老人ホームの費用を安くできる?活用したい医療費控除を解説

老人ホームの費用を安くできる?活用したい医療費控除を解説

公開日 2022/06/27

医療費控除とは、その年に自分や家族が一定以上の医療費を支払った場合に、確定申告時に負担した医療費の一部を所得から控除することを言います。

「介護サービス費は医療費に含まれないから、医療費控除は受けられないのでは?」と思っていませんか?実は一定の条件により医療費控除を受けることができるのです。

この記事では、医療費控除の対象となる施設サービスと居宅サービス、控除を受ける際の申請方法などを解説しています。

老人ホームの費用に関して、少しでも経済的負担を軽減したいと考えている方は、是非、参考にしてみてください。

医療費控除の適用条件

医療費控除は自分自身または自分と同じ生計で暮らしている配偶者や子ども、もしくは親族などのために費用を支払ったときに条件を満たします。

医療費控除が適用されるのは、自分自身または自分と同じ生計で暮らしている配偶者や子ども、もしくは親族などのために費用を支払ったときです。

対象となる人が自分と同居していない場合でも、自分がその人の生活費をほぼ負担している場合には、同じ生計で暮らしているという扱いで医療費控除の対象になります。

医療費控除の対象となる施設サービス

公的施設に入居して利用した施設サービスのうち、介護サービス費、食費、居住費などの月額利用料が医療費控除の対象となります。ただし、有料老人ホームの月額利用料は医療費控除の対象にはなりません。

公的施設に入居して利用した施設サービスのうち、介護サービス費、食費、居住費などの月額利用料が医療費控除の対象となります。一方で、歯ブラシやシャンプーなどの日常生活品や特別なサービス費は控除の対象外です。

ただし、有料老人ホームの月額利用料は医療費控除の対象にならず、特養老健といった介護保険施設が該当します。以下は、医療費控除の対象となる老人ホームをまとめました。

<控除対象になる施設>

<支払う額の1/2が控除の対象になる施設>

  • 特別養護老人ホーム

控除対象外でも、例外として申請できるもの

有料老人ホームに入居している方は、月額利用料に対して医療費控除は受けられませんが、日々のおむつ代や通院費用、介護保険サービスを使用するために施設へ移動した際の交通費は医療費控除の対象です。

以下で、詳しく見ていきましょう。

おむつ代

すでに医師により治療を受けていて、治療を受けるための費用という扱いで自己負担したおむつ代も、医療費控除の対象です。

医療費控除の条件は、疾病によりおおむね6カ月にわたり寝たきりの状態であり、医師より「おむつ証明書」を発行してもらった場合に限ります。

医療控除を受けるためには、確定申告時に医療費控除の明細書とともに、「おむつ証明書」の添付または提示が必要です。

交通費

介護保険サービスを利用するために施設に移動する際や通院で負担した交通費も、医療費控除の対象です。ただし、自家用車で移動した場合にかかる、ガソリン代や駐車場代は控除の対象にはならず、電車やバスなどの公共交通機関やタクシーを利用した場合のみ医療費控除の対象となります。

確定申告時には、公共交通機関利用の場合は施設への移動と交通費が照合できるもの、タクシー利用の場合は領収書が必要です。

医療費控除の対象となる居宅サービス

医療的ケアが必要な要介護者の自宅に看護師が訪問する「訪問看護」、リハビリが必要な要介護者の自宅に作業療法士や理学療法士が訪問する「訪問リハビリテーション」などが医療費控除の対象となる居宅サービスです。

医療費控除の対象には居宅サービスも含まれます。

例えば、医療的ケアが必要な要介護者の自宅に看護師が訪問する「訪問看護」、リハビリが必要な要介護者の自宅に作業療法士や理学療法士が訪問する「訪問リハビリテーション」などが医療費控除の対象となる居宅サービスです。

以下では、医療費控除の対象となる居宅サービスをまとめました。

  • 訪問看護
  • 訪問リハビリテーション
  • 居宅療養管理指導
  • 通所リハビリテーション
  • 短期入所療養介護
  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護(一体型事業所で訪問看護を利用する場合に限る)
  • 複合型サービス(上記の居宅サービスを含む組合せにより提供されるもの(生活援助中心型の訪問介護の部分を除く)に限る)

ホームヘルパーが要介護者の自宅を訪問してサービスを提供する「訪問介護」や、専用の浴槽を用いて自宅で入浴をおこなう「訪問入浴」などは、医療費控除の対象となる居宅サービスと組み合わせて利用することで医療費控除の対象として認められます。

医療費控除の対象外となる居宅サービス

介護保険の居宅サービスの中で医療を目的としていないサービスは、基本的に医療費控除の対象外です。以下は、医療費控除の対象外となるサービスをまとめました。

  • 訪問介護(生活援助中心型)
  • 認知症対応型共同生活介護(グループホーム
  • 介護予防認知症対応型共同生活介護
  • 特定施設入居者生活介護(有料老人ホームなど)
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 介護予防地域密着型特定施設入居者生活介護
  • 福祉用具貸与
  • 介護予防福祉用具貸与
  • 複合型サービス(生活援助中心型の訪問介護の部分)

医療費控除の計算方法

1年間に支払った医療費の合計が10万円以上の場合、医療費控除を受けることができます。なお、医療費控除額の上限は200万円です。

1年間に支払った医療費の合計が10万円以上の場合、医療費控除を受けることができます。なお、医療費控除額の上限は200万円です。医療費控除の計算方法は以下の通りです。

医療費控除額=1年間の医療費の合計額-保険金などの補填額-10万円

*総所得金額200万円未満の人はその5%

医療費控除の手続き

医療費控除を受けるためには確定申告をする必要があります。

医療費控除を受けるためには確定申告をする必要があります。

申請時は、確定申告書と一緒に医療費控除の明細書を作成します。その際、「医療を受けた人」「病院や薬局などの名称と所在地」「治療内容」「支払った医療費」「保険で補填される額」などの記載が必要になるため、サービスを受けた際に、忘れないように記録を残しておくことが大切です。

なお、介護保険施設に入居している方や身体状況によって自分で確定申告ができない方は、専門家に依頼して確定申告をすることになります。

医療費控除以外で老人ホームで利用できる費用軽減制度

医療費控除以外にも老人ホームの費用を軽減できる制度があります。

医療費控除以外にも老人ホームの費用を軽減できる制度があります。以下では、医療費控除以外の費用軽減制度をまとめました。

高額介護サービス費

「高額介護サービス費制度」は、1ヵ月の介護保険サービス自己負担額が限度額を超えた場合、超えた分の金額が戻ってくる制度です。支給対象の方には自治体から「高額介護サービス費支給申請書」が送られてくるので、忘れずに申請しましょう。

高額医療・高額介護合算制度

「高額医療・高額介護合算制度」は、同一世帯で支払った介護保険サービスと医療費の自己負担額の合計が基準を越えた場合、越えた分の金額が戻ってくる制度です。合算期間は8月1日から翌年の7月31日です。

ただし、同一世帯内でも「夫が75歳以上で後期高齢者医療保険、妻が75歳未満で国民健康保険」など、加入する保険が異なる場合は合算することができません。さらに、基準を500円以上越えない場合は適用外です。

医療費控除に関するよくある質問

医療費控除とは何ですか?

その年に自分や家族が一定以上の医療費を支払った場合に、確定申告時に負担した医療費の一部を所得から控除することを言います。

医療費控除を申請する際に期限はありますか?

翌年の1月1日から5年間、12月31日までが期限です。例えば、2022年に何らかの理由で申告を忘れていた場合、2027年12月31日までが申告期限です。

医療費控除の明細書はどこでもらえば良いですか?

医療費控除の明細書の用紙は、国税庁のホームページから印刷することができます。なお、自宅にプリンターがない場合は税務署にてもらうことも可能です。

よく読まれている記事

よく読まれている記事

article-image

【動画でわかる】有料老人ホームとは?費用やサービス内容、特養との違いは

介護施設を探している中で「老人ホームにはいろいろな種類があるんだ。何が違うんだろう?」と疑問を感じることがあるかもしれません。 そこで今回は、名前に「老人ホーム」とつく施設の中でも、「有料老人ホーム」を中心に紹介。よく似ている「特別養護老人ホーム」との違いも見ていきます。 「老人ホームの種類が多すぎて訳がわからない」と思ったら、ぜひ参考にしてみてくださいね。 https://youtu.be/eMgjSeJPT8c 有料老人ホームの種類 有料老人ホームには、以下の3種類があります。 介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム 健康型有料老人ホーム この3種類の違いを以下にまとめています。 種類 介護付き有料老人ホーム ...

2021/10/28

article-image

【動画でわかる!】グループホームの費用はいくらかかる?月額利用料の内訳や初期費用を徹底解説!

認知症の方の入居先を探す際、選択肢に挙がるのが認知症の高齢者が共同生活を営む小規模介護施設「グループホーム」です。 この記事では、グループホームの入居一時金や月額利用料を詳しく解説。グループホームで使える助成制度についてもご紹介しています。 https://youtu.be/5Bec4lhyW4M グループホームにかかる費用の相場 グループホームの費用には、入居時に必要な「初期費用」と毎月発生する「月額利用料」があります。民間、社会福祉法人、医療法人、NPO法人とさまざまな団体がグループホームを運営していることから、施設ごとの費用やサービスには差があります。 初期費用は0円の施設から100万円程度の施設まであり、平均すると10~20万円程度。月額利用料は施設の立地やサービス内容によっても異なり、おおむね15~30万円程度です。 一般的な有料老人ホームに比べると、初期費用・月額利用料ともに費用を抑えて入居することが可能です。 項目 ...

2021/11/15

article-image

グループホームに必要な人員基準|注意点と他施設との比較

「グループホームの職員はどれくらい配置されてるの?」「夜間に人が少ないと徘徊などに対応できないのでは?」などとグループホームの人員基準に関して疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。 そこでこの記事では、グループホームの人員基準と注意点、他施設との比較に関して解説しています。 「グループホームの入居を検討しているけど、どんな人からサポートを受けられるの?」などと悩まれている方は、是非、参考にしてみてください。 グループホームは主に4つの人員基準で成り立っている グループホームの人員基準は主に次の4つの職種で設定されています。 介護職員 計画作成担当者 管理者 代表者 それぞれの人員基準について詳しく見ていきましょう。 介護職員の人員基準 介護職員は入居者の生活援助や身体介助などの業務を担っており、入居者3人に対して1人以上配置されます。また、複数の人員が配置されるときは、最低1人は常勤職員であることも人員基準で決められています。 入居者の見守りは深夜も必要なため、介護職員は24時間体制で常駐しています。また、複数のユニットがあるグループホームは、ユニットごとに専任の介護職員が配置されます。 計画作成担当者の人員基準 計画作成担当者は入居者一人ひとりに合わせたケアプランを作成する職員で、ユニットごとに1人以上配置されます。なお、1つの事業所に2ユニットある場合は計画作成担当者も2人必要です。 計画作成担当者になるには次の要件を満たす必要があります。 実務者研修基礎課程または認知症介護実践者研修を修了していること 専らその職務に従事する者であること また、計画作成担当者のうち最低1人は、介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格の保有が必要です。 管理者の人員基準 管理者とは経営や人事・労務管理など管理業務を担う職員で、ユニットごとに常勤の管理者が配置されます。自らも介護サービスの実施や他の職員の指導をおこなうため、介護の知識や経験も必要です。 管理者になるには次の要件が求められます。 特別養護老人ホームや介護老人保健施設などで3年以上従事した経験があること 厚生労働省が規定する管理者研修を修了していること 特定の介護施設における3年以上の実務経験に加え、認知症高齢者介護の経験も必要です。さらに厚生労働省の管理者研修を受けて、ようやく管理者になるための基準を満たせます。 なお、管理業務に支障をきたさなければ、ほかの職種との兼任も可能です。 代表者の人員基準 管理者の管理対象がユニット単位なのに対し、代表者はグループホーム全体を管理します。代表者になるには、次の要件を満たす必要があります。 介護施設で認知症高齢者介護に従事した経験を持つこと、もしくは保険・医療・福祉サービスの提供をおこなう事業所の経営に携わった経験があること 厚生労働省が定める認知症対応型サービス事業開設者研修を修了していること グループホームの人員基準の注意点 グループホームの人員基準を職種ごとに説明してきましたが、注意する点もあります。しっかり把握したうえで入居施設を選びましょう。 介護職員が常勤ではない場合がある 介護職員の人員基準は入居者3人に対して1人以上のため、1ユニットあたり最低でも2~3人が配置されます。全員が常勤である必要はなく、1人以上の常勤職員がいればパートやアルバイトなどの臨時職員も起用できます。このため、特に食事や入浴など人手が多く必要な時間帯では、非常勤職員が担当となる場合も多いです。 規定の人数が必ず24時間確保されているわけではない グループホームの人員基準は入居者3人に対して介護職員1人と決められています。しかし、適用されるのは日中のみで、24時間この人数が常駐するわけではありません。 人員基準は時間帯によって異なり、夜間や深夜は1ユニットに対して介護職員が1人以上いれば良いとされています。このように、時間帯によっては介護職員が手薄になる場合もあると把握しておきましょう。 規定の3:1を超えない場合もある 入居者3人に対して介護職員1人という比率は、実際に介護現場で働いている職員数ではなく労働時間をもとに計算します。つまり、人手が多く必要な時間帯を手厚くした分、それ以外の時間帯の職員数を抑えることも可能です。このように実際に働く職員数は人員基準をもとに調節されるため、時間帯によっては既定の「3:1」を超えないこともあります。 グループホームによってサービスの質や人員は大きく変わる グループホームの人員の最低基準は厚生労働省によって決められていますが、実際にどのくらい配置するかは施設の裁量に任せられています。このため、基準をギリギリクリアする施設もあれば、基準を上回る人員を確保している施設もあります。 人員が豊富なグループホームは職員一人ひとりにかかる負担が抑えられるため、サービスの質が向上します。逆に人員が少ないと、時間帯によってはサービスが行き届かなくなることも。人員配置によってサービスの質や量は変わるため、入居前に確認することが大切です。 グループホーム以外の介護施設の人員基準 グループホームだけでなく、ほかの介護施設の人員基準も知っておきましょう。介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅、特別養護老人ホームの人員基準を紹介します。 介護付き有料老人ホームの人員基準 介護付き有料老人ホームは、主に介護を必要とする高齢者が介護や生活支援を受けながら生活する施設です。 介護付き有料老人ホームの人員配置の最低基準は、要支援2以上の入居者3名に対して介護職員または看護職員を1名配置する「3:1」と決められています。施設によっては「2.5:1」「2:1」「1.5:1」などさらに手厚い配置にしている場合もあり、サービスが向上する分上乗せ介護費用が発生することもあります。 その他の主な人員は下記の通りです。 施設長(常勤の管理者) 事務員 生活相談員 看護職員 機能訓練指導員 計画作成担当者 栄養士 調理員 住宅型有料老人ホームの人員基準 住宅型有料老人ホームは、食事や洗濯、清掃といった生活支援サービスを受けられる高齢者施設です。 管理者を1人配置する必要がありますが、そのほかの職種の配置義務はありません。このため、下記の職種の配置は施設ごとに必要に応じて決められます。 介護職員 看護職員 生活相談員 機能訓練指導員 サービス付き高齢者向け住宅の人員基準 サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリー化された高齢者向けの賃貸住宅です。一般型と介護型があり、一般型は介護施設のような人員基準は特にありません。 一方、介護型は「特定施設」の認定を受けているため、入居者3人に対して介護職員1人以上の配置義務があります。 特別養護老人ホームの人員基準 特別養護老人ホームは基本的に要介護3以上の高齢者が入居する施設で、介護だけでなく医療ケアにも対応しています。人員基準は入居者3人に対して介護職員または看護職員1人以上の配置が定められています。 また、入居者100人に対して医師1名、看護師3名以上という基準も設けられています。 グループホームの人員基準に関するよくある質問 グループホームの職員の人員基準は? 入居者3人に対して介護職員を1人以上配置することが定められています。また、複数の人員が配置されるときは、最低1人は常勤職員であることも人員基準で決められています。 グループホームでは24時間規定の人員配置? 入居者3人に対して介護職員1人を配置するのは、日中にのみ適用されます。よって、夜間や深夜は1ユニットに対して介護職員が1人以上いれば良いとされています。 グループホームはどのような人員配置なの? グループホームの人員配置は、介護職員・計画作成担当者・管理者・代表者の4つの職種で成り立っています。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "グループホームの職員の人員基準は?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...

2023/02/13

特集

介護の基礎知識

total support

介護の悩みを
トータルサポート

total support

介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面など様々な方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。

鎌倉新書グループサイト