在宅介護にすると、さまざまな負担が増えます。そのため、すぐに施設を退去するのではなく、まずは今の施設での生活を改善してみましょう。
まずはお父様が日々の暮らしの中で不満点はないかを具体的に聞いてみてください。もし、その不満点が施設側で解決できないことなのであれば、別の介護施設に転居することも検討してみてください。そのうえで、在宅介護にするかどうか判断してみてくださいね。
半年ほど前から父が老人ホームに入居しています。でも、入居してから少し経ったころから父が段々元気がなくなってきて、施設に入れたことを後悔しています。
仕事のために自宅で介護する余裕がなくて介護施設に入れたのですが、やはり在宅介護の方がよかったんでしょうか?退去させて今からでも自宅で介護した方が良いのでしょうか?
正直に言うと、山内さんの状況で在宅介護することはおすすめできません。というのも、介護をする人が無理をする介護は長く続けられませんし、共倒れになってしまう可能性がとても高いからです。
なので今すぐ退去するのではなく、まずは今、入居している施設でお父様が楽しく生活できるように手を打ってみませんか?状況が改善されれば、山内さんの気持ちも軽くなると思いますよ。
なるほど…。「施設がダメなら家で」と自宅に呼び戻すことしか考えていませんでした。
それで、どんなことをすれば良いんでしょうか?
では、1つずつお話ししていきますね。
山内さんは、お父様のところに面会には行っていますか?
もちろんです!週に1回は面会しています。
面会のときに、父が段々元気がなくなっていることに気がついたんです。
そうだったんですね。
面会というのはご入居者にとってもご家族と顔を合わせる数少ない機会ですから、そのときのご家族の様子がご本人に影響を与えることもあります。
「家族の様子が影響を与える」?どういうことですか?
ご家族が不安そうだと、ご本人もそれを感じ取って不安になってしまいます。なので、あえて明るく笑顔で接することが大切です。やはり、「大丈夫?」など心配する言葉をかけてしまいがちですが過度に心配しすぎると、むしろ不安になってしまうんですよ。
なので、「良い施設だね」「職員さんが優しいね」などの前向きな声掛けをしてあげてください。ただ、不満を話すようだったらその理由を具体的に聞き出してくださいね。それが、状況を改善するカギになるかもしれませんから。
私はよく「大丈夫?」とか「身体辛くない?」といった言葉をかけていました。逆に不安にさせてしまうんですね…。
また、施設に入居することそのものがダメということではなく、ただ単に今の施設が合わないだけ、ということもあります。
ちなみに、私がこれまで入居相談をお受けしたお客様で入居した施設が合わなかった方は、「介護度が合わなかった」とおっしゃることが多いんです。
「介護度が合わない」ってどういうことですか?
確か、父が入っている施設は、要支援1以上の人であれば誰でも入れると入居時に聞いていますが…。
実際の入居者さんの介護度とズレてしまうと、何で「合わない」と感じるんですか?
介護度が高い人と低い人で求めるケアの内容が異なるためです。
具体的には、介護度が高い人は、食事介助や排泄介助、入浴介助などの身体介助を必要とします。対して、介護度が低い人の場合、身体介助よりもリハビリやレクリエーション、他のご入居者やスタッフさんとの交流を希望する傾向があるんです。
あぁ、なるほど。それはありますね。
父は要介護2で、人と話すことが好きな人なので、気が合う入居者さんとおしゃべりできる環境があると良いな、と思っていました。
もし、お父様が入居している施設の他のご入居者のほとんどが寝たきりの人だったら、それは難しいですよね。
このように、ご家族やご本人の希望とズレが出ることがあるので、他のご入居者の介護度というのは重要なんです。なので、もし介護度が合っていないようだったら、別の施設に転居することも考えてみてください。
山内さんは、お父様の様子を見ていろいろと心配になって施設に入居させたことに罪悪感を感じているかもしれません。それを1人で抱えるのは辛いので、その罪悪感を施設に相談してみるのはどうでしょうか?
え?父が入っている施設の人に、私のことを相談するんですか?
そうです!山内さんの辛い気持ちはお父様の介護に関わることですから、決して山内さんだけの問題ではありませんよ。
それに、元気がないことなど、お父様の状況についても施設にこまめに相談してください。施設に相談したらすぐに手を打ってくれることもありますから。
そうなんですね。施設の職員さんは気がついたうえで対応してもらっているものだと思っていたので、あえて相談していませんでした。
施設に相談したら案外すぐに解決した、なんてこともあります。お父様に変わった様子があったり、何か不安なことがあったらまずは施設に相談してみてくださいね。
父を老人ホームに入居させたことをずっと後悔していましたが、北野室長の話を聞いて、少し気持ちが楽になりました。
それはよかったです。実は、親御さんを介護施設に入居させたことを後悔する人は多いんです。
やはり、日本はまだ「親の介護は子どもがするもの」という考え方が残っています。でも、もうそういう時代ではありません!どんどん介護のプロに任せちゃってください!
そうですね。もっと施設に頼ってみようと思います。
ぜひ、そうしてください!
一昔前とは異なり、今は少子高齢社会で介護する人手が少なくなっています。介護するお子さんへの負担が大きくなっているんですね。そのうえ、共働きのご家庭が多くなっていますから、子世代が介護に割ける時間も減少しています。
そうした厳しい状況で、無理やり在宅介護を続けていると介護する側が倒れてしまう可能性もあるんです。
私は、もし父を自宅で介護をするのであれば仕事を辞めるつもりでいました。仕事をしながら介護するのは難しいと思ったので…。
介護離職はおすすめできません!
えっ、どうしてですか?仕事と介護の両立なんて無理ですよね?
「仕事を辞めて介護に集中すれば負担は減る」と考えがちですが、実は違うんです。次の図は、介護離職した後の介護に関わる負担についてのグラフです。

えっ!?「負担が増した」の方が多いんですか?
そうなんです。特に経済面での負担が大きくなっています。やはり、離職して収入が減ってしまうので経済的に苦しくなりますよね。
また、収入が減った分、介護サービスを利用する頻度を下げると、ご家族が介護をする割合が増えてしまってそれが精神的・肉体的な負担の増加につながることも考えられます。
つまり、離職しても介護の負担が減るわけではないんですね。
また、無理をして介護を続けると、「介護うつ」になってしまうこともあります。
「介護うつ」とは何ですか?
介護うつは、介護での疲れが溜まった状態が続くことで引き起こされるうつ状態です。
例えば、「楽しい」「嬉しい」といった気持ちを感じなくなり、趣味や好きなことを楽しめなくなっていると介護うつの初期症状が出ているかもしれません。
今は父の介護を直接しているわけではないので、そうしたことはないですが…。在宅介護をすると、介護うつになってしまうかもしれないんですね。
特に、介護離職をして介護に専念している人は、家族以外の交流がなくなってしまう傾向があります。そのため、介護の辛さを誰にも相談できずに抱え込んでしまい、精神的に追い詰められてしまうんです。
それに、毎日が”介護一色”になってしまうので、自分の趣味などに使う時間がなくなって気分転換もできないんですね。
自宅で介護をするために離職することで、こんなにいろいろとリスクがあるとは思いませんでした。これからの父の介護について、施設や家族とよく話し合ってみます。
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