まずは在宅介護サービスを活用しながら介護ができる状況なのか、難しいのか、今のお母様やご家庭の状況を整理しましょう。
また、在宅介護や施設介護は、メリットとデメリットの両面がありますから、どちらもよく理解したうえで、お母様とご家族にとって良いと思える選択をしていただきたいです。
1ヵ月ほど前に母が自宅で転倒して足を骨折して入院しています。今はリハビリ病院に入院していますが、リハビリしても元のようには歩けず、歩行器が必要な状態になるそうです。
母は90歳を超えてもとても元気で、介護なんてまったく必要のなかった人なのに…。なんで急に足が悪くなってしまったんでしょう?
ご高齢になると、やはりどうしても身体機能が衰えやすいものです。ご自宅では家事をしたり身の回りの支度をすることで意識しなくても身体を動かしますが、病院だとそうもいきません。
中には、川崎さんのお母様のように入院前は元気だったのに、入院をきっかけに介護が必要な状態になってしまう ことも珍しくないんです。ベッドの上で横になって身体を動かさない時間が多くなるため、さまざまな機能が低下してしまうんですね。
えぇ!?そうなんですね。「さまざまな機能」というと、どんな機能が低下してしまうんでしょうか?
入院中のご高齢者の身体状況が変わってしまうケースとして、大きく分けると次の3つのパターンがあります。
「身体機能が低下する」は、うちの母と同じですよね?
おっしゃる通りです。「それまで元気に歩いていたのに、入院中に脚の筋力が低下して車いすが必要になった」というケースは意外と多いんです。
そうした運動機能の低下に加えて呼吸器や、消化器などの内蔵機能の低下 が起こることもあります。「入院中に食欲が低下したことで飲み込む力がなくなり、胃ろうを造設する必要ができた」ということもありますね。
内臓にまで影響が出てしまうんですね…。
その次の「精神状態」というと、何が変わってしまうんでしょうか?
ご高齢者に多いのは認知症です。入院して大きく環境が変わったことのストレスなどで認知機能の低下 が急激に進んでしまうことがあるんです。
えっ!?入院して認知症になってしまうんですか?
認知症まではいかなくても、認知機能の低下が進んでしまうことがあります。やはり病院だとご自宅での生活よりも脳への刺激が少なくなりますから、認知機能が低下しやすい環境なんですね。
加えて、環境の変化によって食欲が低下することも。中には口から食事を摂れなくなって、お腹から栄養を流し込む胃ろうを造設するケース もあるんですよ。そうなると、医療的なケアが日常的に必要になります。
口から食事を食べられなくなることもあるんだ…。
胃ろうの他にも、「たん吸引」「褥瘡ケア」「インスリン注射」など、定期的に医療行為をおこなわないといけない状態にはさまざまなケースがあります。
もし、こうした医療行為が必要になったときは、医療的ケアができる体制を整えたうえで介護をしないといけないというわけですね。
できれば、退院後は在宅介護をしたいと考えています。母も自宅に戻りたいでしょうし…。でも、私は昼間働いていますから介護は難しいんですよね。
となると、やっぱり自宅での介護は諦めた方が良いんでしょうか?
いえいえ、まだ諦めるのは早いです!在宅介護サービスを活用しながらであれば、ご自宅での暮らしを続けられる可能性はありますよ!
ただ、在宅介護サービスを使っても介護しきれないことはあるでしょう。まずは、今のお母様とご家庭の状況を整理して、在宅介護サービスを使えば自宅で生活できるのか考えてみてください。
それで、「在宅介護は難しい」と感じたのであれば、介護施設に入居することを検討してみましょう。
「在宅介護サービスを活用する」と言っても、これまで利用したことがないのでどんなものがあるのかわかりません。どんなサービスがあるんですか?
主な在宅介護サービスには、以下のようなものがあります。
お母様の状況を考えると、「訪問介護」「デイサービス」を利用してみると良いかもしれませんね。
訪問介護ってヘルパーさんが家に来てくれて、家事をしてくれるサービスでしたっけ?
その通りです!ヘルパーさんは家事だけでなく、排泄介助や入浴介助などの身体介助もしてくれます。 そのため、お母様のトイレ介助やお風呂の介助を頼むのも良いかもしれません。
また、デイサービスは、日帰りで介護施設を利用するサービス です。昼食や入浴介助、レクリエーションを提供してくれるので、川崎さんがお仕事の間、お母様にデイサービスで過ごしてもらうのはどうでしょうか?
デイサービスとは、施設に入居することなく、自宅から通所しリハビリテーションや介護サービスを受けることで、高齢者のQOL(クオリティ オブ ライフ)の向上を目指す施設です。
デイサービスを利用する場合は施設から車で自宅まで迎えにきてくれるので、歩行に自信がない方でも利用できます。
ただし、施設の送迎範囲が決まっているので、その範囲外の場合はその施設をその施設の利用はできません。基本的にデイサービスは地域住民のためのサービスという特徴があるからです。
デイサービスでは、介護職員や理学療法士、看護師などの専門スタッフがサービスを提供。決められた時間に高齢者の機能訓練や集団でのレクリエーションなどを担当します。
自宅にこもりがちになる高齢者にとっては、外部との交流が持てることも嬉しいポイントです。
それは良いですね!私がいない間にまた転倒してしまうのが怖いので、デイサービスに預けられるのは助かります。
昼間だけでも母を預けられる場所があるなら、在宅介護でも大丈夫かもしれません。母も慣れた家で暮らし続けたいでしょうから、在宅介護でがんばってみようかな…。
そうですね、やはり、在宅介護の大きなメリットのひとつは、ご自宅で生活できることだと思います。また、他にもこんなメリットがあるんですよ。
へぇ!こんなにメリットがあるんですね。母も「病院じゃなくて家で死にたい」なんて言うこともありますから、できるだけその希望は叶えてあげたいと思っています。
やはり、「最期は自宅で迎えたい」と考えるご高齢者は多いですね。ただ、もちろん在宅介護にもデメリットはあります。
在宅介護を選択する場合は、次のようなデメリットも理解しておいてくださいね。
うーん、やっぱり介護の負担は大きいですよね…。
どうしても、介護をするご家族の負担は大きくなりがちです。特に排泄介助や入浴介助などの、身体介助は介護する人の身体的負担が大きい です。その負担を他のご家族と分担したりしながら介護していけると良いですね。
施設介護サービスについてもよくわかりません。どんなサービスがあるんですか?
例えば、主な施設介護サービスには以下のようなものがあります。
このうち、「特別養護老人ホーム」「老人保健施設」は公的な介護施設です。料金が民間施設よりも安い のが特徴ですね。
特に、終身利用ができる特養はとても人気で、施設によっては入居するのに数年待つ可能性 も…。なので、退院後すぐに介護施設に入居したい場合は特養に入居するのは難しいでしょう。
えぇ!何年も待つこともあるんですね。安いのはうれしいですが、退院後すぐに入るとなると難しいのか…。
ですので、入居しやすい民間施設にしぼって施設探しをするのもアリですよ。上のリストで言うと、「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」が民間施設です。
どうしても公的施設と比べると費用が高くなる傾向があるのですが、公的施設よりも順番待ちをしている人が少ないので入居しやすい んです。早めに施設探しをしておけば、退院と同時に施設に入居もできるでしょう。
サービス付き高齢者向け住宅には「一般型」と「介護型」の2種類があります。「一般型」は、介護が必要になった場合、訪問介護やデイサービスなどの外部サービスを個別に契約をして利用し、比較的自由度の高い生活を送ることができます。
一方、「介護型」では、「介護スタッフが24時間常駐」「看護師の日中常駐」という人員配置義務が適用されているため、介護度が高い人も安心して生活することができます。
有料老人ホームには、主に2つの種類があります。
主に介護を必要とする方が多く生活する施設で、食事や入浴、排泄などの介護サービス、掃除や洗濯などの家事サービス、機能維持、体力向上のためのレクリエーションやリハビリ(機能訓練)といった多岐にわたる内容が、入居者の状態に合わせて提供されます。
住宅型有料老人ホームは、自立から要介護5まで幅広い身体状況の方が生活する施設です。食事の提供や掃除・洗濯といった家事サービス、健康管理サービスは提供されますが、入浴介助や食事介助などの介護・医療サービスの提供はありません。
それは良いですね!介護施設に入ってもらえば、介護に慣れたスタッフさんたちがお世話してくれるわけですし、そういう意味では家で過ごすよりも安心ですよね。
おっしゃる通りですね。もちろん、他にも介護施設に入居するメリットはいくつもあります。例えば、以下のようなメリットがありますよ。
そうか、施設ではイベントやレクリエーションをやるんですよね。その方が家にいて、ずっとテレビを見ているよりも楽しみがあって良いかなぁ。
…ちなみに、介護施設に入るデメリットもあるんですよね?どんなものでしょうか?
そうですね。介護施設に入居することにもデメリットはあります。例えば、以下のようなことです。
うーん。やっぱり介護施設って高いんですね…。
主な介護施設の料金の目安は、以下の通りです。
施設の種類 | 入居時費用 | 月額利用料 |
---|---|---|
特別養護老人ホーム(特養) | 0円 | 8~14万円 |
介護老人保健施設(老健) | 0円 | 7~14万円 |
介護付き有料老人ホーム | 0~数千万円 | 15~30万円 |
住宅型有料老人ホーム | 0~数千万円 | 11~25万円 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 0~数十万円 | 11~25万円 |
はい。やはり、在宅介護の費用よりも高くなることが多いですね。その分、施設側に介護をまるごとお願いできるわけですが…。
在宅介護をするにしても介護施設に入居するにしても、メリットやデメリットはあります。なので、その両面をよく理解したうえで在宅介護と施設介護のどちらにするか選択してくださいね。
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。