老人ホームの費用を安くできる?|活用したい医療費控除を解説

老人ホームの費用を安くできる?|活用したい医療費控除を解説

更新日 2023/05/19

医療費控除とは、その年に自分や家族が一定以上の医療費を支払った場合に、確定申告時に負担した医療費の一部を所得から控除することを言います。

「介護サービス費は医療費に含まれないから、医療費控除は受けられないのでは?」と思っていませんか?実は一定の条件により医療費控除を受けることができるのです。

この記事では、医療費控除の対象となる施設サービスと居宅サービス、控除を受ける際の申請方法などを解説しています。

老人ホームの費用に関して、少しでも経済的負担を軽減したいと考えている方は、是非、参考にしてみてください。

医療費控除の適用条件

医療費控除は自分自身または自分と同じ生計で暮らしている配偶者や子ども、もしくは親族などのために費用を支払ったときに条件を満たします。

医療費控除が適用されるのは、自分自身または自分と同じ生計で暮らしている配偶者や子ども、もしくは親族などのために費用を支払ったときです。

対象となる人が自分と同居していない場合でも、自分がその人の生活費をほぼ負担している場合には、同じ生計で暮らしているという扱いで医療費控除の対象になります。

医療費控除の対象となる施設サービス

公的施設に入居して利用した施設サービスのうち、介護サービス費、食費、居住費などの月額利用料が医療費控除の対象となります。ただし、有料老人ホームの月額利用料は医療費控除の対象にはなりません。

公的施設に入居して利用した施設サービスのうち、介護サービス費、食費、居住費などの月額利用料が医療費控除の対象となります。一方で、歯ブラシやシャンプーなどの日常生活品や特別なサービス費は控除の対象外です。

ただし、有料老人ホームの月額利用料は医療費控除の対象にならず、特養老健といった介護保険施設が該当します。以下は、医療費控除の対象となる老人ホームをまとめました。

<控除対象になる施設>

<支払う額の1/2が控除の対象になる施設>

  • 特別養護老人ホーム

控除対象外でも、例外として申請できるもの

有料老人ホームに入居している方は、月額利用料に対して医療費控除は受けられませんが、日々のおむつ代や通院費用、介護保険サービスを使用するために施設へ移動した際の交通費は医療費控除の対象です。

以下で、詳しく見ていきましょう。

おむつ代

すでに医師により治療を受けていて、治療を受けるための費用という扱いで自己負担したおむつ代も、医療費控除の対象です。

医療費控除の条件は、疾病によりおおむね6カ月にわたり寝たきりの状態であり、医師より「おむつ証明書」を発行してもらった場合に限ります。

医療控除を受けるためには、確定申告時に医療費控除の明細書とともに、「おむつ証明書」の添付または提示が必要です。

交通費

介護保険サービスを利用するために施設に移動する際や通院で負担した交通費も、医療費控除の対象です。ただし、自家用車で移動した場合にかかる、ガソリン代や駐車場代は控除の対象にはならず、電車やバスなどの公共交通機関やタクシーを利用した場合のみ医療費控除の対象となります。

確定申告時には、公共交通機関利用の場合は施設への移動と交通費が照合できるもの、タクシー利用の場合は領収書が必要です。

医療費控除の対象となる居宅サービス

医療的ケアが必要な要介護者の自宅に看護師が訪問する「訪問看護」、リハビリが必要な要介護者の自宅に作業療法士や理学療法士が訪問する「訪問リハビリテーション」などが医療費控除の対象となる居宅サービスです。

医療費控除の対象には居宅サービスも含まれます。

例えば、医療的ケアが必要な要介護者の自宅に看護師が訪問する「訪問看護」、リハビリが必要な要介護者の自宅に作業療法士や理学療法士が訪問する「訪問リハビリテーション」などが医療費控除の対象となる居宅サービスです。

以下では、医療費控除の対象となる居宅サービスをまとめました。

  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
  • 通所リハビリテーション
  • 短期入所療養介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限る)
  • 複合型サービス(上記の居宅サービスを含む組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除く)に限る)

ホームヘルパーが要介護者の自宅を訪問してサービスを提供する「訪問介護」や、専用の浴槽を用いて自宅で入浴をおこなう「訪問入浴」などは、医療費控除の対象となる居宅サービスと組み合わせて利用することで医療費控除の対象として認められます。

医療費控除の対象外となる居宅サービス

介護保険の居宅サービスの中で医療を目的としていないサービスは、基本的に医療費控除の対象外です。以下は、医療費控除の対象外となるサービスをまとめました。

  • 訪問介護(生活援助中心型)
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム
  • 介護予防認知症対応型共同生活介護
  • 特定施設入居者生活介護(有料老人ホームなど)
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 介護予防地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 福祉用具貸与
  • 介護予防福祉用具貸与
  • 複合型サービス(生活援助中心型の訪問介護の部分)

医療費控除の計算方法

1年間に支払った医療費の合計が10万円以上の場合、医療費控除を受けることができます。なお、医療費控除額の上限は200万円です。

1年間に支払った医療費の合計が10万円以上の場合、医療費控除を受けることができます。なお、医療費控除額の上限は200万円です。医療費控除の計算方法は以下の通りです。

医療費控除額=1年間の医療費の合計額-保険金などの補填額-10万円

*総所得金額200万円未満の人はその5%

医療費控除の手続き

医療費控除を受けるためには確定申告をする必要があります。

医療費控除を受けるためには確定申告をする必要があります。

申請時は、確定申告書と一緒に医療費控除の明細書を作成します。その際、「医療を受けた人」「病院や薬局などの名称と所在地」「治療内容」「支払った医療費」「保険で補填される額」などの記載が必要になるため、サービスを受けた際に、忘れないように記録を残しておくことが大切です。

なお、介護保険施設に入居している方や身体状況によって自分で確定申告ができない方は、専門家に依頼して確定申告をすることになります。

医療費控除以外で老人ホームで利用できる費用軽減制度

医療費控除以外にも老人ホームの費用を軽減できる制度があります。

医療費控除以外にも老人ホームの費用を軽減できる制度があります。以下では、医療費控除以外の費用軽減制度をまとめました。

高額介護サービス費

「高額介護サービス費制度」は、1ヵ月の介護保険サービス自己負担額が限度額を超えた場合、超えた分の金額が戻ってくる制度です。支給対象の方には自治体から「高額介護サービス費支給申請書」が送られてくるので、忘れずに申請しましょう。

高額医療・高額介護合算制度

「高額医療・高額介護合算制度」は、同一世帯で支払った介護保険サービスと医療費の自己負担額の合計が基準を越えた場合、越えた分の金額が戻ってくる制度です。合算期間は8月1日から翌年の7月31日です。

ただし、同一世帯内でも「夫が75歳以上で後期高齢者医療保険、妻が75歳未満で国民健康保険」など、加入する保険が異なる場合は合算することができません。さらに、基準を500円以上越えない場合は適用外です。

医療費控除に関するよくある質問

医療費控除とは何ですか?

その年に自分や家族が一定以上の医療費を支払った場合に、確定申告時に負担した医療費の一部を所得から控除することを言います。

医療費控除を申請する際に期限はありますか?

翌年の1月1日から5年間、12月31日までが期限です。例えば、2022年に何らかの理由で申告を忘れていた場合、2027年12月31日までが申告期限です。

医療費控除の明細書はどこでもらえば良いですか?

医療費控除の明細書の用紙は、国税庁のホームページから印刷することができます。なお、自宅にプリンターがない場合は税務署にてもらうことも可能です。

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