認知症の人が入居できる施設は、グループホームや有料老人ホーム、特別養護老人ホームなど複数の種類があります。
この記事ではそれぞれの特徴を説明するとともに、施設選びを始めるタイミングや選び方のポイントを解説します。
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認知症を発症しても介護が必要になるまでは時間がかかるため、いつから施設選びをはじめれば良いか迷う方も多いのではないでしょうか。
重症化してから焦らなくて済むよう、施設選びを開始する適切なタイミングを知っておきましょう。
認知症の症状が軽いうちに施設を探し始めれば、家族だけでなく本人の希望も反映できます。また、認知能力や生活能力が残っているうちに入居することで、施設になじみやすく、その後の生活の質の向上も期待できます。
施設探しには時間がかかる上、希望する施設にすぐ入れるとは限りません。認知症は日々進行していくため、症状が軽度のうちから施設選びを開始するのが大切です。
在宅での介護は、家族にとって肉体的にも精神的にもに大きな負担がかかります。症状が重くなるにつれて日々の介護に追われ、施設探しが後回しになってしまうことも。これにより、認知症が悪化してからあまり検討せずに介護施設を選ぶケースもよくあります。
家族の負担が軽いうちに施設選びをはじめれば、受け入れ条件やサービス内容をしっかり確認し、よりご本人に合った施設が選べます。
認知症の人が入居できる施設には、以下の4種類があります。
具体的な施設選びの前に、まずはそれぞれの特徴を知っておきましょう。
グループホームは認知症の人を対象とする施設で、5~9人の少人数のグループ(ユニット)で日常生活を送るのが特徴です。入所条件は要支援2以上、原則65歳以上です。
少人数でアットホームな環境のもと、認知症ケアの専門スタッフにより残された能力を生かしながら必要な支援を受けられます。
一方、医療的なケアや万が一の体制については施設ごとに差があります。また、ある程度身の回りのことが自分でできる人が対象のため、介護度が高くなると退居を求められることもあります。
有料老人ホームには、「介護付き有料老人ホーム」「住居型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」の3種類があります。
このうち介護付き有料老人ホームは介護を必要とする高齢者を対象とした施設で、入居条件は施設ごとに異なります。介護職員のほかにリハビリ専門職や看護師なども配置されるほか、スタッフが24時間常駐しており、認知症の方も安心して過ごせます。
施設ごとに設備の充実度やサービス内容に差が大きく、レクリエーションが充実した施設や食事に力を入れていることも。このため、費用も施設ごとに差があります。
サービス付き高齢者向け住宅は、主に自立~軽介護度の高齢者を受け入れている賃貸住宅です。主に民間が運営しており、バリアフリー化により高齢者が暮らしやすく設計されています。日中は社会福祉士や介護福祉士などの資格を持つスタッフが常駐し、安否確認や生活相談をおこないます。
介護サービスを提供しているサービス付き高齢者向け住宅もあり、自由度の高い生活を希望する方の入居先として選択肢のひとつとなります。
特別養護老人ホームは、要介護3以上の人を対象とした公的介護施設です。寝たきりの認知症患者など、介護度が高い人ほど優先的に入所できるのが特徴です。看取りをおこなう施設がほとんどで、終の棲家としても多くの方に選ばれています。
費用負担が少ないことから人気が高く、入居までには数ヵ月から数年かかることも。このため、特別養護老人ホームに入居を希望する場合は、早くからの対策が必要です。
施設選びには入念な準備が欠かせません。入居先の施設でご本人らしく快適な生活を送れるよう、次の項目を参考に情報を集めましょう。
老人ホームを探すにあたり、まずは希望する条件を洗い出しましょう。特に大切なのは予算です。無理なく支払える価格帯を設定しましょう。また、面会に通う負担を軽くするため、家族の家からの距離や立地も重要な条件です。
本人と家族の希望が食い違うこともありますが、お互いの考えを尊重しながら譲歩すべきところは譲歩します。すべてを叶えるのは難しいので、施設選びをスムーズにするためにも希望に優先順位をつけておくと良いでしょう。
すでに自宅などで介護サービスを利用している場合は、担当ケアマネジャーに相談しましょう。
ケアマネジャーは介護現場のプロで、地域にある施設や介護保険サービスなど幅広く情報を提供してくれます。また、本人の認知症の状態を把握してくれているため、施設選びでも的確なアドバイスがもらえます。
介護施設の情報収集はインターネットが便利です。比較サイトを利用すると、希望する条件からおすすめの介護施設を探せます。施設への入居のしやすさは地域により差があるため、近隣地域も含めて探すと、より条件に合った施設が見つかることもあります。
また、紹介センターへの相談もおすすめです。紹介センターには豊富な情報を持つ専門相談員がおり、施設選びをサポートしてくれます。
希望の条件に合う施設を見つけたら、詳しい資料を取り寄せましょう。複数の施設の資料を集め、比較することも大切です。
限られた時間の中で、ご本人や家族にとって最適な施設なのかを見極めるのは難しいもの。見学の際は次のポイントを意識しましょう。
入居施設を当事者抜きで決めるのは、本人の不満や家族の後悔につながることがあります。このため施設への入居を強く拒否していない限り、本人も一緒に見学しましょう。
本人が施設の環境や職員の対応を心地よく感じれば、入居の流れがスムーズになります。また、本人に対する職員の言葉かけや気配りを目にすることで、入居後の様子を想像しやすくなります。
施設への入居には入居時費用と月額費用がかかり、金額は施設ごとに異なります。見学時にはその内訳を確認しましょう。さらに、要介護度が上がったり入居が長期化しても無理なく支払い続けられるよう、資産や収支と照らし合わせて検討します。
選ぶ施設が公的施設か民間施設かにより、料金は大きく異なります。施設の種類によって介護保険の適用有無も異なり、費用負担に大きく影響します。
資金に余裕がない方やゆとりを持たせたい方は、特別養護老人ホームなどの公的施設を中心に選ぶと良いでしょう。また、入居時費用のかからない民間施設も増えつつあり、初期費用が少ない方や手元に資金を残しておきたい人におすすめです。
認知症の人は環境の変化が苦手です。慣れ親しんだ自宅から施設に移る際は、戸惑ったり混乱する人がほとんどです。
変化の影響をできるだけ抑えるために、使い慣れた家具などが持ち込めたり、散歩や趣味などの習慣を続けられるか確認しましょう。また、居室で静かに過ごせるか、食事に満足できるか、好みのレクリエーションがあるかなど、本人の望む生活が送れるかも確かめます。
認知症は、引っ越しなどの生活環境の変化がストレスになり症状が悪化することがあります。これを「リロケーションダメージ」といいます。これにより、現状は物忘れなど記憶機能の低下にとどまっている方でも、暴言や暴力が発生したり、帰宅欲求により外出・徘徊することもあります。
このような事態に対する過去の事例や、施設がどのように対応するかを質問してみましょう。その答えに納得できる施設なら、いざというときも安心してまかせることができます。
糖尿病や腎機能障害など認知症以外にも持病がある場合は、施設内で必要な医療サービスを受けられるか確認しましょう。
また、認知症が進行すると胃ろうや褥瘡ケアなど医療の提供も必要になることも。このため、医師や看護師の配置や、提供可能な医療サービスなどは細かく確認しましょう。特に終の棲家としての施設を検討している場合には重要なポイントです。
失礼にならない範囲で、ほかの入居者の様子を観察するのも大切です。
入居者同士で楽しそうに過ごしていたりリラックスしているようなら、快適に過ごせる施設といえるでしょう。一方で、服が汚れたままや長時間放置されている入居者がいたり、入居者同士の関わり合いが薄い場合は、施設の対応が良くない可能性があります。
入居者の様子で気になる点があれば、職員に聞いてみましょう。正当な理由があれば、納得のいく答えをもらえるはずです。
認知症の人は、周囲の人がいらだった表情を浮かべていたり慌ただしくしていると、その雰囲気を感じて不安や否定的な感情を持つことがあります。
一方で、職員が笑顔で丁寧に対応してくれれば、緊張がほぐれて安心して過ごすことができます。このため、設備だけでなく職員も重要な環境要因。表情や働きぶりも確認しましょう。
また、職員は業務が多く忙しいことが多いですが、話しかけてみましょう。認知症の正しいケア方法を理解し、経験を積んだ職員なら、手を止めて笑顔で対応してくれるはずです。
退居の事例には施設の方針やそれまでのケアが色濃く反映されるため、どのように退居された人が多いのか質問すると良いでしょう。
例えば、「施設で最後を迎える人が多いのか」「重症化により病院に転院する方が多いのか」「暴言や暴力などで対応が困難になり退居を求められる方はいるのか」など。守秘義務により詳細を教えてもらうことは難しいですが、可能な範囲で聞いてみましょう。
施設への入居と在宅での介護では、本人にとっても家族にとっても大きな違いがあります。詳しく見ていきましょう。
夜間も職員が常駐しており安心して過ごせるのは、在宅での介護にはない大きなメリットです。また、認知症介護のプロがいる施設を利用することで、認知症の進行を防ぐためのケアや生活サポートを24時間体制で受けられます。
例えば、日中は体操やレクリエーションなどで体や脳を動かします。運動機能や認知機能の維持に役立つだけでなく、夜間に睡眠を取りやすくなることで生活リズムが整い、認知症に良い影響を与えてくれます。
さらに、機能訓練や口腔ケアなどのさまざまなサポートも受けられるため、健康維持も期待できます。
人との会話や交流は心身に良い刺激を与え、認知症の進行を防ぐのに役立ちます。
施設では、日常生活やレクリエーションを通してほかの入居者や施設職員などの多くの人と交流できます。一方、在宅介護で多くの人との交流を持つには、デイサービスに通ったり積極的に近所の人と関わりを持つ必要があるため、介護者の負担が大きくなります。
自然と多くの人と楽しく交流できるのも、施設に入居するメリットのひとつです。
在宅での介護は、日々の生活がどうしても単調になりがちです。一方、施設ではレクリエーションが日常的におこなわれるほか、誕生日会やクリスマス、ひな祭りなどのイベントが毎月のように開催されます。
こうしたレクリエーションやイベントは、楽しんで参加できるだけでなく脳に良い刺激を与えてくれます。また、レクリエーションは介護のプロが考えており、脳のトレーニングや運動機能の維持・向上など認知症の進行を抑えたり症状の緩和にもつながります。
施設では、入居者の健康状態や要介護度に合わせたさまざまなサービスが受けられます。また、認知症に関する多くの知識と経験を持った職員が配置されており、快適な環境で適切なケアを受けられます。
認知症の症状は、人それぞれ異なります。認知症介護に実績のある施設であれば、これまで蓄積してきたケア方法などをもとに一人ひとりに合わせたサービスの提供が可能です。
さらに、在宅介護では難しい“心と体の総合的なケア”も受けられるため、認知症の症状の改善も期待できます。
メリットの多い施設への入居ですが、環境変化がストレスとなり症状の悪化が見られることがあります。しかし、認知症が進行したと感じても、一時的な混乱が原因のため時間の経過とともに施設の生活に慣れて落ち着きを取り戻すことが多いです。
ただし、落ち着くまでには個人差が大きく、1ヵ月以内など短期間の方もいれば、なかなか落ち着かず長期にわたる方もいます。
また、施設での生活は自宅に比べると自由な行動が制限されるため、このストレスにより認知症が進行してしまうケースもあります。
認知症が進む要因は人により異なります。施設への入居により症状が進行する方もいれば緩和される方もいることは、心に留めておきましょう。
親の施設入居に罪悪感を持つ方も少なくありません。しかし、施設への入居は家族の負担を減らせるだけでなく、本人にとってもメリットがあります。否定的な思いではなく、快適に過ごして欲しいというポジティブな気持ちで施設を選びましょう。
どうしても罪悪感を感じてしまうなら、主治医や担当ケアマネジャーに気持ちを打ち明けたり、入居予定の施設のケアマネジャーや生活指導員に相談するのも良いでしょう。
しかし、罪悪感の払拭に何より効果的なのは、本人と介護者がともに安心することです。入居後はなるべく面会に行き、安心させてあげましょう。また、施設で楽しく過ごしている本人の様子を見ることで、施設への信頼が増して「入居させて良かった」と思えるようになるはずです。
入居後に後悔しないよう、症状が軽いうちからより良い生活の実現に向けて、しっかり話し合っておくことも大切です。
▼介護施設に入居した後について考えたい方は、こちらもご覧ください。※姉妹サイト「いい相続」の記事にジャンプします。
施設の検討は、比較的症状が軽い時期から始めると、家族だけでなく本人の希望も反映できます。施設探しは時間がかかる上、希望する施設にすぐ入居できるとは限らないので、早めの情報収集、施設の見学をすると良いでしょう。
主に「グループホーム」「有料老人ホーム」「特別養護老人ホーム」などが挙げられます。
特にグループホームは認知症特化型の施設で、少人数でアットホームな環境のもと、認知症ケアの専門スタッフにより必要な支援を受けられます。ただし、少人数の受け入れであるが故に、満室の傾向が強く、入居に関しては待機をしなくてはならないこともあります。
まずは希望条件を整理し、担当のケアマネジャーとどの施設であれば希望が叶えられるかを話し合いましょう。その上で該当箇所の施設資料を取り寄せ、資料ではわからないことを見学にて確認しましょう。
また見学の際には、入居する本人も連れて施設を訪問しましょう。本人が実際に施設の雰囲気、スタッフの対応を受けることで、家族も入居後のイメージを持つことができます。
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