介護保険サービスにおける医療費控除とは?

介護保険サービスにおける医療費控除とは?

公開日 2021/12/29

介護保険サービスを利用した場合に、一定の条件により、サービスを受け支払った自己負担額から所得税の医療費控除を受けることができます。

今回は、介護保険サービスを利用した際に、医療費控除を受けるためのポイントを説明します。

医療費控除とは

出典:「医療費を支払ったとき」(国税庁)

控除とは、納税額から条件により一定の金額を差し引くことを指します。その中で医療費控除とは、その年に自分または自分と生計を共にする配偶者や親族のために医療費を支払った場合に、確定申告時に負担した医療費の一部を所得から控除することを言います。

医療費控除の対象となる介護保険サービス

ここからは、所得の医療費控除の対象となる介護保険サービスについて説明します。

医療費控除の対象となる居宅サービス等

介護保険サービスの中で、居宅サービスはよく利用されていますが、そのうち多くは支払った額が医療費控除の対象となります。以下が医療控除対象のサービスです。

要支援の方

  • 介護予防訪問看護
  • 介護予防訪問リハビリテーション
  • 介護予防居宅療養管理指導
  • 介護予防通所リハビリテーション
  • 介護予防短期入所療養介護

要介護の方

  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
  • 通所リハビリテーション
  • 短期入所療養介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限る)
  • 看護・小規模多機能型居宅介護(上記の居宅サービスを含む組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除く)に限る)

条件付きで医療控除の対象となる居宅サービス

また、日常生活上に必要な世話に該当するような居宅サービスの中で、上記の居宅サービスと併用して利用することで、医療費控除の対象となる居宅サービスもあります。以下がその対象です。

要支援の方

  • 介護予防訪問入浴介護
  • 介護予防認知症対応型通所介護
  • 介護予防小規模多機能型居宅介護
  • 介護予防短期入所生活介護

要介護の方

  • 訪問介護(生活援助(調理、洗濯、掃除等の家事の援助)中心型を除く)
  • 夜間対応型訪問介護
  • 訪問入浴介護
  • 通所介護
  • 地域密着型通所介護
  • 認知症対応型通所介護
  • 小規模多機能型居宅介護
  • 短期入所生活介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用しない場合及び連携型事業所に限る)
  • 看護・小規模多機能型居宅介護(上記の居宅サービスを含まない組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除く)に限る)
  • 地域支援事業の訪問型・通所型サービス(生活援助中心のサービスを除く)

医療費控除の対象となる施設サービス

介護施設に入所して利用した施設サービスのうち、介護サービス費、食費、住居費も医療費控除の対象となります。一方で、理美容代など日常生活でも通常必要となるものの費用は控除の対象外となるので注意が必要です。以下が医療費控除の対象となるサービスです。

支払う自己負担額が対象の施設

支払う自己負担額の2分の1が対象の施設

条件付きでおむつ代、交通費も対象となる

条件によっては、自分で負担したおむつ代と交通費も、確定申告により所得の医療費控除の対象となります。

おむつ代

すでに医師により治療を受けていて、治療を受けるための費用という扱いで、自己負担したおむつ代も医療費控除の対象です。

医療費控除の条件は、疾病によりおおむね6か月にわたり寝たきりの状態であり、医師より「おむつ証明書」を発行してもらった場合に限ります。

医療控除を受けるためには、確定申告時に医療費控除の明細書とともに、「おむつ証明書」の添付もしくは提示が必要です。

交通費

介護保険サービスを利用するために施設に移動する際に負担した交通費も、医療費控除の対象となります。ただし、自家用車で移動した場合にかかる、ガソリン代や駐車場代には控除の対象にはならず、電車やバスなどの公共交通機関やタクシーを利用した場合のみ医療費控除の対象となります。

確定申告時には、公共交通機関利用の場合は施設への移動と交通費が照合できるもの、タクシー利用の場合は領収書が必要です。

医療費控除の対象外の居宅サービス

介護保険の居宅サービスの中でも、医療を目的としていないサービスについては、基本的には医療費控除の対象外になりません。以下が控除の対象外となるサービスです。

  • 訪問介護(生活援助中心型)
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム
  • 介護予防認知症対応型共同生活介護
  • 特定施設入居者生活介護【有料老人ホーム等】
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 介護予防地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 福祉用具貸与
  • 介護予防福祉用具貸与
  • 看護・小規模多機能型居宅介護(生活援助中心型の訪問介護の部分)

その他、医療費控除の対象・対象外となる事例

介護保険サービスについて、医療費控除の対象になるもの、対象にならないものを説明してきましたが、ここでいくつか事例を紹介いたします。

医療費控除の対象事例

以下のサービスを受けた場合は、医療を受けたとして自己負担した額が医療費控除の対象になります。

  • 病院、歯科医院等で受けた診療費、治療費、入院費
  • 治療・療養のための医薬品、漢方薬など購入費用(市販薬も含む)
  • 治療上必要となった松葉杖、医療器具などの購入費用(コルセットなど)
  • 治療による、あんまマッサージ指圧師、柔道整復師、はり師、きゅう師等による施術費

基本的に、これらのサービスで支払った金額を医療費控除をするためには、確定申告時に領収書が必要になります。領収書は失くさないように大切に保管しましょう。

医療費控除の対象事例

一方で、以下のサービスを受けて、自己で支払った場合でも医療費控除の対象となりません。現状病気ではなく、健康の維持や予防のために支払った費用、美容整形や歯の矯正なども対象外です。以下は控除の対象外となります。

  • 病気予防、健康増進のための医薬品、漢方薬、健康食品の購入費
  • 健康診断、人間ドックの費用(疾病が発見され、継続して治療を行う場合を除く)
  • 美容整形、審美目的での歯列矯正の費用
  • 健康維持、疲労回復を目的とした、あんまマッサージ指圧師、柔道整復師、はり師、きゅう師等による施術費
  • 自家用車で通院する場合のガソリン代、駐車場料金
  • 自己都合により発生する差額ベッド代

これらのサービスは、領収書をもらったとしても医療費控除の対象外となりますので注意が必要です。

医療費控除の対象者

介護保険サービスを利用した際に、医療費控除の対象となるのは、自分また自分と同じ生計で暮らしている配偶者や子ども、もしくは親族などのために費用を払った場合です。

その人が自分と同居していない場合でも、自分がその人の生活費をほぼ負担している場合には、同じ生計で暮らしているという扱いで医療費控除の対象になります。

医療費控除の手続き

医療費控除を受けるためには、確定申告時に医療費控除の対象となるサービスを受けたことの証明が必要です。

申請するために、確定申告書と一緒に提出する医療費の明細書を作成します。その際、「医療を受けた人」「病院や薬局などの名称と所在地」「治療内容」「支払った医療費」「保険で補填される額」などの記載が必要になるため、サービスを受けた際に、それを忘れないように記録を残しておくことが大切です。

また、支払った費用が証明できるレシートや領収書も必要になるので、これらも大切に保管しましょう。

控除の対象期間

医療費控除の対象となるのは、所得税の対象期間と同様、該当年度の1月1日から12月31日までの間に、実際に支払った医療費です。

確定申告の申請期間は、医療費を支払った翌年の2月16日から3月15日までとなります。例えば、忙しくて申請ができなかったというような場合でも、医療費を支払った翌年の1月1日から5年間は遡っての控除の申請が可能です。

介護保険サービスにおける医療費控除に関するよくある質問

医療費控除とは何ですか?

その年に自分または自分と生計を共にする配偶者や親族のために医療費を支払った場合に、確定申告時に負担した医療費の一部を所得から控除することを指します。

医療費控除を受ける際、どんな書類が必要ですか?

医療費控除を受ける際、特別な書類は必要なく「医療費控除の明細書」「確定申告書」「医療通知書」「本人確認書類」などが挙げられます。

介護用品は医療費控除の対象ですか?

介護用品の購入、介護にかかった交通費、介護サービスの利用も医療費控除の対象です。

おむつ代などは、確定申告時に医療費控除の明細書とともに、「おむつ証明書」の添付もしくは提示が必要です。

また交通費については、自家用車で移動した場合にかかる、ガソリン代や駐車場代は控除の対象にはならず、電車やバスなどの公共交通機関やタクシーを利用した場合が医療費控除の対象です。

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