超高齢社会である日本では、高齢者への虐待が年々増加し、問題視されています。
そこで今回は、虐待が起こる理由や、どのような行為が虐待になってしまうのかを解説。さらに、虐待を防ぐための方法や専門機関も紹介します。
Contents
まず高齢者への虐待を防ぐために、虐待の原因を知る必要があります。ここでは、なぜ虐待が起こってしまうのか、その理由を見ていきましょう。
在宅での介護で虐待が起こる一番の理由は、虐待者の介護疲れやストレスです。介護は食事・入浴・排泄の介助など、身体的に負荷がかかるものが多く、肉体的な疲労が精神的疲労にもつながりやすいものです。
さらに、高齢者の生活を支えていくには、一日の中で長時間の付き添いが必要です。そのため、介護者がゆっくりと過ごす時間が減り、自宅にこもりきりになります。
いつまで介護が続くかわからない状況で、外部との交流が減ったり、肉体的な疲れから追い詰められ、虐待に発展してしまうことも多いです。
また、介護費用がかかることや、介護に時間を使うことで収入が減り、経済的な不安から虐待につながることもあります。在宅介護は閉鎖的な環境で、一人で抱え込みがちになってしまうため注意が必要です。
出典:「令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」(厚生労働省)
養護者から受けている虐待で、最も多いのが身体的な虐待です。次に侮辱や無視などの心理的虐待、介護を放棄するネグレクト、金銭の管理や運用の際に起こりやすい経済的虐待と続いています。さらに、割合としては少ないですが、性的虐待も発生しています。
昨今では、生涯未婚率は男女ともに上昇しており、未婚の人が実家で暮らして親の介護をおこなうことも増えています。
また、子どもが仕事や結婚によって家を出て、夫婦のどちらかが介護をおこなうケースもあります。核家族化や未婚率の上昇により、男性介護者が増加しているのが現代の特徴です。
こういった風潮があることを踏まえ、家庭内での介護による虐待者の内訳を見ていきましょう。
出典:「令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく応状況等に関する調査結果」(厚生労働省)
被虐待者からみた虐待者の続柄は全体の、息子39.9%、夫22.4%と、半数以上が男性介護者です。この結果は、これまで仕事をしていた男性が慣れない介護や家事をすることによってストレスを感じ、虐待に発展したことが要因のひとつと考えられています。
一人で抱え込まないように、周囲が介護をサポートする環境をつくるなど、男性介護者への支援策が求められています。
高齢者への虐待は在宅介護だけでなく、介護施設でも見られます。
介護施設で起こる虐待は、介護に関する教育・知識・技術の不足が原因です。介護経験が浅かったり、十分に教育を受けられなかった介護スタッフが、誤った対応をしてしまうケースが多いです。
また、介護業界の人手不足も挙げられます。施設で人手不足に陥ると、介護スタッフの業務の負担が大きくなり、心身ともに余裕がなくなってしまうのです。
さらに、若手のスタッフは業務に慣れないうちから戦力として求められ、疲労やストレスが溜まってしまいがちになります。こういった労働環境の悪化も、虐待を引き起こす理由のひとつとして挙げられます。
介護施設でおこなわれている虐待でもっとも多いのが身体的虐待です。身体的虐待の割合は圧倒的に高く、そのあとに身体的拘束、心理的虐待、ネグレクトと続きます。
出典:「令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく応状況等に関する調査結果」(厚生労働省)
また、認知症などの意思疎通やコミュニケーションが容易ではない高齢者に対し、虐待が発生するケースが多くなっています。認知症に対しては、気持ちの理解や正確な対応が求められます。しかし、これらが十分でないと適切な対応ができず、虐待へと発展することがあります。
ここでは高齢者への虐待を防ぐ方法について見ていきましょう。
認知症の人は、怒られたり否定されたりしても、その内容を忘れてしまうことがほとんどです。しかし「怒られて怖かった」「否定されて嫌だった」といった、マイナスの感情記憶は残ってしまいます。
それが繰り返し続くと、本来できることが萎縮してできなくなってしまったり、不安を紛らわすために怒ったりと、より症状を悪化させる可能性もあります。
スムーズな介護をおこなうために、「怒らない」「否定しない」を意識しましょう。イライラしたときは、「一旦部屋を出て気持ちが落ち着くまで待つ」「こまめにストレスを解消する」などの対策がおすすめです。
介護を一人でおこなうと、介護者が悩みを抱え込んでしまったり、プレッシャーを感じてしまったりすることもあります。家庭での介護は一人に任せきりにするのではなく、家族で協力する体制をつくることが大切です。
そのときには、対応する人でケア方法が変わらないように、必ず家族間で情報共有をしましょう。
デイサービスやデイケアは、高齢者が日帰りで介護サービスを受けたり、リハビリをおこなう施設です。こういった介護サービスを利用して、介護者の休息や気分転換の時間を作ることも大切です。
さらにショートステイであれば、最短で1日から入所することができます。冠婚葬祭や出張、介護者の体調不良など、一時的に介護ができないときに利用する人が多いです。
在宅介護には休暇がありません。上手に制度を利用して負担を減らし、身体的・精神的安定を図ることが、結果的に虐待防止へとつながります。
周囲が虐待の兆候に気づいたときには、専門機関に相談しましょう。地域包括支援センターや法務省の常設する人権相談所など、公的な窓口が複数用意されています。
他人の家庭の場合、つい相談をためらってしまいますが、虐待を防ぐためにも早めに相談することが大切です。
高齢者への虐待には、身体的なものがイメージされやすいですが、それだけではありません。精神的・経済的にダメージを与えるものもあり、虐待の種類はさまざまです。どんな種類の虐待があるのか見ていきましょう。
身体的ダメージを与える虐待とは、殴る・蹴るなどの暴力行為をはたらくことです。
また、高齢者の意思を無視し、必要以上の身体拘束をおこなうことも身体的虐待に含まれます。身体拘束はベルトやひもでの拘束だけでなく、脅迫や威嚇など、言葉で高齢者の行動を制限することも該当します。
しかし、身体拘束がすべて虐待にあたるわけではありません。高齢者本人や介護者の怪我や命に関わる場合や、身体拘束の代替になる方法がない場合、拘束が一時的である場合には虐待とはいえないため、覚えておきましょう。
高齢者の介護をおこなわない、介護放棄による虐待も発生しています。介護放棄は、子どもに対しておこなわれる育児放棄を、高齢者に置き換えることでイメージしやすくなります。
具体的には、「入浴や排泄ケアをしない」「食事や水分を与えない」「医療機関などへ受診する機会を与えない」などの行為です。
介護を必要とする人を適切にサポートしないことは、高齢者の生活環境や心身状態の悪化につながります。さらに、介護放棄から死に至ったり、身体的虐待に発展するケースもあります。
精神的疲労を与える虐待とは、侮辱する、脅すなどの言葉の暴力、無視、嫌がらせなどです。高齢者を言葉や態度で傷つけたり、尊厳を踏みにじったりするような行為は、すべて心理的虐待にあたります。
また、精神的疲労を与える虐待では、介護者が気づかないうちに虐待をしてしまっていることもあります。介護によるストレスを無意識のうちに高齢者にぶつけ、虐待をしてしまうのです。
心理的な虐待は目に見えず、外からわかりづらいため注意が必要です。
高齢者に対してわいせつな行為をはたらく、性的な虐待がおこなわれることもあります。具体的には、性行為の強要、性器を触る、キスなどがあり、どれも高齢者の尊厳を傷つける悪質な虐待です。
また、わいせつ行為だけでなく、懲罰的に裸にして放置するなど、高齢者を辱める行動や言動も性的な虐待です。さらに、入浴の介助や着替えのサポート、排泄ケアの際に、プライバシーの配慮をしないままおこなうことも性的虐待のひとつです。
高齢者への虐待は、心身にダメージを与えるものだけでなく経済的なものもあります。例えば、本人の合意なく財産や金銭を使用したり処分することが挙げられます。
また、本人の希望する金銭の使用を理由がないにも関わらず制限したり、生活に必要なお金を渡さないことも、経済的な虐待となります。
しかし、認知症で判断能力の低下した高齢者であれば、家族が金銭管理をおこなうケースもあります。その際には、お金や財布をむやみに取り上げないことが大切です。
セルフネグレクトとは、生活を維持する能力が低下してしまい、自身の健康や生活環境が悪化してしまっている状態のことです。入浴や掃除、洗濯などの身の回りのことをしない、ゴミを溜め込む、福祉サービスを拒否するなどの行為が挙げられます。
どの年代でも陥る可能性があり、高齢者の中にもセルフネグレクトに陥ってしまう人が増えています。老化で体が思うように動かず、家事や日常生活を放棄してしまったり、認知症が進み生活に必要な判断能力が低下してしまうことが主な原因です。
セルフネグレクトは、周りからのサポートが解決の糸口になります。医療機関や地域包括センターなどに相談しましょう。
高齢者への虐待が年々増加し、2006年に高齢者虐待防止法が施行されました。高齢者虐待防止法とは、一体どのような法律なのか解説していきます。
高齢者虐待防止法とは、正確には「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援に関する法律」と言われるものです。高齢者の尊厳を保持するため、高齢者虐待を防止することを目的として施行されました。
また、高齢者虐待防止法の特徴に「虐待の早期発見・早期対応」があります。介護サービス施設や介護サービス従事者には、虐待の早期発見が努力義務として規定されました。
自身の働く施設などで虐待が発生した際には、市町村へ必ず通報しなければいけません。さらに、通報者が通報することによって不利益な扱いを受けないよう、ルールが定められています。
現在の日本は超高齢社会を迎えており、家族や介護サービスに携わる人々に、介護の負担が押し寄せているのが現状です。
超高齢社会が要因となり、高齢者に対する虐待が年々増加しています。さらに、虐待は、施設内や家族内などの閉鎖的な環境でおこなわれるため、周囲からわかりづらいことも問題です。
これら高齢者虐待の増加や、虐待の事実が知れ渡りにくい課題を解決するため、高齢者虐待防止法が制定されました。
高齢者への虐待の種類や要因、防ぐ方法などを紹介しました。
虐待は高齢化社会が進むにつれて、今後も増えていくことが予想されます。「身近で虐待が起こるはずがない」「自分は虐待しない」と過信せず、周囲と支え合って介護をしていくことが大切です。
また、深刻な事態になることを防ぐため、日頃から介護サービスに関わる人や地域と交流を図り、虐待を早期発見することも重要です。
介護で虐待が起こる一番の理由は、虐待者の介護疲れやストレスです。
介護を自宅でするとなると昼夜問わず付き添いが必要で、次第に外部との交流が減ります。介護がいつまで続くかわからない状況化に陥ると、身体的負担と精神的負担から虐待に発展する可能性があります。
在宅介護、施設介護ともに最も多いのは身体的な虐待です。
身体的な虐待とは、殴る・蹴るなどの暴力行為をはたらくことで、社会問題としてメディアにも取り上げられるほどです。また、高齢者の意思を無視し、必要以上の身体拘束をおこなうことも身体的な虐待に含まれます。
被虐待者からみた虐待者の続柄は、息子が最も多く、次いで夫と続き、半数以上が男性介護者です。核家族化や未婚率の上昇、これまで仕事をしていた男性が慣れない介護や家事をすることによってストレスを感じ、虐待に発展していると考えられています。
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。