもちろん、介護をされる人も精神的な負担も大きいケアです。
さらに、夜間におむつ交換が必要な場合は、夜中に起きなければいけませんから、それも介護の負担になるでしょう。
そうか、夜のおむつ交換もあるんですよね…。そこまで考えていませんでした…。
寝たきりの人の在宅介護について、ここまでさまざまなことをお伝えしました。始めのうちは、介護サービスを活用しながらご自宅で介護ができるかもしれません。でも、もしかしたら、介護の負担が大きくなって在宅介護に限界を感じるようになる可能性もありますよね。
そういうときは、一度、介護をお休みしましょう。
「介護を休む」?どういうことですか?
まずは、ショートステイを利用してみてください。ショートステイというのは、1泊から介護施設に宿泊できるサービスで、最大30日間利用できます。
介護に疲れて島田さんが倒れてしまっては大変ですから、ショートステイを使って介護から離れるんです。介護を休憩するためにサービスを利用することをレスパイトと呼びます。
レスパイトですか…。でも、介護を休んでしまって良いんでしょうか?
もちろんです!ショートステイを利用するご家庭の中には、定期的にショートステイの予約をしておいて旅行に行くケースも少なくないんです。
なので、在宅介護に疲れを感じたらショートステイを使って、島田さんの心身を休めてください。
また、休憩した後で良いので、介護施設への入居もあわせて検討することをおすすめします。
施設ですか。母が嫌がっていて…。
私は今まで多くの入居相談をお受けしていますが、そのほとんどが施設に入居することを望んでいませんでした。でも、独り身で介護をしてくれる人がいなかったり、家族では介護しきれなくなったりと、さまざまなご事情で入居する決断をしています。
なので、介護が辛くなってどうしようもなくなる前に、施設探しをしてください。特に、比較的安い特別養護老人ホーム(特養)はとても人気なので、入居するのに1~2年待つことも少なくありません。余裕のあるうちに探し始めることをおすすめします。
入居するのに1年も2年も待つんですか!
そうなんです。そうこうしているうちに負担が大きくなって、「介護うつ」になってしまうこともありえます。そうなる前に、介護のプロの手を頼ってくださいね。
介護による身体的負担・精神的負担が発展することで、“介護うつ”につながることがあります。
「在宅での介護にこだわって全て自分でやろうとする」「介護による悩みや愚痴を相談できない」「身体的負担や精神的負担を我慢する」など、全て自分でやろうとしてしまうと、知らないうちに精神的限界を迎えて、介護うつになってしまうケースが多々あります。
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