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ブックレビュー

認知症

認知症 闘病記

『おやじはニーチェ』─「“哲学”をツールにした認知症理解」に効く1冊

今回紹介するのは、第10回小林秀雄賞を受賞した『ご先祖様はどちら様』をはじめ、ドラマ化もされた『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』(いずれも新潮社)などの傑作ルポで知られる髙橋秀実氏の最新刊である。 ヒデミネ氏の作品リストのなかには、自らの日常を題材にしたものも多い。カナヅチを克服すべく水泳教室に通う日々を綴った『はい、泳げません』、妻とともにダイエットに奮闘努力する『やせれば美人』(いずれも新潮社)など、自らの体験をユーモラスに語った抱腹絶倒の「自分ルポ」は、どれも傑作だ。 『おやじはニーチェ』も、認知症になった父と過ごした436日の日々を題材にしているという点でその系譜に入る作品だが、他の作品と比べてちょっと重苦しい雰囲気があるように感じた。認知症介護には、ユーモアだけで語れない、シリアスな面があるからなのかもしれない。 とはいえ、この作品がおもしろくないのかというと、そうではない。それどころか、認知症に新たな視点を得られる有意義な書だとも言える。ところどころで発揮されるヒデミネ節をたどりながら、本の内容をレビューしていこう。 『おやじはニーチェ 認知症の父と過ごした436日』 著者:髙橋秀実 発行:新潮社 定価:1650円(税別) ボブ的オススメ度:★★★☆☆ ある日突然始まった、認知症の父との同居生活 ヒデミネ氏が父の認知症を意識したのは、母が急逝したことがきっかけだった。引用しよう。 以前から父は同じ話を何度も繰り返していた。最近の出来事も丸ごと忘れており、忘れたことも忘れているようで私は「大丈夫なのか?」と心配していたのだが、母は「大丈夫よ」の一点張りだった。つまり不都合のないように都合をつけて生活していた。私たち息子夫婦の生活を阻害せず、不都合をかけまいと頑張っていたのだ。ところが母は急性大動脈解離で突然この世を去った。87歳だった父は取り残され、すべてが不都合になった。母の不在で露わになった認知症というべきか。 介護は、ある日突然、必要が生じて、それがゆえに家族は何ひとつ準備をしていない状況から介護を実行しなければならない。 ただ、ヒデミネ氏の場合、父親は身体的には健康なので、食事や排泄、衣類の着脱といった「生活介助」の必要性は薄い。実際に彼は地域のケアマネジャーの小暮さん(仮名)から、「受けられる介護サービスって、あんまりないんですよね」と告げられる。 ケアマネジャーの小暮さんも残念そうにそう言った。父はすでに区役所から「要介護3」の認定を受けており、私は小暮さんと「居宅介護支援」の契約を済ませていた。彼を通じて様々な介護サービスを受ける予定だったのだが、「お父さんの場合はちょっと……」とのことなのである。例えば、認知症の介護でよく利用される「デイサービス」。車で迎えに来てくれて父をしばらく預かってくれるというサービスなのだが、おそらく父はひとりでは車に乗らないだろう。無理やり乗せようとすれば「なんでだ!」と怒号をあげるので私が同行しなければならず、途中で「帰る!」と言い出さないようにデイサービスの施設でも付き添うことになる。ずっと付き添うのではデイサービスの意味がないのだ。 同じような困難は「特別養護老人ホーム」への入居にも言えて、満杯で数百人が待機しているという施設において、要介護の緊急性が高いヒデミネ氏の父の入居はすぐに認められるというが、入所すれば「なんでだ!」「帰る!」などと言い出して勝手に施設から出ていってしまう人は再入所がむずかしくなるというのだ。 そこでケアマネジャーから提案されたのは、月に2万円ほどの自己負担で、家に緊急通報用の電話が設置され、ヘルパーが1日に何度も家に来てくれる「定期巡回・臨時対応型訪問介護看護」だった。 とはいえ、身のまわりの世話の一切を引き受けていた母の家で父ひとりを置いていくわけにはいかない。ヒデミネ氏は妻とともに、実家で父との同居生活を始めることになる。 「哲学」をツールにして認知症を理解するということ ヒデミネ氏は、認知症の父がどのような世界に生きているのかを知ろうとして、さまざまな会話を試みる。 例えば、自分はなぜいまここにいるのか、ここはいったいどこで、いまはいったいいつなのか?という、医療介護用語で見当識と呼ばれる能力をテストするつもりで「ところでさ、俺たちが今いるところはどこ?」と質問する。そこで以下のような会話が交わされる。棒線以下のセリフがヒデミネ氏の発言で、カッコ内が父のセリフである。 「どこが?」父はそう問い返した。――どこがって、ここが。私は床を指差した。「ここがどこかって?」そう、ここはどこ?「どこが?」――ここが。「どこ?」――いや、だからここ。「だからここってどこだ?」――だからここじゃなくて、ここ。「どこ?」――ここ。「ここってどこだ?」 このように会話は堂々めぐりをしてヒデミネ氏を混乱させる。 記憶力をテストしようとして、「今日は何をしてたの?」と質問したり、自分が認知症であるという病識があるかどうかを知ろうとして、「認知症って知ってる?」と聞いても同じような結果になる。 頭を抱えたヒデミネ氏が助けを求めたのが、古今東西の哲学思想である。 例えば、「万物は永久に回帰し、われわれ自身もそれとともに回帰する」というフリードリッヒ・ニーチェの「永遠回帰」の考えと照らし合わせて、記憶力を失うということをこう解釈する。 私たちは忘れるから幸福になれる。失敗を忘れるから夢や希望も抱けるし、忘れるから現在を感じられるという。すべてのことをそのまますべて記憶していたら、それこそ自縄自縛の境遇に陥って前に進めない。経験が記憶によって生まれるのであれば、記憶を消去することで初めて新しい現実と出会えるのだ。ありがたき忘却力ということか。 このように、哲学思想が認知症理解に新たな視点を当てるのである。ヒデミネ氏は学生時代から「哲学」というものに馴染めず、嫌悪感すら抱いていたそうだが、認知症理解のツールと考えた途端、すらすらと理解できるようになったという。 そこで介護のかたわら、プラトンやアリストテレス、デカルト、ニーチェ、サルトル、ベルクソン、西田幾多郎、九鬼周造などの哲学書を読みふけったというが、それが認知症理解の助けになったにせよ、介護の大変さ、つらさから逃れられるわけではなかった。 ある日、「『存在』とか言ってる場合じゃないでしょ」と妻に指摘され、うろたえるヒデミネ氏。父と24時間休みなく向き合うなか、仕事もできずに経済的にも追いつめられた彼は、父との別居を決意せざるを得なくなるのである。 認知症介護はある日突然始まって、ある日突然終わる 別居したとはいえ、介護から完全に解放されるわけではない。クルマで40分の場所にある実家と自宅を往復しながらの介護は続いていく。 自分のことを「息子」として認識せず、「社長」とか「お兄ちゃん」とか、「旦那」などと呼ぶ父との対話を続けていく。そして、哲学の視点からの認知症理解に取り組む。「あとがき」で自身が告白しているように、それが「日常生活の逃避行」であると自覚しながらも。 こうした終わりの見えない介護生活は、父が「末期の胃がん」におかされていたことが発覚して急展開を見せる。 病院は介護施設ではないので、治療が終了すれば退院を迫られるが、医療ソーシャルワーカーと相談しながら父の処遇を決めなければならない。終末期医療専門のホスピス病院や有料老人ホームもあるが、どこも待機人数が多く、いつ入所できるかわからない。 幸いなことに「認知症があると転院はむずかしい」と言われていた緩和ケア病棟に移ることができたのだが、それ以前に入所を打診した小規模介護施設からは「早く決めないとすぐに埋まっちゃうわよ。行くとこなくて困ってるんでしょ」と姥捨山のような対応をされて閉口したという。 それでもヒデミネ氏は、最後まで父との対話を繰り返し、それをメモして記録していく。 そして、自分のことを28歳だと思っていて、緩和ケア病棟の部屋に同室している自分を女性だと勘違いして口説いてくる父と、ビデミネ氏は実に感動的な会話をするのである。 この場面は、是非とも本書を手にとって読んで欲しい。ことさら感動を演出するかのようにして書かれてはいないが、私は大いに心を動かされた。 本書は「認知症とは何か?」ということについて、ヒデミネ氏が真摯に向き合った記録として読めるが、そこに明確な解答があるわけではない。というか、明確な解答などないというのが、ある意味での結論なのかもしれない。 少なくとも、認知症を知る上で、本書は新たな視点を与えてくれる書であることに間違いはないだろう。

2023/05/12

人体の秘密 日本社会の変容 認知症

認知症でも安心して暮らせる社会とは?─“認知症の当事者の視点”に効く2冊

認知症とは、認知機能が衰える症状のことで、認知症という病気があるわけではない、という話をかつて老年行動学の先生から聞いたことがある。 体の寿命は延びたのに、脳の機能がそれに追いついていない状態というわけだ。だから、「認知症患者」という言葉は、厳密に言えばあり得ないということになる。 高齢化が進み、高齢者の5人に1人が認知症になるという時代、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を作っていかなくてはならない。 今回は、2冊の本から、その処方箋となるヒントを探ってみよう。 当事者の世界を疑似体験できる『認知症世界の歩き方』 「アルキタイヒルズ」…など、絶妙なネーミングで語られる認知症の症状 表紙からして目立つ本である。 書店の棚に平積みされた本の帯には「はやくも15万部突破!!!」の文字が躍っている。奥付を見ると、第15刷とある。サイクルの早い書店の流通システムで生き残っていくには、それだけ売れ続けなければならないというわけか(2022年12月時点では16刷16万部に達しているようだ)。 この本の特色は、冒頭の一文によく現れている。引用しよう。 これまでに出版された本やインターネットで見つかる情報は、どれも症状を医療従事者や介護者視点の難しい言葉で説明したものばかり。肝心の「ご本人」の視点から、その気持ちや困りごとがまとめられた情報が、ほとんど見つからないのです。そこでわたしたちは、ご本人にインタビューを重ね、「語り」を蓄積することから始めました。それをもとに、認知症のある方が経験する出来事を「旅のスケッチ」と「旅行記」の形式にまとめ、だれもがわかりやすく身近に感じ、楽しみながら学べるストーリーをつくることにしました。 ここで言う「わたしたち」とは、この本を制作したNPO法人イシュープラスデザイン、および代表の筧氏、それから監修者である認知症未来共生ハブの人たちで、「インタビュー」した認知症の人は、約100人にのぼるという。 というわけで、認知症の症状である「BPSD」などという専門用語はこの本ではいっさい使われていないし、その内容となる「せん妄」とか「失行」とか「仮性作業」とか「弄便」といった言葉も出てこない。かわりに使われているのが、次のような言葉だ。 乗るとだんだん記憶をなくす「ミステリーバス」 だれもがタイムスリップしてしまう住宅街「アルキタイヒルズ」 イケメンも美女も、見た目が関係ない社会「顔無し族の村」 熱湯、ヌルッ、冷水、ビリリ。入浴するたび変わるお湯「七変化温泉」 時計の針が一定のリズムでは刻まれない「トキシラズ宮殿」 一本道なのになかなか出口にたどり着かない「服ノ袖トンネル」 ヒソヒソ話が全部聞こえて疲れてしまう「カクテルバーDANBO」 こんな調子で認知症の症状が、ダジャレや絶妙な比喩で表現されている。そのネーミングセンスに舌を巻く。 あくまで認知症の本人が感じている世界が示されている 本を開いて、その「認知症世界」を旅してみよう。例えば、「アルキタイヒルズ」。ここで紹介されている「旅人の声」では、自分の家を他人の家だと思って帰ろうとしてしまうケースが紹介されている。 おもしろいのは、そうした行動の理由は、一つではないということ。「過去に住んでいた自宅の記憶が強く想起されて、現在の自宅の記憶にオーバーラップしてしまうため」という理由もあれば、「空間や人の顔などを認識する機能に障害が起き、その場所を自宅だとわからなくなるから」かもしれず、はたまた「ストレスが『落ちつくことのできる自宅に帰りたい』という気持ちを誘発している」こともあり得るという。 とはいえこの本では、「だから認知症の介護をする人はこうしてください」というアドバイスはいっさいない。ただ、認知症の人が見たり、聞いたり、感じたりしている世界を示すのみである。 だが、かえってそのことがこの本の美点であると私は思う。単なる介護マニュアルになっては、おもしろさが半減、いや、全減しかねないのではないか。認知症世界のガイドブックであることがこの本の神髄なのだ。 本の後半は、認知症になった人に向けて「認知症とともに生きるための知恵を学ぶ旅のガイド」になっている。 ガイドの仕方も懇切丁寧だ。「今の自分の心身の状態を知る」、「専門職に相談する」、「だれかに打ち明ける」、「頼れる仲間をつくる」、「当事者とつながる」、「混乱を生むモノ・コトを生活空間から取り除く」、「スマートフォンを使って生活を楽にする」など、具体的なステップを示して認知症になっても楽に暮らせる道に誘導していく。 新時代のQRコードの使い方を提示 驚いたのは、要所要所にQRコードがあって、スマートフォンでそれを読み込むと、認知症未来共創ハブの特設サイトに飛んで、さらにくわしい情報に触れることができる点である。 例えば「スマートフォンの活用術」のQRコードを読み込むと、鍵を使わずに玄関などのドアの施錠を管理できるアプリ(認知症の人はたびたび自分が自宅の家の鍵を閉めたことを忘れる)や、しゃべりかけた音声を認識して文字化してくれる機能などの情報にアクセスできる。 むむむ。その手があったか、と感心させられた。 この手法を小説などのエンターテインメント分野などに転用するなら、「この部分はこのBGMを聴きながら読んでください」と指定する、QRコード小説が登場するのではないか? といった夢想も想起させられた。田中康夫が1980年に発表した小説『なんとなく、クリスタル』が「注釈小説」として脚光を浴びた昭和からの読書好きとしては、令和のデジタル時代ならではの「QRコード小説」も読みたいものだ。長生きするのは損ばかりではなく、得もあるのである。 医療や介護従事者向けに、高齢者の擬似体験ができるツールが開発されていて、私も30代だったころ、雑誌の取材を通じて体験させてもらったことがある。ヘッドフォンや特殊眼鏡をかけたり、手足に重りを巻いて、筋力、視力、聴力などの低下を擬似的に体験するのだ。階段を登ったり、風呂の浴槽に入ったりといった何気ない日常行為が、とんでもない重労働に変わった(56歳現在、その違和感には多少慣れてはいるが)。 この本を読めば、それに近い体験ができるのではないか。あなたも、認知症世界を旅してみませんか? 『認知症世界の歩き方』 著者:筧裕介 監修:認知症未来共創ハブほか 発行:ライツ社 定価:1900円(税別) ボブ的オススメ度:★★★☆☆ 専門医が当事者として語る『ボクはやっと認知症のことがわかった』 「長谷川式スケール」の開発者が認知症に 続いて読んだのは、認知症介護研究の第一人者で、認知症診断の物差しである「長谷川式簡易知能評価スケール」(長谷川式スケール)を開発した長谷川和夫先生のこの本だ。 先生は2021年11月13日、92歳で老衰で亡くなったが、その5年前から認知症になったことを公表した。この本は、読売新聞社の猪熊律子氏の協力のもと、先生が当事者の目で認知症を語った興味深い本である。 冒頭は、次のようなショッキングな文章で始まる。引用しよう。 どうもおかしい。前に行ったことがある場所だから当然たどり着けるはずなのに、行き着かない。今日が何月何日で、どんな予定があったのかがわからない。どうやら自分は認知症になったのではないかと思いはじめたのは、2016年ごろだったと思います。 認知症の人が自宅を出てどこかへ出かけるとき、鍵をかけたかどうかわからなくなって何度も家に戻ってしまうことはよく知られている。先生にも、そうした症状があらわれたのだ。 記憶というのは「記銘→保持→想起」というプロセスを経ておこなうが、どれか一つに障害が起こると、自分のやった行動を思い出すことができなくなる。「自宅の鍵をかけた」という経験を記憶しておく機能がうまく働かなくなるのだ。 長谷川式スケールは、「お歳はおいくつですか?」、「私たちが今いるところはどこですか?」、「100から順に7を引いてください」といった質問項目があるが、1974年に公表された初期バージョンの最初の質問は「今日は何月何日ですか?(または)何曜日ですか?」というものだった。先生はそのことを、テーブルの上の新聞に印刷された日付を見ないと答えられなくなってしまったのだ。 このときの心境を、先生は次のように語っている。 ボク自身で言えば、認知症になったのはしょうがない。年をとったんだから。長生きすれば誰でもなるのだから、それは当たり前のこと。ショックじゃなかったといえば嘘になるけれど、なったものは仕方ない。これが正直な感想でした。 そのように自分の認知症を受け入れることができた背景には、キリスト教の信仰があったことも大きいと先生は言う。「神様が信仰を与えてくださり、守ってくださっているという感覚があるから、割り切って、ありのままを受け入れるという感じになったのかもしれません」と。 痴呆から認知症へと変わった経緯が興味深い この本では、「長谷川式スケール」の開発秘話も語られる。きっかけは、恩師の新福尚武先生に「長谷川君、見立てが昨日と今日とで違ってはいけない。診断の物差しをつくりなさい」と言われたことだという。 精神科医にヒアリングをし、彼らが診断のために行っていた質問項目を書き出すところから始めたそうだが、そのなかから「できるだけ短時間で行えること(最大限でも20分以内)」、「数値化できるもの」を絞り込んだのだという。 最初の公表から17年後の1991年には、改訂版が公表され、11項目あった質問を削ったり、入れ替えたりして9項目になった。その理由は、質問が時代にそぐわないところが出てきたのと(「大東亜戦争が終わったのはいつですか?」、「日本の総理大臣の名前は?」という質問は削除された)、海外の診断法との比較研究に整合性を持たせるためだったとか。 それから、長谷川先生は2004年、それまでの「痴呆」から「認知症」に用語を変更した際の厚生労働省の委員をつとめたことでも有名だ。このネーミングは先生自身のものではなく、公募により6000件もの提案を受けたなかで選んだものだったそうだ。 もっとも多かった応募は「認知障害」。次いで「認知症」、「記憶障害」、「アルツハイマー(病)」、「もの忘れ症」、「記憶症」の6つが候補にあがった。先生は「3文字が覚えやすくていい」と思っていたというが、最終的にはさまざまな専門医、研究者の意見を取り入れて「認知症」となった。 死ぬまで研究者だった長谷川博士 さて、第三章「認知症になってわかったこと」は、認知症の臨床や研究を半世紀にわたって続けてきた先生が、認知症の当事者になって初めてわかったことが語られる。この本の核心部分だ。 先生はそこで、認知症が「連続している」ことと、「固定されたものではない」ということを指摘する。 普通のときとの連続性があります。ボクの場合、朝起きたときが、いちばん調子がよい。それがだいたい、午後1時ごろまで続きます。午後1時を過ぎると、自分がどこにいるのか、何をしているのか、わからなくなってくる。だんだん疲れてきて、負荷がかかってくるわけです。それで、とんでもないことが起こったりします。 そして、「何かを決めるときに、ボクたち抜きに物事を決めないでほしい」、「認知症の人の言うことをよく聴いてほしい」、「すべての役割を奪わないでほしい」と当事者の立場から健常者に対して望みを伝えている。 ちなみに、先生は当初、自身の認知症をアルツハイマー型認知症と考えていたそうだが、専門病院でMRIなどの画像検査や心理士による神経心理検査を受けた結果、「嗜銀顆粒性(しぎんかりゅうせい)認知症」と診断された。80代など高齢期になってから現れやすい、進行が緩やかなタイプの認知症である。 そんな先生が、1年後に2回目の検査を受け、2年後に3回目の検査を受けたのは、「年をとれば認知症が悪くなっていく一方ではなく、多少はよくなっている部分もあるのではないか」と考えたからだという。自ら実験台になったわけだ。そして、「海馬の萎縮や記憶力、判断力の低下などは見られるにせよ、全体として、進行は非常に緩やか」という診断を受けている。 まさに先生は、人生の最後の最後まで認知症の研究者であり続けた人であり、生涯をその研究に捧げた人だったのではないか。 今回、この2冊の本を読むことで、「認知症とともに生きる社会」の輪郭が、少しは見えてきたような気がする。 『ボクはやっと認知症のことがわかった』 著者:長谷川和夫 ...

2022/12/02

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介護付き有料老人ホームとは│提供されるサービス・費用・入居条件などを解説

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グループホームとは|入居条件や費用、入居時に気をつけたいポイントを解説

認知症の方の介護は大変です。「そろそろ施設への入居を検討しよう」と思っても、認知症の症状があると、入居を断られてしまうのではと心配もあるでしょう。 グループホームは認知症高齢者のための介護施設です。住み慣れた地域で暮らし続けられる地域密着型サービスであり、正式な名称を「認知症対応型共同生活介護」といいます。 こちらの記事では、グループホームについて解説します。また、グループホームで受けられるサービスや費用、施設選びのポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。 https://youtu.be/EofVO7MRRDM この記事を読めばこれがわかる! グループホームの詳細がわかる! グループホームを選ぶ際のポイントがわかる! グループホームへ入居する際の注意点がわかる! グループホームとは グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。専門知識と技術をもったスタッフの援助を受けて、要支援以上の認知症高齢者が少人数で共同生活をおくります。 「ユニット」といわれる少人数のグループで生活し、入居者はそれぞれ家事などの役割分担をします。 調理や食事の支度、掃除や洗濯など入居者の能力に合った家事をして自分らしく共同生活を過ごすところが、ほかの介護施設や老人ホームとは異なるポイントです。 グループホームの目的は、認知症高齢者が安定した生活を現実化させること。そのために、ほかの利用者やスタッフと協力して生活に必要な家事を行うことで認知症症状の進行を防ぎ、できるだけ能力を維持するのです。 グループホームは少人数「ユニット」で生活 グループホームでは「ユニット」と呼ばれるグループごとに区切って共同生活を送るのが決まり。1ユニットにつき5人から9人、原則1施設につき原則2ユニットまでと制限されています。 少人数に制限する理由は、心穏やかに安定して過ごしやすい環境を整えるため。環境変化が少なく、同じグループメンバーで協力して共同生活することは、認知症の進行を防ぐことに繋がります。 認知症の方にとって新しく出会う人、新しく覚えることが難しいので、入居者やスタッフの入れ替わりが頻繁にある施設では認知症の高齢者は心が落ち着かず、ストレスを感じ生活しづらくなってしまいます。その結果、認知症症状を悪化させるだけでなく、共同生活を送る上でトラブルを起こすきっかけとなります。 慣れ親しんだ場所を離れて新しい生活をするのは認知症の方には特に心配が尽きないもの。その心配を軽減するため、より家庭にできるだけ近づけ、安心して暮らせるようにしています。 グループホームの入居条件 グループホームに入居できるのは医師から「認知症」と診断を受けている方で、一定の条件にあてはまる方に限ります。 原則65歳以上でかつ要支援2以上の認定を受けている方 医師から認知症の診断を受けている方 心身とも集団生活を送ることに支障のない方 グループホームと同一の市町村に住民票がある方 「心身とも集団生活を送ることに支障のない」という判断基準は施設によって異なります。入居を希望している施設がある場合には、施設のスタッフに相談しましょう。 また、生活保護を受けていてもグループホームに入ることは基本的には可能です。しかし、「生活保護法の指定を受けている施設に限られる」などの条件があるので、実際の入居に関しては、行政の生活支援担当窓口やケースワーカーに相談してみましょう。 グループホームから退去を迫られることもある!? グループホームを追い出される、つまり「強制退去」となることは可能性としてゼロではありません。一般的に、施設側は入居者がグループホームでの生活を続けられるように最大限の努力をします。それでも難しい場合は、本人やその家族へ退去を勧告します。「暴言や暴力などの迷惑行為が著しい場合」「継続的に医療が必要になった場合」「自傷行為が頻発する場合」etc。共同生活が難しくなった場合には追い出されてしまうこともあるのです グループホームで受けられるサービス グループホームで受けられるサービスは主に以下です。 生活支援 認知症ケア 医療体制 看取り それぞれ詳しく見てみましょう。 生活支援 グループホームでは以下の生活面でのサービスを受けられます。 食事提供 :◎ 生活相談 :◎ 食事介助 :◎ 排泄介助 :◎ 入浴介助 :◎ 掃除・洗濯:◯ リハビリ :△ レクリエーション:◎ 認知症を発症すると何もできなくなってしまうわけではなく、日常生活を送るだけなら問題がないことも多いです。 グループホームには認知症ケア専門スタッフが常駐しています。認知症進行を遅らせる目的で、入居者が専門スタッフの支援を受けながら入居者の能力(残存能力)に合った家事を役割分担して自分たち自身でおこないます。 食事の準備として買い出しから調理、配膳、後片付けまで、そして洗濯をして干すといった作業や掃除も、スタッフの介助を受けながら日常生活を送ります。 グループホームでは、入居者の能力(残存能力)に合った家事を役割分担して自分たち自身でおこなうことになります。 例えば、食事の準備として買い出しから調理、配膳、後片付けまで。また、そして洗濯をして、干すまで…など。そのために必要な支援を、認知症ケアに長けた専門スタッフから受けられるのが、グループホームの大きな特徴です。 グループホームは日中の時間帯は要介護入居者3人に対して1人以上のスタッフを配置する「3:1」基準が設けられています。施設規模によっては、付き添いやリハビリなどの個別対応が難しいので、入居を検討する際は施設に確認しましょう。 認知症ケア 施設内レクリエーションやリハビリのほかに、地域の方との交流を図るための活動の一環として地域のお祭りに参加や協力をしたり、地域の人と一緒に公園掃除などの活動を行う施設も増えてきました。 グループホームとして積み上げてきた認知症ケアの経験という強みを活かし、地域に向けた情報発信などのさまざまな活動が広がっています。 地域の方と交流する「認知症サロン」などを開催して施設外に居場所を作ったり、啓発活動として認知症サポーター養成講座を開いたりするなど、地域の人々との交流に重きを置くところが増えています。 顔の見える関係づくりをすることで地域の人に認知症について理解を深めてもらったり、在宅介護の認知症高齢者への相談支援につなげたり。 こうした活動は認知症ケアの拠点であるグループホームの社会的な価値の向上や、人とのつながりを通じて入所者の暮らしを豊かにする効果が期待できます。 医療体制 グループホームの入居条件として「身体症状が安定し集団生活を送ることに支障のない方」と定義しているように、施設に認知症高齢者専門スタッフは常駐していますが、看護師が常駐していたり、医療体制が整っているところはまだまだ少ないです。 しかし近年、高齢化が進む社会の中で、グループホームの入居者の状況も変わってきています。 現在は看護師の配置が義務付けられていないので、医療ケアが必要な人は入居が厳しい可能性があります。訪問看護ステーションと密に連携したり、提携した医療機関が施設が増えたりもしているので、医療体制について気になることがあれば、施設に直接問い合わせてみましょう。 看取り 超高齢社会でグループホームの入所者も高齢化が進み、「看取りサービス」の需要が増えてきました。 すべてのグループホームで看取りサービス対応しているわけではないので、体制が整っていないグループホームの多くは、医療ケアが必要な場合、提携医療施設や介護施設へ移ってもらう方針を採っています。 介護・医療体制の充実度は施設によってさまざまです。介護保険法の改正が2009年に行われ、看取りサービスに対応できるグループホームには「看取り介護加算」として介護サービスの追加料金を受け取れるようになりました。 看取りサービスに対応しているグループホームは昨今の状況を受け増加傾向にあります。パンフレットに「看取り介護加算」の金額が表記されているかがひとつの手がかりになります。 グループホームの設備 グループホームは一見、普通の民家のようで、家庭に近い雰囲気が特徴ですが、立地にも施設基準が設けられています。 施設内設備としては、ユニットごとに食堂、キッチン、共同リビング、トイレ、洗面設備、浴室、スプリンクラーなどの消防設備など入居者に必要な設備があり、異なるユニットとの共有は認められていません。 入居者の方がリラックスして生活できるように、一居室あたりの最低面積基準も設けられています。このようにグループホーム設立にあたっては一定の基準をクリアする必要があります。 立地 病院や入居型施設の敷地外に位置している利用者の家族や地域住民と交流ができる場所にある 定員 定員は5人以上9人以下1つの事業所に2つの共同生活住居を設けることもできる(ユニットは2つまで) 居室 1居室の定員は原則1人面積は収納設備等を除いて7.43㎡(約4.5帖)以上 共有設備 居室に近接して相互交流ができるリビングや食堂などの設備を設けること台所、トイレ、洗面、浴室は9名を上限とする生活単位(ユニット)毎に区分して配置 グループホームの費用 グループホーム入居を検討する際に必要なのが初期費用と月額費用です。 ここからは、グループホームの入居に必要な費用と、「初期費用」「月額費用」それぞれの内容について詳しく解説していきます。 ...

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介護施設を探している中で「老人ホームにはいろいろな種類があるんだ。何が違うんだろう?」と疑問を感じることがあるかもしれません。 そこで今回は、名前に「老人ホーム」とつく施設の中でも、「有料老人ホーム」を中心に紹介。よく似ている「特別養護老人ホーム」との違いも見ていきます。 「老人ホームの種類が多すぎて訳がわからない」と思ったら、ぜひ参考にしてみてくださいね。 https://youtu.be/eMgjSeJPT8c 有料老人ホームの種類 有料老人ホームには、以下の3種類があります。 介護付き有料老人ホーム 住宅型有料老人ホーム 健康型有料老人ホーム この3種類の違いを以下にまとめています。 種類 介護付き有料老人ホーム ...

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