介護や仕事、家事などで忙しいとついイライラしてしまいますよね…。ただ、認知症の人の言葉を否定してしまうのはNGなんです。
同じ話を繰り返すときは言葉をオウム返ししたり、はじめに質問されたときと同じように答えることが効果的です。また、繰り返す話の中にご本人の不安や不満が隠されているときがあります。なので、その不安や不満を解決することで同じ話を繰り返すことが減るかもしれませんよ。
認知症の母が何度も同じ話を繰り返すので困っています。「今、何時?」「今日は何月何日?」と質問されるのはしょっちゅうのことですし、亡くなった父との思い出話も何十回と聞かされました。
なので、ついイライラしてしまって「うるさい!」「さっき答えたでしょ」と言い返してしまい、毎日のように口論になります。でも、いい加減、母の話に対応するのに疲れました…。
同じ話をされたときの良い対応法ってあるんでしょうか?
介護や仕事が忙しいとイライラしてしまいますよね…。ただ、認知症の人との接し方として、「さっき答えたでしょ」や「同じ話を何度も聞いたよ」と相手の言葉を否定するのはNGなんです。
えっ?なんでですか?
認知症の人の多くは、自分でできることが減っていることで不安を感じています。なのに、そのうえ自分の考えを否定されてしまうと、さらに不安が強くなってしまうんです。
認知症の人の中には、不安から自分を守るために大声で怒鳴り返したり、常に怒っている人もいます。また、自分の言葉を否定されるので心を閉ざしてしまい、信頼関係が壊れることもあるでしょう。
さらに、強い不安によるストレスから認知症が進行してしまう可能性まであるんです。
そうなんですか!?そういえば、最近、母の認知症が悪化しているような気がします…。
ですので、認知症の人には適切な対応をすることが大切です。例えば、お母様が同じ話をしたときに以下のような対応をしてみるのはどうでしょうか?
やっぱり、「初めて尋ねられたときと同じように答える」のが適切な対応なんですね。イライラしてしまうので、これまでできていなかったです…。
忙しいとなかなか難しいですよね…。
認知症の人は数時間前の出来事でも忘れてしまうことがあります。なので、ちょっと前に会話したことも忘れてしまうんですね。お母様のケースだと、「今日は何月何日?」と聞いたことを忘れてしまっているのかもしれません。
ですので、「今日は◯月◯日だよ」と、最初に答えたのと同じように答えることを意識してみましょう。
簡単なことなんですけど、心に余裕がないと難しそう。できるだけ、心がけてみます。
もっと気軽にできるのが、”オウム返し”をすることかもしれません。例えば、「昔、お父さんと映画に出かけたんだよ」と何度も話すのであれば、「お父さんと映画に出かけたんだね」とオウム返しをするんです。
言葉を繰り返すだけですが、「私の話をちゃんと聞いてくれている」と安心できるので、お母様の不安感も和らぐと思いますよ。
オウム返しですか…。それだけなら、まだやりやすいかも。
最後の「意識をそらす」はちょっと工夫が必要なので、余裕があるときに試してみてください。
具体的には、「今日は何月何日?」と聞かれたら、「今日は◯月◯日だよ。もうすぐ冬至だけど、昔はどんなことをしていたの?」などと違う話題を振ってみるんです。
すると、「今日の日付がわからない」という不安から意識をそらせるので、楽しく思い出話ができるかもしれません。
なるほど!そういう手があったんですね。全く思いつきませんでした。
どうしても同じ話をされるとイライラしてしまうんですよね。イライラしないための方法はありませんか?
そうですね…。先ほどお話しした対応法ができるのが理想的ですが、気持ちや時間に余裕がないと適切な対応をしようとすること自体にもイライラしてしまいますよね。
そこでイライラを軽減するために、毎回お母様の話を真剣に受け止めるのではなく、たまには受け流しても良いと私は思います。
えっ?受け流して良いんですか?
ええ。毎回しっかりと話を聞いていると荒井さんが疲れてしまいますよね。なので、「そうなんだね」などの軽いリアクションだけのときもあって良いと思います。
ただ、そっぽを向いて軽いリアクションをしてしまうと、自分がないがしろにされているようにお母様が感じてしまう可能性があります。なので、顔をお母様の方に向けてリアクションしてくださいね。
母が同じ話をするのは、おそらく認知症が原因なんですよね?なんで認知症になると同じ話を繰り返すようになるんでしょうか?
いくつか理由があります。その中でも「記憶障害」「見当識障害」が主な理由だと考えられます。
まず、記憶障害とは記憶がなくなることや記憶ができなくなることです。特に、認知症の人は直近の出来事をその出来事があったこと自体も忘れてしまうことが特徴。具体的には、食事の内容だけでなく食事をしたこと自体を忘れてしまうのが認知症の記憶障害なんです。
記憶障害はもの忘れとよく混同されますが、記憶障害ともの忘れは根本的に異なります。もの忘れは「何かを忘れている」ことは理解できますが、記憶障害になると、忘れているという記憶すらなくなるのです。
例えば、普通のもの忘れであれば会う約束の時間をうっかり忘れてしまっても、指摘されると思い出すことができます。しかし、記憶障害になると約束したこと自体もすっぽりと記憶からなくなってしまうのです。
認知症になると大脳が損傷されて記憶障害が起きますが、運動機能の調節を司る小脳に影響はありません。認知症でも身体機能を正常に動かすことができれば、昔からおこなってきた動作を忘れることはありません。
すぐにできなくても、きっかけや少しの練習があればすぐに思い出すことができます。このような記憶を「手続き記憶」と呼びます。自転車の乗り方や泳ぎ方など。身体で覚える記憶は、一度覚えていれば認知症でも忘れることはありません。
手続き記憶を呼び起こすことで、認知症の人の能力を引き出して自信をもたせることができます。
エピソード記憶は、個人が体験した今までの経験に基づくもので、時間と場所、そのときに一緒だった人や、そのときの感情の記憶です。
一般的な知識や常識などに関する意味記憶の反対にあるもので、極めて個人的な記憶なので、アルツハイマー型認知症になると比較的初期段階で忘れられやすくなります。
じゃあ、母は父との思い出話をしたこと自体を忘れてしまっているんですね。
おっしゃる通りです。話したことをすっかり忘れているので、「その話は何度も聞いたよ」と言われても理解ができないんですね。
それに、認知症の人は常に「何か大切なことを忘れているかもしれない」という不安を感じている人が多いんです。記憶障害が日常生活に悪影響を与えている場合、「大切なことを忘れて家族に迷惑をかけているかも」と感じていることもありえます。
なので、何度も同じことを質問して不安を解消しようとしていると考えられます。
なるほど…。
もう一つの見当識障害というのは何ですか?
見当識障害は、自分がいる場所や現在の時間がわからなくなることです。自宅が自分の家だとわからなくなったり、朝や夜の感覚もなくなります。
見当識障害とは
見当識障害とは、今、自分がいる時刻や日付、場所、周囲の環境などを総合的に判断する能力が失われる障害です。アルツハイマー型認知症になると、記憶障害に続いて見られる症状です。
見当識障害には「時間の見当識障害」「場所の見当識障害」「対人関係の見当識障害」の3つの種類があります。まず最初に症状としてあらわれるのが時間の見当識障害と場所の見当識障害です。症状が進行すると対人関係の見当識障害も目立つようになります。
時間の見当識障害が起きると時間の感覚が失われていきます。日付や曜日の間違いはもの忘れの範囲ですが、症状が進行すると季節や朝昼夜の区別も難しくなります。
場所の見当識障害が起きると、今まで普通に通っていた場所やその道順があやふやになります。目的地の建物が認識できなかったり、どこで曲がるのかわからなくなって道に迷います。迷ったことで焦りやパニックを起こして、さらに遠くに行ってしまう危険もあります。
認知症の症状が進行して短期記憶だけではなく過去の記憶も失われ始めると、対人関係の見当識障害もあらわれるようになります。家族や近い友人もわからなくなって、自分と他者との関係性もあいまいになります。
だから、母は日付や時間を1日に何度も聞いてくるんですか?
その可能性があります。それに、見当識障害によっても不安を感じることがあります。「今、自分がどこにいるか」「朝なのか夜なのか」がわからないと、誰しも不安に感じますよね。
そういう理由で、お母様は何度も日付や時間を確認しているのかもしれません。
母はたくさん不安を感じていたんですね…。
おそらく、そうだと思います。
何回も質問することや話を繰り返す内容が、お母様の不安や不満を表している可能性もあります。なので、その不安や不満を解消することで、同じ話を繰り返すことが減る可能性もありますよ。
そうなんですか?
はい。例えば、お母様の目に付きやすい場所に時計やカレンダーを置いてみるのはどうでしょうか。
そうすれば、時間や日付がわからなくなったときでもすぐに自分で確認できますから、荒井さんに質問する回数が減るかもしれません。
なるほど!それは良いですね。家に帰ったらやってみます。
何度も同じ話を聞くとイライラしてしまいがちですが、それが不安の理由を知るきっかけになることもあります。余裕があるときだけでもお母様の話に耳を傾けてみてください。
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