【医師監修】認知症の在宅介護|続けるための5つの心得と介護疲れの軽減方法

【医師監修】認知症の在宅介護|続けるための5つの心得と介護疲れの軽減方法

更新日 2023/04/24

在宅での認知症介護は家族の負担が大きく、先の見通しもつかずに心労がたまってしまいます。この記事では、認知症介護をしていくための心得や心の負担を軽減させる方法を紹介します。

認知症介護を続けるための5つの心得

認知症介護を続けるための5つの心得は以下の通りです。

  1. 自分も大切にする
  2. 溜め込まない
  3. 比較しない
  4. まわりにも頼る
  5. 「今」を大切に

それでは詳しく説明していきましょう。

自分も大切にする

愛する家族が認知症を発症することは、とてもショックなことです。家族が変わっていく姿を見ることは辛いですし、ストレスを感じてしまいます。

介護をするときに重要なのは、必要以上に頑張りすぎたりせずに、自分自身の健康や時間も大切にすることです。

溜め込まない

認知症の家族を介護する中で、不満や悲しみは生まれてきます。その気持ちをずっと自分だけでしまっておくと、いつか爆発してしまいます。

負の感情は溜め込まないことが一番です。時々は友人に愚痴をいったり、家族につらいと本音をこぼしたり、カラオケで発散させたり。気持ちを切り替えながらやっていきましょう。

比較しない

誰かと比べるというのは、どうしてもマイナスの感情を生み出しやすくなります。特に認知症は、人によって症状の重さや症状のあらわれ方は違います。ほかの認知症の人と比べてどうということは考えても仕方ありません。誰かと比較して、悲しい気分になるのはやめましょう。

まわりにも頼る

介護をしているときは大変すぎて、自分一人に抱えてしまいがちです。しかし、介護を一人でするのは不可能です。周りの人や外部のサービスを上手に利用して、まわりに頼りながらやっていきましょう。

「今」を大切に

介護は大変なので、どうしても介護に手いっぱいでまわりを見たり、今の時間を楽しむ余裕はなくなります。しかし介護は永遠に続くわけではありません。長い目で介護についてとらえて、なるべく「今」を大切に過ごしましょう。

認知症介護で家族が辿る心理状態

認知症の高齢者を介護する家族が辿る、心理状態について説明します。ご自分の心理状態がどれに当てはまるのか、客観的に確認しましょう。

  • 第1ステップ:驚愕・否定
  • 第2ステップ:混乱・怒り
  • 第3ステップ:諦め・適応
  • 第4ステップ:受容

第1ステップ:驚愕・否定

まず始めに「なぜまた食事を食べようとするの?」「うちの親に限って認知症なわけがない」など、身内が認知症を発症して、どうしたらいいのか驚き戸惑う段階です。介護経験者に相談したり、インターネットで情報収集する方もいます。

病院に行き医師から認知症と診断されても、なかなか受け入れられないご家族も少なくありません。

症状が出ても「気のせいだ」と認知症である事実を否定してしまうこともあります。そして、徐々に否定できないほど認知症の症状が進んでいくと第2ステップに移行します。

第2ステップ:混乱・怒り

「自分にもこんな状況がふりかかるとは…。どうすれば良いのかわからない」「お母さんが別人のようだ」と、介護する方が毎日慣れない介護を混乱していき、次第に認知症の方へ怒りが湧き出るようになります。

この段階で大事なのは、孤独にならないこと。自分だけが頑張ればいいと思わず、社会的なサポートを検討し介護経験者や市の相談窓口へ相談すると良いでしょう。そうすることにより、次の第3ステップに移行します。

第3ステップ:諦め・適応

第3ステップは、介護する方が「自分は認知症の方を介護している」ということを冷静に割り切れるようになる段階です。

認知症の方と共生していくことを心に決め、出世や転勤など諦める人もいるでしょう。中には故郷に戻ったり、離婚する人もいるかもしれません。

「仕事をセーブしていなければ昇進していたかもしれない」と歯がゆく思いつつも、認知症になった大切な身内を「最後まで介護していこう」と心に決めます。そして毎日の状況に適応しつつ、次の段階に移行していきます。

第4ステップ:受容

介護している自分自身、認知症の身内、認知症全般を受け入れその価値を認める段階です。

社会と繋がりながら、認知症の方と二人三脚で生活していくことは一筋縄ではいきません。とはいえ認知症介護中に出会った人々やケアマネージャー、身に付けた知識は一生の財産となり、自分が将来、認知症を発症した時に大いに役立つことでしょう。

先行きの見えない中での認知症介護をする状況を受容し、認知症と共生しつつ明るい未来を進もうとする前向きな姿勢は、これから認知症の介護をする方達にとっての良き道しるべになります。

在宅での認知症介護で気になる症状への対応

認知症の症状特有の暴言や徘徊など、介護する方の対応にもコツがあります。それでは詳しく紹介していきます。

暴言・暴力への対応

認知症高齢者の暴言・暴力への対応

認知症になると必ず暴言や暴力が起きるわけではありません。同じ認知症でも暴力的にならない人もたくさんいます。

暴言や暴力が起きる原因には、主に以下のようなものがあります。

  • 物理的な距離を置く
  • 感情的な距離を置く
  • 力で対抗しない
  • 注意をそらす
  • ケアマネジャーや医師に相談する

徘徊への対応

認知症高齢者の徘徊への対応

徘徊とはいえ、認知症の方にとっては、健康であった頃の「外出」と気持ちは変わりません。そのため、無理に徘徊を止めることは難しいと考えておきましょう。

しかし、徘徊のリスクや危険を低減させる対策をとることはできます。下記のような対応も参考にしてみてください。

  • 理由を聞く
  • 責めない
  • 気をそらす
  • 自由に動いてもらう

被害妄想への対応

認知症高齢者の被害妄想への対応

被害妄想への対応として望ましいのは以下の5つです。

  • 否定しないで聞く
  • 話に共感する
  • 周囲に相談する
  • 距離をとる
  • 自尊心を取り戻してもらう

介護拒否への対応

認知症高齢者の介護拒否への対応

要介護者に介護拒否をされた場合、介護する人はどのように接していく必要があるのか。ポイントは3つです。

  • 無理強いせず本人の意思を尊重する
  • 具体的な声かけをする
  • タイミングを見計らう

介護疲れの軽減方法

介護している方が頑張りすぎると倒れてしまうことがあります。介護疲れの軽減方法を紹介するので、参考にしてみてください。

高齢者支援サービスを利用する

介護保険サービスの利用

在宅介護における、介護保険内のサービスは以下の通りです。

訪問介護はホームヘルパーが自宅などに訪問して日常生活の介助などをおこない、訪問入浴は専用の浴槽を持参し自宅でスタッフが入浴介助をおこないます。

デイサービスは日帰りで介護施設などで要介護者が食事や入浴、レクリエーションなどを受けるサービスのことで、ショートステイは介護施設などに短期間宿泊するサービスをさします。

必要な介護サービスは、ケアマネジャーに介護保険の支給限度額内で組んでもらうと良いでしょう。事前に自力でやる範囲や、介護のプロに任せる範囲を決めておくとスムーズです。

介護保険外サービスの利用

同居家族がいる場合、掃除や洗濯といった生活援助は介護保険サービスでは利用できない場合があります。そのため、介護保険外サービスを利用することにより、介護保険サービスでは提供できない援助を補うことができます。

料金も事業所によってさまざまで、全額自己負担となる場合もあるのでご注意ください。

サービス内容としては、家事などの生活援助(同居家族あり)やリハビリ目的ではない散歩の付き添い、お墓参りの付き添い、契約書記入や金銭の管理、車の洗車、布団干し、草むしり、雪降ろしなどが当てはまります。

利用したい場合は、地域包括支援センターなどにご相談ください。

行政サービスの利用

お住まいの行政サービスを利用しましょう。各市町村によって高齢者支援サービスの内容も異なりますが「紙おむつ助成」などは月額の一部を助成されるため、経済的負担が減ります。

その他、地域相談センターの認知症相談窓口や認知症の方の自立した生活をサポートする専門職チーム、かかりつけ医療機関との連携、行方不明時のSOSメールの配信利用、行方不明時のGPS端末機の助成などがあります。

詳しくは自治体のホームページや地域包括センターなどに問い合わせてみてください。

介護スキルを身に付けるのもひとつの手 介護をする方が介護スキルを身に付けることでストレスを軽減したり、介護からくる腰痛の予防にも繋がります。最近は無料動画もたくさんあるので検索してみると良いでしょう。排せつの介助やオムツ交換のコツなど身に付けておけば、介護を受ける方も安心です。

お住まいの市区町村でも介護教室などが開校されている場合があります。詳しくは自治体までお問い合せください。

優しく、気持ちの良い認知症介護をするために

認知症の方の介護の際も、双方ともに穏やかに過ごしたいもの。具体的にはどのように接していけば良いのでしょうか?

何事にも“ゆっくり”を心がける

介護士や看護師の方が認知症の方にゆっくり話しかけているのを見たことはありませんか?

認知症の方は脳の働きや速度が低下していくため、介護する方が普通のペースで介助や話しかけをするだけでも、急かされているように感じてしまうことがあります。そして認知症の方もそれに応えようと過度に頑張ってしまい、疲労困憊になってしまうことも。

そのため、介護する方は「何事にもゆっくり」を心がけてみてください。一般の方には遅いかなと思う程度が穏やかに介助できるコツになります。

感情を合わせる

認知症の方が落ち込んだり、怒り出したりしたら、介護する方もその感情にまず共感してあげましょう。「辛かったね」「ここが不愉快だったのかな」と優しさや穏やかさを持って接してみてください。そうすることで認知症の方もつられて気持ちが落ち着いてくることがあります。

コミュニケーションや感情を汲み取り感じることが難しくなってきた認知症の方にとって、感情や表情を合わせることは大切なポイント。ぜひお試しください。

具体的な声かけをする

認知症の方の介助をする際、具体的な声かけを実践してみてください。「シートベルトをしたほうが安全だから締めるね」とシートベルトを実際に見せてから締めたり、歯磨きや入浴セット、着替え、外出時の持ち物など、同じ場所・同じ物をセットしておけば視覚的にもわかりやすいです。

歯磨きなど拒んだら「明日は歯科検診、口の中をすっきりさせよう」など所作の目的を伝えると、認知症の方も納得してくれることがあります。

認知症の方は、脳の機能低下認識低下があるだけでなく、注意力や集中力にも欠けているため、思わぬ事故やケガにご注意ください。

自分も役に立つ存在であることを感じてもらう

どんな人でも「役に立つ存在でありたい」「大切にされたい」という承認欲求があり、認知症の方にも承認欲求はあると言われています。

認知症の方は理由のない不安感や劣等感にさいなまれることがありますが、介護する方や周りの人に「ありがとう」と感謝されることで心が満たされることがあります。

お孫さんとお話していたら「世話をしてくれてありがとう」など、小さなことから感謝の言葉をかけてみてください。

外部との関わりを持つ

認知症が進んでいくと挨拶やちょっとした会話でさえも難しくなってくることがあり、外出や外部との関わりが減ってくることも。社会とのつながりを保つことは、脳にも良い刺激になり、周りの人も認知症の方と交流する良い機会になるでしょう。

認知症の方の体調がや天気が良ければ、散歩や近くまでの買い物してみましょう。外出のために化粧をしてみたりおしゃれな服をコーディネイトしてみると、認知症の方も表情がパッと明るくなることもあります。

認知症の在宅介護に関するよくある質問

認知症の在宅介護はいつ施設入居に切り替えるべきですか?

在宅介護から施設入居に切り替える時期は要介護度3以上の認定が目安です。在宅介護は身体的にも精神的にも厳しく家族に負担がかかりがちです。要介護3以上の認定が出る前から施設入居について検討し、情報収集することをおすすめします。

認知症の介護はいつまで続きますか?

認知症の介護は平均して約6~7年であると言われています。

ただし、認知症の種類、年齢、症状によって差があります。中には10年以上介護をしたというケースもあるので、介護をする際は長期戦を想定し、介護保険サービスや老人ホームについての情報も集めておくと良いでしょう。

介護疲れを軽減するにはどうすれば良いですか?

介護保険サービスや状況によって介護保険外サービスを利用することをおすすめします。介護保険サービスでは必要に応じて身体介助や生活支援を受けることができ、費用に関しても自己負担額の1割で利用することができます。

また、介護保険外サービスでは介護保険サービスで提供できない部分を補うことができ、サービスの幅も広いです。ただし、費用に関しては全額自己負担となるので注意が必要です。

▶「いい介護」で認知症でも入居相談可能な老人ホームを探してみる

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