どこが違う?特別養護老人ホームと養護老人ホームの違いを解説

どこが違う?特別養護老人ホームと養護老人ホームの違いを解説

更新日 2024/03/19

名前が似ているので間違えられやすい「特別養護老人ホーム」と「養護老人ホーム」。しかし、それぞれの施設の目的や入居基準、利用できるサービスなどは大きく異なります。特別養護老人ホームと養護老人ホームの違いをしっかり理解して、施設選びの参考にしましょう。

特別養護老人ホームと養護老人ホームの比較

特別養護老人ホームと養護老人ホームではその目的、入居条件、サービス内容が異なります。その違いをここでは詳しく見ていきましょう。

特別養護老人ホーム養護老人ホーム
目的中~重度の要介護認定を受けた高齢者が、介護や生活支援を受けて居住する生活環境や経済的に困窮した高齢者を養護し、社会復帰させる
入居基準要介護3以上原則自立
サービス内容身体介護中心の自立支援食事の提供や健康管理などの自立支援
居室タイプ個室・多床室個室・多床室
費用月額8~14万円月額0~14万円
入居難易度入居待機者が多く、入居までに数カ月以上かかることもある市区町村が対象者の調査をおこない、決定する

両施設の一番の違いは目的

「特別養護老人ホーム」は、介護や生活支援を受けながら居住する介護施設です。そのため、要介護度の高い高齢者や身体的な介助の必要な高齢者が入所対象です。

対して、養護老人ホームの目的は、生活面・経済面で困窮した高齢者を養護し、社会復帰できるように支援することです。

特別養護老人ホームと養護老人ホームは混同されやすいですが、目的が違うため、まったく異なる施設だということがわかります。

入居条件の違い

特別養護老人ホームも養護老人ホームも65歳以上の高齢者を対象にしていますが、自立をしているか、要介護3以上の認定を受けているかという点で入居条件が異なります。

特別養護老人ホーム

特養の入居条件は要介護度が3~に5で認知症は軽度のみとなっている

特別養護老人ホームは、常時介護が必要で在宅での介護が困難な高齢者を対象とした高齢者介護施設です。もともと要介護1~5の方が入居対象でしたが、2015年からは要介護3以上の認定が入居の条件となりました。

基本的には65歳以上の高齢者が対象ですが、特定疾病に罹患している場合は40~64歳までの希望者にも入居が認められます。

養護老人ホーム

養護老人ホームの入居条件は要介護状態ではなく認知症高齢者も原則としては不可となっている

入居対象者

養護老人ホームは、環境上の理由や経済的理由により、在宅で生活していくことが困難な65歳以上の高齢者が対象です。

入所のための調査・審査は市区町村がおこないます。市区町村の審査により入居が决定となった場合のみ利用が可能になるのですが、この判断基準は、市区町村によって異なるため、居住している市区町村で確認する必要があります。

入居基準

「環境上の理由や経済的理由により在宅での生活が困難な高齢者」とはどんな人でしょうか?具体的な例を紹介します。

  • 収入や年金がなく困窮している
  • 独居の高齢者
  • 家族などから虐待を受けている
  • 身体的、精神的な障害がある
  • 認知症である
  • ほかの法律に基づく施設に入所できない
  • ホームレスである
  • 犯罪を以前に犯したことがある
  • 賃貸住宅を立ち退く必要がある など

このように、現在の環境・経済状況では生活が難しい人は対象となる可能性があります。入居希望の場合、詳しい基準を住まいの市区町村で確認しましょう。

費用の違い

それぞれ費用は安価。養護老人ホームは前年度の収入によって月額費用が決まる特殊なケース

特別養護老人ホームでは介護度、入居する部屋、所得によって費用が変わります。一方で養護老人ホームでは前年度の収入によって費用が決まります。

特別養護老人ホームの月額利用料は約8~14万円

有料老人ホームでは入居一時金が一般的ですが、特別養護老人ホームでは入居一時金は必要ありません。居住費、食費、介護サービス費、医療費、理美容代、お菓子代、被服費、レクリエーション費という、国が定めた基準費用額に基づいて算定されている日常生活費のみを月々支払います。

おむつ代やクリーニングのいらない私物の洗濯については負担する必要がありません。

施設の居室のタイプによって実際に毎月かかる費用は異なります。相部屋の多床室の場合は月額利用料は約8万円ほど、1人のユニット型個室なら約14万円が目安となります。

養護老人ホームの月額は前年度の収入で決まる

養護老人ホームは特別養護老人ホームと同様に入居一時金がかかりません。月額費用は前年度の収入によって変動し、月額費用の目安は0〜14万円とされています。

税金や社会保険料、医療費を控除した年収が27万円未満だった場合、月額利用料は0円になります。40〜42万円未満であれば月額利用料は10,800円というように、39段階で細かく利用料が定められています。

経済状況によって月額費用の免除や減額などの措置が取られる場合もあります。

所得階層による考え方

所得階層
第1・2段階第3段階第4段階
居住費30,000円
光熱水費10,000円
食費11,700円19,500円41,400円
サポート料15,000円35,000円70,000円
合計66,700円94,500円151,400円

出典:「養護老人ホームの契約入所にかかる利用料金の考え方(例)」

収入額による考え方

収入額(月)収入額(年)算定後利用料
130,000円1,560,000円85,600円
135,000円1,620,000円90,100円
140,000円1,680,000円94,600円
145,000円1,740,000円99,100円
150,000円1,800,000円103,600円
155,000円1,860,000円108,100円
160,000円1,920,000円112,600円
165,000円1,980,000円117,100円
170,000円2,040,000円121,600円
175,000円2,100,000円126,100円
180,000円2,160,000円130,600円
185,000円2,220,000円135,100円
190,000円2,280,000円139,600円
195,000円2,340,000円144,100円
200,000円2,400,000円148,600円
収入額(年額)利用料日額1ヵ月の
利用料(30日)
10日以内3,500円
11日以上 100万未満2,600円78,000円
〃 120万未満2,800円84,000円
〃 150万未満3,100円93,000円
〃 200万未満3,500円105,000円
〃 300万未満4,000円120,000円
〃 300万以上4,200円126,000円

出典:「養護老人ホームの契約入所にかかる利用料金の考え方(例)」

サービス内容の違い

特別養護老人ホームの目的は介護であるのに対し、養護老人ホームの目的は高齢者養護、社会復帰です。それぞれ入居者が受けられるサービスの内容が異なるので、ここではその内容について見ていきましょう。

特別養護老人ホームはどこでも同等の介護サービスが受けられる

特養では、どの施設に入居しても同じサービスが提供されるよう決められている

特別養護老人ホームは、介護保険制度上では「介護老人福祉施設」と呼ばれる公的施設です。法令によってサービス内容が規定されているので、どこの施設に入居しても同じサービスを提供できるよう決められているのが特徴です。

例を挙げると、食事や入浴に関しては「家庭と同等の内容で提供すること」「利用者は最低週2回入浴できるようにすること」と規定されています。

入居者の部屋や共用部分の清掃については「施設スタッフもしくは施設から依頼を受けた外部の業者が定期的におこなうこと」と規定されています。また食事や入浴、排泄時の介助は、常駐する介護スタッフによっておこなわれます。

理学療法士や作業療法士によって本格的なリハビリを受けられる施設もあるので、必要な場合は入居前にチェックしましょう。

養護老人ホームは原則として介護サービスの提供はされない

養護老人ホームでは原則介護はおこなわれないが、生活の質を向上させる目的として行事やレクリエーションがおこなわれる。

養護老人ホームは高齢者を養護、社会復帰を促すことが目的のため、基本的にはスタッフによる介護サービスは提供されません。

その一方で、社会復帰をするための支援やアドバイスが受けられ、生活の質を向上させるための行事やレクリエーションがおこなわれます。また、日常生活に必要な基本的サービスとして食事、入浴、清掃、健康診断などを受けることもできます。

しかし高齢社会が進み、介護が必要な入所者が増えている現状を踏まえ、現在、養護老人ホームの約半数は「特定施設入居者生活保護」の指定を受けて、介護サービスも提供できるようになりました。そのため要介護認定を受けた人や認知症の入居者も増えています。

それぞれの主なメリット・デメリット

特別養護老人ホームと養護老人ホームではメリット・デメリットはさまざま

それぞれの老人ホームには入居一時金がない、費用が安いなどメリットが多いように見えますが、デメリットもしっかりと把握しましょう。

特別養護老人ホームのメリット:費用負担が少ない

特別養護老人ホームの1番のメリットは入居一時金が必要ないこと。そして所得に応じた利用料の減免制度が設けられていて、月々の利用料も民間の有料老人ホームと比べると安いところが多いです。

さらに月々の利用料の半分が医療費控除の対象となり、その点でも費用負担が少なく済むのがメリットです。

また、特別養護老人ホームでは介護度が上がったり認知症が進んでも看取りまで世話をしてくれるので、途中で退居せず終身入居できるのもメリットのひとつです。

特別養護老人ホームのデメリット:入居待機者が多数いる

特別養護老人ホームの一番のデメリットは、入居待機者が多数いるということです。待機期間は地域や施設によって異なるが、入居を希望してもすぐに入居できないのは大きなデメリットではないでしょうか。

また2015年4月の制度改正で、入居待機者数を減らす目的で65歳以上の人の入居条件が要介護3以上になったことも難点として挙げられ、特別養護老人ホームへの即入居は厳しいのが現状です。

養護老人ホームのメリット:経済的支援を受けられる

養護老人ホームは、経済的な理由により生活の難しい高齢者を受け入れる施設。そのため、ほかの施設と比較すると大幅に低額で利用できることがわかります。

また、生活保護法が適用となると費用が減額・免除となったり、経済状況によっては月額利用料が徴収されないことも。費用面ではかなり柔軟に対応しています。

経済的な困窮、環境上の理由など、さまざまな事情でほかの施設への入居が難しい場合は、養護老人ホームを検討してみてはいかがでしょうか。

養護老人ホームのデメリット:希望通りに入居できるわけではない

入居を希望していても、必ず入居できるわけではありません。市区町村が入居の可否を決定するため、入居のハードルは、自治体によって差があるのが現状です。

養護老人ホームに入居したい場合は、まず自治体の担当窓口に申し込みをおこない、入居措置をとってもらう必要があります。

しかし運営費の予算の問題から、入居措置を控える自治体も少なからず存在しています。こうした理由が、地域によって入居のハードルに極端な差が生まれる原因となっています。

特別養護老人ホームと養護老人ホームの違いに関するよくある質問

特別養護老人ホームと養護老人ホームの特徴は異なりますか?

特別養護老人ホームは、介護や生活支援を受けながら居住する介護施設です。そのため、要介護度の高い高齢者や身体的な介助の必要な高齢者が生活しています。

一方、養護老人ホームの特徴は、生活面・経済面で困窮した高齢者を養護し、社会復帰できるように支援することです。このように比較すると、特別養護老人ホームは介護に重きを置いており、養護老人ホームは高齢者を養護し社会復帰に導く施設だということがわかります。

特別養護老人ホームと養護老人ホームの費用感は異なりますか?

特別養護老人ホームでは入居一時金は必要なく、「居住費」「食費」「介護サービス費」などの国が定めた基準費用額に基づいて算定されている日常生活費のみを月々支払います。月額費用の目安は約8~14万円程度で安価な施設です。

一方、養護老人ホームは特別養護老人ホームと同様に入居一時金がかかりません。ただし大きな違いとして、月額費用は前年度の収入によって変動し、月額費用の目安は約0〜14万円であることです。

また、経済状況によって月額費用の免除や減額などの措置が取られる場合もあります。

特別養護老人ホームや養護老人ホームへ入居するのは難しいですか?

特別養護老人ホームは原則、入居条件として要介護3以上で65歳以上の高齢者としており、月額費用が非常に安価です。それ故に、入居待機者が多く、入居までに数カ月以上かかることもあるので入居難易度は高いと言えるでしょう。

養護老人ホームについては、「市区町村が対象者の調査をおこない決定する」とあり条件を満たすことができれば早めに入居することができるので比較的入居難易度は低いと言えます。

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