認知症など認知障害により判断能力が不十分になる前に、将来の備えや介護施設に入居するための準備として、任意後見制度の利用を検討する方が増えています。 そこでこの記事では、任意後見制度とはどのような制度なのか?その特徴と必要な手続きの流れを解説していきます。 任意後見制度とは? 任意後見制度とは、本人に充分な判断能力があるうちに、将来、認知症などで判断能力が低下したときに、本人に代わって事務手続きなどおこなう人を定めておく制度のことをいいます。 本人が判断能力を有するうちに、将来の財産管理、介護サービス締結や療養看護に関する手続きなどを、信頼できる方にあらかじめお願いし、引き受けてもらう契約を結びます。 この契約は任意後見契約を呼ばれ、公正証書によって締結されます。任意後見契約においては、依頼人(本人)は委任者、引き受ける方は任意後見受任者(後に、任意後見人)と呼ばれています。 成年後見制度との違い 任意後見制度では、本人に判断能力があるうちであれば、あらかじめ本人が自分で選んだ後見人と本人の意思に基づき契約を結ぶことができます。自分の後見人となって欲しい方を選べるのはもちろんのこと、その方に自分が認知症になった際にどのような生活を送りたいかを、あらかじめ伝えておくことができます。一方、耳にする機会の多い「成年後見制度」とは、本人の判断能力が不十分になった後に、周囲の方などが家庭裁判所に後見人の選任を申し立てをおこない、選任された後見人が支援をおこなう法定後見制度のこと。本人が自分で後見人を選ぶことはできません。これらの任意後見制度と法定後見制度をまとめて、「成年後見制度」と呼ぶこともあります。成年後見制度について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。 手続きの流れ 4つのステップ 任意後見制度を利用する際の手続きの流れを見ていきましょう。 任意後見人受任者を決める内容を決め契約を結ぶ申し立てをする任意後見人が選任される 1.任意後見受任者を決める まず、後に任意後見人となってもらう任意後見受任者を決定します。 任意後見人になるためには、特別な資格は必要ありません。家族や親族はもちろん、信頼できる友人、または弁護士や司法書士などの第三者や法人と契約を結ぶこともできます。 また、業務を確かに遂行するために、任意後見人を複数定めることもできます。ただし、以下の項目に該当する人は任意後見人にはなれないので注意してください。 未成年者破産者行方不明者被後見人に訴訟を起こした人とその配偶者過去に後見人を含む法定代理人を解任されたことがある人その他不正な行為をおこなうなど任意後見人に適さない経歴がある人 2.内容を決め契約を結ぶ 任意後見受任者が決定し、支援してもらう契約内容も定まったら、本人と任意後見受任者の間で任意後見契約を結びます。 必ず本人と任意後見人がともに公証役場に訪れ、公正証書を作成し、契約を締結しなければなりません。この公正証書によって締結されていない契約内容はすべて無効になるため、証書作成の際は最善の注意が必要です。 また、公証役場は予約が必要となり、突然、訪問しても任意後見契約を締結することができません。任意後見契約の内容も公証役場に事前に伝えておく必要があります。契約内容の策定や公証役場とのやりとりについては、司法書士や行政書士のサポートを受けながらおこなうことも良いでしょう。 契約にあたり必要になるもの 任意後見契約をおこなう際に必要となるものには下記のものがあります。必ずすべての書類を揃え、確認してから公証役場に向かいましょう。 本人の必要書類 印鑑証明 戸籍謄本 住民票 任意後見受任者の必要書類 印鑑証明書 住民票 ※いずれも発行から3カ月以内のもの 3.申し立てをする 任意後見契約を結んだ後、本人の判断能力が低下し始めたタイミングで、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に「任意後見監督人の選任」の申立てをおこないます。 任意後見監督人の選任がなければこの契約は開始できないため、ただちに申立てをおこなう必要があります。申立てができる人は、本人、または任意後見受任者、本人の配偶者と四親等内の親族ですが、本人以外が申立てをおこなう場合は、原則として本人の同意が必要となります。 ただし、本人が意思表示できる場合は同意は不要です。 申し立てに必要なもの 申立てには、下記の書類が必要となります。すべての書類を揃えてから、家庭裁判所に申立てをおこないましょう。 家庭裁判所によって必要書類や書式が異なることもあるので、詳しい内容は、申立てをおこなう家庭裁判所のWEBサイトなどで確認することをおすすめします。 申立書申し立て事情説明書本人の財産目録及び資料本人の収支状況報告書及びその資料任意後見受任者事情説明書親族関係図戸籍謄本住民票後見登記事項証明書任意後見契約公正証書の写し成年後見用の診断書 4.任意後見監督人が選任される 任意後見監督人の選任の申立てにより、家庭裁判所が、本人の状態と任意後見受任者の事情を考慮した上で審理をおこない任意後見監督人を選定します。 結果は、家庭裁判所から任意後見人に郵送で通知され、その後に法務局が、家庭裁判所の依頼に基づき、任意後見監督人に関する情報と任意後見が開始した事実を登記します。 任意後見監督人が選定された時点で、任意後見受任者は任意後見人となり、契約内容に記載された支援をスタートすることができます。 任意後見制度の利用にかかる費用は? 任意後見制度を利用するには、準備段階として下記にかかる費用を事前に用意しておかなければなりません。 公正証書を作成する手数料任意後見監督人選任の申し立て費用任意後見人への報酬 ここでは、具体的にはそれぞれどのくらいの費用がかかるのかを詳しくみていきます。 公正証書を作成する手数料 公正証書の作成手数料とは、公証人に任意後見契約書を作成してもらうために必要な費用のことをいいます。 実際にかかる費用として「基本手数料」に1万1,000円、「登記嘱託手数料」に1,400円、登記所に納付することになる「印紙代」として2,600円などが必要となります。 任意後見監督人選任の申し立て費用 家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てをする際にも、費用がかかります。 具体的には「申し立て手数料としての収入印紙代」に800円、「登記手数料としての収入印紙代」として1,400円、連絡用の「切手代」に3,000~5,000円程度がかかります。また、成年被後見人の精神鑑定が必要な場合には、さらに5~10万円程度が必要になることがあります。 任意後見人への報酬 任意後見契約が実行され、任意後見人の業務と任意後見監督人による監視と事務がスタートしたら、必要に応じてそれぞれに対して報酬を支払うことになります。 任意後見人の場合、家族や親族がそれを担う時など、契約時に報酬についての取り決めがなければ、法律上は無報酬になるということも多くあります。ただし、一般的に第三者の弁護士、司法書士などの専門家に任意後見人をお願いする場合は、報酬を支払う必要があります。 その金額や支払い方法、支払い時期などについては、事前に本人と後見受任者の間で自由に取り決めることができます。本人が持つ財産が多ければ、管理業務や負担も増えるため、支払う報酬金額も上がることが多くなるようです。 報酬の目安 任意後見人が第三者であった場合、本人の財産状況にもよりますが、月々1~3万円の報酬が支払われることが多いようです。 また、任意後見監督人に対しては、報酬を支払う決まりとなっており、家庭裁判所によって、本人の財産の中から相当な報酬金額が決められます。その額は月々1~3万円程度のようです。 任意後見の契約は3種類ある 任意後見の契約は、開始時期によって以下の3つの種類に区別されます。 即効型 将来型 移行型 それでは、それぞれの内容を詳しくみていきましょう。 即効型 任意後見契約のうち、契約の締結後すぐに任意後見の支援を開始する契約を「即効型」といいます。 「即効型」は、本人の判断能力がすでに低下してきているが、本人自身で契約締結の判断ができる場合のみ利用できます。契約後は、速やかに任意後見を開始するために、直ちに家庭裁判所に対して任意後見監督人の申し立てをおこないます。 「即効型」の任意後見契約を締結する場合は焦っていることも多く、契約内容の理解や確認が本人だけでは不十分になってしまい、後になって後悔…というケースも見受けられます。契約を締結するときは、本人だけでなく、ご家族や親族の方に確認してもらえるようお願いすると良いでしょう。 将来型 任意後見契約の「将来型」とは、本人の判断能力がある時点で、事前に締結しておく任意後見契約のことをいいます。本人の判断能力が低下したタイミングで家庭裁判所に対して任意後見監督人の申し立てをおこなうことで、任意後見契約が開始されます。 一般的に契約締結から任意後見までの期間が長く空いてしまうことが多く、いつ任意後見を開始させたら良いのかの判断が難しくなり、場合によっては開始せずに本人が亡くなってしまうケースもあります。 また、長い期間が空いてしまうことによって、任意後見受任者が契約忘れてしまう恐れもあるので「見守り契約」も併せて締結しておくことをおすすめします。 移行型 「移行型」の任意後見契約では、例えば、任意後見契約と同時に財産管理、見守りなどの委任契約を結び、その支援の一部を任意後見よりも先に開始します。のちに、本人の判断能力が低下してきた段階で、本格的に任意後見に移行します。 「移行型」の契約は、「将来型」のように線が途切れる心配がないこともあり、最も多くの方に利用されているようです。 「移行型」の委任契約で扱われる契約として下記のものが挙げられます。 本⼈の健康状態を把握するための⾒守りを⾏う「⾒守り契約」財産管理や身上監護における委任契約である「財産管理等委任契約」死亡後の葬儀やお墓に関する委任契約である「死後事務委任契約」 任意後見制度ではカバーされない死後についても、事前に「死後事務委任契約」を締結しておくことで本人が死亡し任意後見が終了しても、支援の継続が約束されるので、本人の大きな安心につながるでしょう。 任意後見人の基本的な役割は? 任意後見人にはどのような役割があるのでしょうか?その内容を見ていきましょう。 財産の管理 任意後見人の大きな仕事のひとつに「財産の管理」があります。本人に代わり、預貯金や年金を管理して出し入れや振込みをおこない、自宅など不動産の管理、税金や公共料金の支払いなどもおこないます。 介護や生活面の手配 「介護や生活面の手配」も任意後見人の大切な仕事となります。 具体的には、必要に応じて要介護認定の申請をおこなったり、介護サービスの利用や介護施設に入居するための手配や申込みと支払い、医療機関を利用する際や入院の際の手続きと支払いをおこないます。 また、生活費を届けたり送金したりするなどもおこない、生活全般の手配や療養看護などの事務手続きを代行します。 任意後見制度のメリット 任意後見制度を利用することで、どのようなメリットがあるのでしょうか?具体的には以下のようなメリットがあります。 希望を具体的に反映できる任意後見人を自分で選ぶことができる任意後見人の仕事ぶりを確認してもらえる介護施設への入居の備えにできる 希望を具体的に反映できる 任意後見制度では、契約内容に現時点の本人の意思や要望を具体的に反映できることが、最大のメリットだといえます。 その内容は多岐に渡り、将来的に利用する介護施設や病院の選定や治療・介護サービスの内容、財産管理や保護に関すること、後継人への報酬などご自身の希望に沿った内容で契約することができます。 一方、法定後見制度は、本人の判断能力が失われた後に裁判所によって後見人が選任され、支援を開始する制度のため、財産管理の方法や利用する病院、介護サービスなどの選定についてのほとんどを後見人が決定することが多く、それは本人やご家族の意思とは異なることもあるかもしれません。 任意後見人を自分で選ぶことができる 任意後見制度では、本人が前もって、信頼できる人を後見人として選んでおけることもメリットのひとつであるといえます。 後見人として選ばれる人には特別な資格もいらないので、親族はもちろん信頼できる第三者に、自分の将来を託すことができます。 しかし、法定後見制度での後見人の選任は、家庭裁判所によっておこなわれます。そのため、後見人として望ましい人が親族にいたとしても、その人が家庭裁判所によって選ばれるとは限らないのです。 任意後見人の仕事ぶりを確認してもらえる 任意後見制度では、家庭裁判所によって任意後見監督人が選出され、第三者の面から後見人の仕事ぶりを監視、確認してもらうことができます。 介護施設への入居の備えにできる 介護施設への入居の備えとして、身寄りのない方や親族に身元引受人等を頼めない方が任意後見制度を活用することも可能です。 民間の介護施設では、入居契約の際、身元引受人・保証人を立てる必要があり、これらを立てられない場合は身元保証会社と契約するか、任意後見人を定めることが条件になることが多くあるためです。 任意後見人制度のデメリット 一方、任意後見人制度を利用するにあたってのデメリットには、以下のようなものが挙げられます。 判断能力の有無で決まる死後の処理は委任できない法定後見制度とは違い取消権がない 判断能力の有無で決まる 任意後見制度のデメリットとしては、本人の判断能力が下がってしまってからでは、制度を利用することができないという点が挙げられます。 任意後見契約は、本人の明確な意思のもとに締結されるものであって、本人に認知症などの認知障害がみられる場合には、この制度を利用することはできません。 死後の処理は委任できない 任意後見人の権限は、委任者(本人)の死亡によって終了してしまいます。 葬儀やお墓の管理、自宅の片づけや相続手続きなど、ご自身の死後はどうなるのかについて不安を感じることがある場合でも、死後の事務処理や財産管理を、任意後見人に依頼することはできません。そのため、任意後見契約とは別に「死後事務委任契約」を結ばなければなりません。 また本人の死後は、自分が信頼して選任した任意後見人であっても裏切られることもあり、本人の意思通りにことが進められる確実な保証はなくなるケースもあるようです。 法定後見制度とは違い取消権がない 認知症の方の周りでは、詐欺行為や悪徳な業者による不当な契約を迫られる事態が多く見受けられます。 法定後見制度では、不利益な契約であると判明した場合には、あとからでも契約を解消できる取消権が認められています。 しかし、任意後見制度では取消権は認められていないため、判断能力が低下した本人が契約した内容によっては、不利益が発生してしまうことがあります。 任意後見契約が終了するのはいつ? 任意後見契約では、終了事由があった場合や委任者である本人が亡くなった時に、契約が終了します。 終了事由として、本人の破産、任意後見人が認知症などになり判断不十分になった場合が挙げられます。 また、任意後見人による不正行為や著しい不正行跡が発見されたとき、その他の後見人として任務に適さない事由があるときも、家庭裁判所によって任意後見人を解任することができます。その解任請求ができるのは、本人または親族、任意後見監督人や検察官となります。 任意後見は将来に備えた準備 任意後見制度は、元気なうちに、認知症などによって判断能力が低下してしまうことを見据えた将来の備えとして利用され始めています。 ご本人自身で、残りの人生をどう生きるのかを考慮して契約内容を決められることは、大きな安心に繋がります。その安心のためにも、任意後見人には、ご本人のために最善を尽くしてくれる、信頼できる方を選ぶことが重要になります。 任意後見人には、ご本人の意思を尊重し、心身の状態や生活状況を配慮しながら業務を遂行する義務があるからです。また、介護施設の入居にも、任意後見制度が利用できることは、将来の不安を和らげてくれる大きなポイントになります。 以上の点を踏まえたうえで、任意後見制度の利用を選択肢のひとつとして、検討することをおすすめします。 任意後見制度に関するよくある質問 任意後見制度とは何ですか? 任意後見制度は、本人に充分な判断能力があるうちに、将来、認知症などで判断能力が低下したときに、本人に代わって事務手続きなどおこなう人を定めておく制度のことを言います。 本人に充分な判断能力があるので、希望を具体的に反映できたり、任意後見人を自分で選ぶことも可能なのが任意後見制度のメリットと言えます。 任意後見人は誰でもなれますか? 任意後見人になるためには、特別な資格は必要なく、家族や親族はもちろん、信頼できる友人に依頼することも可能です。ただし、未成年者、破産者、行方不明者などの任意後見人の任務に適しない事由のある人は任意後見人にはなれないので注意が必要です。 任意後見人の役割は何ですか? 任意後見人の大きな仕事のひとつとして財産の管理が挙げられます。主に預貯金や年金を管理して出し入れや振込み、自宅など不動産の管理、税金や公共料金の支払いもおこないます。 また、介護や生活面の手配も仕事のひとつとして挙げられます。具体的に介護サービスの利用や介護施設に入居するための手配や申込みや支払い、医療機関を利用する際や入院の手続きと支払いなどもおこないます。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "任意後見制度とは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...
2021/12/29
判断能力が落ちてしまった高齢者に代わって契約などを結ぶことができる成年後見制度というものがあります。 両親のため、そして自分のために、理解を深めたいと考えている方が増えてきているそうです。ここでは成年後見制度について詳しく紹介していきます。 成年後見制度とは? 成年後見制度とは認知症をはじめ知的障害や精神障害などの理由で物事を判断することが難しく、法律行為をおこなえない状態にある方に、後見人が代わって必要な契約を結んだり、財産を管理したりして本人の保護を図る制度です。 成年後見制度において支援をしてもらう人を「被後見人」、支援をする人を「成年後見人」と呼びます。 成年後見制度は2つに分けられる 成年後見制度には大きく分けると2つの制度があります。 法定後見制度 任意後見制度 法定後見制度は、すでに判断能力が不十分である場合に本人に代わって権利を守り、法的に支援する制度です。一方で任意後見制度は、将来、判断能力が不十分になってしまった場合に備えておくための制度のことを指します。 以下では、詳細を見ていきましょう。 法定後見制度 家庭裁判所へ申立てをすることで、家庭裁判所から成年後見人が選ばれます。 法定後見とは、本人の利益を考えながら本人に代わって契約を結ぶなどの法律行為をしたり、本人に代わって財産を管理したりするなどして、本人を支援、保護することを指します。 後見、保佐、補助の3区分 法定後見制度では、 判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3つの区分が用意されています。 後見、保佐、補助の違いについては以下の通りです。 後見 対象となる方判断能力がいつも欠けている方申立てできる方本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長など後見人等に与えられる権限法律行為の代理権、取消権(※1)申立てにより与えられる権限- 保佐 対象となる方判断能力が著しく不十分な方申立てできる方本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長など後見人等に与えられる権限借金、相続の承認、家の新築や増改築など特定の事項(※2)についての同意権、取消権(※1)申立てにより与えられる権限・借金、相続の承認、家の新築や増改築など特定の事項(※2)以外の事項についての同意権、取消権・特定の法律行為についての代理権 補助 対象となる方判断能力が不十分な方申立てできる方本人、配偶者、四親等以内の親族、検察官、市町村長など後見人等に与えられる権限-申立てにより与えられる権限借金、相続の承認、家の新築や増改築など特定の事項(※2)の一部についての同意権、取消権(※1)・特定の法律行為についての代理権制度を受ける本人が失う資格、地位- ※1、日用品の購入など日常生活に関する行為は除く※2、民法13条1項にあげられる行為 任意後見制度 任意後見とは、将来、判断能力が低下してしまったときの備えとして、あらかじめ公正証書で任意後見契約を結んでおくことです。判断能力が不十分になった時にその契約をもとに任意後見人が本人を支援する制度です。 後見、保佐、補助の対象になる人は? 法定後見には3つの区分があるとお伝えしましたが、具体的にどういった人が対象になるのでしょうか。以下で詳しく説明していきます。 後見の対象となる人 後見の対象となる方は日常生活を自力で送ることが困難な状態、つまり判断能力が欠けている状態にある人を指します。 後見人には被後見人に代わって財産管理や法律行為をおこなう代理権と、被後見人がおこなった法律行為の取り消しをおこなう権利である取消権の権限が与えられます。 保佐の対象となる人 保佐の対象となる人は、日常の買い物はひとりでおこなうことができるなど、生活面での自立性はあるものの、借金や相続などの重要な財産行為をおこなう際には誰かの支援を受けなければ理解し、判断することができない人です。 なお保佐人には、重要な財産に関する行為について同意権と取消権の権限が与えられます。 重要な財産行為とは借金や相続などの他にも訴訟行為や新築、増改築等を指し、被保佐人がこれらの行為をおこなう場合には保佐人の同意が必要になり、被保佐人がこれらの財産行為を保佐人の同意なくおこなった場合には取り消すことが可能です。 また、このような保佐人の同意を必要とする法律行為は、財産に関すること以外でも家庭裁判所の審判により追加することができます。 加えて必要であれば特定の代理権を権限として追加することも可能です。 補助の対象となる人とは? 補助の対象となる人は保佐の対象となる人と同様に、日常の買い物などはひとりででき、自立性はあるものの、重要な財産行為については独力でおこなうことが不可能ではないが、適切におこなえない可能性があり、第三者の援助を受けた方が良いとされる人になります。 なお補助人には、家庭裁判所に申し立てることにより、民法13条1項記載の相続の承認や放棄、訴訟といった行為のうち、一部の行為について同意権と取消権が与えられます。 また保佐人同様に、補助人も家庭裁判所の審判により特定の法律行為をおこなう代理権を追加することが可能です。 成年後見制度を利用する原因と動機 続いて、成年後見制度を利用する方の動機やその原因についてご紹介していきます。 原因は認知症が約6割 成年後見制度の利用を申し立てる原因として一番多いとされているのは認知症で、全体の約61.4%を占めています。 また認知症の次に多い理由としては知的障害が約9.9%を占め、次いで統合失調症が約9.0%を占めています。 動機は預貯金の管理・解約が最も多い 成年後見制度を申し立てた主な動機は以下になります。 申し立ての理由として最も多いのは預貯金の管理や解約で、つぎに身上保護となっています。認知症などが原因で判断能力が低下してしまうと財産管理だけではなく日常生活にも支障をきたす場合が多いため成年後見制度が果たしている役割は大きいと言えます。 成年後見人の役割 では、後見人は実際にどのような役割を果たしているのでしょうか。順を追って見ていきましょう。 療養看護 療養看護と聞くと、後見人が看護をするのかと思うかもしれませんが、すでに説明した通り後見人には介護や看護などの事実行為をおこなう権利や義務はありません。 そのため、事実行為としての介入ではなく施設の契約や介護サービスの契約といった療養看護に関する法律行為をおこないます。 財産管理 財産管理には財布や通帳を預かるといった事実行為としての財産管理と、被後見人に代わって財産に関連する契約を結ぶなどの対外的な代理行為としての財産管理があります。 また、老人ホームなどの介護施設への入居を検討している被後見人のうち、持ち家を売却したい場合には家庭裁判所の許可が必要となり、場合によっては売却が認められないもありますので注意してください。 遺産分割協議などの相続にまつわる協議がおこなわれる場合には、後見人自身が相続人として含まれていると「利益が相反する関係にある場合」に該当するため、後見監督人が後見人の代わりに、成年被後見人を代理するか、特別代理人の選任を申し立てる必要があります。 後見等事務報告 後見人として選定されると、毎年1回は家庭裁判所に対して、被後見人の為におこなった事務内容について後見等事務報告としてまとめ、提出する必要があります。 成年後見制度自体が自力で生活をしたり、何かを判断したりすることが難しい方のために援助をおこなう制度なので、後見人がおこなった内容はとても厳格に管理されています。 報告書のフォーマットはあらかじめ決められており、裁判所のホームページからダウンロードすることが可能です。 成年後見人になれない人は 成年後見人になるために必要な資格などはありませんが、なるにあたっていくつか条件があります。 以下の欠格事由(成年後見人になることができない要件)に該当していない人であれば誰でも成年後見人になることができます。 未成年者破産者行方不明者被後見人に訴訟を起こした人とその配偶者過去に後見人を含む法定代理人を解任されたことがある人その他不正な行為をおこなうなど後見人に適さない経歴がある人 とはいえ、後見人を選定するのは家庭裁判所なので、希望していた人が選任されるとは限りません。また、希望した人が選任さなかったからといって申立を取り下げることはできないので注意するようにしましょう。 後見人等ではできないこと 先ほど後見人に選ばれた場合にできることをご紹介しましたが、後見人にできないことは一体何があるのでしょうか。以下で説明していきます。 身体に対する強制、一身専属的な事項 入院や施設入所、リハビリといった被後見人の身体に関することを強制する行為や、臓器移植の同意のような一身専属的な事項に関する行為が挙げられます。 あくまでも、後見人ができるのは法律行為にまつわることである、という点を覚えておきましょう。 身分行為 身分行為とは、婚姻の成立や離婚、養子縁組といった身分に関する法律の法律効果を発生させ、変更あるいは消滅をさせる法律行為のことを指します。 身分行為は財産行為のような高度な判断能力を必要としないことに加え、本人の意思が何よりも大切とされる行為のため、後見人などの代理人が身分行為をおこなうことは許されていません。 申立手続きの流れ ここからは実際に成年後見制度を利用するにあたって必要な手続きの流れをご説明していきます。 また、申立にかかる費用は1万円程度とされていますが、診断費用や鑑定費用を含めると2万弱〜18万円程度とかなり幅があります。 1.申立先、申立人の確認 成年後見制度の利用を検討している場合には、まず家庭裁判所で成年後見人を選任してもらうために申立をおこないます。 申立をする家庭裁判所については被後見人の住所地を管轄する家庭裁判所です。裁判所のホームページなどで管轄の裁判所を確認しておきましょう。 また、申立をおこなうことができる人としては被後見人本人または配偶者、4親等内の親族、市区町村長等に限定されていますので注意してください。 2.医師の診断書を取得 申立をおこなう際には、被後見人の介護状況や判断能力を見た上で後見・保佐・補助のどれに該当しているのかを判断する必要があるため、医師の診断書が必要になります。 診断書は必ずしも心療内科医や精神科医で作成してもらう必要はなく、かかりつけ医や内科医でも問題はありません。ただし、家庭裁判所が用意しているフォーマットの通りに作成しなければいけないので注意しましょう。 3.必要書類の収集 次に診断書以外の必要書類を用意しましょう。 具体的に必要な書類は以下の通りです。 申立書類一式 申立に必要とは具体的に以下のような書類を指します。 後見開始申立書申立事情説明書親族関係図財産目録収支状況報告書後見人等候補者事情説明書親族の同意書 なお、これらの書類は申立先の家庭裁判所によって書式に違いがあります。申立先の家庭裁判所の窓口、または申立先の家庭裁判所のホームページかで取得してください。 戸籍謄本 戸籍謄本は本籍地や家族関係について書かれており、その人の身分を証明する書類です。 本籍地のある各市区町村の担当窓口で受け取ることが可能で、被後見人と後見人候補者が同じ戸籍の場合には両者が記載されている戸籍謄本を1通取得すれば問題ありません。 住民票 住民票は住所地や同一世帯の家族について書かれており、住所や世帯を証明する書類です。 住所のある各市区町村の担当窓口で受け取ることが可能で、戸籍謄本の時と同様に被後見人と後見人が同一世帯の場合は両者が記載されている住民票を1通取得すれば問題ありません。 登記されていないことの証明書 登記されていないことの証明書とは、現在法定後見制度および任意後見制度を利用していないことを証明する書類です。 この証明書については法務局本局で取得できるので、詳しくはホームページでご確認ください。なお、支局や出張所では取得ができないので、そちらも注意しておきましょう。 4.書類の作成と準備する物 申立書類の主な作成手順は以下の通りです。 申立書類一式の作成本人に関する資料の準備収入印紙や郵便切手の準備 なお書類の名称や形式は各家庭裁判所によって異なるため、詳しくはホームページをご覧ください。 本人に関する資料とは 本人に関する書類とは主に精神障害者・療養・介護保険認定証などの健康状態がわかる資料、年金額決定通知書、確定申告書などの収入についてわかる資料、各種税金の納税通知書、国民健康保険料や介護保険料の決定通知書などの支出についてわかる資料の3つを指します。 状況に応じ必要な書類も 上記の健康状態に関する資料と収入および支出に関する資料はすべての人が用意しなくてはいけませんが、なかには状況に応じて用意しなくてはいけない資料もあります。 具体的には以下のようなものが挙げられます。 不動産についての資料預貯金についての資料生命保険についての資料負債についての資料遺産についての資料 5.面接日の予約 成年後見制度を利用するにあたり、申立人や後見人候補者の話を聞くために家庭裁判所で面接がおこなわれます。 面接は時期によってはスムーズに予約が取れない場合があるため、資料集めなどのスケジュールがある程度決まった段階であらかじめ予約をとっておくことをおすすめします。 なお、予約した面接日の1週間前には申立書類一式を家庭裁判所に提出する必要がありますので時間に余裕を持って予約を取りましょう。 6.家庭裁判所へ申立 面接日が決定したあとは家庭裁判所へ申立書類一式を提出します。裁判所へ直接提出することも可能ですし、郵送することも可能。どちらかの方法で書類を提出してください。 なお、申立書類一式が提出された時点で申立があったとみなされ、この申請を取り下げることはできなくなります。 そのため、望んでいた後見人が選任されなかったなどの理由でも取り下げることはできず、裁判所が指定した弁護士や司法書士が後見人になる可能性があることも理解しておきましょう。 7.審理開始 申立がおこなわれると、家庭裁判所で審理がはじまります。 ここでいう審理とは、申立書類の不備はないかといった確認に加え、「本人の心身状況や事情をみて成年後見制度が必要であるのか」「成年後見人にふさわしい人は誰か」といったことを判断することです。 必要に応じて、本人または親族との面談や医師による鑑定などもおこなわれます。また、時期によってはこれらの申立から審理を経て結果がでるまでに1〜3ヵ月程度かかります。 8.審判 審判とは裁判官が申立書類の内容や調査結果をもとに成年後見制度が必要であるかどうかを判断し決定することを指します。 必要であるとされた場合には後見開始の審判と、その人に最も適した人を後見人として選任がおこなわれます。 また、内容に不服がある場合には後見人のもとに審判書が届いてから2週間以内に不服申立てをしましょう。不服申立てがなければそのまま後見開始が確定します。 9.後見の登記 審判が確定し、後見人として選任されたあとは裁判所から東京法務局に登記の依頼がなされ、後見人の氏名や権限などが記載された後見登記がおこなわれます。 後見登記とは自分自身が後見人であることを証明するもので、裁判所の依頼から2週間程度で完了し、後見人に登記番号が通知されます。その登記番号をもとに法務局で登記事項証明書を取得しましょう。 登記事項証明書は、預貯金口座の解約といった後見人の業務をおこなう上で必要になります。 後見人を解任したい時は? 一度選任された後見人は特別な理由がない限り解任することはできませんが、以下のような場合には申立権者の請求、または職権により後見人等を解任することができます。 不正な行為 著しい不行跡 その他後見の任務に適しない事由 なお、後見人は解任できますが、成年後見制度を途中で終了させることはできず、後見人が解任されても新たな後見人が選任されます。 親族が後見人になる場合の注意点 以下では親しい間柄にある人が後見人になる場合の注意点をご紹介していきます。 本人のためにする業務であることを意識する たとえば息子が父親の後見人に選ばれた場合に、家族であるからといって父親の財産を自分自身のために使用すれば業務上横領となってしまいますので、あくまでも本人のためにする業務であることを念頭に置いておきましょう。 財産の贈与・貸与をしない 親しい人が後見人になると財産の贈与などを被後見人自身が進めてくる場合もありますが、後見人にそのような権限は認められていません。 本人が贈与や貸与を強く望んでいる場合には事前に家庭裁判所に相談しましょう。 後見人等就任前に、しっかり話し合う 後見人はあくまでも本人の利益を守るために財産管理などをおこなう立場です。後見人になったからといって財産を自由に使えるわけではありませんので、きちんと後見人の立場や業務内容などを確認し、話し合って立候補するようにしましょう。 第三者が後見人となる際の注意点 ここからは、第三者が後見人となる場合の注意点を紹介していきます。 本人の利益のために動く 後見人はあくまでも本人の利益のために動く存在です。将来の相続に備えて贈与をおこなうといった本人の財産を減らすような行為はできないので注意しましょう。 記録を見せてもらえないこともある 後見人には被後見人の財産目録や後見等に関する記録を親族に見せる義務はありません。そのため親族が閲覧を希望していても見せてもらえない可能性もあります。 なお、そのような場合には家庭裁判所で記録の閲覧・謄写を申請することで確認することができます。 後見人とコミュニケーションをとる 親族以外の第三者が後見人に選任された場合は、お互いに安心感を得るためにも、権限の不正防止をはかる意味でも積極的にコミュニケーションを取り、後見人と良好な関係を築いておきましょう。 成年後見制度のメリットとデメリット 最後に、成年後見制度のメリットとデメリットについて紹介していきます。 メリット 認知症を患っている人は悪徳業者からの不当な契約や詐欺に合いやすいだけではなく、家族が財産を使い込んでしまうというケースもあります。 また、介護施設や介護サービスなどの法的契約も判断能力が低下している被後見人が一人でおこなうのは難しいと言えます。 このような場合に成年後見制度を利用することで、後見人が被後見人の財産を守り、その都度必要になる一人でおこなうことが難しい法的な契約も代理でおこなってくれるため、安心して生活を送ることができます。 ▼介護施設への入居後の空き家問題について、詳しくはこちらの記事もご覧ください。※姉妹サイト「いい相続」の記事にジャンプします。 デメリット 成年後見制度を利用するにあたり必要な書類を集めて裁判所に申立てをおこなう必要があるので、煩雑な手続きに手間がかかる点はデメリットでしょう。 また、後見人は本人の利益のために行動しなくてはいけないため、柔軟な行動が取れなくなる可能性もあります。そのほか後見人には報酬が発生するためにある程度費用がかかる点などがデメリットとして挙げられます。 成年後見制度に関するよくある質問 成年後見制度とは何ですか? 成年後見制度とは認知症をはじめ知的障害や精神障害などの理由で物事を判断することが難しく、法律行為をおこなえない状態にある人の代わりに必要な契約を結んだり、財産を管理したりして本人の保護を図る制度です。 成年後見人には誰がなりますか? 成年後見人になる人は一般的に親族が望ましいとされており、配偶者や親、子が選任されます。 また、成年後見人になれない人については、未成年者、破産者、行方不明者などが挙げられます。家庭裁判所の決定で希望した人が選任されなくても申立を取り下げることはできないので注意しましょう。 成年後見制度を利用する原因は何ですか? 成年後見制度の利用を申し立てる原因として一番多いとされているのは、認知症で全体の約6割を占めています。 また動機として挙げられるのは、預貯金の管理や解約が最も多く、認知症により判断能力が落ちてしまうと財産管理が難しいので、成年後見制度でそのサポートをします。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "成年後見制度とは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...
2021/12/24
認知症の人が入居できる施設は、グループホームや有料老人ホーム、特別養護老人ホームなど複数の種類があります。 この記事ではそれぞれの特徴を説明するとともに、施設選びを始めるタイミングや選び方のポイントを解説します。 認知症の人の施設選びを開始するタイミングは? 認知症を発症しても介護が必要になるまでは時間がかかるため、いつから施設選びをはじめれば良いか迷う方も多いのではないでしょうか。 重症化してから焦らなくて済むよう、施設選びを開始する適切なタイミングを知っておきましょう。 検討は症状が軽度な状態から 認知症の症状が軽いうちに施設を探し始めれば、家族だけでなく本人の希望も反映できます。また、認知能力や生活能力が残っているうちに入居することで、施設になじみやすく、その後の生活の質の向上も期待できます。 施設探しには時間がかかる上、希望する施設にすぐ入れるとは限りません。認知症は日々進行していくため、症状が軽度のうちから施設選びを開始するのが大切です。 家族の心身の負担が軽いうちに 在宅での介護は、家族にとって肉体的にも精神的にもに大きな負担がかかります。症状が重くなるにつれて日々の介護に追われ、施設探しが後回しになってしまうことも。これにより、認知症が悪化してからあまり検討せずに介護施設を選ぶケースもよくあります。 家族の負担が軽いうちに施設選びをはじめれば、受け入れ条件やサービス内容をしっかり確認し、よりご本人に合った施設が選べます。 認知症の人が入居可能な施設 認知症の人が入居できる施設には、以下の4種類があります。 グループホーム(認知症対応型生活介護)有料老人ホームサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)特別養護老人ホーム 具体的な施設選びの前に、まずはそれぞれの特徴を知っておきましょう。 グループホーム(認知症対応型生活介護) グループホームは認知症の人を対象とする施設で、5~9人の少人数のグループ(ユニット)で日常生活を送るのが特徴です。入所条件は要支援2以上、原則65歳以上です。 少人数でアットホームな環境のもと、認知症ケアの専門スタッフにより残された能力を生かしながら必要な支援を受けられます。 一方、医療的なケアや万が一の体制については施設ごとに差があります。また、ある程度身の回りのことが自分でできる人が対象のため、介護度が高くなると退居を求められることもあります。 有料老人ホーム 有料老人ホームには、「介護付き有料老人ホーム」「住居型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3種類があります。 このうち介護付き有料老人ホームは介護を必要とする高齢者を対象とした施設で、入居条件は施設ごとに異なります。介護職員のほかにリハビリ専門職や看護師なども配置されるほか、スタッフが24時間常駐しており、認知症の方も安心して過ごせます。 施設ごとに設備の充実度やサービス内容に差が大きく、レクリエーションが充実した施設や食事に力を入れていることも。このため、費用も施設ごとに差があります。 サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) サービス付き高齢者向け住宅は、主に自立~軽介護度の高齢者を受け入れている賃貸住宅です。主に民間が運営しており、バリアフリー化により高齢者が暮らしやすく設計されています。日中は社会福祉士や介護福祉士などの資格を持つスタッフが常駐し、安否確認や生活相談をおこないます。 介護サービスを提供しているサービス付き高齢者向け住宅もあり、自由度の高い生活を希望する方の入居先として選択肢のひとつとなります。 特別養護老人ホーム 特別養護老人ホームは、要介護3以上の人を対象とした公的介護施設です。寝たきりの認知症患者など、介護度が高い人ほど優先的に入所できるのが特徴です。看取りをおこなう施設がほとんどで、終の棲家としても多くの方に選ばれています。 費用負担が少ないことから人気が高く、入居までには数ヵ月から数年かかることも。このため、特別養護老人ホームに入居を希望する場合は、早くからの対策が必要です。 施設を選ぶための準備 施設選びには入念な準備が欠かせません。入居先の施設でご本人らしく快適な生活を送れるよう、次の項目を参考に情報を集めましょう。 希望条件の整理 ケアマネジャーと相談 施設資料を請求 希望条件の整理 老人ホームを探すにあたり、まずは希望する条件を洗い出しましょう。特に大切なのは予算です。無理なく支払える価格帯を設定しましょう。また、面会に通う負担を軽くするため、家族の家からの距離や立地も重要な条件です。 本人と家族の希望が食い違うこともありますが、お互いの考えを尊重しながら譲歩すべきところは譲歩します。すべてを叶えるのは難しいので、施設選びをスムーズにするためにも希望に優先順位をつけておくと良いでしょう。 ケアマネジャーと相談 すでに自宅などで介護サービスを利用している場合は、担当ケアマネジャーに相談しましょう。 ケアマネジャーは介護現場のプロで、地域にある施設や介護保険サービスなど幅広く情報を提供してくれます。また、本人の認知症の状態を把握してくれているため、施設選びでも的確なアドバイスがもらえます。 施設資料を請求 介護施設の情報収集はインターネットが便利です。比較サイトを利用すると、希望する条件からおすすめの介護施設を探せます。施設への入居のしやすさは地域により差があるため、近隣地域も含めて探すと、より条件に合った施設が見つかることもあります。 また、紹介センターへの相談もおすすめです。紹介センターには豊富な情報を持つ専門相談員がおり、施設選びをサポートしてくれます。 希望の条件に合う施設を見つけたら、詳しい資料を取り寄せましょう。複数の施設の資料を集め、比較することも大切です。 施設見学は重要 実際の施設を見たり施設職員の話を聞くことで、パンフレットなどではわからない雰囲気なども感じ取れます。また、すでに入居している方の様子や職員の働く姿を見ることで、入居後のイメージがわきやすくなります。多くの施設では、検討段階での見学も積極的に受け入れています。候補の施設をいくつかピックアップしたら、気軽に見学を申し込んでみましょう。 認知症の人の施設見学のポイント 限られた時間の中で、ご本人や家族にとって最適な施設なのかを見極めるのは難しいもの。見学の際は次のポイントを意識しましょう。 本人も一緒に確認費用の確認本人らしい生活の継続が可能か認知症状の対応医療体制入居者の様子をチェック職員の様子をチェック退居された事例 本人も一緒に確認 入居施設を当事者抜きで決めるのは、本人の不満や家族の後悔につながることがあります。このため施設への入居を強く拒否していない限り、本人も一緒に見学しましょう。 本人が施設の環境や職員の対応を心地よく感じれば、入居の流れがスムーズになります。また、本人に対する職員の言葉かけや気配りを目にすることで、入居後の様子を想像しやすくなります。 費用の確認 施設への入居には入居時費用と月額費用がかかり、金額は施設ごとに異なります。見学時にはその内訳を確認しましょう。さらに、要介護度が上がったり入居が長期化しても無理なく支払い続けられるよう、資産や収支と照らし合わせて検討します。 選ぶ施設が公的施設か民間施設かにより、料金は大きく異なります。施設の種類によって介護保険の適用有無も異なり、費用負担に大きく影響します。 資金に余裕がない方やゆとりを持たせたい方は、特別養護老人ホームなどの公的施設を中心に選ぶと良いでしょう。また、入居時費用のかからない民間施設も増えつつあり、初期費用が少ない方や手元に資金を残しておきたい人におすすめです。 本人らしい生活の継続が可能か 認知症の人は環境の変化が苦手です。慣れ親しんだ自宅から施設に移る際は、戸惑ったり混乱する人がほとんどです。 変化の影響をできるだけ抑えるために、使い慣れた家具などが持ち込めたり、散歩や趣味などの習慣を続けられるか確認しましょう。また、居室で静かに過ごせるか、食事に満足できるか、好みのレクリエーションがあるかなど、本人の望む生活が送れるかも確かめます。 認知症状への対応 認知症は、引っ越しなどの生活環境の変化がストレスになり症状が悪化することがあります。これを「リロケーションダメージ」といいます。これにより、現状は物忘れなど記憶機能の低下にとどまっている方でも、暴言や暴力が発生したり、帰宅欲求により外出・徘徊することもあります。 このような事態に対する過去の事例や、施設がどのように対応するかを質問してみましょう。その答えに納得できる施設なら、いざというときも安心してまかせることができます。 医療体制の確認 糖尿病や腎機能障害など認知症以外にも持病がある場合は、施設内で必要な医療サービスを受けられるか確認しましょう。 また、認知症が進行すると胃ろうや褥瘡ケアなど医療の提供も必要になることも。このため、医師や看護師の配置や、提供可能な医療サービスなどは細かく確認しましょう。特に終の棲家としての施設を検討している場合には重要なポイントです。 入居者の様子をチェック 失礼にならない範囲で、ほかの入居者の様子を観察するのも大切です。 入居者同士で楽しそうに過ごしていたりリラックスしているようなら、快適に過ごせる施設といえるでしょう。一方で、服が汚れたままや長時間放置されている入居者がいたり、入居者同士の関わり合いが薄い場合は、施設の対応が良くない可能性があります。 入居者の様子で気になる点があれば、職員に聞いてみましょう。正当な理由があれば、納得のいく答えをもらえるはずです。 職員の様子をチェック 認知症の人は、周囲の人がいらだった表情を浮かべていたり慌ただしくしていると、その雰囲気を感じて不安や否定的な感情を持つことがあります。 一方で、職員が笑顔で丁寧に対応してくれれば、緊張がほぐれて安心して過ごすことができます。このため、設備だけでなく職員も重要な環境要因。表情や働きぶりも確認しましょう。 また、職員は業務が多く忙しいことが多いですが、話しかけてみましょう。認知症の正しいケア方法を理解し、経験を積んだ職員なら、手を止めて笑顔で対応してくれるはずです。 退居した事例 退居の事例には施設の方針やそれまでのケアが色濃く反映されるため、どのように退居された人が多いのか質問すると良いでしょう。 例えば、「施設で最後を迎える人が多いのか」「重症化により病院に転院する方が多いのか」「暴言や暴力などで対応が困難になり退居を求められる方はいるのか」など。守秘義務により詳細を教えてもらうことは難しいですが、可能な範囲で聞いてみましょう。 施設入居と在宅生活の大きな違い 施設への入居と在宅での介護では、本人にとっても家族にとっても大きな違いがあります。詳しく見ていきましょう。 ケアが24時間体制で安心できる 夜間も職員が常駐しており安心して過ごせるのは、在宅での介護にはない大きなメリットです。また、認知症介護のプロがいる施設を利用することで、認知症の進行を防ぐためのケアや生活サポートを24時間体制で受けられます。 例えば、日中は体操やレクリエーションなどで体や脳を動かします。運動機能や認知機能の維持に役立つだけでなく、夜間に睡眠を取りやすくなることで生活リズムが整い、認知症に良い影響を与えてくれます。 さらに、機能訓練や口腔ケアなどのさまざまなサポートも受けられるため、健康維持も期待できます。 人との交流が多い 人との会話や交流は心身に良い刺激を与え、認知症の進行を防ぐのに役立ちます。 施設では、日常生活やレクリエーションを通してほかの入居者や施設職員などの多くの人と交流できます。一方、在宅介護で多くの人との交流を持つには、デイサービスに通ったり積極的に近所の人と関わりを持つ必要があるため、介護者の負担が大きくなります。 自然と多くの人と楽しく交流できるのも、施設に入居するメリットのひとつです。 多様なイベント 在宅での介護は、日々の生活がどうしても単調になりがちです。一方、施設ではレクリエーションが日常的におこなわれるほか、誕生日会やクリスマス、ひな祭りなどのイベントが毎月のように開催されます。 こうしたレクリエーションやイベントは、楽しんで参加できるだけでなく脳に良い刺激を与えてくれます。また、レクリエーションは介護のプロが考えており、脳のトレーニングや運動機能の維持・向上など認知症の進行を抑えたり症状の緩和にもつながります。 個々に合わせたサービスの提供 施設では、入居者の健康状態や要介護度に合わせたさまざまなサービスが受けられます。また、認知症に関する多くの知識と経験を持った職員が配置されており、快適な環境で適切なケアを受けられます。 認知症の症状は、人それぞれ異なります。認知症介護に実績のある施設であれば、これまで蓄積してきたケア方法などをもとに一人ひとりに合わせたサービスの提供が可能です。 さらに、在宅介護では難しい“心と体の総合的なケア”も受けられるため、認知症の症状の改善も期待できます。 環境変化による混乱は少なからずある メリットの多い施設への入居ですが、環境変化がストレスとなり症状の悪化が見られることがあります。しかし、認知症が進行したと感じても、一時的な混乱が原因のため時間の経過とともに施設の生活に慣れて落ち着きを取り戻すことが多いです。 ただし、落ち着くまでには個人差が大きく、1ヵ月以内など短期間の方もいれば、なかなか落ち着かず長期にわたる方もいます。 また、施設での生活は自宅に比べると自由な行動が制限されるため、このストレスにより認知症が進行してしまうケースもあります。 認知症が進む要因は人により異なります。施設への入居により症状が進行する方もいれば緩和される方もいることは、心に留めておきましょう。 親の施設入居に抵抗を感じることも 親の施設入居に罪悪感を持つ方も少なくありません。しかし、施設への入居は家族の負担を減らせるだけでなく、本人にとってもメリットがあります。否定的な思いではなく、快適に過ごして欲しいというポジティブな気持ちで施設を選びましょう。 どうしても罪悪感を感じてしまうなら、主治医や担当ケアマネジャーに気持ちを打ち明けたり、入居予定の施設のケアマネジャーや生活指導員に相談するのも良いでしょう。 しかし、罪悪感の払拭に何より効果的なのは、本人と介護者がともに安心することです。入居後はなるべく面会に行き、安心させてあげましょう。また、施設で楽しく過ごしている本人の様子を見ることで、施設への信頼が増して「入居させて良かった」と思えるようになるはずです。 入居後に後悔しないよう、症状が軽いうちからより良い生活の実現に向けて、しっかり話し合っておくことも大切です。 ▼介護施設に入居した後について考えたい方は、こちらもご覧ください。※姉妹サイト「いい相続」の記事にジャンプします。 認知症の人の施設選びに関するよくある質問 認知症になった場合、いつ頃施設の検討をしたら良いですか? 施設の検討は、比較的症状が軽い時期から始めると、家族だけでなく本人の希望も反映できます。施設探しは時間がかかる上、希望する施設にすぐ入居できるとは限らないので、早めの情報収集、施設の見学をすると良いでしょう。 認知症の人が入居できる施設はどこですか? 主に「グループホーム」「有料老人ホーム」「特別養護老人ホーム」などが挙げられます。 特にグループホームは認知症特化型の施設で、少人数でアットホームな環境のもと、認知症ケアの専門スタッフにより必要な支援を受けられます。ただし、少人数の受け入れであるが故に、満室の傾向が強く、入居に関しては待機をしなくてはならないこともあります。 施設を選ぶためにはどんな準備が必要ですか? まずは希望条件を整理し、担当のケアマネジャーとどの施設であれば希望が叶えられるかを話し合いましょう。その上で該当箇所の施設資料を取り寄せ、資料ではわからないことを見学にて確認しましょう。 また見学の際には、入居する本人も連れて施設を訪問しましょう。本人が実際に施設の雰囲気、スタッフの対応を受けることで、家族も入居後のイメージを持つことができます。 { "@context": 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2021/12/24
認知症の家族を在宅で介護している方の中には、「介護の負担を軽減できたら良いのにな…」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。 そんな方々のためにあるのが認知症対応型デイサービス(認知症対応型通所介護)で、認知症の方のみを対象としたデイサービスの種類です そのサービスの内容について、またサービスを受けるための利用条件や気になる料金について説明していきますので、ぜひ参考にして、利用を検討してみてくださいね。 認知症対応型デイサービスとは? 引きこもりがちになる認知症の方に対して、施設で食事や入浴などの日常生活支援や口腔機能向上サービスなど専門的なケアをおこないます。また、利用者や職員、ボランティアスタッフとの交流を促すために、レクリエーションの時間などもあります。 認知症対応型デイサービスは、送迎サービスがあるので家族の負担も少なく、介護する側もリフレッシュの時間をつくることができます。 認知症対応型デイサービスには「単独型」「併設型」「共用型」の3つの形態があります。それぞれの特徴についても見ていきましょう。 単独型 特別養護老人ホームや病院、その他介護老人保健施設などに併設されていない認知症通所介護施設単独で運営されているものを言います。 併設型 ほかの施設に併設して運営されている認知症通所介護施設のことを併設型と呼びます。ほかの施設とは特別養護老人ホームや介護老人保健施設以外にも、病院や診療所、社会福祉施設などがあります。 共用型 認知症対応型共同生活介護事業所、地域密着型特定施設、地域密着型介護老人福祉施設の共有スペースを利用しているものを共用型と言います。 利用条件 認知症対応型デイサービスを利用するためにはどのような条件があるのでしょうか。必要条件について見ていきましょう。 住所地 基本的に、住んでいる地域に住所がある事業所が対象になります。 ただし、認知症対応型デイサービスの場合は例外もあり、市区町村によっては他の地域の利用を認めていることがあります。地域の事情によるので、それぞれの市区町村の窓口に確認しましょう。 要介護1以上 認知症対応型デイサービスを利用するには、要介護1以上の認定を受けていることが条件です。したがって要支援の方は利用することができません。 要支援の人を対象とするサービスは「介護予防認知症対応型通所介護サービス」があります。これは、認知症のケアと同時に、要支援から要介護状態に悪化することを予防する目的もあります。 認知症の診断 認知症対応型デイサービスは認知症の方を対象としたサービスなので、医師による認知症の診断も必要です。診断がない状態では利用することができないので注意しましょう。 利用料金 認知症対応型デイサービスの料金は施設が「単独型」「併設型」「共用型」のいずれかによって設定が異なります。また、利用者の要介護度、利用する時間によっても金額が変わります。 介護サービスは介護保険の対象であれば、自己負担額は1割が基本です(収入によって2~3割)。その場合、詳しくは下記のような料金設定になります。ただし、おむつや食費は別途実費負担です。 介護保険負担割合1割として1日あたりの金額 単独型 併設型 共用型 4時間以上5時間未満 要支援1 497円 449円 260円 要支援2 551円 498円 274円 要介護1 569円 515円 279円 要介護2 626円 566円 290円 要介護3 684円 618円 299円 要介護4 741円 669円 309円 要介護5 799円 720円 319円 5時間以上6時間未満 要支援1 741円 667円 413円 要支援2 828円 743円 436円 要介護1 858円 771円 445円 要介護2 950円 854円 460円 要介護3 1,040円 936円 477円 要介護4 1,132円 1,016円 493円 要介護5 1,225円 1,099円 510円 6時間以上7時間未満 要支援1 760円 684円 424円 要支援2 851円 762円 447円 要介護1 880円 790円 457円 要介護2 974円 876円 472円 要介護3 1,066円 960円 489円 要介護4 1,161円 1,042円 506円 要介護5 1,256円 1,127円 522円 参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省) サービス加算一覧 事業所やサービスによっては、次のようなサービス加算が発生することもあります。こちらの内容も把握しておきましょう。 入浴介助をおこなった場合 ・40円/日・入浴介助のサービスを受けたときに加算 生活機能向上連携加算(個別機能訓練加算なし) ・100円/日・特定の介護専門職員により高齢者における生活機能の向上の目的を計画した場合に加算 生活機能向上連携加算(個別機能訓練加算あり) ・300円/日・特定の介護専門職員により高齢者における生活機能の向上の目的を計画した場合に加算 個別機能訓練加算 ・27円/日・理学療法士などにより個別に機能訓練を受けた場合に加算 若年性認知症利用者受入加算 ・60円/日・若年性認知症の利用者に対して、そのニーズや特性に応じたサービスをおこなった場合に加算 栄養スクリーニング加算 ・5円/日・利用開始時および利用中6ヵ月ごとに栄養状態について確認をおこない、当該利用者の栄養状態にかかわる情報をケアマネジャーに文書で共有した場合に加算 栄養改善加算 ・200円/月・管理栄養士が、個別に栄養状態等に配慮した栄養ケア計画を作成するなどのサービスをおこなった場合に加算 口腔機能改善加算 ・150円/月・言語聴覚士などにより、個別の口腔機能改善管理指導計画を作成するなどのサービスをおこなった場合に加算 サービス提供体制強化加算(Ⅰ) ・22円/回・職員の総数のうち介護福祉士の占める割合が70/100以上である場合に加算 サービス提供体制強化加算(Ⅱ) ・18円/回・職員の総数のうち介護福祉士の占める割合が50/100以上である場合に加算 サービス提供体制強化加算(Ⅲ) ・6円/回・職員の総数のうち勤続3年以上の者の占める割合が 40/100以上である場合に加算 一般のデイサービス(通所介護)との違い 認知症対応型デイサービスは、一般のデイサービスとは異なる点がいくつかあります。 定員が少人数なので手厚い介護 認知症に理解の深いスタッフ 地域密着型サービス 具体的な内容について説明します。 定員が少人数なので手厚い介護 認知症の方は周りに知らない人がいると不安になる傾向があり、頻繁な人の出入りはストレスにつながります。一般のデイサービスでは毎回スタッフや利用者が変わることが多く、認知症の方にとって良い環境ではありません。 認知症対応型通所介護は、介護保険法によって利用者は12名以下と決められています。また人員配置基準では介護職員は一定の対応人数を確保しているので、手厚い介護が可能です。 認知症に理解の深いスタッフ 認知症の方の症状は人それぞれ違うので、一人ひとりの性格や感情を理解したうえで個別の対応が必要です。そのため認知症対応型通所介護の管理者は、認知症対応型サービス事業管理者研修を修了することが義務付けられています。 認知症の方に対して一定の理解と専門知識を有しているので、適切な認知症ケアを施すことが可能です。 地域密着型サービス 認知症対応型デイサービスは地域密着を基本としています。これは認知症の方が、新しい場所や地域に対する恐怖が大きく、社会とのつながりを断絶しやすくなるため。なじみの地域、なじみの人たちとつながり続けることは非常に大切です。 そのため、認知症対応型デイサービスでは近所の公園に行ったり、地域のイベントに参加するといったことも積極的におこなわれています。 相性の合った事業所の選び方 では実際に認知症対応型デイサービスを選ぶ段階になった時には、どのような点を重視して選べばいいのでしょうか。後悔しないための選び方のポイントをまとめました。 情報を集める まずは地域の中で対象となる認知症対応型デイサービスについて情報を収集しましょう。 担当のケアマネジャーにお願いしても良いですが、インターネットなどでご自身で調べた方が情報量は多くなります。まずは自分の目である程度の情報は得ておいて、その後にケアマネジャーから専門的な視点でのアドバイスをお願いすると良いでしょう。 利用者の実際の口コミなどもあるとさらにイメージがわきやすくなります。 食事がおいしいこと、施設が新しいこと、リハビリ内容が充実していることなど。本人の性格や症状から、重視しておきたい点をリストアップしておくことも大切です。 現地を見学する ある程度候補の施設を絞り込んだら、実際に施設を見学に行くことをおすすめします。インターネット上で調べるのと、実際に見るのでは違っていることもたくさんあります。施設によっては短時間の体験利用を受け付けているところもあるので、確認してみましょう。 現地を見学するときも、あらかじめ確認するポイントをリストアップしておきます。チェックしておくべきポイントには下記のような点がありますので、参考にしてください。 事業所の雰囲気はどうか 事業所のスタッフの様子や雰囲気が良いかはとても重要です。一人一人にきちんと対応しているか、ゆったりとして落ち着いた雰囲気か。事業所内が清潔に保たれているかも見ておきましょう。 利用者の様子 事業所を利用している認知症の方の様子をしっかりと確認しましょう。安心してくつろいで過ごしているようなら、心配はいりません。また利用者同士の交流の様子もわかるようなら確認しましょう。 利用希望者と合うような方がいるか 仲良く慣れそうな利用者がいるかも知っておきたいところです。見学だけではわからないかもしれませが、本人の性格や年齢が近い利用者がいると安心です。 また、男女の割合についてもチェックしましょう。利用者が女性ばかりだと、男性の方は居心地が悪い思いをする可能性もあります(逆もまた然り、です)。 職員の専門性や、ケアへの姿勢 認知症対応型デイサービスは少人数のサービスを基本にしています。同じ職員に対応してもらうことがほとんどなので、職員の方の認知症に対する知識や仕事に対する姿勢についても見ておくことが大切です。 どんなサービスを提供しているのか 同じ認知症対応型デイサービスでもサービス内容についてはそれぞれ異なっています。 入浴や食事の内容や時間帯。レクリエーションや外出のプログラムについても、本人が好む内容か確認しておきましょう。 運営推進会議へ参加する 認知症対応型デイサービスのような地域密着型の介護事業所は、地域の住民や区市町村職員などに対して、提供しているサービスの内容などを報告することが義務付けられています。これを運営推進会議といいます。 開催頻度は市区町村によって差はありますが、2ヵ月に1回くらいが多いようです。利用者や利用家族だけではなく、近隣の住民や町内会の代表者などが参加可能です。確認したいことがあれば運営推進会議に参加してみるのも良さそうです。 認知症対応型デイサービスに関するよくある質問 認知症対応型デイサービスとは何ですか? 認知症の人に対して、食事や入浴などの日常生活支援や口腔機能向上サービスなど専門的なケアをおこなう施設です。定員が少人数ということもあり、一人ひとりに合わせたリハビリやレクリエーションの提供をしていることも特徴的です。 認知症対応型デイサービスは誰でも利用できますか? 認知症型対応型デイサービスを利用するためには、まず医師による認知症の診断が必要です。また基本的には、住民票のある地域の事業所のみ利用することができ、要介護1以上の認定を受けていることが条件として挙げられます。 一般的なデイサービスと何が違いますか? 主に、定員が少人数で手厚い介護が受けられるといったことや、認知症に理解の深いスタッフが常駐していることなどが挙げられます。 認知症型対応型デイサービスの利用者は12名以下と決められており、一般的なデイサービスと比較すると、スタッフが一人ひとりに関わっている時間が長いです。 またスタッフに関しては、認知症に対しての深い知識、経験があるので適切な認知症ケアを施すことができます。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "認知症対応型デイサービスとは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...
2021/12/13
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