在宅介護をしている母親が何度も転倒しているのに、自分で家事をしようとして困っています。

在宅介護をしている母親が何度も転倒しているのに、自分で家事をしようとして困っています。

更新日 2024/03/18
先日、在宅介護をしている母が自宅で転倒しました。この半年で3回目です。幸い、大きな怪我にはならなかったのですが、私や妻が仕事で不在の間に家事を自分でしようとして転んだようです。でも、転倒して以来、「危ないから余計なことをするな」と何度も言い聞かせているのですが、認知症もあるせいか、言うことを聞いてくれません。

このままでは、いつか転倒して大きな怪我をしてしまうかもしれません。何か良い方法はないでしょうか。

(萩原さん・自営業・62歳)

まずは、お母様の転倒の原因を探ってみましょう。ご高齢者は身体機能や注意力の低下から、ちょっとした段差でもつまづいて転んでしまうことがあります。

もし、ご自宅のリフォームが必要な状態なら、介護保険を活用することで出費を抑えることも可能。そうして、ご自宅の環境を整えつつお母様の筋力の維持をするための運動を生活に取り入れるのも良いでしょう。

何より、家事をしたいと思っているお母様の行動を「危ないから」とすべて制限してしまうのは、お母様にとってストレスになっている可能性があります。転倒の対策をしつつ、できるところはご自分でできるようなサポートができると理想ですね。

転倒によって要介護状態や寝たきりになることも…

先週、母が自宅で転倒しました。大怪我にはなりませんでしたが、母の転倒はこの半年ほどで3回目。どれも自分で家事をしようとしてふらついて転んでしまったようです。最近、足元がおぼつかないので家事は家族に任せるように何度も言っているのですが、聞く耳を持たず、自分でやろうとします。

このままではいつか大きな怪我をするんじゃないかと心配で注意しているのに、「これくらいならできる」と私や妻が仕事で家を空けているときに、掃除や料理をしているみたいです。認知症のせいか、毎日、注意しても忘れてしまうようで、それも疲れます。どうにか良い方法はないでしょうか?

ご自宅での転倒…。とっても心配ですよね。

そうなんです。転んで骨折でもしたら、入院してしまうことだってあるでしょうし…。

そうなんです。実は、「いい介護 入居相談室」にいただくご相談の中でも、老人ホーム探しを始めるきっかけとして多いのが転倒なんです。

転倒がきっかけで老人ホームに入るんですか?

はい。ご自宅で転倒して大腿骨(太ももの大きな骨)を折ったことで長期の入院となり、入院中にベッド上の生活が増えることで筋力が低下して歩けなくなったり寝たきりになってしまうんです。

えぇ!?寝たきりに?

そうなんです。寝たきりになったり、歩けなくなって車椅子が必要になると、多くのご家庭で在宅介護を継続できないですよね。そのため、介護施設への入居を検討するというわけなんです。

ちなみに、内閣府による「高齢社会白書」でも、介護が必要になった原因の4番目に多いのが「骨折・転倒」。ご高齢者は骨がもろくなって折れやすい傾向がありますから転倒予防は本当に大切です。

参考:「令和3年版高齢社会白書(全体版)」(内閣府)

高齢者が転倒する原因とは?

転倒に対して注意はしていましたが、転倒がきっかけで寝たきりになるなんて考えてもいませんでした。

転倒を防ぐためにはどうしたら良いんでしょうか?

うーん。まずはお母様の転倒の原因を考えてみましょうか。そこから、対策が見つかるかもしれません。

ご高齢者がご自宅で転倒する原因として挙げられるのは、主に以下の3つです。ひとつずつ見ていきましょう。

  • 環境による原因
  • 身体的な原因
  • 精神的な原因

環境による原因

ご高齢者はちょっとした段差などでもつまづいて転倒してしまうことがあります。以下のようなものが原因で転んでしまうことがあるので、注意してみてください。

  • 畳の縁、敷居などの段差
  • カーペット、じゅうたんの端
  • 電気コード
  • チラシ、新聞紙

前回は、チラシを踏んで滑って転んだと言っていたので、できるだけ新聞やチラシを床に置いておかないようにしました。

チラシが床に落ちていても、私たちは簡単に避けられますが、年齢を重ねるにつれて身体機能が衰えて転倒する原因にもなるんですよね…。

東京消防庁がご高齢者の転倒事故の発生場所についてまとめています。それによると、圧倒的に住宅内での発生が多く、なかでも寝室や居室での転倒がその他の場所の3倍も多いそうです。

寝室や居室はものが多くなりがちな場所ですから、それが原因の可能性もありますね…。

1位2位3位4位5位
事故発生場所寝室・居室玄関・勝手口廊下・通路・縁側トイレ台所・食堂
救急搬送人員2万2902人3187人2342人1000人898人

参考:「救急搬送データからみる高齢者の事故」(東京消防庁)

身体的な原因

先ほどもお話ししましたが、高齢になると身体機能が低下します。そのうえ、注意力も低下するのでより転倒のリスクが高まるんです。

北野室長がさっき言っていたように、「ちょっとした段差に気が付かず、転倒してしまう」ということですか?

おっしゃるとおりです。そのうえ、以前は当たり前にできていた「片足立ちになって靴下をはく」「高いところのものを取る」「夜中に小さな明かりだけを頼りに移動する」といったことが高齢になると難しくなります。

ただ、そうした身体機能や注意力の低下は自覚がしにくいもの。そのため、以前と同じように行動をしたことで転倒をしてしまうんです。

その話、母に当てはまります。昔は普通に掃除機を使って掃除をしていましたが、今は掃除機が重くて扱えないですし、押入れの高いところにしまい込んでいるものを取ろうとしてひっくり返りそうになったこともあります。

普通に歩くのもふらついているので、そういうときは家族を呼んでほしいのですが…。

そういえば、お母様は認知症を発症されているとおっしゃっていましたよね、認知症の薬を使用していますか?

はい。服薬しています。それが何か関係あるんですか?

認知症の薬の中には、副作用としてめまいやふらつきといった症状が出ることがあります。その影響で転倒しやすくなっている可能性もあるので、もし、ふらつきがひどいようでしたら、一度、医師に相談することをおすすめします。

精神的な原因

精神的な原因というと、どんなことですか?

例えば、驚いたときやあせっているときに転倒リスクが高まります。具体的には、後ろから声をかけられたり、急に大声で驚かせるようなこと。それに、動作を急がせることです。

高齢になると耳が遠くなるために、ご家族も大きな声で話しかけることもあるかもしれません。それで驚いた拍子に転倒してしまうこともあるんです。

また、誰でもあせっていると転倒しやすくなるものですよね。ご家族が忙しかったり時間に余裕がなくてご高齢者を急かしてしまうことがあると、気持ちがあせって転倒の原因になることもあります。

【対策1】転倒しない環境を作る

じゃあ、どうしたら転倒を予防できるのでしょうか?

まずは、ご自宅の環境面で転倒の原因を排除してみましょう。

  • 階段・段差をなくす
  • カーペットの下に滑り止めを敷く
  • 電気コードを壁に沿わせる
  • 床にものを置かないようにする
  • 室内でも杖を使う
  • 滑り止め付きの靴下をはく

敷居などの小さな段差には、ネットやホームセンターなどで売られている小さなスロープが使えます。ただ、階段などの大きな段差の場合、リフォームが必要になることもあるでしょう。

そういうときは介護保険で補助金が支給されるので、ぜひ活用してみてください。最大20万円の補助金がもらえます。詳しくはお住まいの市区町村の役所に問い合わせてくださいね。

【対策2】転倒しにくい身体を作る

ご自宅の環境を整備するのと同時に、転倒しにくい身体づくりも大切。高齢になると、外出する機会も減って運動量も少なくなる傾向があります。それに「転んでしまうかも」と思うとさらに身体を動かす機会も減るでしょう。

そのため、意識的に運動量を増やしたりタンパク質が多めの栄養バランスの良い食事を摂って、筋力を維持することも重要です。

【対策3】転倒しないように周囲の人が気をつける

普段からご家族や周囲の人が、転倒しないように配慮するのも大切です。大声や後ろから話しかけるなど、驚かせるようなことを避けて、前から声をかけるようにしましょう。

それに、介護や仕事で余裕がないとご高齢者のゆっくりとした行動にいらだつこともあるかもしれません。ですが、急かすことが転倒の原因となることを考えて、落ち着いて行動できるように気を配るようにしましょう。

北野室長が言う通り、母の行動がのんびりしていてイライラするんですよね。思わず「早くして」と言ってしまいますが…。気をつけるようにします。

「危ないから」がストレスになっているかも…

転倒の予防方法もわかったので、さっそく実践したいと思います。ただ、母が自分で家事をせずに家族に任せてくれるのが一番なんですけどね。

転倒して大怪我してしまうのはもちろんいけないことなんですが、あまりにも「危ないから」と行動を制限してしまうと、お母様のストレスになってしまうことがあるんです。

でも、転倒して怪我をして痛い思いをするのは母自身なんですよ?

はい。おっしゃるとおりです。ただ、「転んだら危ないから」と、これまでの習慣だった家事を制限されると、もしかしたら「わずらわしい」と感じてしまうかもしれません。

となると、お母様を心配して言っていることが、上手くお母様に伝わらない可能性もあります。

あぁ、確かに。「危ないから家事はするな」と言うと、「放っておいてよ!」と言われるので、毎日のように口論になってしまうんです。ストレスを感じていたのかな…。

もちろん、お母様ができないことをご家族が手伝うことは必要だと思います。なので、お母様の身体状態を考えて「家族が手伝うところ」「本人ができるところ」の折り合いをつけるのが良いでしょう。

あまりにも、ご家族が手伝ってしまうと、身体機能や認知機能の低下を招いてしまうこともあります。ご家族とお母様が”いい塩梅”で生活できるところを探っていってくださいね。

  • 転倒・骨折は要介護になる原因の4番目に多い
  • 高齢者が転倒するのは、主に環境・身体的・精神的な原因がある
  • 転倒しにくい環境や身体づくり、周囲の人が驚かせないような対策が重要

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