家族が認知症かもしれないと思ったとき、介護をする上でどのようなことに気をつければいいのでしょうか。
そこでこの記事では、認知症の種類、診断や検査、症状、予防法をもとに介護を続けるコツについても解説していくので、認知症対策として大切な、早期発見、そして予防に気をつけてください。
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病気や障がいが原因で脳の認知機能の働きが悪くなり、日常生活に支障をきたす症状を認知症といいます。今までできていたことが急に難しくなるので、日常生活全般に影響がでてしまいます。
認知症には以下の3つの種類があり、それぞれに原因や特徴、症状の出方が異なります。
それでは、それぞれの特徴について見ていきましょう。
認知症の中でも約半数はアルツハイマー型認知症といわれています。アルツハイマー型認知症とは、脳神経が変性することによって脳全体が萎縮し、脳機能が停止してしまう症状です。
初期は物事を思い出せなくなる記憶障害がおき、その後は計画が立てられない、気候に合った服が選べないといった実行機能障害、季節、場所などの認識ができない見当識障害などが目立ってきます。症状には個人差があります。
アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症に次いで多い認知症です。レビー小体というたんぱく質が大脳皮質にたまり、脳神経細胞が破壊されることで認知症症状が現れます。
初期は認知機能は保たれ記憶力や見当識、理解力の低下はほとんど見られません。代わりに便秘や嗅覚異常、レム睡眠行動障害があらわれることが多いといわれています。
中期には手足が震えるといったパーキンソン症状が見られ歩行困難になり、徐々に記憶力、見当識、理解力の障害がおこります。
アルツハイマー型認知症に次いで日本人に多い認知症が脳血管性認知症で、認知症全体の約20%となっています。脳血管性認知症は、くも膜下出血や脳梗塞といった脳の病気にともなって脳細胞が死滅し、発症します。
記憶障害などの典型的な症状もありますが、脳血管性認知症の場合は心身のコントロールができなくなって、コミュニケーションに支障をきたすこともあります。
ダメージを受けた脳の領域によって症状が異なるので、記憶力が健在でも身体的な障がいを実感しやすい場合、抑うつ状態になりやすい傾向があります。
脳の病気や機能の低下が原因で認知症を発症します。その原因となる疾患は、アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症、脳血管性認知症の3つが約90%を占めています。中でも患者数70%と最も多いと言われているアルツハイマー型認知症は、脳神経の変性で起こります。
レビー小体型認知症は、神経細胞にできたたんぱく質が大脳皮質や脳幹に増えすぎたことが原因と言われています。脳血管性認知症は脳血管障害によって起こります。
またアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症を併発していることもあります。このように認知症の原因はさまざまです。
認知症の症状は中核症状と行動・心理症状(BPSD)の2つに分けられます。それぞれの症状について詳しく見ていきます。
中核症状とは、認知症の典型的な症状のことです。あったことそのものを忘れてしまう記憶障害や物事を順序立てて考えられなくなる実行機能障害や、時間や場所がわからなくなる見当識障害などもあります。
これらは、認知症になるとほとんどの人に現れる中核症状です。中核症状は薬により進行を遅らせることはできますが、止めることはできません。
行動・心理症状(※BPSD)は中核症状がおこることにより生じる二次的な行動・心理的症状です。
自尊心の低下、心理的な不安や精神的な混乱が増大し、引き起こされる徘徊や暴言、暴力行為といったものです。症状には個人差はありますが、次第に家族や周囲の人とのコミュニケーションなども難しくなります。
※BPSDはBehavioral and Psychological Symptoms of Dementiaの略。
認知症予防策を早い段階から意識して生活に取り入れていくことで、認知症になった後、その進行を緩やかにすることができます。
アルツハイマー型認知症は、糖尿病や脳血管障害など生活習慣病との関連が強いとも言われています。脳血管障害や動脈硬化のリスクを下げるために低塩分、低糖質の食事を取り入れましょう。多くの食材をバランスよく適切な量を食べることが大切です。
バランスのとれた食生活と併せて運動も必要。健康な体を維持するためには適度な運動をすることで、筋肉量の低下を予防し、関節の可動域を保つことが可能です。運動をして身体を動かすことは脳にも良い刺激をもたらします。
認知症は早期発見、早期対応が重要です。認知症のように日常生活が困難になるほどではないけれど、記憶力が低下し、正常か認知症か判断が難しい状態のことを軽度認知障害といいます。
軽度認知障害を患った約半数の方は5年以内に認知症と診断されるといわれています。この期間に早期対応することで症状の進行を遅らせることもできます。
認知症の初期症状である記憶障害を単なるもの忘れとして見過ごさず、異変を感じたタイミングで専門医を受診しましょう。他の病気と同様、放置しておくことは非常にリスクがあります。
早い段階からさまざまな治療をうけておくことで、たとえ認知症でも、症状を抑えて日常生活を送ることも可能です。
認知症かどうかの診断は「面談」「身体検査」「認知症検査」という3つの検査を経た上で総合的におこなわれます。それぞれの検査内容と流れを見ていきましょう。
本人と家族に対して医師の面談があり、これまでの経過や病歴、現在の状態などについてヒアリングがおこなわれます。正確に伝えるために、あらかじめ内容を整理したメモなどを準備して詳しく伝えましょう。
身体検査では、血圧検査、血液検査、レントゲンなど一般的な健康診断に加え、手足の痺れ、震えの有無、歩行状態などについて調べます。認知症だけではなく、他の病気の有無や身体の状態についても確認します。
認知症検査は「脳画像検査」と「神経心理学検査」の2種類があります。脳画像検査はCTやMRIで脳を撮影して、脳梗塞、脳出血の有無や脳委縮の程度を検査します。
脳血流のチェックやレビー小体型認知症診断のための検査をおこなうケースもあります。神経心理検査は脳の働きをチェックする検査です。絵を見て絵の内容を答えるものや、記憶の確認、単純な計算問題などです。
神経心理検査には「長谷川式簡易知能評価スケール」や「ミニメンタルステート検査」、「時計描画テスト」といったものがあります。
認知症を完全に治療する方法は現在見つかっていませんが、治療により進行を遅らせることもできます。それぞれの治療法について説明します。
薬を使って認知症の症状を緩和するのが薬物療法です。中核症状の進行を遅らせるための抗認知症薬と、行動・心理症状(BPSD)の軽減のための抗うつ薬や睡眠薬によるものの2つに分けられます。
認知症の症状によって処方される薬もさまざまなので、薬については認知症専門医などに必ず相談しましょう。
認知症の治療では、薬に頼らない非薬物治療も大切です。認知症には、精神的に安定しストレスなく穏やかな時間を送ることが良いとされています。
昔から好きだった音楽を聴いたり、日常生活の中で料理や掃除といった身の回りのことをすることも大切な治療のひとつです。また、ゲームなどで脳へ刺激を与えたり昔からの趣味に集中することで自分らしく過ごすことが精神の安定につながります。
認知症の症状のリハビリテーションにはどのようなものがあるのでしょうか。それぞれの内容、目的について説明します。
日常生活でずっと継続してきた家事や仕事といった作業を続けることを作業療法といいます。
日常生活は多種多様な作業に満ち溢れています。買い物をしたり、散歩に行くこともそのひとつです。基本的な日常生活を送る能力や、社会の中でその人らしい役割をこなす能力を維持することが目的です。
認知症患者にとって新しい物事はストレスを伴います。新しいリハビリをするのではなく、その人が自然にやってきた作業を通して懐かしい気持ちを取り戻し、安定した精神を取り戻すことにつながります。
運動療法は身体の一部または全部を動かすタイプのリハビリテーションです。適度な運動は脳の活性化、血流改善に繋がります。
運動療法はウォーキングや水泳といった有酸素運動から、「立つ」「歩く」「階段をあがる」といった基本動作の練習も含まれます。運動を通して関節機能の改善、筋力の増強、可動域の改善、転倒予防などを目的としています。
身体を無理に動かして身体を痛めたり転倒しては逆効果になってしまいますので、運動療法は理学療法士の指導のもと安全に配慮しておこないます。
音楽をリハビリテーションに取り入れたのが音楽療法です。一人でゆっくりただ音楽を聴くだけでもよいですし、家族や友人と一緒にカラオケで思いきり自分の好きな音楽を歌って楽しめばますます盛り上がった時間になるでしょう。
タンバリンやカスタネットなどの楽器を使ったりすることもさらに効果的です。正しく演奏したり歌うことよりも楽しむことが大切です。
音楽には、脳を刺激を与えたり、ストレスを軽減するといった良い効果があります。その人なりのやり方で音楽を楽しむことが大切です。
認知症のリハビリテーションのひとつに回想法もあります。一人でも複数でもおこなうことができます。昔の思い出を話し合ったりすることによって、脳を活性化させる方法です。
認知症になると直近の出来事を記憶することは困難になりますが、昔の記憶は保持されています。自分のそれまでの半生を思い返すことによって、満足感や幸福感を感じることもあります。
周囲に大切なのは本人の話を否定せずに受け入れて共感する姿勢です。回想法は認知症にとって、自尊心を取り戻し、不安を和らげる効果的なアプローチ方法と言えるでしょう。
認知症の行動・心理症状(BPSD)は認知症の中核症状が元になり行動と言動に現れるもので個人差があります。それぞれの症状について詳しくみていきましょう。
認知症の初期の段階から感情をコントロールするのが難しくなっていきます。このため納得できないことがあったり尊厳が傷つけられたと感じると、暴力や暴言となってあらわれることがあります。少し時間を置くなどして落ち着いてから話を聞くようにしましょう。
徘徊は事故や事件に巻き込まれる恐れがあるため、介護者にとって特に心配な症状です。場所の見当識障害が進むにつれて現れるようになり、外出先で道に迷うほか、見慣れているはずの自宅や施設などを知らない場所と感じて外に出てしまう場合もあります。
認知症の初期症状からよく見られる症状のひとつです。認知症が進行すると、いつどこに何をしまい込んだかを忘れます。自分が置き忘れた自覚すっぽり抜けているため、「盗まれた」と家族や介護者など身近な人に疑いの目を向けるようになります。
介護拒否の理由はさまざまで、本人には介護を拒否する理由があります。認知症の人が介護を嫌がっている場合は、本人の意思を尊重し、介護を嫌がる理由を探りながら適切に介護できるようにしましょう。
無理強いすることによって、ますます嫌な印象を植え付けたり、症状を悪化させることにもつながります。
認知症の介護はストレスもリスクも高い状況が長く続きます。介護者のストレスを軽くするコツを知っておきましょう。
愛する家族が認知症を発症することは、とてもショックなことです。家族が変わっていく姿を見ることは辛いですし、ストレスを感じてしまいます。介護をするときに重要なのは、必要以上に頑張りすぎないことです。まずは自分自身の健康に配慮するなど自分に優しくすることが大切です。
介護は長期戦です。認知症の家族を介護する中で、不満や悲しみは生まれてきます。その気持ちを溜め込まず、時に家族につらいと本音をこぼしたり、友人に愚痴や弱音を吐いて一緒にカラオケで発散させたり。気持ちを切り替えながらやっていきましょう。介護サービスを上手く活用し負の感情は溜め込まないことが介護をする上で何よりも大切です。
認知症の症状について誰かと比べてもあまり意味はありません。認知症は、個人差があり、症状の重さや症状のあらわれ方は全く異なります。誰かと比較して、悲しい気分になるのはやめましょう。
介護をしているときは大変すぎて、自分一人に抱えて社会からも孤立してしまいがちです。しかし、介護を一人でするのは不可能です。周りの人や外部の介護サービスを上手に利用して、まわりに頼りながらやっていきましょう。
介護に終わりは見えません。目の前の介護が大変だとどうしても今の時間を楽しむ余裕はなくなります。しかし介護はいつか終わりを迎えます。長い目で介護についてとらえて、なるべく「今」を大切に家族や本人が幸せでいられる時間を過ごしましょう。
認知症の本人にも家族にも、在宅介護をできるだけ負担なく気負わずおこなうためのコツがあります。
認知症になると脳の判断力が低下するため、全てが慌ただしく感じられます。
今までどおり家族が話しかけて、それを理解しようと認知症の本人が努力をしつづけると心身ともに疲れ切ってしまいます。結果として、なおさら混乱を招き理解が遅くなりお互いにコミュニケーションが負担となります。介護をする際、声がけも動作も「何事にもゆっくりを心がける」ことが大切です。
認知症の本人が機能低下しているのは聴覚や視覚ではなく脳です。判断能力、注意力、集中力が低下しているため、具体的な声掛けを心がけましょう。「はい」「いいえ」で答えられる声かけから始めてみるのもひとつの方法です。
周りが静かな環境で、聞き取りやすくゆっくりと話しかけましょう。言葉遣いはいつも通りで問題ありません。相手が何かを言おうとしたときは言葉を発するまでゆっくり待ちましょう。
認知症の症状が進んでくるとコミュニケーションが難しくなってきます。地域との交流でおこなわれる挨拶や世間話や顔なじみと会話するなど、日常の風景を体感することも認知症の本人にとっては貴重な時間です。
自宅でリラックスする時間も大切ですが、外出して自宅とは違う時間を過ごすことも本人と介護者が社会から孤立しないための大切な機会です。
認知症とは、病気や障がいが原因で脳の認知機能の働きが悪くなり、日常生活に支障をきたす症状を指します。
具体的な症状として、あったことそのものを忘れてしまう記憶障害や物事を順序立てて考えられなくなる実行機能障害や、時間や場所がわからなくなる見当識障害などが挙げられます。また、徘徊や被害妄想、暴言、暴力行為といったものも症状として現れることがあります。
認知症には「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「脳血管性認知症」の3つの種類があります。
患者数70%と最も多いと言われているアルツハイマー型認知症は、脳神経の変性で起こります。またレビー小体型認知症は、神経細胞にできたたんぱく質が大脳皮質や脳幹に増えすぎたことが原因と言われています。脳血管性認知症は脳血管障害によって起こります。
認知症を完全に治療する方法は現在見つかっていません。ただし、「薬物療法」「非薬物療法」により進行を遅らせることはできます。
薬物療法はその名の通り、抗認知症薬などの薬を使用する療法です。また徘徊や被害妄想、暴言、暴力行為といった行動・心理症状(BPSD)の軽減のために抗うつ薬や睡眠薬を使用することもあります。
一方、非薬物療法は、薬に頼らず安定した生活を送ってもらうことを目的としている療法です。例えば、昔から好きだった音楽を聴いたり、ゲームなどで脳への刺激を与えたりと手段はさまざまです。
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