入浴拒否をされたらどうしたらいい?|原因と対策を徹底解説

入浴拒否をされたらどうしたらいい?|原因と対策を徹底解説

更新日 2023/05/15

入浴は、皮膚を清潔に保ったりリラックスすることで心のケアをしたりと、日常生活において重要な役割を持っています。しかし、高齢者の方の中には認知症やさまざまなことが原因で、入浴に拒否を示す方もいます。

この記事では、高齢者の方の入浴拒否に対する対応や拒否が起こる原因を解説しています。

「お風呂が好きだった家族が急に入りたくない!と言い出して困っている」と困惑している方は、是非、参考にしてみてください。

入浴拒否に対する対応

入浴拒否をされてしまった場合は、まずは本人の気持ちに寄り添うことが大切

お風呂に入ってほしいのに、「この前入った!」「なんで入らなければいけないの!」などと言われてしまうと、家族として困惑してしまうこともあるでしょう。以下では、入浴拒否に対する対応をまとめました。

本人の意思を尊重する

本人の意思を尊重して気持ちに寄り添うことが重要

拒否されたからといって、強引に浴室へ連れて行ったり無理やり服を脱がしたりしてはいけません。拒否された場合は一呼吸おき、本人の気持ちに寄り添い、認めてあげることが重要です。

入浴の伝え方を工夫する

認知症の症状が進行すると、当たり前にできていたことができなくなったり目の前のものがお風呂と認識できなくなり、不安を感じ拒否されることも…。この症状は認知機能障害と呼ばれ、入浴してもらうためにはちょっとした工夫が必要です。

認知症の方の場合、一連の入浴手順を一気に伝えるのではなく、その都度、何をするかを伝えることが大切です。例えば、「脱衣所へ行く」「服を脱ぐ」「浴室のドアを開ける」「シャワーの蛇口をひねる」「身体を洗う」などと流れを短く区切って、丁寧に伝えると良いでしょう。

肌や匂いでお風呂を感じてもらう

「入浴をしたくない!」と言う認知症の方に対して、脱衣所に連れて行きいきなり服を脱がせたりすると、入浴に対してより強い拒否感を生みます。そのようなときは、服を着たままお湯を張った湯船を見せたり触らせたりすることで、入浴は気持ち良いものだと思い出す可能性があります。柚子や菖蒲などで季節感を演出するのも良いでしょう。

また声かけの際は湯船を見せながら、「お風呂が湧いたよ!一番風呂だよ!」などと話すと良いでしょう。

温かいタオルや足浴から始める

入浴拒否が強い場合は、温かいタオルや足浴を促すと良い

服を脱いで入浴すること自体を面倒くさいと思っており、入浴を拒否している可能性もあります。そのようなときは、温かいタオルで顔や手、足などを優しく拭いてあげることから始めましょう。

温かいタオルで身体を拭くことに慣れてきたら足を温める足浴を促すなど、決して焦らず、段階を踏んで移行させると良いでしょう。

入浴拒否が起こる原因

入浴拒否が起こる理由はさまざまで認知症によるものもあれば、単に面倒くさいと思っている場合もある

介護をする人からすれば「あんなにお風呂が好きだったのに…」とショックを受けることもあるでしょう。原因を紐解くと、身体的・精神的な理由から入浴拒否が始まることも多いようです。

以下では、入浴拒否が起こる原因をまとめました。

入浴を必要だと思っていない

認知症による記憶障害で前回いつ入浴したか覚えておらず、まだ大丈夫だと思ってしまうこともある

認知症の症状による記憶障害が原因で、入浴を必要だと思っておらず、拒否をしている可能性があります。記憶障害により前回いつ入浴したのか覚えておらず、「まだ入浴をしなくても大丈夫だ」と考えてしまうことが多いようです。

また認知症ではなくても、加齢により判断力や思考力の低下によって自身の臭いや汚れの状態を把握できず、入浴したいという気持ちにならないこともあります。

入浴が面倒くさい

入浴の一連の流れを面倒くさいと感じ、拒否をしている場合もあります。加齢により体力が低下している高齢者の方にとって、脱衣所へ移動したり服を脱いだりすることは、一つひとつが大変な作業なため、月1回でも清拭をするといったところから始めるのも一案です。

裸になることに抵抗がある

入浴介助が必要な人にとっては、身体を見られるのが恥ずかしいや服を脱ぐことで無防備になることが怖いなどの理由から、入浴を拒否している可能性があります。

また認知症の症状のひとつである物盗られ妄想により、「服を脱いだらそのまま盗まれてしまうのではないか」と感じ、拒否をしている場合もあります。

高齢者も大人であるため、当然に羞恥心があります。「自分たちならどうしてほしいか」をイメージすることも大切です。

入浴に対して負のイメージがある

下着を脱いだ際に失禁の汚れを見られた経験などがあると、羞恥心が刻み込まれ、入浴を拒否してしまう場合があります。

また、入浴中に何度も「大丈夫?」「ちゃんと身体を洗ってる?」などと声をかけられてリラックスできなかったことが引き金となって、入浴拒否に至っている可能性も考えられます。

どうしても自宅で入浴できない場合は無理をしない

自宅での入浴が無理な場合は、介護保険サービスを利用するのも手段のひとつ

本人の拒否が強く、どうしても自宅で入浴できない場合は、デイサービスでの入浴サービスや訪問入浴サービスを利用しましょう。介護スタッフは入浴拒否に対しての対応を心得ているため、スムーズに入浴することができるでしょう。

本人が入浴介助に慣れてきたら、介護スタッフにどのような声かけをすれば拒否なく入浴してくれるかを聞いてみるのも良いです。

拒否をされても叱ってはいけない

拒否をされたとしても叱ってはいけない。本人の意思を尊重することが大切。

家族とはいえ、何度も拒否されるとついイライラしてしまい、穏やかなままではいられないことも。家族であるがゆえに「なんでお風呂に入らないの!」などと強い口調になってしまうこともあるかもしれません。

そのようなときは、本人のペースや意思を尊重して、気持ちに寄り添い、優しく介護することも大切です。焦らずゆっくりと介護していくことで、良い結果が生まれる場合もあります。

高齢者の入浴拒否に関するよくある質問

高齢者が入浴拒否している場合どうすれば良いですか?

高齢者の方が入浴を拒否している場合、まずは本人の意思を尊重し、気持ちに寄り添うことが大切です。強引に浴室へ連れて行ったり無理やり服を脱がすのは、より拒否が強くなるので絶対にNGです。

入浴拒否が続くとどうなりますか?

入浴拒否が続くと、臭いはもちろんのこと、汗や角質、皮脂などが皮膚に溜まっていき、ひどくなると皮膚炎にかかることがあります。どうしても入浴できないときは温かいタオルなどで身体を拭くなどの工夫をし、常に清潔を保っておきましょう。

また、「看護師さんに身体を見てもらいましょう」など訪問看護の利用も選択肢のひとつです。

入浴が何のことか理解できていない場合はどうすれば良いですか?

認知症の方に入浴のことを思い出してもらうには、一連の流れを短く区切って伝えることが重要です。例えば身体を洗う場合も、一つひとつ丁寧に「頭を洗いましょう」「腕を洗いましょう」「足を洗いましょう」といった細かい声かけが必要です。

よく読まれている記事

よく読まれている記事

article-image

介護付き有料老人ホームとは│提供されるサービス・費用・入居条件などを解説

介護付き有料老人ホームは、介護スタッフが24時間常駐している介護施設。介護サービスや身の回りの世話を受けられます。 この記事では、介護付き有料老人ホームの種類及び入居のための条件や必要な費用、サービス内容などを詳しく説明しています。 https://youtu.be/oK_me_rA0MY ▶介護付き有料老人ホームの費用に関してはこちらのページをご覧ください 介護付き有料老人ホームの特徴 介護付き有料老人ホームとは、有料老人ホームのうち、都道府県または市町村から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。24時間介護スタッフが常駐し、介護や生活支援などは施設の職員により提供されます。 主に民間企業が運営しているため、サービスの内容や料金は施設ごとに異なります。また、入居基準も施設により異なり、自立している方から介護が必要な方まで幅広く受け入れている施設も。選択肢が幅広いため、自分に合った施設を選ぶことができます。 看取りまで対応している施設も多数あり、「終の棲家(ついのすみか)」を選ぶうえでも選択肢のひとつとなります。 全体の概要をまとめるとこのようになります。 費用相場 入居時費用 0~数千万円 月額利用料 15~30万円 入居条件 要介護度 自立~要介護5※1 認知症 対応可 看取り 対応可 入居のしやすさ ◯ ※施設の種類によって異なります。 特定施設入居者生活介護とは 特定施設入居者生活介護は、厚生労働省の定めた基準を満たす施設で受けられる介護保険サービスです。ケアマネジャーが作成したケアプランに基づき提供される食事や入浴・排泄など介助のほか、生活支援、機能回復のためのリハビリなどもおこなわれます。指定を受けてこのサービスを提供する施設は、一般的に「特定施設」の略称で呼ばれています。 介護付き有料老人ホームの種類と入居基準 介護付き有料老人ホームには「介護専用型」「混合型」「健康型」の3種類があり、それぞれ入居条件が異なります。 介護度 ...

2021/11/10

article-image

グループホームとは|入居条件や費用、入居時に気をつけたいポイントを解説

グループホームとは認知症高齢者のための介護施設で、住み慣れた地域で暮らし続けられる地域密着型サービスのこと。正式な名称を「認知症対応型共同生活介護」といいます。 費用や入居条件などの主な特徴は以下の通りです。 入居時費用約0円~100万円月額利用料約15~30万円入居条件要支援2以上認知症の受け入れ重度認知症も受け入れ可看取り対応対応していない施設が多い この記事では、各項目について詳しくご説明していきます。ご家族が認知症で、在宅での介護生活に不安のある方などはとくに、グループホームへの入居検討の際の参考にしてください。 https://youtu.be/EofVO7MRRDM グループホームの特徴 グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。専門知識と技術をもったスタッフの援助を受けて、要支援以上の認知症高齢者が少人数で共同生活をおくります。 「ユニット」といわれる少人数のグループで生活し、入居者はそれぞれ家事などの役割分担をします。 調理や食事の支度、掃除や洗濯など入居者の能力に合った家事をして自分らしく共同生活を過ごすところが、ほかの介護施設や老人ホームとは異なるポイントです。 グループホームの目的は、認知症高齢者が安定した生活を現実化させること。そのために、ほかの利用者やスタッフと協力して生活に必要な家事を行うことで認知症症状の進行を防ぎ、できるだけ能力を維持するのです。 グループホームは少人数「ユニット」で生活 グループホームでは「ユニット」と呼ばれるグループごとに区切って共同生活を送るのが決まり。1ユニットにつき5人から9人、原則1施設につき原則2ユニットまでと制限されています。 少人数に制限する理由は、心穏やかに安定して過ごしやすい環境を整えるため。環境変化が少なく、同じグループメンバーで協力して共同生活することは、認知症の進行を防ぐことに繋がります。 認知症の方にとって新しく出会う人、新しく覚えることが難しいので、入居者やスタッフの入れ替わりが頻繁にある施設では認知症の高齢者は心が落ち着かず、ストレスを感じ生活しづらくなってしまいます。その結果、認知症症状を悪化させるだけでなく、共同生活を送る上でトラブルを起こすきっかけとなります。 慣れ親しんだ場所を離れて新しい生活をするのは認知症の方には特に心配が尽きないもの。その心配を軽減するため、より家庭にできるだけ近づけ、安心して暮らせるようにしています。 グループホームの費用 グループホーム入居を検討する際に必要なのが初期費用と月額費用です。 ここからは、グループホームの入居に必要な費用と、「初期費用」「月額費用」それぞれの内容について詳しく解説していきます。 項目 ...

2021/11/15

article-image

【動画でわかる】有料老人ホームとは?費用やサービス内容、特養との違いは

介護施設を探している中で「老人ホームにはいろいろな種類があるんだ。何が違うんだろう?」と疑問を感じることがあるかもしれません。 そこで今回は、名前に「老人ホーム」とつく施設の中でも、「有料老人ホーム」を中心に紹介。よく似ている「特別養護老人ホーム」との違いも見ていきます。 「老人ホームの種類が多すぎて訳がわからない」と思ったら、ぜひ参考にしてみてくださいね。 https://youtu.be/eMgjSeJPT8c 有料老人ホームの種類 有料老人ホームには、以下の3種類があります。 介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム 健康型有料老人ホーム この3種類の違いを以下にまとめています。 種類 介護付き有料老人ホーム ...

2021/10/28

特集

介護の基礎知識

total support

介護の悩みを
トータルサポート

total support

介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。

鎌倉新書グループサイト