【医師監修】認知症治療の音楽療法とは|得られる効果や注意点

【医師監修】認知症治療の音楽療法とは|得られる効果や注意点

更新日 2023/11/28

音楽療法というワードを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。音楽療法は認知症治療の予防や治療のサポートとなるため、介護サービスや介護施設で取り入れられていることがあります。

この記事では、認知症治療の音楽療法について説明していきます。自宅でも簡単にできるものなので、ぜひ実践してみてください!

音楽療法とは

音楽療法は心や体の障害の機能を回復したり健康の維持などを目的としたリハビリテーションのひとつ

音楽療法とは、心や体の障害の機能を回復したり健康の維持などを目的としたリハビリテーションのひとつで、音楽の持つ特性を活かしたプログラムを実施します。

音楽療法を受ける方は、障害や疾病に関係なくすべての年齢や性別の方が対象です。

介護施設や病院、自宅へ音楽療法士事務所から音楽療法士が派遣されることが多いです。

音楽療法士に必要なことは、音楽の技術があるのはもちろん、「音楽の特性やリハビリテーションの目的を理解すること」「クライアントの心身の状態やリクエストを把握したうえで適切な働きかけができること」「療法をおこなうことによりクライアントの目的を達成できること」などが挙げられます。

音楽療法は2種類ある 

音楽療法には以下の2種類があります。

  • 受動的音楽療法
  • 能動的音楽療法

それでは詳しく説明していきましょう。

受動的音楽療法

受動的音楽療法とは、音楽を聴いたり、歌の歌詞や歌の情景に合った写真から思い浮かべるといった受け身的な療法になります。施設でCDを聞いたり、地域のボランティアの方に楽器を演奏してもらうなどがあります。

能動的音楽療法

認知症の音楽療法には自分で楽器を演奏する「能動的音楽療法」がある

能動的音楽療法とは、音楽に合わせて歌う、楽器を演奏するといった、自分でアクションを起こす療法のことです。介護施設で季節の歌を合唱したり、カラオケを歌うなどがあります。

音楽療法の効果

音楽療法は身体的なことに対して次のような効果があると言われています。

  • 痛みやストレスの軽減
  • 脳の活性化
  • 表情や感情の表出
  • 自尊心の向上
  • 記憶の誘導(回想法
  • コミュニケーションの向上

どのような効果があるか、次にご説明していきます。

痛みやストレスの軽減 

一般の方でもクラシック音楽など聞くとリラックスすることがあるでしょう。心地良い音楽を聴くことにより、認知症や痛みによって引き起こされる不安やストレスをやわらげる効果が期待できると言われています。

同様に、認知症の方特有の不安や緊張などから生まれる妄想や攻撃的な言動なども、音楽療法を受けることで軽減することがあります。

脳の活性化

認知症の方でも懐かしい音楽やリズミカルな音楽を聞くと、思わず歌ったり手拍子を叩いたり、体を揺らしたりすることがあります。そうすることにより、脳のさまざまな部位が活性化し、認知症に関する脳の箇所に良い刺激を与えることができます。

表情や感情の表出 

音楽療法では楽しそうにリズムを取りながら手拍子や体をリズミカルに動かすようになる

感情の乏しい方や自発性の低い方でも、音楽療法をおこなうと笑顔が出てきたり、楽しそうにリズムを取りながら手拍子や体をリズミカルに動かしだすことがあります。

自尊心の向上

認知症は「忘れてしまう」「思い出せない」という不安がよくあります。そのため、音楽療法を受けている最中に昔の歌の歌詞がスムーズに出てきたり、良い思い出を正確に思い出す経験などを積み重ねることにより、本人の自尊心を向上させる効果があると言われています。

記憶の誘導(回想法)

一般の方も、子どもの頃に聴いた懐かしい曲や青春期に聴いた曲を聞くとその頃感じた感情が再び蘇ってくることがあるでしょう。

同様に、認知症の方も懐かしいメロディや好きだった歌謡曲を聞くことにより、リラックスし始めたり、周りの人と思い出話をするなど会話が増えることがあります。

コミュニケーションの向上

認知症や言語障害のある方でも、音楽療法を取り入れることでコミュニケーションの向上効果が見込めると言われています。

認知症の方は、不安などから心を開かないこともあり、言語機能障害の場合は、周りの人とうまく話せないことから孤独になる場合もあります。

そこで思い出の曲や同郷の校歌を口ずさんだり、簡単な振りを一緒に合わせて体を動かすことにより、会話をしたり心を開くきっかけとなる場合があります。

音楽療法の実施例

自宅または介護施設での音楽療法の実施例をご説明していきます。介護される方に合ったタイプを見つけてください。

自宅で音楽療法

住み慣れた自宅でも音楽療法をおこなうことは可能です。寝たきりの方でも、昔なじみの音楽を聴く、歌う、音楽に合わせて手拍子を打ったり、体をゆっくり動かしたりと簡単に取り組めます。

音楽療法を受ける方の趣味や希望に添った、無理のないプログラムを用意してもらうと良いでしょう。

介護施設で音楽療法

介護施設でも音楽療法が取り入れられており、音楽療法士の演奏を聴いたりコンサートを聴きに行ったりする

介護施設の中でも音楽療法は人気のレクリエーションのひとつ。受動的音楽療法として音楽療法士の演奏を聴いたり、コンサートを聴きに行くイベントを開催する介護施設などがあります。

また、伴奏付きの合唱や合奏、リズム体操、連想、手遊び歌といった能動的音楽療法をおこなう施設もあります。

認知症の方でも入居可能な施設を探す

北海道・東北

北海道札幌市)|青森県岩手県宮城県仙台市)|秋田県山形県福島県

関東

東京都神奈川県横浜市 / 川崎市 / 相模原市)|埼玉県さいたま市)|千葉県千葉市)|茨城県栃木県群馬県

甲信越・北陸

新潟県新潟市)|富山県石川県福井県長野県山梨県

東海

愛知県名古屋市)|岐阜県三重県静岡県静岡市 / 浜松市

関西

大阪府大阪市 / 堺市)|京都府京都市)|兵庫県神戸市)|滋賀県奈良県和歌山県

中国・四国

岡山県岡山市)|広島県広島市)|鳥取県島根県山口県徳島県香川県愛媛県高知県

九州・沖縄

福岡県福岡市 / 北九州市)|熊本県熊本市)|佐賀県長崎県大分県宮崎県鹿児島県沖縄県

音楽療法の注意点

音楽療法はただ音楽を流せば良いといったものではありません。音楽療法をおこなう上では、次のような注意点があります。

  • 聴力の確認
  • 疲れやすさに注意
  • 本人の歴史や好みに注意
  • 状態の把握
  • 一緒に楽しむ

聴力の確認

高齢になると昔のように音楽が楽しめない場合があります。老化に伴い聴力が衰えることにより、慢性的な耳鳴りや高音域が聴き取りづらいことがあるからです。そのため、音楽療法をする際は、受ける方の聴力を確認しましょう。

日頃からテレビやラジオを大音量で聴いたり、補聴器を使用している方は音楽療法中にフォローが必要となることがあります。

疲れやすさに注意

音楽療法をおこなう際は、認知症の方の疲れやすさに注意しましょう。

認知症の方は集中力や注意力を持続させづらく、脳も疲れやすいことが多いため、長時間の連想や集中が必要なことをさせすぎると、ストレスが溜まってしまうことがあります。そのため、休憩やちょっとした雑談など、音楽療法を受ける方がリラックスしている工夫が必要です。

本人の歴史や好み

認知症の方は、幼少期、青年期、新婚時代、子育て時代といったさまざまな時間を生きていることがあります。

子どもの頃の童謡や青春時代の歌謡曲など、その時々で楽しめる楽曲が変わっている可能性もあります。そのため、本人のタイムラインや好みに沿ったプログラムを構成すると良いでしょう。

状態の把握

音楽を流す際は、認知症本人の状態や楽曲の好みの傾向、そのときの心身の状態にフィットした楽曲を提供するよう心がけてください。「戦後のあの曲が聞きたい」と突然リクエストされることもあるでしょう。臨機応変に対応できるように、日頃からさまざまな楽曲を学んでおくことが大切です。

一緒に楽しむ

音楽療法は提供する側も一緒に楽しむことが大事なポイント。

介護施設で学生時代の合唱曲や流行した歌謡曲を歌いだすと、利用者や介護スタッフもなんらかの連帯感を味わいながら一緒に朗らかに口ずさむこともあるでしょう。家族内で共通の思い出の曲など歌えば、認知症の方でも楽しい家族の思い出などを正確に思い出すことがあります。

認知症の方も介護する方も、一緒に音楽に触れることで、その場の雰囲気もより明るく楽しくなることが多くなり、音楽療法の効果が高まります。簡単なものから日常の介護生活に取り入れてみるのも良いでしょう。

音楽療法に関するよくある質問

音楽療法とは何ですか?

音楽療法は、心や体の障害の機能を回復したり健康の維持などを目的としたリハビリテーションのひとつで、懐かしい音楽や思い出の曲を聴くことで脳に適度な刺激を与えます。また、音楽療法を受ける人は障害や疾病に関係なくすべての年齢や性別の人が対象です。

音楽療法にはどんな種類がありますか?

音楽療法には「受動的音楽療法」「能動的音楽療法」の2種類があります。

受動的音楽療法は、CDを聞いたり、ボランティアなどの合唱を聞いたりするといった受け身的な療法です。一方の能動的音楽療法は、音楽に合わせて歌う、楽器を演奏するといった、自分でアクションを起こす療法のことを指します。

音楽療法は誰がおこないますか?

音楽療法士が、介護施設や病院、自宅へ派遣されることが多いです。音楽療法士は基本的に楽器を利用しながら、対象の人に療法を提供するのが仕事です。

音楽療法の目的をしっかりと理解している、対象の人の心身状態やリクエストを把握した上で適切な働きかけができるといった音楽療法士は良いと言えるでしょう。

よく読まれている記事

よく読まれている記事

article-image

介護付き有料老人ホームとは│提供されるサービス・費用・入居条件などを解説

介護付き有料老人ホームは、介護スタッフが24時間常駐している介護施設。介護サービスや身の回りの世話を受けられます。 この記事では、介護付き有料老人ホームの種類及び入居のための条件や必要な費用、サービス内容などを詳しく説明しています。 https://youtu.be/oK_me_rA0MY ▶介護付き有料老人ホームの費用に関してはこちらのページをご覧ください 介護付き有料老人ホームの特徴 介護付き有料老人ホームとは、有料老人ホームのうち、都道府県または市町村から「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた施設です。24時間介護スタッフが常駐し、介護や生活支援などは施設の職員により提供されます。 主に民間企業が運営しているため、サービスの内容や料金は施設ごとに異なります。また、入居基準も施設により異なり、自立している方から介護が必要な方まで幅広く受け入れている施設も。選択肢が幅広いため、自分に合った施設を選ぶことができます。 看取りまで対応している施設も多数あり、「終の棲家(ついのすみか)」を選ぶうえでも選択肢のひとつとなります。 全体の概要をまとめるとこのようになります。 費用相場 入居時費用 0~数千万円 月額利用料 15~30万円 入居条件 要介護度 自立~要介護5※1 認知症 対応可 看取り 対応可 入居のしやすさ ◯ ※施設の種類によって異なります。 特定施設入居者生活介護とは 特定施設入居者生活介護は、厚生労働省の定めた基準を満たす施設で受けられる介護保険サービスです。ケアマネジャーが作成したケアプランに基づき提供される食事や入浴・排泄など介助のほか、生活支援、機能回復のためのリハビリなどもおこなわれます。指定を受けてこのサービスを提供する施設は、一般的に「特定施設」の略称で呼ばれています。 介護付き有料老人ホームの種類と入居基準 介護付き有料老人ホームには「介護専用型」「混合型」「健康型」の3種類があり、それぞれ入居条件が異なります。 介護度 ...

2021/11/10

article-image

【動画でわかる】有料老人ホームとは?費用やサービス内容、特養との違いは

介護施設を探している中で「老人ホームにはいろいろな種類があるんだ。何が違うんだろう?」と疑問を感じることがあるかもしれません。 そこで今回は、名前に「老人ホーム」とつく施設の中でも、「有料老人ホーム」を中心に紹介。よく似ている「特別養護老人ホーム」との違いも見ていきます。 「老人ホームの種類が多すぎて訳がわからない」と思ったら、ぜひ参考にしてみてくださいね。 https://youtu.be/eMgjSeJPT8c 有料老人ホームの種類 有料老人ホームには、以下の3種類があります。 介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム 健康型有料老人ホーム この3種類の違いを以下にまとめています。 種類 介護付き有料老人ホーム ...

2021/10/28

article-image

グループホームとは|入居条件や費用、入居時に気をつけたいポイントを解説

グループホームとは認知症高齢者のための介護施設で、住み慣れた地域で暮らし続けられる地域密着型サービスのこと。正式な名称を「認知症対応型共同生活介護」といいます。 費用や入居条件などの主な特徴は以下の通りです。 入居時費用約0円~100万円月額利用料約15~30万円入居条件要支援2以上認知症の受け入れ重度認知症も受け入れ可看取り対応対応していない施設が多い この記事では、各項目について詳しくご説明していきます。ご家族が認知症で、在宅での介護生活に不安のある方などはとくに、グループホームへの入居検討の際の参考にしてください。 https://youtu.be/EofVO7MRRDM グループホームの特徴 グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。専門知識と技術をもったスタッフの援助を受けて、要支援以上の認知症高齢者が少人数で共同生活をおくります。 「ユニット」といわれる少人数のグループで生活し、入居者はそれぞれ家事などの役割分担をします。 調理や食事の支度、掃除や洗濯など入居者の能力に合った家事をして自分らしく共同生活を過ごすところが、ほかの介護施設や老人ホームとは異なるポイントです。 グループホームの目的は、認知症高齢者が安定した生活を現実化させること。そのために、ほかの利用者やスタッフと協力して生活に必要な家事を行うことで認知症症状の進行を防ぎ、できるだけ能力を維持するのです。 グループホームは少人数「ユニット」で生活 グループホームでは「ユニット」と呼ばれるグループごとに区切って共同生活を送るのが決まり。1ユニットにつき5人から9人、原則1施設につき原則2ユニットまでと制限されています。 少人数に制限する理由は、心穏やかに安定して過ごしやすい環境を整えるため。環境変化が少なく、同じグループメンバーで協力して共同生活することは、認知症の進行を防ぐことに繋がります。 認知症の方にとって新しく出会う人、新しく覚えることが難しいので、入居者やスタッフの入れ替わりが頻繁にある施設では認知症の高齢者は心が落ち着かず、ストレスを感じ生活しづらくなってしまいます。その結果、認知症症状を悪化させるだけでなく、共同生活を送る上でトラブルを起こすきっかけとなります。 慣れ親しんだ場所を離れて新しい生活をするのは認知症の方には特に心配が尽きないもの。その心配を軽減するため、より家庭にできるだけ近づけ、安心して暮らせるようにしています。 グループホームの費用 グループホーム入居を検討する際に必要なのが初期費用と月額費用です。 ここからは、グループホームの入居に必要な費用と、「初期費用」「月額費用」それぞれの内容について詳しく解説していきます。 項目 ...

2021/11/15

特集

介護の基礎知識

total support

介護の悩みを
トータルサポート

total support

介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。

鎌倉新書グループサイト