老人ホームの施設長の経験があり、施設での暮らしや介護保険制度などに詳しい塚本さん。お客様のご相談のときも、わかりやすく具体的にご案内することを心がけているそうです。
そんな塚本さんが「老人ホームの入居をおすすめしない人」がいるそう!どんな人なのでしょうか?詳しく聞いてみました!
―塚本さんは、入居相談員になる前は老人ホームの施設長をやっていたんですよね?
そうなんです。施設長になる前は、同じ運営会社の本部で内部監査もやっていました。たくさん施設を運営している企業だったので、北は北海道から南は愛知まで、いろんなところに出張に行きましたね。
―内部監査!介護施設のいろんな職種を経験しているんですね!
もともとは、一般の介護士からのスタートでした。現場を経験して、その後、本部で内部監査として裏方の仕事もして。そこから施設長としてまた現場に戻ってきた感じですね。
―介護現場を離れて、入居相談員を始めたのはどういったきっかけだったんですか?
より広い選択肢の中から、お客様に最良のご提案ができると思ったからです。
老人ホームの施設長時代、入居を検討している方のご案内もしていました。でも、予算や条件の面でお応えできないことも少なくなかったんです。自分たちの施設とマッチできなかったんですね。
そのため、施設長時代は「自分たちでは受け入れるための環境整備ができなかった」と、悔しい思いをしたことがたくさんありました。そこで、1つの施設の施設長ではなくいろんな施設をご紹介できる入居相談員であれば、より多くのお客様に最良のご提案ができるんじゃないかな、と思ってこの仕事をしようと思いました。
―これまで塚本さんが担当したご相談で、印象に残っているものはありますか?
施設の協力によって、「医療体制が整っているところが良い」と言うご家族と、「近場の施設が良い」と言うご本人のどちらも満足できる施設をご提案できたケースです。
入居を検討されていたのは、インスリンの注射が1日3回必要で入院中の方。医師からは「医療行為が整っている介護施設でないといけない」と言われていたそうです。
それを聞いて、ご家族は「看護師が24時間常駐していて、医療体制が充実している施設でないと入居できない」と思い込んでいたご様子で。「看護師24時間常駐」という条件に絞って施設探しをされていました。
―「看護師24時間常駐」の施設って少ないですよね。看護師さんの勤務時間が日中だけ、という施設の方が多いので、施設の選択肢がかなり狭まってしまう気が…。
そうなんです。医療体制が充実している介護施設はかなり少ないんですが、医師はそういった事情は知りません。そのせいか、医師の言葉が実情と乖離していることが多々あるんです。
医師もご本人のためを思って言ったことはあると思います。でも、その言葉だけを信じてご自分で施設探しをして失敗してしまうケースって多くて。ご家族やご本人が「こういう施設が良い」と心の奥で考えている、「本当の希望条件」を満たしていない施設を選んでしまったり…。
―医師に言われた条件だけに絞って施設探しをしてしまうんですね。このケースには、「本当の希望条件」はあったんですか?
お話を詳しく聞いていくと、ご本人の本当のご希望は「自宅から近い施設」。ご家族が通いやすくて、入居後も会いに来てくれやすい場所の施設を希望されていたんです。
―「近場で医療体制が充実している施設」はなかったということですか?
はい。地方だったこともあり、看護師が24時間常駐している施設は遠方になってしまって。医療体制を優先してしまうと、ご本人の希望には叶えられなさそうでした。
そこで、ご自宅近くにある、とある施設に相談したところ、その方を受け入れるための体制を整えてくれたんです。具体的には、看護師の常駐時間を延ばしてくれました。
―えっ、そんなことができるんですか!?
どうやら、看護師のシフトを調整してくれたみたいなんです。
―シフトを調整!?
通常、インスリン注射が1日3回、つまり朝・昼・夕と必要な場合は、24時間看護師が常駐している施設でないと対応できないとされています。
介護施設の看護師の常駐時間は、たいてい「9~18時」と「24時間」のどちらか。しかし、朝食の前や夕食後にインスリン注射が必要な方の場合、9~18時では対応ができないので、24時間看護師が常駐している施設でないと断られてしまうんですね。
―介護施設の医療行為の受け入れには、そういう裏側があったんですね。
ただ、実際には注射のタイミングで看護師が対応できれば良いわけですから、看護師が24時間勤務している必要はないんです。
なので、その施設は朝と夜の看護師の常駐時間を延長して、1日3回のインスリン注射に対応できるようにしてくれました。
―なるほど!では、常駐時間を延ばしてくれたことで、自宅近くの施設に入居できたわけですね。
はじめのままだったら、ご家族とご本人の両方の希望を叶える施設はありませんでした。でも、入居相談員として施設から信頼をいただいていたからこそ、事前に「ご対応いただけないでしょうか」という相談ができて、ご入居先が無事に決まったと思います。
また嬉しいことに、施設が調整をしてくれたことでご本人もモチベーションが上がって、身体状態も回復したそうなんですよ。
―どういうことですか?
入居予定の施設が、ご本人のために看護師の常駐時間を延長したり、医師と薬の調整などもしてくれました。そのようにご本人の要望を実現して受け入れ体制を整えてくれたことで、「入居までがんばろう」と積極的にリハビリができたんじゃないですかね。
―「退院しても受け入れてくれるところがある」と安心したのもあるんですかね。
このケースでは、当初の「看護師が24時間常駐している施設が良い」というご家族のご希望は叶えられませんでした。でも、施設が調整してくれたことでご本人が満足できる入居先が決まり、ご本人が満足しているのを見てご家族も納得していただけました。
―こうやって聞いていると、老人ホームってとても柔軟に対応してくれるんですね。もっと決まりきった対応しかしてくれないものかと思っていました。
もちろんできないこともありますが、ある程度は調整してくれますね。でも、それも私たち「いい介護」と各施設との信頼関係があるからこそ。私たち入居相談員も介護施設も「お客様に過ごしやすいところで生活してほしい」という思いが共通しているので、実現できることだと思います。
ただ、今回のケースのように、まずは施設に相談を持ちかけないと受け入れ体制の調整はできませんから、まずは相談することが重要ですね。
入居相談員が相談をして、施設が「ここまでだったら調整できます」と伝えてくれる。こうしたやり取りは、ご家族だけで施設探しをしている場合はなかなかできることではありませんから、ぜひ入居相談員を頼っていただきたいです。
―入居相談員をしていて、やりがいに感じることって何ですか?
ご家族やご本人、ご親族などでバラバラな希望を、点と点をつなぐように上手く整理をして道標を作って差し上げられたときに、やりがいを感じますね。
先ほどお話ししたケースのように、ご家族やご本人で施設探しの方向性が異なることはよくあります。それを会話の中で探っていって、双方が納得できる施設に入っていただけることが相談員としての喜びです。
また、ときにはお話をしていくなかで老人ホームに入居すること自体をおすすめしないこともあります。
―そうなんですか!?どういう場合に、入居をおすすめしないんですか?
「在宅介護を続けた方がお客様が幸せになる」と考えたときです。
―在宅介護の方が幸せになる?
―介護サービスってややこしいですし、在宅介護サービスのことがよくわからなかったのかもしれませんね。
そうそう。そういうケースではどんな介護サービスがあるのかをご存知ないことがほとんどです。介護保険を使えば介護リフォームが安く済んだり、在宅介護サービスを組み合わせればご家族の介護の負担を軽減できることを知らないんですね。
大半の方が「できるだけ長く自宅で過ごしたい」と思っていらっしゃいますから、在宅介護サービスを上手く利用できていないのであれば、「在宅介護サービスを使えば、もう少し在宅介護を続けられるんじゃないですか?」とご案内することもありますよ。
【プロフィール】
塚本 寛和
東京都台東区生まれのB型。キャンプやスノーボードが好きという完全なアウトドア派。双子の父でもある。趣味のひとつに双子の育児を挙げ、「子どもの成長を見守っていきたい」と話す子煩悩な一面も持つ。
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。