特に、女性のお客様から「良い声だね」とほめていただくこともあるという美声の持ち主の飯泉さん。お客さまには「希望を80%満たす施設を見つけましょう」とお伝えしているそうですが…「100%」ではなく、あえて「80%」にする理由とは?
―飯泉さんは、入居相談員になる前も介護に関係する仕事をされていたんですか?
飯泉
いえ、全然違う業種の営業をしていました。当時のお客さまから「老人ホームの入居相談員って知ってる?」というお話を聞いて、初めてこの仕事を知ったくらいです。
それからいろいろと縁があって、7年前に入居相談員として入社することになりました。
―まったく別の業界からの転職ですが、相談員を始めてみてどうでしたか?
飯泉
最初は暗中模索でしたね。介護のことは知らないことだらけで、わからないことがあったら逐一、周りの人に聞きまわっていました。
この仕事を続けていくなかで、「感謝の言葉をかけてくださる方がいるって誰かの役に立てる仕事だなあ」と感じるようになりました。
―どんなときに感謝の言葉をいただいたんですか?
飯泉
費用面でご入居の条件がとても厳しい方がいて、いろんな施設を探しまわっても予算に合う施設が見つからなかったんです。
お客さまはご入居できる施設はないとあきらめかけていたんですが、なんとか入れるところが見つかって。本当にお客さまに喜んでいただけて、「この仕事は感謝される仕事なんだ」と思いましたね。
―これまでの相談員経験のなかで、印象に残っているご相談はありますか?
飯泉
たくさんありますよ(笑)。例えば、海外在住の方で、日本に戻って介護施設への入居を検討しているというご相談がありました。
ご本人が新宿にゆかりのある方だったので、新宿にアクセスしやすい地域で探していたのですが、ご家族は熱海とか湘南エリアなどの海に近い地域を希望していらっしゃったんです。「海が見えて空気もきれいなところが良い」と。
それで、湘南エリアにある施設でほぼ決まっていたんですね。でも、ご本人が契約の直前になって「やっぱり湘南エリアには行きたくない」と私にこっそり打ち明けてくださいました。
―どうして「湘南に行きたくない」とおっしゃったんでしょう?
飯泉
湘南エリアはご家族の住まいからも遠かったですし、ご本人にとってもまったく知らない場所でした。施設の設備やスタッフさんの雰囲気が良くても、施設から一歩外に出ると知らない世界で、不安に感じていらっしゃったんだと思います。
ただ、その施設はご家族が探してきてくれたところだったので、ご本人から直接ご家族に「入りたくない」と伝えにくいご様子でした。ご本人の代わりに私からご家族にお伝えして、新宿近隣にある施設を見学していただいて、お部屋もすぐ決まりました。
―ご見学の当日にお部屋まで決めて、とてもスピーディーですね!ご家族から反対はなかったんですか?
飯泉
ご家族も「本人が良いのであれば」とおっしゃったので、施設はスムーズに決まりました。むしろ入居後はご家族にも気に入っていただけて、週に1回ランチを食べに施設に行っていたくらいです(笑)。
やっぱり、住むとなったら景観だけでなくて周りの利便性も大切だと思うんです。自立度が高くてご自分で活動する方だったら、なおさらですね。
なので私は、お客さまに「駅や病院までの距離とか近隣の環境も確認することが大事」とお伝えしています。
―入居相談員として、大切にしていることはありますか?
飯泉
お客さまの目線で、その施設のメリットとデメリットをご案内することですね。
私たちはさまざまな施設をご紹介している公平な立場。なので、施設のメリットだけではなく、デメリットもきちんとお話しします。
―悪い点もお伝えするんですね。
飯泉
はい。個人的には、そのご家族の一員の末端として施設探しに参加させていただいている気持ちなんです。だから、ご家族が何に困っているかとか、どうした方がご本人もご家族も落ち着いて暮らしていけるのか、という目線でご案内しています。
だからこそ、ご家族が間違った情報を信じてしまっているときは「違いますよ」と言いますし、特にご予算ははっきり聞いています。施設の費用を勘違いしていたら見学しても無駄足になってしまいますから。
―お金の話は切り出しづらいようにも思いますが…。
検討している施設が予算をオーバーしているときは、きちんと「その金額では入れませんよ」とお伝えしていますね。
ご予算に限らず、お客さまの希望の条件を100%満たす施設がないこともあります。施設の設備やサービス内容などそれぞれ希望があると思いますが、すべての条件を満たす施設ってまずないんです。
―そうなんですか!?いろいろと探したら、条件に合う施設が見つかるものだと思っていました…。
飯泉
理想の環境を求めるのであれば、在宅サービスを組み合わせてご自宅で過ごすのが良いと私は思いますね。ただ、ものすごくお金がかかりますが…。
在宅介護が現実的に難しい方が大半なので、私は「希望条件を80%満たす施設を見つけて、入居してから100%にしましょう」とお話ししています。入居してから施設に希望を伝えたら、意外と実現できることもありますし。
だから、お客さまの”より希望に近い”施設を見つけるために、まずは私たち入居相談員が持っている情報を思いっきり使っていただきたいですね。
【プロフィール】
飯泉貴史/入居相談員歴:2015年~
東京都大田区生まれのO型。お酒は「主食」と豪語するほどのお酒好き。もちろん趣味は飲み歩き。ちなみに、イヌ派かネコ派かで言えば完全な「ネコ様派」。「飯泉」と書いて「いいいずみ」と読みます。
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。