その介護施設の医療体制では処置ができない状態になった場合に、退去を勧められることはあります。その他にも、利用料の滞納や他のご入居者に迷惑をかける行為があった場合にも退去勧告を受けることがあります。
もし、新しい施設を探すのであれば、今の身体状況で必要な医療行為をはっきりさせてから施設探しを始めましょう。また、退去時の入居金や退去日のトラブルが多いので、今の施設に事前に確認しておいてくださいね。
母が入院したことをきっかけにたん吸引が必要な状態になりました。それを入居中の老人ホームに伝えたところ、「たん吸引に対応できないから退去してほしい」と言われてしまいました。
今の施設には「最期まで暮らせる」と聞いて入居したのに、まさか退去勧告を受けるとは思いませんでした!老人ホームから退去を勧められることはあるんでしょうか?
うーん。…正直なところ、退去要件に当てはまっていれば退去を勧められることはあります。退去要件については、入居時の契約書や重要事項説明書に記載されていますよ。
具体的には、以下のような状況になると退去を勧められることがあります。
まあ、「利用料を滞納したとき」は、退去勧告を受けてもしょうがないですよね。賃貸住宅で家賃を払っていないのと同じことですもんね。
おっしゃる通りです。やはり老人ホームも、ご入居者が支払うお金で運営されていますから、費用の未払いが続くと退去勧告に至ります。
二番目の「暴力・暴言で他の入居者に迷惑をかけるとき」というのはどういう状態ですか?他の入居者に暴力を振るう人がいるんですか?
認知症の人の中には、感情を抑えられなくて攻撃的な言葉を使ったり、他の人に手を上げてしまうケースもあるんです。
暴力や暴言は認知症の症状のひとつではあるんですが、介護施設は共同生活の場ですから他のご入居者の迷惑になってしまうほどの状態だと退去勧告を受けることがあります。
へー、認知症だとそんな症状が出るんですね!
また、その次の「入院が長期間になるとき」については、施設側で一定の入院期間を退去要件として定めている場合もあります。退去勧告される入院期間については、契約時によく確認しておいた方が良いでしょう。
でも、うちの母の場合、入院期間はまだ2ヵ月ほどです。施設の退去要件には「3ヵ月以上」と定められているので、まだ退去勧告される時期ではないと思うんです。
長期入院が退去勧告を受けた理由ではないということでしょうか?
確か、施設に「たん吸引に対応できないから退去してほしい」と言われたとのことでしたよね?
母は誤嚥性肺炎で入院したのですが、入院中にさらに嚥下機能が落ちてしまって。食事の後や夜中にたん吸引が必要になってしまったんです。
そのことを施設に知らせたら「うちでは夜間のたん吸引はできません」と言われてしまいました。
そういうことであれば、退去を勧められたのは入院期間が長引いたことが理由ではなく、施設が夜間にたん吸引ができる体制ではないことが理由ではないでしょうか?
たん吸引は医療行為ですので、看護師などの医療従事者か研修を受けた一部の介護職員しか処置ができないんです。そのうえ、夜もたん吸引が必要となると看護師や研修を受けた介護職員が夜間帯も常駐している必要があります。今の施設では、そうした医療体制が整っていないのだと思います。
そうだったんですね…。母は今の施設で友達ができたようだったので、退院後も施設に戻りたかったんですが、別の施設を探すしかないということですね。
退去勧告を受けた理由はよくわかりました。次の施設はどうやって探したら良いんでしょうか?たん吸引が必要な状態で受け入れる介護施設はあるんですか?
もちろん、すべての施設が受け入れられるわけではありませんが、たん吸引が必要な状態でも入居できるところはありますよ!
お母様の場合、昼と夜にたん吸引が必要なので、看護師が24時間常駐している介護施設が良いでしょう。中でも民間施設の「住宅型有料老人ホーム」「介護付き有料老人ホーム」であれば、たん吸引に対応できる施設が多くありますよ。
へぇ、そうなんですね!住宅型有料老人ホームと介護付き有料老人ホームでも、すべての施設がたん吸引の対応をしてくれるわけではないんですよね?
おっしゃる通りです。夜間もたん吸引が必要な人の施設探しをする場合、「24時間看護師常駐」がポイントなんです。
ただ厳密には、住宅型有料老人ホームの場合、老人ホームに看護師が常駐しているわけではなく、別途、訪問看護の利用契約をしてサービスを受けます。対して、介護付き有料老人ホームは施設自体に看護師が常駐しています。
どちらにしても、夜間帯のたん吸引に対応できる医療体制が整っている施設を探しましょう。
次の施設の探し方をお伝えしたところで、今の施設をトラブル無く退去するためのポイントをお伝えしますね。
というのも、意外と介護施設を退去するときのトラブルが多いんですよ。
そうなんですね!どんなトラブルがあるんですか?
トラブルになりやすいのは、以下のようなポイントです。
もし、今の施設に入って間もない場合でしたら、入居金の返還があるかどうかを今の施設に確認してください。多くの施設では入居金の償却期間が設けられており、入居から数年以内でしたら償却していない分が返金されます。
また、契約から90日以内の場合、入居期間分の家賃や食費などを差し引いた入居金が返還されるんです。これを「クーリングオフ制度」と言います。
母は入居してから2年くらいです。ということはクーリングオフ制度は適用されませんが、入居金は戻ってくるかもしれないですよね?
はい、償却期間の間だったら返金があります。施設に事前に確認しておいてください。
また、居室の原状回復費用もトラブルになりやすいです。通常の使用以上の汚れ・キズがあった場合は、修繕費用が発生することがあります。また、特別に汚れていなくてもクリーニング費用が発生するケースもありますから、こちらも合わせて確認した方が良いですね。
最後の「退去の申し出のタイミング」というのはどういうことですか?退去の申し出に決まりがあるんですか?
そうなんです。賃貸住宅を引っ越しするときにも「退去の1ヵ月前に退去の申し出が必要」といったことを契約時に説明されると思います。それは老人ホームでも同じなんです。
退去の申し出の時期は施設ごとに異なりますが、「退去の1ヵ月前」が一般的。次の施設探しに集中していて、今の施設へ退去の申し出をするのを忘れていた、なんてことにならないようにしてくださいね。
老人ホームを転居するのは、意外といろんなことを確認しなくちゃいけないんですね。大変だなぁ。
はい、そうなんです。なので、退院日や退去日から逆算していつまでに何を済ませておくか、計画的に手続きや施設探しを進めてくださいね。
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