治る見込みがない病気の場合に、延命治療をおこなわずに穏やかな終末を迎えたいと望む人が増えています。
そのような人が過ごすホスピスとはどのような場所なのでしょうか。また、病院やほかの介護施設とはどのような点が違うのでしょうか?
この記事では、ホスピスの意味やケア内容、費用、対象者などをわかりやすく解説します。大切なご家族や自分自身の終末期を考えるきっかけとして、ぜひ参考にしてください!
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ホスピスとは、末期がんなどの治癒が難しい病気にかかっている方が、残された時間を「その人らしく」穏やかに過ごすことを支援するケアのことです。
語源はラテン語の「Hospitium(もてなし)」で、中世ヨーロッパの巡礼者を迎える宿に由来しています。
治すことを目的とした医療とは異なり、ホスピスでは「苦痛の緩和」と「精神的な安らぎ」が重視されます。つまり、“延命”ではなく“尊厳ある生”をサポートする医療・介護のかたち、ということになります。

ホスピスは患者に対して最大限の尊厳をはらい、患者と家族にとって穏やかで幸せな生活を送ることを目的としています。しかしホスピスという言葉は知っていても、実際にどのような対応をするのか正しく理解している人は少ないでしょう。
実際にホスピスで施されるホスピスケアとはどのようなものなのでしょうか。「身体的ケア」「精神ケア」「社会的ケア」の3つに分けて説明します。

入居者が穏やかで快適に過ごせるように、身体を拭いたり、身だしなみを整えるといった身体的なケアをおこないます。24時間、週7日間対応が基本で、もちろん食事の介助もあります。
ホスピスでは治療による延命行為はおこなわれませんが、痛みをコントロールするための治療はすることがあります。痛みの緩和か延命行為かという判断は難しいものですが、医師としっかり話し合って処置の方針を決めます。
重篤な病気による苦しみや、死への恐怖心をやわらげるために、ホスピスケアでは精神的なケアも大切にしています。
ホスピスはもともと教会でおこなわれていた行為です。ホスピスでは、医師や看護師だけではなく、カウンセラーや精神科ソーシャルワーカーなど多様な専門家と連携しています。

一般にホスピスの利用は保険の支払い対象になります。しかし、患者本人と家族だけでは支払いのための手続きなどをおこなう余裕はなかなかありません。終活の一環として財産の整理や相続対策なども必要です。
そのため、入院患者のための社会的な申請や手続き関係を代行してくれるサービスもホスピスで用意しています。身体的、精神的、同時に社会的ケアもおこない、患者に無用な負担をかけないように適切な配慮がされているのです。
ホスピスで受けられるケアについて、より詳しく知りたい方は、次の記事もぜひご覧ください。
ホスピスと病院や老人ホームは、目的・ケアの内容・対象者などが大きく異なります。
| 比較項目 | ホスピス | 病院 | 老人ホーム |
|---|---|---|---|
| 目的 | QOLの向上 | 病気の治療 | 生活支援 |
| ケアの範囲 | 緩和ケア中心 | 医療中心 | 介護中心 |
| 滞在期間 | 長期可(施設により) | 原則として短期 | 看取りも可 |
ホスピスが病院と最も違う点は、病気治療・延命措置を目的としていないことです。ホスピスの目的は終末期を迎えた患者にしあわせな時間を過ごしてもらうことです。
病院では患者の治療と一日でも長い延命が使命です。しかし長くは生きられない人に対して投薬や手術などで、さらなる苦痛やストレスを与えてしまう場合が問題になるケースもあります。
ホスピスでは医師による医療行為はおこなわれますが、病気治療ではなく、あくまで痛みを軽減するための行為です。
病院への入院の方法・流れについて、より詳しくお知りになりたい方は、次の記事もご覧ください。
ホスピスは、できるだけ家族と一緒に過ごせるように工夫されています。ホスピス内に家族専用の宿泊施設が併設されていたり、患者と家族がたのしめるスペースもあります。
病院では面会時間や人数に制限があったりしますが、ホスピスは比較的患者の希望を聞いてくれます。

ホスピスの対象となるのは、以下のような条件を満たす方です。
ホスピスの入居は末期ガンや難病の人など終末期患者が中心です。穏やかに人生の終末を迎えたいと思うすべての人が対象となります。
基本的には年齢や病気の種類、医療行為の有無によってホスピスへの入居を断られることはありません。ただし、認知症が進行して身体の拘束が必要になる場合などは個別相談になります。
また、ホスピスに入居するには本人が死が近いという状況について告知を受けていることが条件です。知らないまま入居すると、スムーズなケアや治療がおこなえません。本人と家族の気持ちが同じであることは、ホスピスに入居する上でとても重要です。
ホスピスには以下のようにいくつかの種類があり、生活状況に応じた選択が可能です。
病院内に併設されたホスピスのことを緩和ケア病棟といいます。治療が困難な人や自らホスピスケアを希望した人が緩和ケア病棟に移ります。
同じ病院なので患者の病状や治療法などについての情報伝達がスムーズで、家族も新たにホスピスを探す必要がなく、負担が少ないといえます。
ホスピスケアを提供する有料老人ホームや、サービス付き高齢者向け住宅が少しずつ増えています。
入院期間に定めのある緩和ケア病棟と違い、入居期間に定めがないことが、こうした施設に入居することのメリットのひとつ。生活の中で必要となる排泄介助などの身体介助に介護保険を利用するので、介護認定を持つ方が入居対象となる施設が多いです。
なかには介護認定がない方の入居が認められる場合もありますが、その場合には生活で必要となる介助に対し実費での支払いが必要なため、月額の支払い金額が高額になってしまいます。

在宅ホスピスとは、患者の自宅や専門の施設で、ホスピスケアを受けながら生活する方法です。住み慣れた家で家族と一緒に残された時間を過ごせることは、患者にとって一番幸せかもしれません。
在宅ホスピスでは、定期的に医師と看護師が訪問して、ケアや診察をおこないます。専門の施設なら、何かあったときにいつでも駆けつけられるので安心です。自宅の場合でも家族のサポートを受けながら、緊急の時には対応してもらえます。
| タイプ | 月額費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 緩和ケア病棟 | 約5〜10万円 (医療保険適用後) | 所得により自己負担割合が異なる |
| ホスピス対応の有料老人ホーム・サ高住 | 約15〜40万円 | サービス・施設による |
| 在宅ホスピス(在宅緩和ケア) | 約3〜7万円 | 介護・訪問医療の組み合わせ |
ホスピスを利用した場合の費用はどれくらいかかるのでしょうか?費用はどこに入院するかによって大きく変わってきます。緩和ケア病棟を利用した場合を例に説明します。
緩和ケア病棟に入院する場合は、「入院料」「食事代」「差額ベッド代」がかかります。このうち差額ベッド代以外は健康保険の対象になります。入院期間が長期になったり、施設利用料が高額になった場合は、高額療養費制度が利用できます。
ただし差額ベッド代は保険対象外です。差額がないベッドは人気なので、すぐなくなってしまいます。差額ベッドを利用すると場合によってはかなり高額になるケースもあるので注意しましょう。
高額療養費制度とは、1ヵ月間(1日から月末)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合に、あとで一定の金額が戻ってくる制度です。自己負担限度額は、年齢と所得により5段階に設定され、限度額を超えた分が払い戻しされます。
ただし払い戻しには診療報酬明細書の審査などの手続きがあるので、3ヵ月以上かかります。
本人や家族の気持ちの整理がついていない段階では、納得のいくタイミングを待つことも大切です。
「ホスピス」は末期がんなどで死期が近い患者に対して、安らかな最期を迎えてもらうための治療やケアをおこなう施設のことを言います。
基本的には年齢や病気の種類でホスピスへの入居を断られることはありません。ただし、その施設の人員体制などによっては受け入れが難しい場合もあるので注意が必要です。
原則として要支援・要介護の人で末期の悪性腫瘍、その他厚生労働大臣が定める特定疾病の人を条件としています。自宅で看病をするのが難しいという場合は、一度ホスピスの検討をしてみると良いでしょう。
ホスピスが病院と最も違う点は、病気治療・延命措置を目的としていないことです。
ホスピスは終末期を迎えた患者に幸せな時間を過ごしてもらうことに対し、病院では患者の治療と一日でも長い延命が使命です。ホスピスでは医師による医療行為は主に痛みの軽減につながる処置のみになります。
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