「回想法」とは認知症における非薬物療法のこと。脳が活性化することで認知症の進行を緩やかにしたり、認知症の予防法としても効果が期待されています。 回想の方法や注意点などのポイントをおさえておけば、自宅で手軽にはじめることもできますよ。 回想法とは 「回想法」とは認知症における非薬物療法のひとつで、リハビリテーションとして用いられている手法です。 過去の出来事や思い出を他者に話すことで脳が刺激されるので、認知症の進行を緩やかにすることが期待されています。 認知症の治療だけでなく予防法にも 1960年代のアメリカで誕生した回想法は、日本では高齢者のうつ病の治療法として取り入れることになり、現在では認知症の治療や予防として病院や施設で活用されています。 回想法において最も期待されているのが、脳への刺激です。昔の出来事や記憶を思い出すだけでなく、それを他人に話すという行為が脳に刺激を与え、脳の活性化につながります。 また、特別な準備が必要なく始められるのも回想法が広く普及したポイント。認知症を発症した方が持っている写真や使い慣れた小物、本人たちに親しみのある音楽や食べ物など、過去を思い出すきっかけになるものがあれば、すぐにでも始められます。 もちろん、過去の記憶を頼りに話してもらうだけでも一定の効果が期待されています。 回想法の始まり 回想法は1960年代のアメリカで誕生、影響力の高かった老年学者・ロバート・バトラー氏によって提唱されました。1960年代当時の精神医学では、年齢を重ねた人が同じ話を何度も話題にしたり話したりすることは、ある種の病的状態であるとネガティヴに捉えられていました。ここに目をつけたバトラー氏は考え方を転換します。バトラー氏は高齢者が回想をおこない、自分の人生を振り返ることで自らの自尊心を得られることや、同じ世代で話し合うことで悩みを共有できること、結果としてストレスの軽減や安心感を得られるなど、さまざまメリットを挙げて、回想法を積極的に推奨しました。 回想法は認知症の特性を活かした治療法 回想法は、記憶時間の短い“短期記憶”ではなく、長期間にわたって記憶されている“長期記憶”を思い出すのが特徴です。回想法は長期記憶である昔の出来事や感情を思い出す行為なので、短期記憶が失われやすい認知症に向いている治療と言えるでしょう。 そもそも認知症はさまざまな要因によって脳の認知機能が低下し、日常生活に障害が起きている状態のこと。損傷部位や人によって症状はさまざまですが、ごはんを食べたことを忘れてしまう短期記憶の喪失や、現在の時間や自分がいる場所が分からなくなる“見当識障害”は、認知症でよく見られる症状です。 自分がどこにいるかわからなくなる、今までできていたことができなくなることは、認知症を発症した本人にとって、非常につらい状況です。 過去の自分を思い出し、そして話をじっくり聞いてくれる人がいることを確認することで、精神的にリラックスできるのも回想法の大きなメリット。精神的な安定は認知症の症状緩和にも大きく役立ちます。 回想法は2種類ある 回想法には個人回想法とグループ回想法の2種類があります。個人回想法は語り手と聞き手がマンツーマンでおこなうのに対し、グループ回想法は6〜8人の語り手でおこないます。前者は在宅で、後者は病院や施設で多用されています。 個人回想法とは 個人回想法とは、語り手(認知症を発症した本人、あるいは認知症予防をしたい人)と聞き手(家族、介護者)の2人で回想する方法です。聞き手が語り手の話にじっくりと耳を傾けることができるので、より丁寧な回想をおこなうことができます。 また、少ない人数で行えるのが個人回想法のメリット。治療だと肩肘張らずに、談話中や在宅介護の合間などに取りいれることができます。 グループ回想法とは グループ回想法とは、6〜8人の語り手(認知症を発症した本人、あるいは認知症予防をしたい人)に対して、2〜4人の聞き手(家族、介護者)で回想する方法。全体で10名前後のグループになって回想します。 語り手が複数いることで個人の回想が深まり、さらに脳が刺激されます。また、同年代の人と回想することで、当時の環境や悩み、想いを共感できるのもメリット。自分の感情を誰かと共有できることで、精神的な安定につながります。 回想法の効果 回想法にはさまざまなメリットが期待されています。ここでは精神的なメリット3点、脳機能的メリット1点をご紹介します。 自信を取り戻す 認知症はすべてのことが一度にわからなくなるわけではありません。認知症の症状によって出来事や経験を忘れることがあっても、今までできていたことができなくなった不安や、周囲の環境や人が分からなくなる苦しみは、認知症を発症した本人が最も感じています。 回想法で過去の記憶を思い出すことは、自分がどんな人間でどんな人生を歩んできたかを再認識できる場でもあります。自分が成し得たことや楽しい記憶を思い出すこすことで、本人の自信につながっていきます。 不安や孤独感を和らげる 回想法は他者がいなければ成り立ちません。自分の話に耳を傾けてくれる人がいるという安心感や、共通の話題を語り合う楽しさを実感することで、認知症による不安や孤独感が緩和されやすくなります。 脳の活性化 回想法にもっとも期待されているのが、脳の活性化です。 認知症はさまざま要因によって脳機能が低下している状態なので、脳が活性化することで認知症の進行が緩やかになると考えられています。回想法は過去の記憶を思い出し、そして誰かに話すという2つの行為で脳を刺激するのです。 実際に国立長寿医療センターが行った研究によると、回想法を導入したグループは記憶検査で改善がみられたという結果が発表されています。 また、回想法は特別な訓練や準備物は必要ありません。過去を思い出せるきっかけがあればおこなえる治療法なので、認知症が進行した場合にも取り入れることができます。 コミュニケーションを深める 認知症の非薬物治療として活用されている回想法は、認知症を発症した本人と家族や介護者とのコミュニケーションツールとしても使えます。 認知症を発症した方は日々、不安や孤独を少なからず抱えている状態です。精神的に負担がかかると、認知症の周辺症状(BPSD)の悪化にもつながることも。 他者とのコミュニケーションで気持ちがくつろいだり、信頼関係を築くことができれば、精神的な安定につながります。その結果、認知症を前向きに捉えることができるようになるでしょう。 回想法をおこなう準備 回想法に特別な訓練やアイテムは必要ありませんが、事前準備をしっかりとおこなっておくことは大切です。 まずは回想法をおこなう前に、語り手(認知症を発症した本人、あるいは認知症予防をしたい人)がどのような状態かをチェックしましょう。認知症がどの程度進んでいるのか、コミュニケーションをとることができるかを確認します。 回想が可能な状態であれば、語り手の性格や心身の状態によって、個人でおこなうのか、グループでおこなうのかを決めましょう。 準備する物や情報 回想法をおこなう際、特にグループでおこなう時は、事前にテーマや避けるべき話題を決めておくのがポイントです。話す内容をある程度絞っておくことで、聞き手(家族、介護者)が当時の様子や情報を収集したり、思い出の品やアイテムを準備することができます。 下記のテーマを幼い頃から時系列順に語ってもらうのも良いでしょう。 本人の出生地や、家族構成、学歴や職歴、結婚の思い出本人の頼りにしている人、子ども時代の思い出病歴や怪我、生活パターン、最近の様子趣味、特技、好きなこと、嫌いなこと嬉しかったこと、ショックだったこと、気になっていること また、回想の際に準備しておくものは、語り手が思い出を語るきっかけになるものであれば何でも構いません。昔の写真やよく聴いていた音楽、よく食べていたお菓子、使い慣れた小物など、五感に訴えるものは記憶を呼び覚ましやすいので、積極的に取りいれてみましょう。 個人でおこなうときのポイント 個人回想法は手軽におこなえるので、在宅介護や談話中の途中でに何気なく始めることができます。自宅で回想法をする際は、会話に集中しやすい環境を整えましょう。 あらかじめ決めたテーマについて語ってもらう面談方式のほかに、語り手が気になったことを自由に語るフリースタイルで回想できるのも、個人回想法のメリット。アルバム写真など過去の出来事を時系列順に確認できるアイテムがあると、語り手が回想しやすくなります。 グループでおこなうときのポイント グループで回想法をおこなう際は、参加人数と参加者のバランスに配慮します。語り手は6〜8人、聞き手はリーダー1人とサブリーダー1人の最低でも2人。さらに1〜2人のスタッフが付き添えると安心です。 次に回想法の実施回数やテーマを設定します。“認知症の治療”としてしまうと本人が参加しづらくなる場合もあるので、最初は話しやすいテーマを設定してみましょう。 またグループでおこなう際は、回想の場を居心地の良い空間にすることも大切。気軽に語りあえるイベント名にしたり、お茶やお菓子を用意してティータイムのような雰囲気するなど、語り手がリラックスした状態で回想法をおこなえるようにしましょう。 回想法の基本的な注意点 回想法は手軽に始められる治療ですが、だからこそ以下のような注意すべきポイントをしっかりと確認しておくことが大切です。 プライバシーを守る 無理強いはしない 訂正や否定をしない 終え方を心地良く プライバシーを守る 回想法は過去の記憶や思い出を語る場なので、時としてプライベートに深く関わることがあります。本人の秘密や死の話題、性的な話など、プライベートに関わることは他言禁止。秘密保持を徹底しましょう。 無理強いしない 回想を行っていると、過去のつらい経験や嫌な思い出など、本人にとって話したくない話題に触れることがあります。そんなときは無理に聞き出すのは禁物です。 さらに、認知症を発症している方は脳が疲れやすい傾向にあります。辛そうな表情や過度な興奮、疲れたそぶりが見受けられたら、回想法を早めに終わらせましょう。 訂正や否定をしない 回想法は過去の出来事や記憶を正確に思い出すのが目的ではありません。長期記憶は忘れにくいとはいっても、間違って記憶していたり、以前の話と内容が違うこともあります。そんな時は指摘せずに、語り手の話をじっくりと聞いてあげましょう。 回想法は思い出を人に話すことで脳を活性化したり、安心感を得るのが目的なので、話を続けてもらうことが大切です。間違いの指摘や否定は避けて、語り手のペースに任せて話をしてもらいましょう。 終え方を心地良く 回想法に限らず、心理療法では治療の終え方=クロージングが重要です。つらい過去や苦しかった思い出は気持ちまで落ちこみ、そのままクロージングしてしまうと、ネガティヴな感情を日常生活にまで引きずってしまいます。 日常生活に気持ち良く戻れるように、語り手が好きな話題を最後のテーマにしたり、お茶やお菓子で場を和ませるなど、ポジティブな気持ちでクロージングできるよう工夫しましょう。 自宅でおこなう場合の注意点 自宅で回想法をおこなう場合の注意は2つ。 1つは、語り手が話す内容を否定・指摘しないことです。家族や親族だと語り手が話す内容に間違いがあると思わず指摘してしまいそうになりますが、そこは我慢。話を遮らずに耳を傾けましょう。 2つ目は、回想に集中できる環境を整えることです。テレビの音が聞こえたり、小物が多いと、話があちこちに飛んでしまうことがあります。テレビの音は消す、回想法に使うアイテム以外は片付けるなど、回想のための環境を整えましょう。 介護施設でおこなう場合の注意点 病院や介護施設などでグループ回想をおこなう場合の注意は、2つあります。 1つ目は、プライバシーを守ること。グループ回想に限らず、語り手のプライベートに関わることは他言禁止です。グループ回想では特に語り手も聞き手も人数が多いので、個人情報の秘密保持を徹底しましょう。 2つ目は、語り手同士の関係性です。複数の人が集まれば、考え方や解釈の違うが生まれるのは自然なこと。ささいな違いで語り手の関係が悪化することのないよう、聞き手が配慮することが大切です。 回想法に関するよくある質問 回想法とは何ですか? 回想法は、過去の出来事や思い出を他者に話す非薬物療法のひとつです。何かを思い出すといった行動が脳に刺激を与え、認知症の進行を緩やかにすることが期待できます。 回想法にはどんな種類がありますか? 回想法は「個人回想法」「グループ回想法」の2種類があります。 個人回想法は語り手と聞き手がマンツーマンで回想をおこなうことを指し、グループ回想法は6〜8人の語り手、2〜4人の聞き手で回想をおこなうことを指します。 個人回想法は少ない人数で丁寧な回想をおこなえるのがメリットとして挙げられ、グループ回想法は、同年代の人と回想することで想いを共感することもでき、精神的な安定につながることがメリットです。 回想法にはどんな効果がありますか? 「自信を取り戻す」「不安や孤独感を和らげる」「脳の活性化」「コミュニケーションを深める」などが挙げられます。 その中でも最も期待されているのが脳の活性化です。認知症の症状は脳が活性化することで進行が緩やかになると考えられており、回想法は過去の記憶を思い出し、誰かに話すという行為で脳を刺激しています。 回想法をおこなう際に特別な準備などは必要ないので、積極的に取り入れていきたい療法です。 { "@context": 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2021/12/27
運動療法とは 運動療法とは身体を動かして運動することで、病気や障がいの症状を緩和したり予防したりすることです。もともとは身体の怪我や不調に対して行うものでしたが、運動によって血液の流れを良くすることで、糖尿病や高血圧予防につなげられるといったさまざまな効果が認められています。 運動療法は認知症の非薬物療法のひとつであり、認知症の患者に対しても積極的に推進されています。体を動かすことによって運動機能や心肺機能の改善だけでなく、精神的にも落ち着きやすいという効果もあります。 運動療法の目的 運動療法を行う目的はどのようなものがあるのでしょうか。運動療法の目的を、以下の5つの点で説明します。 身体機能の維持・改善 日常生活動作の維持・改善 ストレス解消 病気の予防・改善 生活を整える 1.身体機能の維持・改善 運動療法の目的は第一に高齢者の身体機能の維持・改善です。 年をとってくると誰もが体力や筋力が衰えていきます。運動不足になると身体の柔軟性が失われて身体が硬くなり、血液やリンパ液、栄養が十分に身体に行き渡らずに、病気や怪我の原因になります。 身体を鍛えることは、単に筋力をつけるだけではなく、脳機能や心肺機能を維持することにもつながるのです。 2.日常生活動作の維持・改善 年をとって疲れやすくなったからとあまり動かないでいると、身体機能が失われて、それまで普通にできていた動作もできなくなってしまいます。立って歩く、起きあがるといった日常生活動作に不都合が生じると、行動範囲も狭くなりますし、そのまま寝たきりになる可能性もあります。 運動療法をしっかり取り入れることで、日常生活動作を維持・改善することは生きていくうえで非常に大切です。 3.ストレス解消 身体を動かすことはストレスの解消やリラクゼーション効果が期待されます。 特にウォーキングや体操、ダンスなどの有酸素運動はセロトニンと呼ばれるストレスを発散するホルモンが分泌されると言いわれているので、短い時間でも十分リフレッシュできます。晴れた日に屋外でストレッチしたり、緑の多い公園を散歩するだけでもリラックス効果が期待できます。 認知症の方でも運動療法を続けることによって、認知症の進行を遅らせたり認知症の症状がなくなったという例も報告されています。 4.病気の予防・改善 運動することで、血液中のブドウ糖が筋肉にとり込まれて利用されるので、血糖値が下がり、生活習慣病の予防・改善につながります。 もちろん運動療法によるダイエット効果も期待できるので、肥満や肥満によって引き起こされる脳梗塞や腎臓病の予防にもなります。 5.生活を整える 認知症になると症状の不安からひきこもったり、時間や場所の感覚が失われることで生活のリズムが乱れてしまいがちです。あまり動かずにひきこもっていると、食欲もなくなり昼夜逆転の生活をすることになり、認知症の進行も進んでしまいます。 毎日の生活に運動を時間を組み込むことで、認知症の方の生活リズムを整えるのも運動療法の大事な目的です。きちんと昼間に運動することで、夜はぐっすり眠れるという効果もあります。 運動療法のメリット 運動療法のメリットはどのようなことがあるのでしょうか。具体的に以下の3つのメリットについて説明します。 認知症の治療につながる 認知症でも継続しやすい 日常に取り入れやすい 認知症の治療になる 精神的なストレスを感じていると、おなかが痛くなったり呼吸が苦しくなります。反対に身体に不調があると、精神的にも不健康な状態になってしまいます。心と身体はつながっているというのはよく言われることです。 認知症は脳機能の障害ですが、認知症になることで精神的にもふさぎこんでしまったり、鬱状態を発生させることがあります。それがさらに認知症を進行させるという悪循環を引き起こします。 運動することでストレスを解放することは、精神的にも、認知症の予防にも良い効果があります。 認知症でも継続しやすい 認知症になると頭で記憶したことは忘れてしまいますが、身体を使って記憶したことは忘れないと言われています。毎日、続けているラジオ体操のやり方が急にわからなくなるということは、ほとんどありません。 認知症の予防に新しいことを始めるのはなかなか難しいですが、身体を使う運動であれば認知症の方でも継続しやすいでしょう。 日常に取り入れやすい 運動療法は特別な器具や場所を必要とせずに、どこでも気軽に始められるのもメリットです。 運動が苦手な方は、ストレッチや近所をウォーキングするだけでも十分です。その人にあったペースで続けられるので日常に取り入れることも難しくありません。 運動療法の種類 運動療法は誰でも、簡単に始められるリハビリのひとつです。具体的にはどのような運動が行われているのでしょうか。 有酸素運動 有酸素運動とは筋肉を収縮させるために酸素をたくさん取り入れて、糖質や脂肪を燃焼させる運動のことです。負荷は軽~中程度と比較的軽いものをなるべく長時間継続します。 代表的な有酸素運動にはエアロビクスや水泳、ジョギング、サイクリングなどがあります。 認知症の方への運動療法としては、その人が昔から得意とするものを優先させると良いでしょう。あまり運動をしてこなかった人の場合は、軽めのウォーキングや水中ウォーキングがおすすめです。 糖質や脂肪を消費するので、肥満や高血圧や高血糖の改善にもつながります。 無酸素運動(筋力トレーニング) 無酸素運動は、有酸素運動とは逆に酸素を使わずに筋肉を動かす運動のことです。有酸素運動よりも短時間に集中して負荷を多くかけて行います。 無酸素運動では、短い時間にたくさんのエネルギーを使うので、疲れやすく長時間の運動には向いていません。 代表的な無酸素運動は、短距離走やマシンを使った筋力トレーニングメニュー。認知症の方に必要な無酸素運動は筋力トレーニングです。脳と筋肉はつながっているので、筋肉を動かして脳に刺激をおくることで、認知機能の改善、維持につながります。 筋力トレーニングの中でも関節に負荷をかけずに筋肉を繰り返し動かすレジスタンス運動が高齢者にはおすすめです。レジスタンス運動はスクワットや腕立て伏せ・ダンベル体操が有効です。 レジスタンス運動は筋肉に負荷がかかるので、毎日行うよりも、2、3日に一回程度行うくらいがちょうど良いと言われています。無理のないように継続することが大切です。 ストレッチング ストレッチングとは、筋肉をやわらかくするための運動です。 一般的には「柔軟体操」や「ストレッチ」と言われるほうが多いかもしれません。意図的に筋や関節を伸ばす運動を行います。怪我の予防やクールダウンになるので、運動療法の最初と最後に行うことが多くなっています。 ストレッチングには、動的ストレッチングと静的ストレッチングの2種類があります。 関節を動かして筋肉を伸縮させるのが動的ストレッチングで、筋肉を伸ばした状態をキープして行うのが静的ストレッチングです。高齢者には負荷が少なめの静的ストレッチングがおすすめです。 運動療法のポイント 運動療法の効果を高めるために、知っておきたいポイントについてまとめました。 種類を決める まずはどんな運動をするか種類決定しましょう。誰でも簡単にはじめられる運動からスタートして、長く継続することを意識してください。 はじめはウォーキングが一般的です。慣れてきたら水泳やダンスなど負荷をあげたメニューに挑戦してください。 強さを決める 運動の強度があがると心拍数(脈拍数)は増えるので、運動中の脈拍数から今の運動強度がどれくらいか知ることができます。 最近ではスマートウォッチなどで脈拍や心拍数を簡単に知ることもできます。運動療法を長く適切に続けるためには、最大心拍数の40~70%程度の強度がちょうど良いと言われています。 もし測る手段がない時は運動強度の目安としては「少し息が弾む」くらいになるように調節してください。 継続時間を決める 運動をスタートした直後は、筋肉の中に蓄えられているエネルギーを利用します。始めて5分から10分くらい経過すると、筋肉に酸素やエネルギーを取り入れられるようになります。 蓄えられているエネルギーが消費されて脂肪が分解されるようになるには、少なくとも15分以上の運動が必要ということです。肥満の解消を目的としている場合は、最短でも30分は継続するようにしましょう。 運動療法の場合は1日240kcalのエネルギーを消費することを意識してください。240kcalはウォーキングでいうと3,000-6,000歩が目安です。 頻度を決める 週にどれくらい運動するかについてもあらかじめ設定しておきましょう。週1回だけの運動ではリフレッシュ程度の効果しかなく、筋力アップや身体機能の改善にはつながりません。 運動すると2日間くらいは効果が継続します。週に2~3回の頻度でも十分です。無理なく疲れが蓄積しない頻度にしましょう。 時間帯を決める 運動する時間帯は食事の1時間から1時間半後の時間帯が理想的です。食後に運動することで食べた分のエネルギーを消費することができるので、血糖値の上昇を防ぐことができます。 ただし糖尿病の治療などでインスリンや血糖降下剤を使用している方は、食後に運動することで低血糖を起こしてしまう危険があるので注意しましょう。また、空腹時の運動もなるべくしないように気を付けてください。 運動療法の注意点 心身機能の回復やリフレッシュなど運動療法は非常に多くの効果が期待できます。しかし運動療法をおこなうときの注意点もあります。注意点をまとめたので、確認しておきましょう。 事前に専門職からのアドバイスを 高齢者は何かしらの持病があることが多く、知らずに運動することで症状を悪化させたり怪我や重症化につながることもあります。 たとえば糖尿病の方の場合足の変形を起こしている場合があります。靴擦れや足のタコが原因で、最悪の場合、足を切断することにもなりかねません。 また、特別な持病がなくても高齢者は身体全体の筋力や持久力が弱ってきているので、無理な動きをすれば骨折や捻挫にもつながります。特に認知症の方は自分の身体感覚が鈍っているので、痛い場合でもうまくコミュニケーションできないケースもあります。 運動療法をはじめる前には、必ずかかりつけ医や看護師、理学療法士などの専門職の人にアドバイスを受けてから取り組むようにしましょう。 達成できる目標設定 運動療法は目標を設定して成功体験を感じてもらうことも重要です。 ただし、あまり達成が難しいチャレンジングな目標や達成がわかりにくい目標を設定することは逆効果になってしまいます。一方であまり簡単な目標を設定してしまうと、認知症の方は自分が馬鹿にされたと思って感情を損なう危険もあります。 失敗することもありつつ、80%くらいは成功するような目標設定が理想です。だいたい成功することで満足感を得られて、また次に挑戦しようという意欲がわいてきます。 また、自分で椅子に座れるようになるといったわかりやすい目標を設定しておくと、目標を達成したことで自分が成長した、「できた」という自信につながります。 運動に適した服装や靴 運動療法を行うときは、運動に適した服装や靴を準備することも大切です。 ウォーキングでも普通の靴で歩くのではなく、ウォーキング専用シューズで歩くことをおすすめします。高齢者の方のけが防止の意味もありますが、装備をかえることでリフレッシュになったり、運動をしているという自信にもつながります。 ウォーミングアップとクールダウン 運動をする前のウォーミングアップとクールダウンは省略せずに、しっかりと行うようにしましょう。 ウォーミングアップとクールダウンをしっかりしておかないと、筋肉痛や関節障害をおこしてしまうリスクがあります。また不整脈の予防にもつながります。 軽い運動からしっかりと水分補給 運動を始めるときは、いきなり強度の高い運動メニューからはじめたりせず、に軽い運動メニューからスタートすることが大切です。 軽めの運動からはじめ、調子が良さそうなら少しずつ強度をあげることも良いでしょう。ただし高齢者の方だということを忘れずに、80%程度の力でできるくらいに抑えるようにしましょう。 そして運動中にはこまめに水分補給を行うことも大切です。認知症の方は自分から水分補給をすることは難しいので、必ずタイミングを見て水分補給を促すように心がけてください。 運動を禁止するポイント 運動を継続して行うことは大切ですが、体調がすぐれなかったり風邪をひいているような時は無理に運動をすすめることは厳禁です。特に血糖コントロールが悪い時や最高血圧が180mmHgを超えるような時は運動を休んで安静にしましょう。 認知症の方とのコミュニケーション 認知症の方にはなるべくゆっくり、わかりやすい言葉、動作を心がけてコミュニケーションをとるようにしましょう。指示の内容が理解できなかったり、すぐ忘れてしまったこともあるでしょう。そのような時に責めるようなことを言われると、やろうという気持ちをそいでしまいます。 認知症の方が気持ちよく運動を楽しめるように励ましたり、優しい言葉をかけたりするように意識しましょう。 異変を感じたとき 運動中に下記のような症状が見られるようであれば、運動を中止して休ませてください。 いつもより動きが悪く疲れているようなとき身体のどこかをかばっているようなときふらついているとき胸が苦しそうなとき呼吸があらく、息が苦しそうなとき 運動療法に関するよくある質問 運動療法とは何ですか? 運動療法は身体を動かして運動することで、病気や障がいの症状を予防することを指し、認知症の非薬物療法のひとつでもあります。また、身体を動かすことにより運動機能などの改善だけでなく、精神的に落ち着きやすいという効果もあります。 運動療法にはどんな種類がありますか? 主に「有酸素運動」「無酸素運動」「ストレッチ」などが挙げられます。 有酸素運動は糖質や脂肪を燃焼させる運動を指し、エアロビクスや水泳、ジョギング、ウォーキングなどがあります。 無酸素運動は酸素を使わずに筋肉を動かす筋力トレーニングを指し、高齢者がおこなう場合、ラジオ体操やダンベル体操などがあります。 ストレッチには動的ストレッチングと静的ストレッチングの2種類があり、高齢者には筋肉を伸ばした状態をキープしておこなう静的ストレッチングが有効です。 運動はどれぐらいするのが良いですか? 週1回だけの運動では、リフレッシュ程度の効果しかなく身体機能の改善にはつながりません。 主に週2~3回以上の頻度で運動をすることが効果的と言われており、1回の運動時間は約20~60分が目安です。また注意点として、運動をしない日が2日以上続かないようにしましょう。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "運動療法とは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...
2021/12/24
音楽療法というワードを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。音楽療法は認知症治療の予防や治療のサポートとなるため、介護サービスや介護施設で取り入れられていることがあります。 この記事では、認知症治療の音楽療法について説明していきます。自宅でも簡単にできるものなので、ぜひ実践してみてください! 音楽療法とは 音楽療法とは、心や体の障害の機能を回復したり健康の維持などを目的としたリハビリテーションのひとつで、音楽の持つ特性を活かしたプログラムを実施します。 音楽療法を受ける方は、障害や疾病に関係なくすべての年齢や性別の方が対象です。 介護施設や病院、自宅へ音楽療法士事務所から音楽療法士が派遣されることが多いです。 音楽療法士に必要なことは、音楽の技術があるのはもちろん、「音楽の特性やリハビリテーションの目的を理解すること」「クライアントの心身の状態やリクエストを把握したうえで適切な働きかけができること」「療法をおこなうことによりクライアントの目的を達成できること」などが挙げられます。 音楽療法は2種類ある 音楽療法には以下の2種類があります。 受動的音楽療法 能動的音楽療法 それでは詳しく説明していきましょう。 受動的音楽療法 受動的音楽療法とは、音楽を聴いたり、歌の歌詞や歌の情景に合った写真から思い浮かべるといった受け身的な療法になります。施設でCDを聞いたり、地域のボランティアの方に楽器を演奏してもらうなどがあります。 能動的音楽療法 能動的音楽療法とは、音楽に合わせて歌う、楽器を演奏するといった、自分でアクションを起こす療法のことです。介護施設で季節の歌を合唱したり、カラオケを歌うなどがあります。 音楽療法の効果 音楽療法は身体的なことに対して次のような効果があると言われています。 痛みやストレスの軽減 脳の活性化 表情や感情の表出 自尊心の向上 記憶の誘導(回想法) コミュニケーションの向上 どのような効果があるか、次にご説明していきます。 痛みやストレスの軽減 一般の方でもクラシック音楽など聞くとリラックスすることがあるでしょう。心地良い音楽を聴くことにより、認知症や痛みによって引き起こされる不安やストレスをやわらげる効果が期待できると言われています。 同様に、認知症の方特有の不安や緊張などから生まれる妄想や攻撃的な言動なども、音楽療法を受けることで軽減することがあります。 脳の活性化 認知症の方でも懐かしい音楽やリズミカルな音楽を聞くと、思わず歌ったり手拍子を叩いたり、体を揺らしたりすることがあります。そうすることにより、脳のさまざまな部位が活性化し、認知症に関する脳の箇所に良い刺激を与えることができます。 表情や感情の表出 感情の乏しい方や自発性の低い方でも、音楽療法をおこなうと笑顔が出てきたり、楽しそうにリズムを取りながら手拍子や体をリズミカルに動かしだすことがあります。 自尊心の向上 認知症は「忘れてしまう」「思い出せない」という不安がよくあります。そのため、音楽療法を受けている最中に昔の歌の歌詞がスムーズに出てきたり、良い思い出を正確に思い出す経験などを積み重ねることにより、本人の自尊心を向上させる効果があると言われています。 記憶の誘導(回想法) 一般の方も、子どもの頃に聴いた懐かしい曲や青春期に聴いた曲を聞くとその頃感じた感情が再び蘇ってくることがあるでしょう。 同様に、認知症の方も懐かしいメロディや好きだった歌謡曲を聞くことにより、リラックスし始めたり、周りの人と思い出話をするなど会話が増えることがあります。 コミュニケーションの向上 認知症や言語障害のある方でも、音楽療法を取り入れることでコミュニケーションの向上効果が見込めると言われています。 認知症の方は、不安などから心を開かないこともあり、言語機能障害の場合は、周りの人とうまく話せないことから孤独になる場合もあります。 そこで思い出の曲や同郷の校歌を口ずさんだり、簡単な振りを一緒に合わせて体を動かすことにより、会話をしたり心を開くきっかけとなる場合があります。 音楽療法の実施例 自宅または介護施設での音楽療法の実施例をご説明していきます。介護される方に合ったタイプを見つけてください。 自宅で音楽療法 住み慣れた自宅でも音楽療法をおこなうことは可能です。寝たきりの方でも、昔なじみの音楽を聴く、歌う、音楽に合わせて手拍子を打ったり、体をゆっくり動かしたりと簡単に取り組めます。 音楽療法を受ける方の趣味や希望に添った、無理のないプログラムを用意してもらうと良いでしょう。 介護施設で音楽療法 介護施設の中でも音楽療法は人気のレクリエーションのひとつ。受動的音楽療法として音楽療法士の演奏を聴いたり、コンサートを聴きに行くイベントを開催する介護施設などがあります。 また、伴奏付きの合唱や合奏、リズム体操、連想、手遊び歌といった能動的音楽療法をおこなう施設もあります。 音楽療法の注意点 音楽療法はただ音楽を流せば良いといったものではありません。音楽療法をおこなう上では、次のような注意点があります。 聴力の確認疲れやすさに注意本人の歴史や好みに注意状態の把握一緒に楽しむ 聴力の確認 高齢になると昔のように音楽が楽しめない場合があります。老化に伴い聴力が衰えることにより、慢性的な耳鳴りや高音域が聴き取りづらいことがあるからです。そのため、音楽療法をする際は、受ける方の聴力を確認しましょう。 日頃からテレビやラジオを大音量で聴いたり、補聴器を使用している方は音楽療法中にフォローが必要となることがあります。 疲れやすさに注意 音楽療法をおこなう際は、認知症の方の疲れやすさに注意しましょう。 認知症の方は集中力や注意力を持続させづらく、脳も疲れやすいことが多いため、長時間の連想や集中が必要なことをさせすぎると、ストレスが溜まってしまうことがあります。そのため、休憩やちょっとした雑談など、音楽療法を受ける方がリラックスしている工夫が必要です。 本人の歴史や好み 認知症の方は、幼少期、青年期、新婚時代、子育て時代といったさまざまな時間を生きていることがあります。 子どもの頃の童謡や青春時代の歌謡曲など、その時々で楽しめる楽曲が変わっている可能性もあります。そのため、本人のタイムラインや好みに沿ったプログラムを構成すると良いでしょう。 状態の把握 音楽を流す際は、認知症本人の状態や楽曲の好みの傾向、そのときの心身の状態にフィットした楽曲を提供するよう心がけてください。「戦後のあの曲が聞きたい」と突然リクエストされることもあるでしょう。臨機応変に対応できるように、日頃からさまざまな楽曲を学んでおくことが大切です。 一緒に楽しむ 音楽療法は提供する側も一緒に楽しむことが大事なポイント。 介護施設で学生時代の合唱曲や流行した歌謡曲を歌いだすと、利用者や介護スタッフもなんらかの連帯感を味わいながら一緒に朗らかに口ずさむこともあるでしょう。家族内で共通の思い出の曲など歌えば、認知症の方でも楽しい家族の思い出などを正確に思い出すことがあります。 認知症の方も介護する方も、一緒に音楽に触れることで、その場の雰囲気もより明るく楽しくなることが多くなり、音楽療法の効果が高まります。簡単なものから日常の介護生活に取り入れてみるのも良いでしょう。 音楽療法に関するよくある質問 音楽療法とは何ですか? 音楽療法は、心や体の障害の機能を回復したり健康の維持などを目的としたリハビリテーションのひとつで、懐かしい音楽や思い出の曲を聴くことで脳に適度な刺激を与えます。また、音楽療法を受ける人は障害や疾病に関係なくすべての年齢や性別の人が対象です。 音楽療法にはどんな種類がありますか? 音楽療法には「受動的音楽療法」「能動的音楽療法」の2種類があります。 受動的音楽療法は、CDを聞いたり、ボランティアなどの合唱を聞いたりするといった受け身的な療法です。一方の能動的音楽療法は、音楽に合わせて歌う、楽器を演奏するといった、自分でアクションを起こす療法のことを指します。 音楽療法は誰がおこないますか? 音楽療法士が、介護施設や病院、自宅へ派遣されることが多いです。音楽療法士は基本的に楽器を利用しながら、対象の人に療法を提供するのが仕事です。 音楽療法の目的をしっかりと理解している、対象の人の心身状態やリクエストを把握した上で適切な働きかけができるといった音楽療法士は良いと言えるでしょう。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "音楽療法とは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...
2021/12/20
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。