認知症の症状のひとつである行動・心理症状(BPSD)。この行動・心理症状(BPSD)とは具体的にはどのような症状なのでしょうか。またこの行動・心理症状(BPSD)のそれぞれの対応策や注意するべきポイントについて解説します。 行動・心理症状(BPSD)とは 「行動・心理症状(BPSD)」とは、認知症において“周辺症状”と呼ばれる症状を指します。そもそも認知症には、「中核症状」と「行動・心理症状(BPSD)」の2種類の症状があります。 「中核症状」は脳の障害によって引き起こされる直接的な症状で、過去に体験した出来事を忘れる“記憶障害”や、日付や人物がわからなくなる“見当識障害”などが当てはまります。 一方で「行動・心理症状(BPSD)」(以下、BPSD)は、中核障害と本人の身体や心理的状態、環境などが相互作用して引き起こされる二時的な症状のことです。うつ状態や妄想がひどくなる“精神症状”と、「怒りっぽくなる」「徘徊する」などの“行動症状”の大きく2つがあります。 症状は個人差がある BPSDは、中核障害と身体要因・心理要因・環境要因が相互作用することで発生するので、症状には個人差があります。 同じ中核障害であっても、本人がどれだけ動けるか、心理的にどのような状態か、どんな環境で暮らしているかで症状が大きく変わってくるのです。 また、介護者の心的・身体的疲労につながりやすいのもBPSDの大きな特徴。「怒りっぽくなって暴言を浴びせられる」「徘徊する度に外に探し回る」「トイレの失敗の後処理」など、介護者への負担が大きくなる傾向にあります。 介護者への負担が大きくなればなるほど、適切なケアが難しくなり、BPSDがさらに悪化するという悪循環につながることもあります。 逆を言えば、BPSDが現れたときに「なぜこの症状が出ているのか?」と症状の状態と原因を理解した上で、適切なケアをおこなうことができれば、症状を緩和させることが期待できるのです。 行動・心理症状(BPSD)と対応方法 BPSDでは、主に以下のような症状があらわれます。 暴言・暴力 介護拒否・服薬拒否 徘徊 妄想 抑うつ・不安 無気力(アパシー) 性的異常行動 幻覚 帰宅願望 夜間せん妄 不潔行為(弄便) トイレの失敗(失禁) 食事をとらない 食べ物ではないものを食べる(異食) 以下でそれぞれの原因を探るとともに、実際に症状としてあらわれた際の対応に関して見ていきましょう。 暴言・暴力 感情のコントロールを司る脳の前頭葉がダメージを受けたり萎縮することで、感情の自制が難しくなります。その結果、些細なことで興奮する・怒りっぽくなる、家族や介護者に対して暴言を吐く、暴力を振るう、というBPSDにつながります。 暴言・暴力といったマイナスの言動は、中核障害に対する不安や恐れなどの気持ちが強くなったときや、自分の尊厳を傷つけられたと感じたときに、症状がより強く出る傾向にあります。 暴言・暴力の対応方法 怒っている時や暴言が止まらなくなった時は、本人が落ち着くまで、介護者が話をじっくりと話を聞いてあげましょう。介護者も感情的になってしまうと事態が悪化してしまいます。「自分の話を聞いてくれている」と本人が感じることができれば、感情が収まることもあります。また、何に対して怒っているのかを理解できれば、暴言や暴力に致る前に感情的になるのを防げるかもしれません。ただし、暴言に耐えられなくなったり、暴力を振るわれそうになったら、一旦距離をおきましょう。介護者自身の心身の安全を確保しつつ、時間をおくことで、本人が落ち着いて話しやすくなることもあります。また、暴言や暴力は薬物療法によって症状が沈静化することケースも。症状があまりにひどい場合は、主治医や専門医に相談してみましょう。 介護拒否・服薬拒否 認知症に介護はつきものですが、本人が介護を拒んだり(介護拒否)、薬を飲むのを嫌がる(服薬拒否)のは珍しいことではありません。 介護されなければいけない情けなさや申し訳なさ、自分の好みやタイミングとは違った方法の介護への不満、体の不調をうまく伝えられないもどかしさなど、心理的な要因が大きく影響しています。 拒否している状態で強引に介護してしまうと、介護が不快なものとして記憶されてしまい、さらなる介護拒否につながることもあります。 介護拒否・服薬拒否の対応方法 まずはなぜ拒否しているのかを探ってみましょう。例えば、着替えや入浴を拒否するのは裸を見られるのが恥ずかしいからかも。また、食事や服薬を嫌がるのは、必要性を理解できていないのかもしれません。原因がわかったら、心理的負担を和らげる声掛けをしたり、本人の好きな方法やタイミングで介護をおこなうなど、やり方を変えてみましょう。本人が介護に前向きになれる環境を整えることで、介護がスムーズにおこなえます。 徘徊 徘徊は事故や事件に巻き込まれる恐れがあるため、介護者にとって特に心配な症状です。 場所の見当識障害が進むにつれて徘徊症状が現れるようになり、外出先で道に迷うほか、見慣れているはずの自宅や施設などを知らない場所と感じて外に出てしまう場合もあります。 また、引っ越しなどによる環境変化のストレスや、今いる場所に安心感を抱けないなども徘徊の原因になります。 徘徊の対応方法 徊の予防には、落ち着ける環境づくりが大切です。本人が暮らしていた部屋で介護をおこなう、引っ越しした場合には慣れ親しんだ家具や小物を充実させるなどして、本人が安心できる環境を整えてあげましょう。また、万が一徘徊が起こった場合に備えて、服や靴、杖など身に付けるものに連絡先と氏名を記名しておくのも重要。徘徊が定期的にある場合は、ベットから立ち上がったり、規定範囲から出た際に通知してくれる徘徊センサーを利用する方法もあります。 妄想 妄想とは、現実にはあり得ないようなことをほかの人が訂正できないほどに思い込む症状で、認知症初期からしばしばみられます。これらの妄想は、認知症による不安や焦りが要因となるようです。 代表的な症状に、周囲の人にものやお金を盗まれたと主張する「もの盗られ妄想」や、いじめられたと主張する「被害妄想」、配偶者が浮気しているといった「嫉妬妄想」などがあります。 妄想の対応方法 妄想的なBPSDが起こった際は、本人の話にできるだけ耳を傾けましょう。特に被害的な妄想は中核障害による不安や焦りといった心理的要因によって引き起こされることが多いので、話を聞いてくれる人がいるというだけで、不安が和らぐことがあります。しかし、妄想内容や程度によっては介護者への負担が大きくなるケースもあります。介護者が冷静に対処するのが難しくない場合は、デイサービス・ショートステイなどの介護保険サービスや施設入居など、本人と介護者にとって良い環境に変えていきましょう。 抑うつ・不安 中核症状によって出来ないことが増えたり、介護中に自尊心を傷つけられたと感じるなど、日常生活での出来事が原因で、気分が落ち込む、不安感が強くなる、抑うつ状態に陥るといったBPSDが起こることがあります。 抑うつ状態というと、一般的には悲観的な気持ちになるイメージが強いですが、認知症の抑うつ状態ではあらゆることに“無関心”な状態になる傾向が強いです。 抑うつ・不安の対応方法 認知症における抑うつや不安は、心理的な背景が強く影響しています。そのため、ストレスの原因を見つけて軽減することが重要です。本人が不安に感じていることに寄り添うことはもちろん、普段生活している場所を居心地良くするなど、安心できる環境を整えるのも方法のひとつ。また、認知症における抑うつ状態は無関心の傾向があるので、話しかけても反応が薄いことがあります。感情表現が難しくなっている状態なので、「認知症の症状の1つなんだ」と理解して、介護者が割り切ることも大切です。 無気力(アパシー) 無気力(アパシー)とは、自分から何かをしたいという自発性や意欲が著しく低下した状態のこと。名前のとおり、無気力で何に対してもやる気が起きない状態を指します。 例えば、歯磨きや着替え、入浴など普段の生活で何気なくおこなっていることを面倒くさがるようになる、外出が減って家にこもりがちになる、といったケースとして現れます。 暴力や徘徊などの目に見える症状とは違って、介護をしていても変化に気づきにくいので、進行を見逃しやすいBPSDでもあります。 無気力(アパシー)の対応方法 無気力(アパシー)が見られる時は、規則正しい生活で普段から“〜したい”という意欲を刺激すると同時に、定期的に外出する機会を設けて気分転換を図りましょう。また、無気力(アパシー)は認知症治療薬による投薬効果が認められています。ただし、人や状態によっては副作用が強く出る恐れもあるので、必ず主治医か専門医に相談しましょう。 性的異常行動 認知症のBPSDのひとつに、「卑猥なことを口にする」「他人に身体を触る」「性的行為を要求する」などの性的異常行動があります。 性的異常行動は、身体的な欲求が原因ではなく、認知症による不安感を拭うためであったり、必要とされたい・愛されたいといった心理的な欲求が原因と考えられます。 性的異常行動の対応方法 性的異常行動は介護者にとって心理的負担の大きいBPSDです。性的異常行動が起こると、反射的に強く反応したり、本人を否定してしまいそうになりますが、ほかのことに気を向けさせるなど、なるべく冷静に対処しましょう。また、普段から手を握ったり、軽いスキンシップを取るのも有効な方法。精神的安心感が得られることで、性的異常行動に繋がりにくくなります。 幻覚 BPSDにおける幻覚とは、実際には存在しないものをまるで存在するかのように感じる症状のこと。本人は現実と感じるので、周囲からの理解が得にくい症状です。 ひと口に幻覚と言っても、見えないもが見える“幻視”、聞こえないものが聞こえる“幻聴”、体に虫がついている・不調がないのに体が痛いと感じる“体感幻覚”など、さまざまな種類があります。 中でも幻視はレビー小体型認知症、幻聴はアルツハイマー型認知症に多くみられます。 幻覚の対応方法 幻覚の症状があらわれたときは、否定しないことが大切。幻視や幻聴とはいっても、本人にとっては現実で起きていることと変わりありません。「そんなものいないよ」と否定されると、不安感が強くなったり、孤独感を感じて、症状がさらに悪化する恐れがあります。例えば、「虫がいる」という幻覚には虫を追い払う動作をするなど、幻覚内容に対処する姿勢を見せると安心しやすくなります。その上で、本人の好きなものの話題に変えるなど、気分転換の機会をつくると症状が出にくくなります。 帰宅願望 帰宅願望とは、特定の土地や家に帰りたいと強く主張すること、また実際に帰ろうとする行動をとるBPSDです。 現状の環境に慣れていない、居心地が悪い、自分の役割がないなど、不安な状態から離れたいという心理的ストレスが原因で、住み慣れた家や家族のもとに帰りたいという願望につながります。 帰宅願望自体は、至って普通の願望です。しかし帰宅願望が強くなると、“徘徊”や夕方に多く発症する“夕暮れ症候群”など、介護者への負担が大きくなることがあります。 帰宅願望の対応方法 帰宅願望は現状に対する不安・不満が症状として表出していることが多いので、本人の話に耳を傾け、なぜ帰宅したいのかを探ってみましょう。その上で、本人が安心してくつろげる環境を整えるのが大切です。知症初期であれば、現状をじっくりと説明することで本人が納得してくれることもあります。反対に認知症が進行が進むといくら説明しても理解を得るのが難しいので、リラックスできるような声掛けをしたり、趣味や役割を充実させて何もない時間を減らす環境を作ってみましょう。 夜間せん妄 せん妄とは、妄想、興奮、幻覚、失見当識、(現在の日付や時間、自分がどこにいるかなどの状況を把握できていない状態)など、意識障害を起こしている状態のこと。せん妄が夕方から夜間にかけて起こることを“夜間せん妄”と呼びます。 夜間せん妄の対応方法 せん妄自体はいつでも起こりうる症状ですが、夜間に発症しやすいのには理由があります。夜間は周辺が暗くなり自分が置かれている状況や環境を把握することが難しくなって、その時感じた不安や恐怖が、せん妄につながりやすくなるのです。夜間せん妄が起こった時は、部屋や廊下を明るくする、介護者がそばで手をさする、じっくりと話を聞くなど、本人が安心できる環境を整えてあげましょう。過度な興奮や幻覚が起こっている際には、本人の言っていることを否定しないことが大切。ほかのことに注意を向けさせるか、落ち着くまで様子を見ましょう。 不潔行為(弄便) 便器の中に手を入れたり、トイレ以外の場所で失禁してしまうのは“不潔行為”と呼ばれるBPSD。その中でも、自分の排泄物を手で触ったり、衣服や壁にすりつけてしまう弄便は、介護者への負担が大きい症状です。 弄便の多くは、排泄物をしたことによる違和感やオムツの不快感が原因と考えられています。 オムツが不快だから中の排泄物を取りのぞこうとして手に便がついてしまう、手についた便をどうしたら良いかわからなくて服や壁にすりつける。本人にその気はなくても結果として弄便になってしまうことが多いようです。 不潔行為(弄便)の対応方法 排泄による不快感を減らすことで、不潔行為を防ぐことができます。早めの声掛けでトイレに誘導する、オムツに排泄した場合はすぐに新しいオムツに取りかえるなど、不快に感じる時間を減らしてあげましょう。万が一の弄便したときのために、壁や床を防水シートや汚れてもいいタオルで保護しておけば、介護者の負担も減ります。また、不潔行為を叱ったり起こるのは禁物。本人は不潔であるという自覚がなく、怒られたことへの怒りや不安だけが残ってしまい、排泄を隠そうとさらなら不潔行為につながることがあります。 トイレの失敗(失禁) 認知症が進行すると、トイレの場所がわからなくなったり、尿意や便意自体を認識できずに、トイレ以外の場所で失禁や排泄してしまうことがあります。 また、トイレの失敗は介護者にとって精神的・肉体的に負担の大きい症状です。そのため、介護者が思わず本人にきつく当たってしまうこともありますが、自尊心を傷つけられたことで汚れた下着を隠すなど、違ったトラブルに発展することもあります。 トイレの失敗(失禁)の対応方法 トイレの失敗を見つけた時は、叱ったり責めたり怒らないことが重要。本人の自尊心を傷つけずに普通に接することで、トイレへの不安感や恐怖心を残さないようにします。万が一の弄便したときのために、壁や床を防水シートや汚れてもいいタオルで保護しておけば、介護者の負担も減ります。その上で、トイレの失敗の原因を探りましょう。トイレの場所がわからない場合は動線を分かりやすくする、トイレに行くのが億劫になっている場合はポータブルトイレを設置するなど、本人に合ったトイレ対策が有効です。 食べ物ではない物を食べる(異食) 食べ物ではないものを食べようとする“異食”は、認知症でよく見られるBPSDです。中核障害によって食べ物とそうでない食べ物の区別がつきにくくなったり、脳機能の低下で満腹度が得にくくなると異食がさらに進行します。 異食の対応方法 異食を防ぐために、食べ物だと勘違いしそうなものや小さなものは本人のまわりに置かないようにしましょう。食事は決まった場所や食器でとるなど、食事の時間とそれ以外の時間にメリハリをつけることで、異食を防ぐこともできます。空腹感を感じやすくなっている場合には、食事やおやつを小分けにするのもポイント。万が一異食をしてしまった場合は、介護者が取りだそうとするのではなく、「こっちの方がおいしそうですよ」など、なるべく自分から吐きだせるのが大切。介護者が口の中に無理矢理手を入れると、暴れたり指ごと噛まれる可能性もあります。 食事をとらない 認知症の人が食事をとらないのにはいくつかの原因が考えられます。 まず1つ目は、食べ物を食べ物と認識できていない場合です。認知機能が低下して目の前にあるものが何かわからなくなる“失認”の影響で、食べ物を前にしても食べ物と認識することができません。 2つ目は、食べ方がわからない場合。認知機能が低下して、箸の使い方がわからない、どこから食べていいかわからないなどは、“失行”症状の影響です。 3つ目は嚥下機能の低下や、歯の痛みなど身体的トラブルがある場合。食べ物を飲みこむのが難しくなったり、入れ歯の違和感や歯の痛みなど、食事そのものに対する拒否感が原因です。 ほかにも、落ち着いて食事ができない環境や、意欲が著しく低下する“無気力(アパシー)”の影響など、認知症の進行度や環境によって、原因は異なります。 食事をとらないときの対応方法 食事をとらないというひとつの行動をとってみても、その原因はさまざまです。なぜ食事をとらないかの原因を探って、その原因を解決できる対策をとりましょう。例えば、失認や失行が原因なら「おいしいごはんですね」や「私が食べるのを真似て食べてみましょうね」と声を掛けたり、食事以外が気になっている場合はテレビの音量や明るさを調整するなど、食事に集中できる環境を整えてあげましょう。 行動・心理症状(BPSD)の治療 現在の医学では、認知症を完治することは不可能です。認知症の治療は病気の進行を遅らせて、少しでも症状をやわらげることを目的としています。 認知症の治療は薬を使っておこなう薬物療法と、薬を使わない非薬物療法があります。それぞれの内容を見ていきましょう。 薬物療法 BPSDの処方薬は睡眠導入剤や向精神薬、抗不安薬といった精神を安定させるものが中心です。ただし、これらの薬は副作用があったり、その人に適合しないと症状を悪化させてしまうケースもあるので注意が必要です。 非薬物療法 非薬物療法は薬を使わずにおこなわれる認知症の治療法です。 その人が好きだった音楽を聞かせたり(音楽療法)、昔の思い出話を話したりすることで脳を活性化させたり(回想法)。脳にほど良い刺激を与え続けることで認知症の進行を遅らせることができます。 身体を動かすことも、脳に良い刺激を与えることがわかっています。適度な距離の散歩や体操、ストレッチも非薬物療法のひとつです。 認知症ケアで意識する4つのこと 気持ちを理解する 信頼関係を築く ペースを合わせる 環境の変化は最小限に抑える 1.気持ちを理解する 認知症はすべてが同時にわからなくなるわけではありません。認知症の進行具合にもよりますが、自分がどこいるか、目の前のものが何なのかがわからなくなっても、わからないことへの恐怖や、今までできていたことができなくなったことの不安は、認知症を発症した本人が最も強く感じています。 そんな感情を持ちながら介護を受けると、「家族の手を煩わせるのは申し訳ない」「自分は何の役にも立てない」というさらなる不安や恐怖につながり、BPSDを助長させることになります。 同じ状況ならどう感じるか、どんな気持ちになるか、認知症を発症した本人の気持ちに寄り添ってコミュニケーションをとってみましょう。 2.信頼関係を築く 普段接するときはもちろん、介護をする・される上で信頼関係を築くことは重要ですが、そう簡単に築けるものではありません。 特に家族の場合だと、失敗したときにそれまでと同じように叱責してしまうこともありますが、認知症を発症しても羞恥心やプライドは残っています。怒られたり無視されることでストレスが溜まり、BPSDが悪化することもあります。 失敗しても否定したり叱ったりせず、不安になるような話し方や行動は極力避けましょう。その上で、本人が心からくつろげる環境を整えたり、喜びや安心につながるコミュニケーションをとるなど、焦らずゆっくり信頼関係を築きましょう。 3.ペースを合わせる 認知症を発症すると、中核障害の影響でさまざまなことが出来なくなったり、動作が遅くなったりします。行動が遅いと「私がやった方が早い」と手を出してしまいがちですが、本人にも自尊心やプライドがあります。 自分でできることは自分でやってもらう、本人のやる気や動作に合わせて行動するなど、なるべく本人のペースに合わせましょう。 また、認知症の症状によっては出来事自体を忘れてしまうことがあります。そんなときは問い詰めたり、無理に思いださせる必要はありません。深く追求せずに話を合わせるのも大切です。 4.環境の変化は最小限に抑える 認知症にとって環境の変化は、BPSDを悪化させる大きな要因です。 認知症を発症した方は環境の変化に非常に敏感なので、周囲に何らかの変化があると、それだけで大きなストレスを感じます。そして、ストレスや不安といったマイナスの感情は、BPSDを悪化させる原因のひとつです。 そのため、習慣や日課の変更、部屋の模様替えなどはできるだけ避けましょう。引っ越しや入居などでやむを得ず環境が変わる場合は、使い慣れた小物や家具を使って安心できる環境を整えてあげるのが大切です。 認知症介護を続けるために 認知症は完治することがなく、長期戦のリスクも高い症状。同時に介護者にとっては、非常に負担が大きく、ストレスがたまりやすい症状でもあります。認知症介護にめぐり、痛ましい事件が起きるのも珍しくありません。 介護される側・する側どちらにとっても良い介護を続けるために、5つの心得を大切にしてくださいね。 自分も大切にする 愛する家族が認知症を発症することは、とてもショックなことです。家族が変わっていく姿を見ることは辛いですし、ストレスを感じてしまいます。 介護をするときに重要なのは、必要以上に頑張りすぎたりせずに、自分自身の健康や時間も大切にすることです。 溜め込まない 認知症の家族を介護する中で、不満や悲しみは生まれてきます。その気持ちをずっと自分だけでしまっておくと、いつか爆発してしまいます。 負の感情は溜め込まないことが一番です。時々は友人に愚痴をいったり、家族につらいと本音をこぼしたり、カラオケで発散させたり。気持ちを切り替えながらやっていきましょう。 比較しない 誰かと比べるというのは、どうしてもマイナスの感情を生み出しやすくなります。特に認知症は、人によって症状の重さや症状のあらわれ方は違います。ほかの認知症の人と比べてどうということは考えても仕方ありません。誰かと比較して、悲しい気分になるのはやめましょう。 まわりにも頼る 介護をしているときは大変すぎて、自分一人に抱えてしまいがちです。しかし、介護を一人でするのは不可能です。周りの人や外部のサービスを上手に利用して、まわりに頼りながらやっていきましょう。 「今」を大切に 介護は大変なので、どうしても介護に手いっぱいでまわりを見たり、今の時間を楽しむ余裕はなくなります。しかし介護は永遠に続くわけではありません。長い目で介護についてとらえて、なるべく「今」を大切に過ごしましょう。 認知症の周辺症状に関するよくある質問 認知症の周辺症状とは何ですか? 認知症の周辺症状は行動・心理症状(BPSD)とも呼ばれます。主にうつ状態や妄想が酷くなる精神症状と、怒りっぽくなる、徘徊するなどの行動症状が挙げられます。 認知症の周辺症状はいつ頃出ますか? 抑うつや不安感などは比較的初期に症状が見られ、暴言・暴力や徘徊などは中期に見られる傾向にあります。また後期には、異食や無気力などが目立ち始めます。 認知症の人はみんな同じような周辺症状が出ますか? 周辺症状は、中核障害と身体要因・心理要因・環境要因が相互作用することで発生するので、症状には個人差があります。症状に関しては、本人がどれだけ動けるか、心理的にどのような状態か、どんな環境で暮らしているかで大きく変わってきます。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "認知症の周辺症状とは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...
2021/12/22
認知症の中でも「徘徊」の症状があると、家族にとって心配は尽きません。 認知症の方はどのような理由で徘徊するのか、徘徊の原因とその適切な対応方法を詳しく説明していきます。 徘徊とは 徘徊とは、認知症の中核症状の影響で現れる行動・心理症状(周辺症状・BPSD)のひとつで、あてもなく歩き回る行動のことを言います。 徘徊は、認知症になると必ずしも現れる症状ではありません。しかし本人の命の危険や介護者の心身にかかる負担も大きくなることから、その原因と対策について事前に把握しておく必要があります。 本人には目的のある行動 傍から見ていると、家の中や外をあてもなく歩き回ることに目的などないように思われますが、徘徊をする本人にとっては、明確な理由があることが多くあります。 過去の生活習慣や行動が影響している場合や、大事なものを探し物をしているということもあります。本人にとっては、どれもしっかりとした目的のある行動なのかもしれないということを理解して対応しましょう。 何かを探している 徘徊する理由のひとつとして、何かを探すために歩き回っていることが多くあります。しかし、探しているはずのものも見つからず、本人自身も探していることさえ忘れてしまうこともしばしばあります。 自宅の中を徘徊しているときは、トイレや自分の部屋がわからなくなってしまったというケースも多くあるようです。 目的の場所に行きたい 記憶障害の影響もあり、過去の長い習慣や仕事をしていた頃の自分と錯覚し、職場や親族の家へ向かおうと外出して徘徊してしまうこともあります。 常日頃からの「行かなければならない」という強い思いが影響していると考えられます。 帰宅願望 見当識障害により、今いる場所がどこであるか把握できず、ご自身の自宅を自宅であると認識できないため落ち着かず、徘徊してしまうこともあります。また、記憶障害によって、昔住んでいた家や実家に帰ろうとしてしまうケースもあるようです。 いずれにしても、今いる場所から自分の家に帰りたいという願望が原因になっています。 事故や行方不明になる危険性 認知症になると判断力が低下するため、注意して行動したり、周りを気にかけて動くことは難しくなります。 自宅や屋内での徘徊には、あらかじめ安全対策を取るなどの対応ができますが、屋外での徘徊となると、長時間の歩き回りによる怪我や骨折、脱水症状・熱中症や低体温症の危険が高くなります。それ以外にも自転車や自動車に注意できず他人を事故に巻き込んでしまう危険や、線路内で立ち往生し事故に遭う危険も考えられます。 また、自宅に戻ることができず、行方不明となってしまう事態も想定しなればなりません。 認知症による徘徊がすべての要因であるとは限りませんが、令和2年の認知症の方の行方不明者数は、1万7,000人を超えています。行方不明になってから5日経過した場合の生存率は0%になるという、悲しい研究結果も発表されています。 出典:『令和2年中における行方不明者の状況』(警察庁) 徘徊の原因 認知症による徘徊を引き起こす原因には、主に以下のようなものが考えられます。 記憶障害見当識障害判断力の障害不安やストレス前頭側頭型認知症の常同行動 記憶障害 記憶障害とは、過去にあったことや自分が体験したことなどの記憶が、自覚もなく抜け落ちてしまう症状のことをいいます。加齢による自覚のある物忘れとは異なり、本人の自覚がないため、日常生活で困ることも多くなります。 新しい出来事が覚えられない、覚えてもすぐに忘れてしまうという性質から、眼鏡を探していたのに、眼鏡を探すという目的すら忘れて歩き回るというような徘徊の症状を引き起こします。 見当識障害 見当識障害とは、今ここで起きていることを正しく認識できなくなる症状のことをいい、認知症になるとほとんどの人に現れる中核症状のひとつです。 年月日や時刻、場所、人と自分との関係を正しく認識する機能が低下していくため、症状が進行すると、いつも一緒に過ごす家族のことすらわからなくなることもあります。そのため、今いる場所を自宅と認識できず、居心地が悪さを感じてしまい、本人にとっての「自宅」に帰ろうと徘徊し始めてしまうのです。 また、屋外などでは、慣れた道順であっても、突然どこにいるのかわからなくなり道に迷い、そのまま徘徊してしまうこともあります。 判断力の障害 認知症の症状として、物事の理解することが難しくなり、適切な判断をする力が低下していくことが多くあります。 これは判断力の障害であり、暑さ寒さを判断できず、適した服装が選べなくなるなど、日常の些細なことであっても、頭の中で物事について考え、目の前の状況に合わせて判断することができなくなります。 そのため、外出中に道に迷ってしまったとしても誰かに道を尋ねるなどの判断ができず、あてもなく歩き続けて徘徊してしまうというケースもあるようです。 不安やストレス 認知症の中核症状に加えて不安や焦燥感などの心理的ストレスも、徘徊の原因に大きな影響を及ぼしています。その不安や焦燥感は、食事の支度をしなければならない、仕事に行かなければならないというような過去の習慣からくるものが多くあります。 記憶障害によって現状を忘れてしまうと、過去の習慣を行わなければならないという焦燥感に襲われて、家から飛び出し徘徊してしまうのです。 そのため、徘徊症状の改善には、日頃から認知症本人をよく観察し、徘徊の原因を聞き出すなどして、不安やストレスを軽減させることも重要になってきます。 前頭側頭型認知症の常同行動 認知症には複数の種類があり、それぞれの種類で徘徊症状の現れ方が異なる場合があります。 前頭葉や側頭葉が委縮して起こる前頭側頭型認知症の場合は、同じ行動を繰り返す常同行動の症状がみられることがあります。たとえば、同じ時間に同じコースで散歩するなどの行為を毎日繰り返します。 何かを探したり目的の場所へ行こうと歩き回るアルツハイマー型認知症などの徘徊症状とは違い、行方不明になりにくいと言えますが、事故などのリスクを考え見守りが必要です。 徘徊が起きたときの対応方法 徘徊とはいえ、認知症の方にとっては、健康であった頃の「外出」と気持ちは変わりません。そのため、無理に徘徊を止めることは難しいと考えておきましょう。 しかし、徘徊のリスクや危険を低減させる対策をとることはできます。下記のような対応も参考にしてみてください。 理由を聞く 徘徊する方は、それぞれの理由や不安があって歩き回っている可能性が多いため、本人に寄り添い、話すことに耳を傾けることが大切です。徘徊する本人に、歩き回ることにどのような理由があるのか、優しく尋ねてみることで、不安が和らいで徘徊を止めるかもしれません。 明確な理由が得られないままであっても、今後の対応に繋がるヒントを見つけられる可能性があります。 繰り返し傾聴を行うことで、本人の気持ちを理解できれば、徘徊の原因となる不安を取り除けるかもしれませんし、本人が安心することにより、症状の改善を期待できるかもしれません。 責めない 徘徊する方に対し、徘徊をとがめたり、感情的に怒鳴ることは避けましょう。 認知症の方は、知的機能の衰えによって、責められている理由を理解できないことが多くあります。しかし、感情の機能はなくなるわけではありません。そのため本人には、介護者から理由もなく何度も叱られたという不愉快な感情だけが残ってしまい、介護者へ不信感を抱き始めてしまいます。 その結果として、徘徊や妄想などの周辺症状をエスカレートさせてしまうことがありますので、意識的に穏やかに対応することを心がけましょう。 気をそらす 徘徊をしようとしている姿を見かけた場合は話しかけ、ほかのことに気をそらすなどの対処をしてみましょう。 例えば、認知症の方が、自宅を自宅であると認識できなくなり、落ち着かず外に出ようとした時は「とりあえず、お茶を飲んでからにしませんか」と世間話などをしながら、意識をそらしましょう。そのうちに、徘徊しようとしていた理由を忘れ、落ち着くことがあります。 これは、認知症の専門的な知識がなくともできる効果的な対処法なので、家族だけではなく近所の方などに協力してもらうことも効果的です。 自由に動いてもらう 徘徊を無理に止めるのは、逆効果になることが多くあります。 本人は、無理に止められると感情的になり逃げ出し、転倒や怪我をしてしまう可能性があるからです。安全に歩かせられる状況にあり、介護者が付き添えるようであれば、自由に歩かせることも効果的な対処法となります。 自分の歩きたいように自由に歩くことで、気持ちが落ち着くことが期待できます。自宅や屋内であれば、トイレへ行くタイミングを把握できますし、屋外の場合では、一緒に歩くことで、いつも立ち寄る場所や迷いやすい道、注意が必要な個所もわかるので、その後の徘徊行動の参考にすることもできます。 徘徊に備えての工夫 徘徊が生じた時に起こり得るさまざな危険を回避するために、以下のような工夫が考えられます。 徘徊のタイミングを把握するGPSを活用する服や持ち物に名前をつける生活のリズムを整えるデイサービスを活用する地域と密に連携する 徘徊のタイミングを把握する 徘徊に気づける住環境づくりをすれば、徘徊を早期発見し、見守ることができます。自室のドアにベルを付けることや玄関にセンサーを設置することで、周囲の人が認知症の方の動きに気づけ、徘徊のタイミングを把握できます。玄関に、鏡や本人の興味のあるものを置くなどの気をそらす工夫も合わせると、徘徊をとどまらせるための時間稼ぎに役立ちます。 GPSを活用する 徘徊の症状が頻発し、行方不明になりやすい場合に有効なのがGPSの利用です。GPSとは、人工衛星を利用して場所を特定する技術のことをいい、スマートフォンには必ず搭載されています。 このGPS機能は、認知症による徘徊の所在確認に大変役立ちますが、徘徊をする方が常にGPS機器を身に着けていないと、その機能を発揮できません。現在では徘徊用見守りGPSとして、普段身に着ける靴などに装着するものや、キーホルダータイプもあるので検討してみましょう。 また少数ではありますが、無料でGPSの貸し出しを行う自治体もあるので、地域包括支援センターに問い合わせてみるのもよいでしょう。 服や持ち物に名前をつける 行方不明になってしまった時の備えとして、あらかじめできる簡単な対策は、衣服や持ち物などに名前や連絡先をつけておくことです。たとえ、本人が名前や住所を伝えることができなくとも、保護した方や警察から連絡をもらえる可能性があります。 ただし、本人の自尊心を傷つけることがないよう、襟の内側など目立たない箇所に名前や連絡先を記入したり、連絡先のカードをバッグの内側にいれるなどの工夫も必要です。 生活のリズムを整える 体調の管理をおこない、生活のリズムを整えることで、普段から気持ちを落ち着かせておくことも大切です。特に、体調が悪く夜に眠れない時や生活のリズムが崩れている時に、夜間徘徊を引き起こしてしまうことが多くあります。 本人はもちろん、介護者にとっても無理のない範囲で、毎日同じ時間に起床・就寝や食事の時間を定めて生活のリズムをつくり、日光浴と適度な散歩など軽い運動を心がけて体調を整えることが大切です。徐々に、夜間徘徊の抑制などに良い効果が出てくるでしょう。 デイサービスを活用する デイサービスなどの介護サービスを利用することも、徘徊の抑制に役に立ちます。程度な運動や定期的な外出の習慣ができることで、心身ともに良い影響をあたえます。 認知症や徘徊に関する専門的な意識を持ったスタッフに適切なケアをしてもらえることで、介護者や家族の負担を軽減することも可能です。本人が安全に通える場所を増やし、地理にも興味を持ち出せば、自宅への帰り道を覚えられる可能性もあるでしょう。 地域と密に連携する 徘徊のリスクや危険や回避するためには、家族だけでなく、近所の方や地域の自治体などの第三者に協力をお願いしておくことも大切です。 お住まいの地域の方や自治体に、徘徊の症状がある要介護者がいることを知らせておくことで、介護者が徘徊に気づかなかった場合などでも、すぐに見つかる可能性が高くなります。 同じく、立ち寄りそうなお店や近くの交番や駅にも、身長や髪型などの身体的な特徴を合わせて伝えておくことができれば、声をかけてもらえる機会が増えることも期待できるでしょう。 徘徊SOSネットワーク 徘徊SOSネットワークとは、各地方自治体が主体となり、地域の人々や団体、介護保険事業所などと協力し、行方不明となった認知症の方や高齢者を早期に発見し保護するための仕組みのことを言います。地域によっては、見守りSOSネットワークなどと名称や仕組みが異なることもあります。 この徘徊SOSネットワークは、警察に行方不明の通報があった場合に捜索協力をするだけでなく、徘徊予防のための積極的な高齢者への見守りや声掛けをおこなう役割を担い、介護者にとっても大変心強い仕組みとなっています。徘徊ネットワークの利用には事前の登録が必要なため、窓口である各自治体や地域包括センターに問い合わせてみましょう。 本人が行方不明になったら 認知症の本人が徘徊し行方不明になった場合、家族だけで探すのは効果的ではありません。 警察はもちろん、ご近所の方や地域包括センター、担当ケアマネジャーなど地域の多くの方々に、ためらわず捜索の協力をあおぎましょう。特に認知症の高齢者の方は事故などによる命の危険性も考えられるため、速やかに警察に通報し見つけ出すことが最善の策となります。 本人が立ち寄りそうな場所やなじみのお店、駅など交通機関をさがすことから始め、地域保活センターやケアマネージャーなどの専門家の視点から捜索方法のコツや対策方法のアドバイスや協力を得ながら、たくさんの手を借りて捜索することが大切です。 徘徊に関するよくある質問 何故、徘徊が起きてしまうのでしょうか? 徘徊の原因は本人の認知機能の低下が挙げられます。家族や知人の顔がわからず不安が生じると、感情がコントロールできず衝動的に外へ飛び出してしまいます。 また、自分の持ち物をどこに置いたのか忘れてしまい、持ち物を探すために外に出て徘徊してしまうといったことも原因のひとつとして挙げられます。 徘徊をする人はそれぞれの理由や不安があって歩き回っている可能性が高いので、本人に寄り添い、傾聴することが大切です。 徘徊に対して効果のあることはありますか? 本人が履く靴などにGPS端末を入れたり、ドアセンサーなどの福祉用具を活用することで徘徊したときにいち早く気づくことができます。 また徘徊してしまった際に、服や持ち物に名札を付けておくことで保護した人や警察から連絡をもらえたり、日頃から近所の人々や自治体に協力を仰いでおくことで、徘徊の際にすぐに見つかる可能性も高いです。 徘徊していることに気づいたらどこを探せば良いですか? 主によく立ち寄っている場所や馴染みの店、コンビニ、公園、駅などを探しましょう。また探しつつ、早めに警察へ捜索願を出し、担当のケアマネジャーや近所の人々にも協力を仰ぎましょう。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "何故、徘徊が起きてしまうのでしょうか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...
2021/12/21
認知症になると、心身にさまざまな影響があらわれます。そのなかで認知症の中核症状とはどのようなものなのでしょうか。 代表的な症状と、認知症でも対応可能な施設についても紹介します。 中核症状とは 認知症の症状には中核症状と周辺症状(BPSD)の2つの種類があります。中核症状の代表的な症状は、新しいことが覚えられなくなる「記憶障害」、時間や場所がわからなくなる「見当識障害」、物事を順序だてておこなうことが難しくなる「実行機能障害」があります。 中核症状の原因は脳細胞の破損で、認知症になると上記のような症状はほぼ必ずあらわれます。したがって、中核症状が出た場合は、認知症のサインと思って早めに検査をして対処することが大切です。 一方で心理症状(BPSD)は中核症状の二次的症状とも言えるもので、中核症状による不安やストレスによって引き起こされる暴言・暴力、被害妄想などの症状のことです。心理症状(BPSD)はその人の性格や環境によって症状の出方が異なります。 6つの中核症状 記憶障害 認知症の中でも、最もわかりやすいのが記憶障害です。 記憶障害はもの忘れとよく混同されますが、記憶障害ともの忘れは根本的に異なります。もの忘れは「何かを忘れている」ことは理解できますが、記憶障害になると、忘れているという記憶すらなくなるのです。 例えば、普通のもの忘れであれば会う約束の時間をうっかり忘れてしまっても、指摘されると思い出すことができます。しかし、記憶障害になると約束したこと自体もすっぽりと記憶からなくなってしまうのです。 例)失われやすい短期記憶 数時間前に会った人の名前 何を買うために外出したか 何を話そうとして電話したか 例)保たれやすい長期記憶 子供の時の思い出 昔の楽しかった出来事 思い出の旅行 手続き記憶 認知症になると大脳が損傷されて記憶障害が起きますが、運動機能の調節を司る小脳に影響はありません。認知症でも身体機能を正常に動かすことができれば、昔からおこなってきた動作を忘れることはありません。 すぐにできなくても、きっかけや少しの練習があればすぐに思い出すことができます。このような記憶を「手続き記憶」と呼びます。自転車の乗り方や泳ぎ方など。身体で覚える記憶は、一度覚えていれば認知症でも忘れることはありません。 手続き記憶を呼び起こすことで、認知症の人の能力を引き出して自信をもたせることができます。 エピソード記憶 エピソード記憶は、個人が体験した今までの経験に基づくもので、時間と場所、そのときに一緒だった人や、そのときの感情の記憶です。 一般的な知識や常識などに関する意味記憶の反対にあるもので、極めて個人的な記憶なので、アルツハイマー型認知症になると比較的初期段階で忘れられやすくなります。 短期記憶は失い、長期記憶は残りやすい 認知症になると、新しい記憶ほど失われやすくなります。数ヵ月から数十年前の長い期間の記憶(長期記憶)はしっかり覚えているのに、数分~数日前の短い期間の記憶(短期記憶)は覚えていないということが起こります。さらに症状が進んでいくと、長期記憶も曖昧になっていきます。 見当識障害 見当識障害とは、今、自分がいる時刻や日付、場所、周囲の環境などを総合的に判断する能力が失われる障害です。アルツハイマー型認知症になると、記憶障害に続いて見られる症状です。 見当識障害には「時間の見当識障害」「場所の見当識障害」「対人関係の見当識障害」の3つの種類があります。まず最初に症状としてあらわれるのが時間の見当識障害と場所の見当識障害です。症状が進行すると対人関係の見当識障害も目立つようになります。 時間の見当識障害 昼か夜かわからなくなる 今日が何月何日かわからなくなる 自分の年齢がわからなくなる 時間の見当識障害が起きると時間の感覚が失われていきます。日付や曜日の間違いはもの忘れの範囲ですが、症状が進行すると季節や朝昼夜の区別も難しくなります。 場所の見当識障害 自宅への戻り方がわからなくなる 家の中でトイレやお風呂の場所がわからなくなる 場所の見当識障害が起きると、今まで普通に通っていた場所やその道順があやふやになります。目的地の建物が認識できなかったり、どこで曲がるのかわからなくなって道に迷います。迷ったことで焦りやパニックを起こして、さらに遠くに行ってしまう危険もあります。 対人関係の見当識障害 自分の孫を自分の子供だと思い込む 家族のことを他人と認識する 自分の名前や過去を忘れてしまう 認知症の症状が進行して短期記憶だけではなく過去の記憶も失われ始めると、対人関係の見当識障害もあらわれるようになります。家族や近い友人もわからなくなって、自分と他者との関係性もあいまいになります。 実行機能障害 実行機能障害は、物事を順序だてて考えたり、計画を立てる能力が衰える症状で、認知症になると初期段階からあらわれるようになります。 実行機能障害になると、料理や洗濯、掃除といった日常の家事をこなすことが難しくなります。それまで普通にできていたことができなくなることで、本人のストレスや不安も大きくなります。また、家族などの介護者の負担も増すことになります。 例えば料理については、「その日の献立を考える」「必要な食材を必要な分だけ買う」「買ってきた食材を使って料理を作る」というような何段階にもわたる工程を順序立てておこなうことが難しくなります。 また、突発的な状況に対する対処も実行機能障害になると困難になります。乗ろうとしていた電車が出発してしまったときに、次の電車に乗ろうというような選択ができずにパニックになることもあります。 実行機能障害の方のサポートは、本人の気持ちに寄り添って安心感を与えながらおこなうことが大切です。焦らさずに落ち着いて、一つひとつの手順を一緒に確認しながら対応しましょう。 失行 それまで当たり前にできていたことができなくなることを、失行といいます。 テレビをつける、お風呂を沸かすといった日常の動作も理解できなくなります。自分で身体を動かすことはできますが、誰かの指示通りに行動したり、お箸などの道具を使うことは難しいようです。 失語 失語とは、その名の通り言葉を失ってしまう障害です。言葉を司る脳の部位に損傷が起きることによって、文字を読んだり書いたり、言葉を話したり、理解することが困難になります。 同じ失語でも、脳のどの部位に損傷がでたかで、症状はさまざまです。また、原因が進行性の病気なのか、脳卒中などの一時的なものかによって、進行性にも違いがあります。 失認 失認は脳の部位の中で、頭頂葉、側頭葉、または後頭葉に損傷が起きたときに見られる症状です。頭頂葉に障害がある場合は、たとえばハサミを触っても何か理解できなくなる一方で、目で見るとハサミだと理解できます。 後頭葉はその逆で、ハサミを見ても、ハサミだと認識することができません。側頭葉は音が聞こえているのに、その音が何の音か判断することができない状況です。 認知症の中核症状に対する治療法 現在の医学では、認知症を完治させることは不可能です。認知症の治療は病気の進行を遅らせて、少しでも症状を和らげることを目的としています。 認知症の治療は薬を使っておこなう薬物療法と、薬を使わない非薬物療法があります。それぞれの内容を見ていきましょう。 薬物療法 中核症状に対しては認知機能改善薬、抗認知症薬などが使われます。 これらの薬は中核症状をできるだけ抑えて、緩和することが目的です。代表的なものはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬や、NMDA受容体拮抗剤です。 非薬物療法 非薬物療法は薬を使わずにおこなわれる認知症の治療法です。 その人が好きだった音楽を聞かせたり(音楽療法)、昔の思い出話を話したりすることで脳を活性化させたり(回想法)。脳にほど良い刺激を与え続けることで認知症の進行を遅らせることができます。 身体を動かすことも、脳に良い刺激を与えることがわかっています。適度な距離の散歩や体操、ストレッチも非薬物療法のひとつです。 在宅生活が困難なときは 認知症になっても住み慣れた環境で過ごさせてあげたいと家族が考える気持ちは理解できます。ただし、認知症の症状が進んでいくと、家族による在宅介護では対応ができなくなることもあります。その場合は専門の施設への入居も検討しましょう。 認知症の人を受け入れている代表的な施設について説明します。 小規模多機能居宅介護 小規模多機能型居宅介護とは「通所」「訪問「宿泊」の3つの機能を有した介護施設のことです。比較的新しく登場した地域密着型サービスのひとつで、どのようなケアも同じ事業所の同じスタッフが対応するので、新しい人が苦手な認知症の人に適しています。 実際に小規模多機能型居宅の利用者は8割程度が認知症の人と言われています。認知症の高齢者の受け皿として期待されていますが、小規模な事業所が多く、入居待ちの人が多いことが残念です。 グループホーム 認知症の高齢者のみを入居対象としているのがグループホームです。認知症の知識と経験をがあるスタッフが常駐しているのが特徴です。 入居者は少人数で「ユニット」という単位にわけられて、ユニットごとに配置されたスタッフが対応します。これも認知症の人が新しい人に不安を感じるために、なじみのスタッフでサポートできるよう工夫されたシステムです。 入居者にはそれぞれの役割や責任が与えられるので、それを満たすことによって入居者に達成感ややりがいを与えることができます。 グループホームは住民上のある市区町村の中でのみ選択可能です。また介護状況の進行に伴い、介護付き有料老人ホームへの転居を勧められるケースもあります。 介護付き有料老人ホーム 介護付き有料老人ホームは、24時間介護スタッフが常駐して、食事や入浴など身の回りのサポートを受けられる施設です。 民間企業が経営しているものが多く、金額や施設、サービス内容についてもさまざまです。 終身利用を原則としており、認知症や要介護5の人まで幅広く受け入れ可能。看取りのサービスまであるので、他の施設のように途中で転居しなければならないということもありません。 また、住宅型やサービス付き高齢者向け住宅でも最近は認知症の対応が可能としている施設が増えています。気になった施設があれば、問い合わせをして事前に受け入れについて確認しておきましょう。 認知症の中核症状に関するよくある質問 認知症の中核症状とは何ですか? 認知症の症状を大きく分けると、脳の障害により直接引き起こされる「中核症状」と、中核症状に環境や人間関係、性格などが関係して発生する「周辺症状」があります。 中核症状は主に「記憶障害」「見当識障害」「実行機能障害」「失行」「失語」「失認」「理解・判断力の低下」などが挙げられ、認知症になると症状としてほぼ現れます。 認知症になると昔の思い出など忘れてしまいますか? 認知症になると記憶障害のため、数時間前に会った人の名前や何を買うために外出したか、何を話そうとして電話したかなどの短期記憶が失われがちです。 しかし、本人が子どものときの記憶や昔の楽しかった思い出などの長期記憶は保たれていることが多く、一概には思い出を忘れてしまうとは限りません。 認知症は誰でもなりますか? 認知症は、誰でもかかる可能性があります。認知症の高齢者は2020年時点で約600万人、2025年には700万人にもなると推定されています。認知症は発症率が高く、高齢者の約5人に1人が認知症になる可能性があると言われています。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "認知症の中核症状とは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...
2021/12/14
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。