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#老人ホームの医療体制

気管切開でも老人ホームに入居できる?|施設選びの重要なポイント

気管切開すると安定した呼吸が確保できる一方で、日常的な医療ケアが必要になります。家族の介護により自宅で生活することも可能ですが、介護施設への入居を検討する際は、医療体制の手厚い施設を選びましょう。 この記事では施設選びのポイントのほか、気管切開のメリットデメリット、気管切開の方に必要なたん吸入の手順などについても解説しています。 気管切開の方が入居可能なのは医療体制が手厚い施設 気管切開の方を受け入れ可能なのは、看護師が24時間体制で常駐していたり医療機関を併設しているなどの、看護・医療体制の整った一部の施設に限られています。このため、胃ろうやインスリン注射などのほかの医療行為と比べると入居可能な施設の数は多くありません。 受け入れが難しくなる要因 気管カニューレは使っているうちに汚れてくるため、2週間に1度程度の交換が不可欠です。交換するときは医師や看護師による医療処置が必要です。 また、気管切開している方は呼吸器に持病がある場合が多く、症状が急変した際に医療体制の整った施設でないと対応することができません。 上記の理由により気管切開している方を受け入れできる施設は少ないため、お住まいの地域周辺で探しても見つからない場合があります。施設への入居を希望する場合は、範囲を広げて探してみましょう。また、広範囲の施設を探す場合はインターネットを利用した情報収取が便利です。 気管切開とは 気管切開は、のどから気管までを切開する気道確保方法です。一般的には切開した穴がふさがらないよう気管カニューレを挿入し、必要に応じて人工呼吸器を装着することもあります。 気管切開すると呼吸が楽になる一方で、日常的な医療ケアが必要になることも留意しておきましょう。 どんな人に気管切開は必要? 気管切開には、次の3つの役割があります。 口や鼻からの挿管チューブを使わず人工呼吸器の装着を可能にする鼻と口以外から空気を取り込める唾液が気管に流れ込むのを防ぐ このため、気道が狭くなって呼吸がしにくい方のほか、がんでのどの一部を切除した方や脳梗塞などの病気で長期間、人工呼吸器を必要する方などにも気管切開はおこなわれます。 手術後、傷口や全身の状態が安定して必要な栄養がとれれば、自宅で過ごすことが可能です。また、リハビリによって口からの食事が可能になったり、呼吸の症状が回復すれば気管切開の穴をふさぐこともあります。 気管切開のメリットとデメリット 気管切開はほかの手術と同様にメリットとデメリットがあります。気管切開について十分理解することが術前・術後の不安解消につながるため、手術を受ける際は本人や家族が手術の内容やメリット・デメリットをしっかり把握しておきましょう。 メリット 気管切開には、次のメリットがあります。 楽に呼吸できるようになり、窒息のリスクが減る気管内のたんを吸引しやすい気管カニューレの固定や挿入がしやすい デメリット 一方、気管切開は次のデメリットを伴います。 たんの吸引やガーゼ交換など、日常的な医療ケア必要になる手術に伴う気管内の出血や術後感染症などの危険性がある気胸や肺炎などの合併症のリスクがある 気管切開の人におこなう毎日必要な医療ケア 気管切開すると、日常的に医療ケアが必要になります。どのようなことをおこなうのか見ていきましょう。 カフの空気量を確認する 気管カニューレには、気管側の先端近くに「カフ」と呼ばれる風船が付いているタイプがあります。カフを膨らませることで気管とカニューレの隙間をなくし、唾液が気管に流れ込むのを防ぎます。 カフの空気は自然に抜けてしまうため、定期的に空気を注入します。ただし空気の入れすぎは気管粘膜の血流を阻害してしまうので、適切な空気量の調整が必要です。 バンドの交換と皮膚の状態確認 気管カニューレはバンドを使って固定します。カニューレ周辺が汚れていると皮膚トラブルの原因になるため、1日に1度はバンドを外して清潔にするとともに皮膚の状態を確認します。 また、バンドの汚れも確認し、必要に応じて交換することも皮膚トラブルの防止に役立ちます。 口腔ケア 口の中が汚れていると細菌が繁殖して肺炎の原因になるため、気管切開していないときと同様に口腔ケアは重要です。口から食事をしていない方も、1日1回は歯を磨いたりガーゼを濡らして口の中を拭くなどの方法で口の中を清潔に保ちます。 加湿管理 乾燥した空気が直接気管に入らないよう、気管カニューレには「人工鼻」という加湿フィルターを装着します。人工鼻は48時間ごとまたは汚染または破損のある場合に交換が必要です。 気管切開にはたん吸引が必要 気管切開をすると自力でたんを出せなくなることが多いため、1日に数回たんの吸引をおこなう必要があります。このため、気管切開した方が自宅で生活する場合は、家族による介護が欠かせません。 手術後に自宅に帰る場合、家族は看護師からたん吸引について次のようなレクチャーを受けます。 たん吸引をおこなう準備 たん吸引をおこなう前に、まずは次のものを準備します。 吸引器吸引カテーテルアルコール綿水道水の入ったコップカテーテルが入る容器手袋マスクエプロンゴーグル たん吸引の手順 たん吸引はカテーテルを入れる場所により、次の3つの方法があります。 口腔内からの吸引鼻腔内からの吸引気管カニューレ内部からの吸引 ここでは、すべての方法で共通する以下の基本の手順について解説します。 手指を清潔にする意思確認をして体位を整える吸引カテーテルを吸引器本体のチューブにつなぐ吸引器の電源を入れる吸引圧を合わせるカテーテルを挿入するたんを吸引するカテーテルをゆっくり引き抜くカテーテルを洗浄して外す 1.手指を清潔にする せっけんなどを使用し、指の間や手の甲、爪もしっかり洗います。 2.意思確認をして体位を整える たんの吸引はまず本人の意思を確認し、次に環境や体位を整えます。口や鼻から吸引するときは、仰向けであごを少し上げるとチューブが入りやすくなります。 またこのとき、鼻の周辺や口の周り、口の中を観察し、出血や腫れ、乾燥などがないかチェックすることも大切です。 3.吸引カテーテルを吸引器本体のチューブにつなぐ 吸引用カテーテルを取り出して、吸引器本体のチューブにつなぎます。カテーテルを取り出すときは先端が家具などに触れたりしないよう衛生に気をつけます。 また、吸引器本体のチューブにつなぐ際は、外れないよう奥までしっかり差し込みます。 4.吸引器の電源を入れる 吸引器の電源を入れて、まずはコップに入れた水できちんと吸えるか確認します。水を吸うことでカテーテル内の滑りを良くするとともに、消毒液内で保管していたカテーテル内部の液を洗い流す役割もあります。 5.吸引圧を合わせる カテーテルの水を切り、アルコール綿でカテーテルの根元から先端までを消毒して吸引圧を合わせます。吸引圧は100〜150mgHgが一般的ですが、必ず医師や看護師に確認して指示に従います。 6.カテーテルを挿入する カテーテルを持つ方の手は親指・人差し指・中指を使い、先端から10㎝あたりをペンを握るように持ちます。反対の手は親指でカテーテルの根元を押し曲げるようにし、吸引圧をかけない状態でゆっくりと挿入します。挿入する前に「入れますよ」と声をかけることも大切です。 7.たんを吸引する カテーテルの根元を押さえていた親指を少しずつ放し、左右にゆっくり回転させながらたんを吸引します。吸引時間は10~15秒以内を目安におこないます。吸引しながらたんの色や量、粘度も観察します。 8.カテーテルをゆっくり引き抜く カテーテルを左右にゆっくり動かしながら引き抜きます。このとき呼吸が苦しくないか、爪や唇の色に異常がないか確認します。 たんが残っているようであれば、呼吸が整ってから再度吸引します。 9.カテーテルを洗浄して外す アルコール綿でカテーテルの外側についたたんを拭き取ったら、コップに入れた水を吸ってカテーテルの内側を洗い流します。カテーテル内にたんが残っていないことを確認したら、吸引器の電源を切ってカテーテルをチューブから外します。 カテーテルの保管方法 口や鼻からの吸引に使用するカテーテルは、衛生的に保管することで複数回使うことができます。保管方法は以下の2種類があります。 空のコップに入れておくなど、乾燥した状態で保管する。浸漬用消毒液の入った保存容器にカテーテル全体を浸して保管する。 気管カニューレ内吸引用カテーテルの交換頻度 気管カニューレ内の吸引に使用するカテーテルは、1回ごとの使い捨てが推奨されています。しかし、経済的な理由などで使い捨てるのが難しい場合は、衛生的に保管したうえで24時間程度まで繰り返し使うこともあります。 再使用する場合は、口や鼻からの吸引に使うカニューレとは分けて別の消毒液入り容器内で保管します。ただし、たんなどが付着していると細菌が繁殖することがあるため、汚れが落ちないときやくすんできたときは新しいものに交換しましょう。 たん吸引の注意点 たんの吸引中は呼吸ができず、息を止めている状態です。酸素が不足しがちになるので、吸引中や吸引直後は顔や爪の色に異常がないかチェックしましょう。また、たんが多いときは複数回に分けるなど、1回の吸引が長くならないように気をつけます。 さらに、医師から指示された吸引圧やカテーテルを挿入する深さを守り、気管を傷つけないようにすることも大切です。 老人ホーム選びの際、気管切開をしている人に関するよくある質問 気管切開とは何ですか? 気管切開は、のどから気管までを切開する気道確保方法です。呼吸が上手くいかない場合や、痰や分泌物を上手く吐き出せず苦しいケースに用いられます。気管切開することで空気を行き渡りやすくし、痰の吸引をスムーズにおこえるようにします。 気管切開をしている人は老人ホームへ入居できますか? 看護師が24時間常駐していたり、医療機関を併設しているなどの施設であれば入居することができます。ただし、胃ろうやインスリン注射などの医療行為と比べると入居可能な施設は少ないので、施設への入居を希望する際は広範囲で探しましょう。 気管切開をしている人はどんな老人ホームに入居すべきですか? 気管切開している人は呼吸器に持病がある場合が多く、症状が急変した際に医療体制の整った施設でないと対応することができません。よって看護師が24時間常駐しているなど、医療特化型の施設を選択する必要があります。 また職員体制についても、緊急時に医師はすぐに来てくれるのか、看護師は日中、夜間で何名いるのかを確認する必要があります。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "気管切開とは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...

2022/01/14

胃ろうでも老人ホームに入居できる?|施設を選ぶときの3つのポイント

胃ろうが必要な方も入居できる老人ホームは以前に比べると増えています。しかし、施設を選ぶ際は住み心地や立地の良さだけではなく受け入れ態勢もしっかり確認しましょう。 この記事では胃ろうのメリットデメリットや胃ろうが必要な方の老人ホーム選びのポイントを徹底解説。さらに、胃ろうが必要な方を介護する上での注意点も紹介しています。 胃ろうは医療行為のひとつ 胃ろうとは、手術で腹部に穴を開けてカテーテル(チューブ)を胃につなぎ、栄養剤を直接注入する栄養摂取方法です。 胃ろうを含む経管栄養は医療行為のため、老人ホームでの実施は看護師にしか認められていませんでした。しかし、2012年に「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が施行されたことで、「喀痰(かくたん)吸引等研修」を受けた介護福祉士も、胃ろうを含めた特定の医療行為がおこなえるようになりました。 喀痰吸引等研修を受けた介護福祉士がおこなえる特定の医療行為とは、次の2つを指します。 たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養) ただし、研修を受けた介護福祉士が特定の医療行為をおこなうには、所属する事業所が「登録特定行為事業者」として各都道府県に登録している必要があります。 胃ろうでも介護施設に入居できる 胃ろうへの対応は以前は看護師にしか認められていなかったため、胃ろうの方が入れる施設は限られていました。 しかし、看護師が24時間常駐する老人ホームが増えたことや、2012年の介護保険法改正により研修を受けた介護福祉士も対応できるようになったことで、胃ろうを理由に入居を断られることは少なくなりました。 ただし人員体制や設備は施設ごとに異なるため、すべての老人ホームで胃ろうが必要な方を受け入れられるわけではありません。入居施設を選ぶ際は、まずは胃ろうに対応できるかを確認しましょう。 胃ろうが必要な人の老人ホーム選び、3つのポイント 胃ろうが必要な方の入居先選びは、住み心地や立地の良さだけではなく受け入れ態勢もしっかり確認しましょう。ここからは、老人ホーム選びの3つのポイントをご紹介します。 対応できる職員体制が整っているか口腔ケアにしっかりと対応してくれるかその人にあった栄養剤を選んでくれるか 対応できる職員体制が整っているか 胃ろうにすると嚥下(えんげ)機能が低下し、自力でたんを吐き出すのが難しくなる場合があります。たんには細菌が多く含まれており、放置すると誤嚥(ごえん)性肺炎の原因となるため吸引による除去が必要です。 胃ろうもたんの吸引も看護師または研修を受けた介護福祉士のみが対応できるため、どちらかの職員が24時間常駐する施設を選びましょう。また、胃ろうにより皮膚トラブルが起きることもあるため、提携医療機関による訪問診療体制も入居前に確認します。 胃ろうでは、嚥下機能維持のためのリハビリも重要です。専門的なリハビリへの対応やリハビリの内容、リハビリにより改善した事例などについても質問してみましょう。 口腔ケアにしっかりと対応してくれるか 胃ろうにすると口からの食事をおこなわないため、口腔ケアは不要と思われがちです。しかし、唾液は消化だけでなく、口の中を清潔に保つ役割も持っています。このため、胃ろうにすると唾液の分泌量が落ちてしまい、口の中が乾燥して細菌が繁殖しやすくなります。 口の中の細菌の増殖は誤嚥性肺炎などの原因にもなります。このため、胃ろうでも口腔ケアをしっかりしてくれる施設を選ぶことが大切です。 その人にあった栄養剤を選んでくれるか 胃ろうで使われる栄養剤には、「半消化状態栄養剤」と「消化態栄養剤」の2種類があります。半消化状態栄養剤はタンパク質の消化が必要なため、消化機能が正常または軽度の障害がある方に適しています。一方、消化態栄養剤はタンパク質が分解されており、消化吸収能力が低下した方に用います。 利用する方の消化能力で適した栄養剤が変わるため、医師や看護師と連携してその人に合った栄養剤を選択してくれる施設を選びましょう。 胃ろうは栄養を補給する方法のひとつ 加齢や病気などによって口から食事を取れなくなった場合、口以外から栄養補給をおこなうための方法のひとつとして胃ろうを提案されることがあります。 胃ろうの手術はPEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)と呼ばれます。手術には内視鏡を用いるため比較的身体への負担が少なく、順調なら15~30分程度で終わります。また経過にもよりますが、入院期間は一般的に1~2週間程度と短期間で済みます。 胃ろうの対象はどんな人? 身体機能の低下や重度の認知症などにより、口からの食事が難しくなることがあります。胃ろうは口から栄養を取れなくなった方が栄養不足で衰弱するのを防ぐためにおこなわれます。 また、飲み込む力が低下してむせ込んでしまうと、誤嚥性肺炎を引き起こす恐れがあります。誤嚥性肺炎は命にかかわるため、リスクを減らす目的で医師から胃ろうを勧められることもあります。 口からの食事で必要な栄養を確保できるようになったら 胃ろうにしても、口からの食事が可能です。さらに、口から必要な栄養量を確保できるようになれば、胃ろうのカテーテルをを抜くこともあります。 ただし、ゼリー食やペースト食などでなんとか栄養量を確保できている状態であれば、ちょっとしたトラブルで栄養量が足りなくなることもあります。胃ろうを残しておけば、口からの摂取量が落ちたときだけ必要量を補給することも可能なうえ、発熱時の水分補給にも利用できます。 さらに、いったん抜いてしまうと短期間で閉じてしまい、再度食べられなくなった場合は再手術が必要です。抜かないでおくことが本人の負担軽減につながることもあるため、カテーテルを抜くかは慎重に判断する必要があります。 胃ろうのメリット・デメリット 胃ろうの手術を受けても、リハビリによって口からの食事に戻せる可能性があります。さらに、症状や栄養状態が改善すればカテーテルを抜くことも可能です。ただし、専門家のサポートが欠かせないことから、口からの食事に戻すための取り組みは医療・介護体制が十分に整った施設を中心におこなわれています。 胃ろうにはメリットはもちろんデメリットもあるため、しっかり確認しておきましょう。 メリット 胃ろうをすることでのメリットは、主に以下の3つです。 身体への負担や痛みが少ない必要な栄養を摂取できる口から食べるための訓練ができる 身体への負担や痛みが少ない 口から食事を取れなくなった方の栄養摂取方法には、鼻から胃に通したチューブで栄養を送る「経鼻胃管栄養」もあります。経鼻胃管栄養は手術を必要としませんが、鼻からチューブを入れるため痛みや息苦しさなどを感じます。 胃ろうはチューブが鼻やのどを通らないため、経鼻胃管栄養と比べて痛みや不快感、身体への負担が少なくて済みます。 必要な栄養を摂取できる 胃ろうにすることで、口から食事を取れない方でも必要な栄養を摂取できるようになります。また、食事によってむせることがなくなるため、栄養補給と誤嚥性肺炎予防を両立できるのもメリットです。 口から食べるための訓練ができる 胃ろうのカテーテルは口やのどを通らず、腹部から直接胃に通します。このため、再び口から食事をするための訓練がしやすいという利点もあります。 デメリット 一方で、胃ろうのデメリットは以下の通り。 手術が必要口腔内が不潔になりやすい逆流することがある 手術が必要 胃ろうの手術は短い時間で終了し、身体への負担も少なく済みます。しかし腹部に穴を開けるため、身体に傷をつけることに抵抗がある方には手術そのものがデメリットとなります。 また、認知症の方は自分でカテーテルを引き抜いてしまうことがあります。カテーテルが抜けると穴は比較的短時間で閉じてしまい、再手術が必要になることもあります。 口腔内が不潔になりやすい 胃ろうにすると、口から食べる機会が減って唾液の分泌が少なくなります。これにより口腔中が乾燥しやすく、口腔ケアを怠ると細菌が繁殖しやすくなります。 口腔内を不潔にしていると細菌の混じった唾液を誤嚥し、口から食事していなくても誤嚥性肺炎を引き起こすことがあるため注意が必要です。 逆流することがある 栄養剤を注入する際の姿勢によっては、液が逆流してしまうことがあります。逆流した栄養剤を誤嚥することで誤嚥性肺炎につながる恐れがあるため、注入中から注入後しばらくは上体を起こした体勢を維持する必要があります。 カテーテルを自己抜去したときは 自己抜去とは、自分自身でカテーテルを引き抜いてしまうことをいいます。特に認知症の方は、抜いてはいけないことを忘れてしまうため注意が必要です。 胃の粘膜の回復は早く、カテーテルが抜けると短時間で穴がふさがってしまうため、自己抜去してしまったらすぐに病院に連絡して処置してもらいます。 また、引き抜く可能性がある場合は、チューブが露出していないボタン型カテーテルへの交換も検討してみましょう。さらに、ひっかけて抜いてしまうことを防止するため、カバーなどで注入口を覆うなどの対策も大切です。 胃ろうの介護に対する注意点 胃ろうが必要な方が快適に過ごすには、介護する方が次の点に注意する必要があります。 口腔ケアが大切 前途でも述べたように、胃ろうの方にとって口腔ケアは非常に重要です。口から食事をする機会が少なくなると唾液の分泌量が減り、嚥下機能の低下につながります。また、唾液が減少して口腔内が乾燥すると細菌が繁殖しやすくなり、誤嚥性肺炎を引き起こす恐れもあります。 このため、口から食事をとっていなくても口の中を清潔に保ち、嚥下機能を維持するための適切なリハビリをおこなうことが大切です。 逆流を防止する 栄養液の逆流は誤嚥性肺炎の原因になります。逆流は注入時の姿勢が悪いと発生しやすいため、注入中は上体を30度以上起こします。また、注入後もしばらくは上体を起こした体勢を保つと良いでしょう。 姿勢を整えることは、胃ろうだけでなく通常の食事でも誤嚥防止に役立ちます。介護する方は、意識して姿勢を正すよう促しましょう。 胃ろう周辺部を清潔に保つ 胃ろう周辺部を不潔にしていると、皮膚トラブルの原因になります。カテーテルをつけたままで入浴できるので、石鹸などを使って周辺部をていねいに洗い、清潔に保つよう意識しましょう。 また、胃ろうは異物を差し込まれた状態のため、人によっては拒否反応を起こすこともあります。皮膚に腫れや赤みが出た場合は必要に応じて医師に相談し、適切な処置を受けましょう。 老人ホームでの胃ろうに関するよくある質問 胃ろうが必要な人は老人ホームへ入居できますか? 胃ろうが必要な人でも看護師が常駐している施設であれば入居できます。看護師が24時間常駐する老人ホームが増えたことや、2012年の介護保険法改正により研修を受けた介護福祉士も対応できるようになったことで、受け入れの幅も広がりました。 胃ろうが必要な人はどんな老人ホームに入居すべきですか? 「対応できる職員体制が整っているか」「口腔ケアにしっかりと対応してくれるか」「その人にあった栄養剤を選んでくれるか」などが挙げられます。 特に職員体制の部分では、看護師がどの時間帯に勤務しているか、嚥下機能維持のためのリハビリ専門職がいるのかなど施設へ確認する必要があります。 看護師以外が胃ろうをおこなうことはありますか? 2012年に「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が施行されたことで、「喀痰(かくたん)吸引等研修」を受けた介護福祉士も、胃ろうを含めた特定の医療行為がおこなえるように認められました。 ただし、研修を受けた介護福祉士が特定の医療行為をおこなうには、所属する事業所が「登録特定行為事業者」として各都道府県に登録している必要があります。看護師に胃ろうをしてもらいたい希望があれば、24時間看護師が常駐している施設を選ぶのもひとつの手段です。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "胃ろうが必要な人は老人ホームへ入居できますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...

2022/01/11

インスリン注射が必要な人の老人ホーム選び|施設での医療・看護ケアのポイント

老人ホームでは、インスリン注射が必要な入居者に対し看護師が投与することも可能です。ただし、注射の回数や時間帯によっては対応できない場合もあるため、施設を選ぶ際は注意が必要です。 この記事では、施設選びのポイントとともに、インスリン注射の種類や副作用についても解説。インスリン注射が必要な方やこれから必要になる可能性がある方の施設選びにお役立てください。 インスリン注射は誰が打つ? 糖尿病の症状が進行すると定期的なインスリン注射が必要になります。注射の頻度は週に1回程度で済む方もいれば1日に数回必要な方もいるなど、人によって異なります。 インスリン注射は医療行為にあたるため、本来は医師や看護師がおこないます。ただし自宅などでおこなう必要がある場合は、医師による指導を受けた本人や家族による投与も可能です。 しかし、老人ホームなどの入居者に介護職員がインスリン注射を打つことは認められていません。このため施設に入居した場合、本人または看護師が投与をおこないます。 本人がおこなう場合と施設に依頼する場合について、注意点などを見ていきましょう。 自分でおこなう場合 認知症や体のまひなどがなければ、施設入居後も本人の管理のもと自分自身でインスリンを注射することも可能です。この場合は、看護師が24時間常駐していない老人ホームでも入居できます。 ただしインスリン投与を忘れたり、投与しても血糖値が安定せず高血糖が続く場合などは命に関わります。 また、加齢や健康状態の悪化により自分で注射できなくなった場合、施設側が対応できないと退去を求めらることもあります。このためインスリン注射が必要なことは入居前に施設側に相談しておきましょう。 施設の看護師がおこなう場合 自分でインスリン注射ができない場合は、老人ホームに依頼して看護師に打ってもらいます。注射の頻度にもよりますが、食事の量などによっては必要以上に血糖値が下がりすぎてしまうこともあるため、24時間看護師が常駐している老人ホームを選ぶと安心です。 また、看護師にはインスリンの投与だけでなく投与前後の血糖値管理もおこなってもらい、血糖値のコントロールを連携医療機関と継続的に共有してもらいましょう。 インスリン注射が必要な人の老人ホームを選ぶポイント 老人ホームの入居条件には、一般的にインスリン注射についての規定はありません。ただし施設によって医療体制が異なるため、注射の回数や必要な時間帯によっては対応できない場合があります。 このため、インスリン注射が必要な場合は次の点を意識して老人ホームを選びましょう。 看護師が勤務しているか 老人ホームでは、医師の指導のもと介護・看護職員が一定の医療的ケアをおこなうことが認められています。しかし、専門性が必要な医療行為は施設内で対応できないため、提携する医療機関などで受ける必要があります。 このため、入居希望者が医療的ケアを必要とする場合、施設の医療体制によっては受け入れを拒否されることがあります。老人ホームを探す際は、まず必要な医療的ケアに対応できるか確認しましょう。 特別職員配置基準 老人ホームでは、厚生労働省の定める「特別職員配置基準」により医師・看護師の配置義務や医療行為の可否が決められています。 特別職員配置基準は施設の種類により次のように異なります。 施設の種類医師の配置義務看護師の配置義務医療体制の充実度有料老人ホームなしあり施設によるグループホームなしなし(任意)充実していない老人保健施設ありあり充実している特別養護老人ホームあり(非常勤可)あり施設による インスリン注射の回数・時間帯に対応可能か インスリン注射は食前におこなうため、その時間帯に看護師が勤務している老人ホームを選ぶことが大切です。例えば1日1回朝食前の投与が必要な方は、朝食前の時間帯に看護師の勤務シフトが設定されているか確認します。 投与が必要な時間帯に看護師がいない場合は、食事の時間をずらして対応してもらうこともあります。ただし、1日3回以上投与が必要な場合や食事の時間調整が難しい場合は、看護師が24時間常駐する老人ホームを選んだほうが良いでしょう。 食事療法・運動療法に対応可能か 糖尿病はインスリン注射だけでなく、継続的な食事療法や運動療法によって血糖値を下げることも大切です。このため、インスリン注射が必要な方の受け入れ実績があり、糖質制限食やカロリー制限食に対応できて運動療法にも力を入れている老人ホームがおすすめです。 夜間の急変に対応できるか インスリンを投与している方は、空腹時や夜間に血糖値が下がりすぎてしまうことがあります。このため看護師が日中のみ勤務している施設を選ぶ場合は、夜間の急変にどのように対応するかが大切です。 具体的には、夜間も医師の呼び出しが可能か、または看護師の夜間オンコール体制があるかを確認しましょう。 糖尿病の治療で推奨されるインスリン注射 インスリンは、糖尿病の治療に利用されるホルモンの一種です。健康な人は体内で分泌されるインスリンによりブドウ糖の量が自動で調節され、血糖値の安定がはかられます。この血糖値を安定する働きが失われてしまった状態が糖尿病です。 糖尿病には体内でインスリンがほとんど分泌されない1型糖尿病と、血糖コントロールがうまくできない2型糖尿病の2種類があります。インスリン注射による治療は、現在どちらの糖尿病でも積極的に推奨されています。 9割以上が2型糖尿病 1型糖尿病はインスリンを分泌するβ細胞が破壊されて発症するのに対し、2型糖尿病は遺伝的な体質や食生活、運動不足などにより発症します。日本人の糖尿病患者のうち9割以上は2型糖尿病が占めるといわれています。 1型糖尿病はインスリンがほとんど分泌されないため注射による投与が欠かせませんが、2型糖尿病でもインスリンの分泌が減ったり働きが悪くなった場合には医師の指示で投与することがあります。 また、血糖値が高い状態が続いてインスリンの分泌が悪くなり、さらに血糖値が高くなる悪循環を引き起こしている場合の治療にもインスリン注射は用いられます。 インスリン注射の種類と特徴 インスリン注射は、効果が出るまでのタイミングや持続時間によって「超即効型」「即効型」「混合型」「中間型」「持続型」の5種類に分けられます。種類ごとの特徴を見ていきましょう。 超即効型 食後の高血糖状態を改善するため、食事を摂取する直前に投与します。 即効型 食後の高血糖状態改善のため、食事の30分前に投与します。ほかの種類のインスリン注射と異なり、筋肉や静脈への注射が可能という特徴があります。 混合型 超即効型や即効型に中間型をブレンドした製剤です。混合比率により効果が出るまでの時間は異なりますが、作用時間は中間型とほぼ同等です。 中間型 空腹時血糖の上昇を抑えるため朝食前に皮下注射をおこないます。作用時間によっては、朝食前と夕食前の1日2回投与する場合もあります。 持続型 空腹時血糖の上昇を抑えて1日の血糖値を全体的に下げる一方で、食後高血糖の改善効果は強くありません。1回の投与で効果はほぼ1日続きます。 低血糖症状に注意する インスリン注射は血糖値を下げるために使用します。しかし、普段より食事の量が少なかったり運動量が多くなると副作用として血糖値が下がりすぎてしまうこともあります。 低血糖症状は多くの場合すぐにブドウ糖を摂取することで改善できますが、放置すると命に関わるため初期症状の段階での対応が肝心です。 低血糖症状の前兆 低血糖症状は、血液中の糖分が少なくなることで起こります。低血糖症状には前兆が見られ、血糖値が70mg/dLを下回ったあたりから体が糖分を欲し、空腹感を感じます。 その後、生あくびが出たり吐き気を感じるようになり、血糖値が50mg/dLを切ると無気力になるなどそのほかの症状も現れます。 低血糖症状の前兆は病気がなくても起きる症状が多いですが、インスリン注射をしている方がこのような症状になった場合は早めに対処することが大切です。 低血糖症状の症状 低血糖症状が進行すると、発熱や冷や汗、動悸や震え、顔面蒼白などの症状が現れます。症状が悪化すれば、意識をなくしたり昏睡状態になったりするなど命に関わることもあります。 低血糖は認知症や心臓・血管疾患などほかの病気のリスクにもなります。また、特に高齢者の場合は気を失って転倒し、けがをする危険もあるため注意が必要です。 インスリン注射をしないこともある 普段は食事前にインスリン注射をおこなっている方も、その日の体調により投与を中止する場合があります。これは、インスリンを注射をしたにも関わらず食事を取れなかったり量が少ないと、低血糖症状を引き起こす恐れがあるからです。このため、普段通り食事をとるのが難しいと判断した場合は、食事の量や測定した血糖値に応じてインスリン注射を中止したり、投与する量を調節する必要があります。このような判断は看護師がおこないますが、日頃から医師と連携し血糖値をコントロールしていくことも大切です。 老人ホームでの糖尿病のインスリン注射に関するよくある質問 インスリン注射が必要な人は老人ホームへ入居できますか? 自身でインスリン注射ができる人、施設に看護師が常駐している場合であれば入居できます。ただし看護師に投与してもらう際は、注射の回数や時間帯によっては対応できない場合もあるため、事前に施設へ確認しましょう。 インスリン注射が必要な人はどんな老人ホームに入居すべきですか? インスリン注射は食前におこなうため、その時間帯に看護師が勤務している老人ホームを選ぶことが大切です。ただし、1日3回以上投与が必要な場合や食事の時間調整が難しい場合は、看護師が24時間常駐する老人ホームを選んだほうが良いでしょう。 老人ホームではインスリン注射を誰が打ってくれますか? 認知症や体のまひなどがなければ、医師による指導を受けた本人でもインスリンを注射することが可能です。自分でインスリン注射ができない場合は、老人ホームに依頼して看護師に打ってもらいます。 また1日3回以上投与が必要な場合は、自身でインスリン注射をおこなうか、24時間看護師が常駐している施設でインスリン注射をしてもらいます。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "インスリン注射が必要な人は老人ホームへ入居できますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...

2022/01/05

老人ホームで受けられる医療的ケア|看護師・介護士ができることを解説

老人ホームでは、日常生活を送るための生活支援としてさまざまな医療的ケアがおこなわれます。 この記事では、老人ホームでおこなわれる医療的ケアや実施できる職種のほか、医療的ケアが必要な方の施設選びのポイントを解説。また、老人ホームでおこなわれるリハビリについても紹介しています。 医療行為(医療的ケア)とは? 「医療行為」とは、医学的な知識や技術がなければ相手に危害を与えかねない行為で、本来は医師や医師の指示を受けた看護師などにしか実施が認められていません。 しかし、たんの吸引などを病院以外の場所で受けながら日常生活を送る方が増えてきたことから、看護師のほか「認定特定行為業務従事者」の認定をもつ介護福祉士も一定の医療行為を実施できるようになりました。 このような、日常生活を送るための生活支援としておこなわれる医療行為は「医療的ケア」と呼ばれてます。なお理学療法士などがおこなうリハビリも医療行為に含まれます。 認定特定行為業務従事者 2012年4月から、認定特定行為業務従事者の認定を受けた介護福祉士は、以下の医療行為をおこなえるようになりました。 喀痰(かくたん)吸引経管栄養 ただし現状では、すべての老人ホームに認定を受けた介護福祉士が配置されているわけではありません。上記の医療行為を必要とする方は、入居を希望する施設に対応可能か確認しましょう。 入居前に医療体制を確認 老人ホームを探す前に、まずは自分に必要な医療的ケアを確認しましょう。施設選びでは、必要なケアを提供してもらえるかを重視することが大切です。 施設の種類医師の配置義務看護師の配置義務医療体制の充実度有料老人ホームなしあり施設によるグループホームなしなし(任意)充実していない老人保健施設ありあり充実している特別養護老人ホームあり(非常勤可)あり施設による 例えば、特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)には医師の配置義務がありますが、有料老人ホームにはありません。また、有料老人ホームは看護師の配置義務はありますが、対応できる医療的ケアは施設により異なります。 このため、入居者本人の持病や必要な医療的ケアとその頻度を施設側に説明し、対応可能か確認しましょう。また、同じ医療的ケアが必要な人の受け入れ実績についても聞いておくと良いでしょう。 看護師でおこなえる医療行為 ここからは、老人ホームでおこなわれている医療行為について説明します。看護師が提供を認められている医療行為は、次の8種類です。 インスリン注射在宅酸素喀痰(かくたん)吸引経管栄養(胃ろうなど)ストーマの張り替え床ずれ・褥瘡(じょくそう)への処置中心静脈栄養人工呼吸器の管理 それぞれの医療行為の内容と、必要とする方について説明していきます。 インスリン注射 インスリン注射は糖尿病治療に用いられ、血糖値を下げるホルモン「インスリン」を1日に数回注射します。注射後の食事量などによっては必要以上に血糖値が下がりすぎ、放置すると命に関わる場合もあるため、看護師による観察や副作用発生時の対応が必要です。 インスリン注射が必要な方の老人ホーム選び インスリン注射が必要な方は、看護師が24時間常駐しているかインスリン注射が必要な食事の時間に看護師が勤務している老人ホームを選びましょう。 在宅酸素 在宅酸素は自宅などで酸素を吸入する医療行為で、慢性呼吸不全や慢性心不全の方が利用します。鼻に装着したチューブを酸素供給装置につないで酸素を吸入することで、息切れなどの症状が改善されます。 多くの老人ホームは在宅酸素に対応していますが、労作時の酸素投与量が3L/分以上必要な方は、対応可能かあらかじめ施設に確認しましょう。 在宅酸素が必要な方の老人ホーム選び 酸素ボンベの交換・補充は看護師がおこなうため、在宅酸素が必要な方は24時間看護師常駐の老人ホームを選ぶと良いでしょう。 喀痰(かくたん)吸引 窒息を防ぐため、専用の機械を使って気管などのたんを取り除きます。吸引中は息ができず酸素不足になることもあるため、看護師または認定特定行為業務従事者の認定を受けた一部の介護福祉士のみがおこなえる医療行為です。 喀痰吸引が必要な方の受け入れ可否は吸引の回数と必要な時間帯により決まります。このため、日中に数回程度であれば看護師が日勤で常駐する一般的な老人ホームで対応できる場合もあります。 喀痰吸引が必要な方の老人ホーム選び 吸引の頻度が増えると退居を求められる場合もあるため、1日3回以上必要な方は看護師または認定特定行為業務従事者の介護福祉士が24時間常駐する施設を選ぶと良いでしょう。 経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養) 病気により食事を口からとるのが難しい方や誤嚥性肺炎を繰り返している方は、チューブやカテーテルなどで胃や腸に栄養を直接注入する経管栄養を用いることがあります。 経管栄養は、注入速度の調整や皮膚トラブルへの対応など専門的な知識や技術が求められることから、看護師または認定特定行為業務従事者の認定を受けた一部の介護福祉士のみがおこなえます。 経管栄養が必要な方の老人ホーム選び 経管栄養を利用する方は痰の吸引も必要な場合が多いため、看護師または認定特定行為業務従事者の介護福祉士が24時間常駐する老人ホームを選ぶと良いでしょう。 ストーマの張り替え ストーマとは手術により腹部に作られた便や尿の排泄口で、人工肛門や人工膀胱があります。排泄物は装着したストーマ袋(パウチ)に溜まり、定期的に交換する必要があります。 ストーマは、テープや装具によるかぶれ、感染症などのトラブルが起きることがあります。このため、看護師は交換時に観察やケアをおこないます。 床ずれ・褥瘡(じょくそう)への処置 褥瘡は、体の一部に圧力がかかることで血流が悪化し、酸素や栄養が行き届かなくなって起きた皮膚や皮下組織などの損傷です。床ずれとも呼ばれ、寝たきりなど同じ姿勢を取り続けることで発生します。 対応を誤ると皮膚の壊死や傷口からの感染にもつながるため、看護師による処置が必要です。 中心静脈栄養(IVH) 心臓近くの太い静脈に栄養剤を点滴して栄養補給することを中心静脈栄養(IVH)といい、病気により口からの栄養摂取が困難な方や消化器官が低下している方などに対しておこなわれます。 IVHは、輸液製剤の混合や輸液バッグの交換など専門的な技術が必要です。また、感染症や自分でカテーテルを抜いてしまうなどのトラブルが起きることもあり、看護師による管理が求められます。 IVHが必要な場合は、入居希望する施設が病院と医療連携ができているかや往診医のIVH取り扱いの可否、看護スタッフがIVHの対応に慣れているかについて入居前に確認しましょう。 人工呼吸器の管理 人工呼吸器は、呼吸器や神経・筋肉の病気がある方に機械を使って呼吸を助けます。このうち自宅や施設で扱う呼吸器を「在宅人工呼吸器(HMV)」といいます。 操作を間違うと命に関わることもあるため、看護師による専門的な管理が必要です。人工呼吸器が必要な場合はその種類にもよりますが、一般的に看護師が24時間常駐する老人ホームへの入居がおすすめです。 人工透析が必要な人は 人工透析が必要な場合は、透析設備のある病院やクリニックに通院するのが一般的です。通院には無料の送迎がある場合とタクシーなどを自腹で利用する場合があるため、移動手段も確認しましょう。 また、人工透析をしている方は食事などの管理も大切です。病院やクリニックと連携し、塩分などの食事制限や水分量の管理が可能かも確かめておきましょう。 介護福祉士でもできること 介護職員でもできること 介護職員は、基本的に医療行為はできません。ただし、下記については厚生労働省が医療行為に含まれない行為としているため、介護職員による提供が可能です。 体温測定血圧測定(自動血圧計のみ可能)軽傷の治療(ガーゼ交換や絆創膏を貼るなど)湿布を貼る(麻薬は不可)点眼薬の点眼内包薬の内服介助(一包化された内服薬のみ可能)座薬の挿入爪切り(爪に異常があると不可)耳垢の除去(耳垢塞栓の除去は不可)鼻腔粘膜への薬剤噴射の介助自己導尿の介助 老人ホームでのリハビリ 介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームなどでは、作業療法士、理学療法士、言語聴覚士といった資格を持つ機能訓練指導員が配置されており、入居者に対しリハビリをおこないます。 リハビリは入居者ごとに作成される「リハビリプログラム」に基づき実施され、「個別リハビリ」と「集団リハビリ」のほか、日常生活のなかでおこなわれる「生活リハビリ」があります。 個別リハビリ 個別リハビリは作業療法士、理学療法士、言語聴覚士などの機能訓練指導員によりおこなわれ、専門職ごとにリハビリの内容が異なります。それぞれの専門職が実施するリハビリ内容をご紹介します。 作業療法士が実施するリハビリ 作業療法士は、食事やトイレでの排泄などの日常生活に必要な機能を回復させるためのリハビリを主に実施します。 また、運動機能の完全な回復が見込めなくなった場合も、現在の身体機能をできるだけ維持し、日常生活を送れるよう訓練をおこないます。 理学療法士が実施するリハビリ 理学療法士は、病気やケガ、加齢などにより低下した運動機能を回復するためのリハビリをおこないます。リハビリの内容は、立つ、座る、歩くなどの基本的な動作の訓練が中心で、車いすや歩行器、つえなどを使ったリハビリも含まれます。 言語聴覚士が実施するリハビリ 言語療法士は、言葉によるコミュニケーション訓練のほか、摂食や嚥下(えんげ)機能の回復・維持に関するリハビリもおこないます。また、必要に応じて補聴器や点字器を用いることもあります。 集団リハビリ 老人ホームでは個別に実施するリハビリのほかに、入居者が共有スペースに集まっておこなう「集団リハビリ」も実施されます。 体操やゲームなどで足腰を鍛えるとともに脳を活性化したり、歌をうたうことで嚥下機能の維持・回復を図るなど、レクリエーションを兼ねておこなわれています。 生活リハビリ 生活リハビリとは、日常生活動作そのものをリハビリととらえ、できるだけ自分の力で日常生活を送れるよう適切な介助を受けながら生活することを指します。例えば、「介護ベッドから自室にあるトイレに自分で移動できるよう介護士が支援する」などがあてはまります。 生活リハビリは専門職でなくても可能なため、介護付き有料老人ホームでは日常生活のさまざまな場面において一般的に実施されてます。 医療体制を強化した老人ホームもある 老人ホームには医師の配置基準がありません。医師による医療行為は訪問診察がメインとなるため、施設内の医療行為は主に看護師により提供されます。 しかし一部の老人ホームでは、次のような医療体制の強化によって医療ニーズに対応しています。 病院・クリニックの併設看護師が24時間常駐運営母体が医療法人 医療体制強化のための取り組みや体制はほかにもありますが、ここでは上記の3つについてそれぞれの特徴を説明していきます。 病院・クリニックの併設 同じ建物や敷地内に病院やクリニックが併設していれば、急な体調変化にも迅速対応してもらえます。いざというときも普段から診察してくれている医師に診てもらえるため、すぐに適切な処置が受けられます。 また、入院設備のある病院が併設している場合は、入院が必要になった際も連携がスムーズで、優先的にベッドを確保してもらいやすいのもメリットです。 看護師が24時間常駐 介護付き有料老人ホームでは、看護師の常駐が義務づけられています。しかし、夜間の配置義務はないため、看護師による医療行為は日中のみというのが一般的です。 しかし、中には看護師が24時間常駐する老人ホームもあり、夜間や早朝でも胃ろうや痰の吸引、インシュリン投与や点滴などの医療行為を受けることが可能です。しかし、医療行為が必要な方でも安心して入居できる反面、費用は高くなります。 運営母体が医療法人 医療法人が運営している老人ホームでは、関連病院から医師が往診に来てくれるため夜間に体調が急変したときなども安心です。 また、職員は病院でおこなうような研修を受けている場合が多く、一般的な介護施設の職員よりも医療の知識や技術を身につけている可能性が高いです。 運営母体が医療法人の老人ホームを見学する際は、病院との連携や職員の研修についても質問してみましょう。 老人ホームと医療機関の連携 老人ホームで提供可能な医療サービスは人員面でも設備面でも限界があるため、高度な医療行為や治療が必要な場合には提携する医療機関を利用します。このため介護付き有料老人ホームでは、医療機関と提携することが施設運営基準に定められています。 提携医療機関は、医療行為のほか看護職員を介しての定期健診や健康相談、健康管理上のアドバイスなどさまざまなサービスを提供します。また、提携医療機関が救急対応可能なら緊急時にも対応してもらえます。 さらに、施設によっては必要時に提携医療機関へ優先的に入院できたり、医師による往診が受けられることも。老人ホームを選ぶ際は、提携医療機関とそのサービス内容にも注目してみましょう。 提携医療機関での医療行為 老人ホーム入居中に専門的な医療行為が必要になったときは、提携医療機関に通院したり医師の往診を受けます。提携医療機関で受けられる医療行為は内科や整形外科、脳神経外科などが中心ですが、それ以外にも必要に応じてさまざまな医療行為を受けられます。 施設入居中に入院したら 提携医療機関に入院した場合、入居中の老人ホームから洗濯物の交換や日用品を届けてもらうなどのさまざまな生活支援が受けられます。入院期間中は病院の入院費用と施設の月額利用料の一部を二重で支払うことになりますが、治療が終わって退院する際は施設に戻ることができます。 ただし、退院後に施設で対応できない医療行為が必要な場合は、施設に戻れず住み替えが必要になることもあります。 老人ホームでの看取り 終の棲家として老人ホームを選ぶ方も多いですが、施設の設備や人員体制などの都合によりすべての老人ホームが看取りに対応しているわけではありません。延命治療を放棄し個人の意志で最後を迎えることを望む場合は、老人ホームの看取り体制も確認しましょう。 看取り体制の整った施設では、職員に対し看取りに関する研修を実施しています。また、入居時には本人や家族と施設側が話し合い、延命治療の是非や急変時の病院への搬送などについて確認し、老人ホームで最後を迎えることなどへの同意書を交わします。 さらに、回復が見込めないと判断された場合は、医師や看護・介護職員、ケアマネジャーなど多くの職種が連携し、穏やかに死を迎えられるよう看取りケアがおこなわれます。 老人ホームでの医療的ケアに関するよくある質問 痰の吸引が必要な人はどんな施設に入居すべきですか? 1日3回以上必要な人は看護師または認定特定行為業務従事者の介護福祉士が24時間常駐する施設を選ぶと良いでしょう。日中に数回程度であれば看護師が日勤で常駐する老人ホームで対応できる場合もあるので、看護師が勤務している時間も確認しましょう。 人工透析が必要な人は老人ホームへ入居できますか? 人工透析が必要な人でも老人ホームへの入居はできます。ただし透析設備が整った老人ホームは少ないため、病院やクリニックに通院するのが一般的です。 通院は施設による無料の送迎か自腹でタクシーなどを利用するか、家族による送迎が挙げられます。人工透析をしている人は食事の管理も重要なので食事制限や水分管理についても確認しましょう。 介護スタッフが医療行為をすることはありますか? 「医療行為」は本来、医師や医師の指示を受けた看護師などにしか実施が認められていません。 しかし、痰の吸引などを病院以外の場所で受けながら日常生活を送る人が増加したことから、看護師のほか「認定特定行為業務従事者」の認定をもつ介護福祉士も一定の医療行為を実施できるように認められました。 ただあくまで痰の吸引や経管栄養といった医療行為のみで、すべての医療行為が可能になったわけではありません。 { "@context": "https://schema.org", "@type": 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2022/01/05

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