レクリエーションが苦手で、静かに過ごしたい――そんな方も少なくありません。20年近く老人ホームの入居相談を受けてきましたが、実は“にぎやかな場が得意ではない”というお悩みはとても多いんです。
老人ホームと聞くとイベント中心のイメージがありますが、今は“自分のペース”を大切にできる施設も増えています。今回は、一人の時間を楽しみたい方に合うホームの選び方を、お教えしますね。
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最近、父の介護が必要になりそうで、老人ホームを調べているんです。でも、どこの施設も「レクリエーションが豊富」「イベントが毎日」と書いてあって……。
父は昔から集団行動が苦手で、一人で静かに過ごすのが好きなんです。そういう人でも、やっていけるものなんでしょうか?
お父さまのような方、実はとても多いですよ。私が相談を受けてきた中でも、「にぎやかなことは苦手」という方は全体の3〜4割はいます。
まず安心していただきたいのは、レクリエーションは基本的に“参加自由”だということ。強制ではありませんし、参加しないからといって職員の対応が変わることもありません。
そうなんですね。なんとなく「みんなでやるもの」という印象があったので……。
そう思われる方が多いんです。ただ、施設によって“自由”の度合いには差があります。
たとえば、毎朝10時に体操、午後はカラオケ、夕方は脳トレ――と一日のスケジュールがきっちり決まっているところもあります。
そうなると、「今日は休みたい」と言いづらい雰囲気になることもあります。
たしかに、それだと父は疲れてしまいそうです……。
一方で、「その人の体調や気分を尊重する」方針を掲げているホームもあります。職員が「今日は無理なさらなくて大丈夫ですよ」と声をかけてくれるような。
つまり、同じ“参加自由”でも、施設の雰囲気次第で“過ごしやすさ”は大きく変わるんです。
でも、みんなが参加している中で自分だけ部屋にいたら、孤立してしまわないですか?父は社交的ではないので、そのあたりも心配です。
そこもよくある不安ですね。でも最近のホームは、“それぞれのペースを尊重する”という考え方が広がっています。
たとえばある施設では、午前中に入居者さん同士で集まって体操をしている人もいれば、居室で新聞を読んでいる人もいる。でも、どちらも自然に受け入れられています。
そういう雰囲気なら、父も安心できそうです。
一人でゆっくりできているからといって、職員がほったらかしにしているわけではなく、「今日はお部屋でゆっくりされていましたね」と、ちゃんと見てくれています。
無理に誘うよりも、「自分の時間を尊重してくれる」関わりのほうが信頼関係が築けるんです。
ただ、最近は“孤立”という言葉の受け止め方も変わってきています。「一人でいる=孤独」ではなく、“一人の時間を楽しむ”という価値観がちゃんと理解されるようになっているんです。
読書や音楽、散歩など、自分の時間を上手に過ごす方もたくさんいらっしゃいますよ。
父のような、ひとり時間を好むような人に向いた施設の種類って、どんなものがあるんでしょう?
お父さまのように「自分のペースを大切にしたい」方には、「住宅型有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」が向いています。
名前は聞いたことがありますが、介護が必要でも大丈夫なんでしょうか?
介護が必要なときは、外部の訪問介護を利用するので問題ありません。
介護サービスを受けながらも生活リズムは自分で決められる。「朝はゆっくり起きたい」「夜は静かに本を読みたい」――そんな暮らし方がしやすいのが、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅の特徴なんです。
どのような雰囲気の老人ホームか……というのは、やはり現地を見学してみないとわからないですかね?
そうですね。我々のような老人ホームの入居相談員も知ってはいますが、それを話したとして、“雰囲気”という言葉にしづらいものはやはり、ご自身で見学することが一番です。
では、どのような点に注意して見学すれば良いでしょうか?
ホームの雰囲気を知るための施設見学のポイントは以下の3つです。
まず1つ目は、居室のつくりと設備の確認です。完全個室で、キッチンや冷蔵庫があるタイプなら、自分の時間を保ちやすいです。
確かに、プライベート空間がしっかりしているのは大事ですね。
そうですね。そして2つ目は、職員の声かけです。
「今日は皆さんでレクリエーションですよ!」と元気に誘うのか、「お疲れの日は無理されなくていいですよ」と柔らかく声をかけるのか。そんなちょっとした温度感の違いで、施設の文化が見えてきます。
なるほど~。どちらが父に合うか、想像できますね。
そして最後に3つ目は、入居者の表情のチェックです。
穏やかに過ごしている人が多いホームは、職員との関係も良好で、自分のペースを守れている証拠です。
逆に、みんなが落ち着かない様子だったり、全員が一斉に行動しているような施設は、少し注意したほうがいいかもしれません。
父は介護職員さんとも、あまり話したがらないタイプで……。そういう人でも、うまく介護を受けられるものなんでしょうか?
はい、大丈夫です。介護は基本的に一対一のケアなので、社交的である必要はありません。
入浴、食事、排泄など、すべての介護ケアについて職員が“個別に”対応するのでご安心ください。必要なときだけ関わるという距離感を保てる施設も多いんですよ。
積極的に話したりしないと悪く思われないか、少し気になっていました。
むしろ、無理に話そうとして疲れてしまうより、“自然体で接する”ほうが長く安心して生活できますからね。
大切なのは、職員が「この方はこういうタイプ」と理解してくれること。そのためには、入居前の面談でご家族が性格や生活スタイルをきちんと伝えることもポイントですよ。
北野さんがこれまで見てきた中で、「静かに過ごしたい人に向いている」と感じたホームにはどんな特徴がありますか?
一言でいえば、「静けさを“居心地の良さ”として提供している施設」ですね。
たとえば、館内に落ち着いたBGMが流れていて職員の声も控えめとか、共有スペースに観葉植物や小さな図書コーナーがある――そんな施設は、どこか空気がやわらかいんです。
なんだか雰囲気が目に浮かびますね。
そうでしょう?
また、レクリエーションも“きっかけ”として扱っているような施設もあります。「今日は庭の花を見に行きませんか?」と軽く声をかける程度で、参加はあくまで本人次第。無理に誘わず、興味があるときだけ顔を出せる――それが理想のバランスだと、個人的には思いますね。
最後に、静かに過ごしたい人に合うホーム探しのコツを教えてください!
はい!
まずは、インターネットの情報を鵜呑みにしないこと。インターネットサイトに「イベント充実」などと書かれていても、実際は“参加自由”という施設が多いんです。だからこそ、必ず見学に行って、自分の目で“その空気”を確かめてください。
そしてもう一つ大事なのが、「こういう暮らしがしたい」と素直に伝えることです。“静かに過ごしたい”という希望はわがままではありません。それは“自分らしい生き方”を大切にする、立派な意思です。
私たち「いい介護 入居相談室」では、そうした個性や価値観に合うホーム選びをお手伝いしています。お父さまが心穏やかに、自分らしい時間を過ごせる場所――それが、真の意味での“いい介護”だと私は思います。
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。