認知症には早期発見が重要です。検査の一つに改訂長谷川式認知症スケールがあります。簡易検査なので自宅で行うことができるので、認知症の早期発見に役立ちます。
この記事では、改訂長谷川式認知症スケールとは何か?を中心に、検査方法や注意点などを詳しく解説していきます。
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神経心理学的検査で行われる認知機能テストのひとつに長谷川式スケールがあります。1974年に精神科医の長谷川氏が開発し全国的にも普及させました。1991年に改訂されたため、現在では「改訂 長谷川式認知症スケール(HDS-R)」と呼ばれています。
所要時間は10~15分ほどの口頭形式。名前や生年月日、年齢、場所、人間関係、簡単な計算などの設問に患者が答えていき、30点満点中20点以下だと認知症の可能性が高いとされます。
身近な質問もあるため検査もスムーズに進んでいきますが、その日の体調や状態によって正答率が下がることもあり、テスト結果だけで認知症と診断がつくわけではありません。
設問は口頭が多いため、難聴の方は医師の質問の聞き取りが難しく不正解となる場合もあるため注意が必要です。
改訂長谷川式認知症スケールの検査項目は9つの設問から構成されています。日付や時刻、場所、人の名前など自身の状況を理解する見当識という能力を問う設問。あとは注意力、記憶力などを確認する設問です。検査時間はおよそ10~15分で、口頭形式になります。
問題 | 点数 |
---|---|
年齢はいくつですか? | 1点 |
今日は何年何月何日何曜日ですか?(日時の見当識) | 年月日、曜日でそれぞれ1点 |
私たちが今いる場所はどこですか?(場所の見当) | 自発的に出れば2点 5秒置いて「家ですか?病院ですか?施設ですか?」に答えられれば1点 |
桜・猫・電車という言葉を言ってみてください。後で聞くので、覚えておいてください。(言葉の記銘) | それぞれ1点 |
100引く7はいくつですか?そこからさらに7を引いてみてください(計算) | 2回正解で2点 1回正解で1点 |
これから言う数字を逆から言ってみてください(逆唱) | 2回正解で2点 1回正解で1点 |
先程伝えた言葉をもう一度教えて下さい(遅延再生) | 自発的に出れば2点 ヒントで出れば1点 |
これから5つの品物を見せるので、隠したあとに何があったか教えて下さい(物品記銘) | 正解した品物分の点数 (5つ正解で5点など) |
知っている野菜の名前をできるだけ教えて下さい(言葉の流暢性) | 10個で5点 9個で4点 8個で3点 7個で2点 6個で1点 |
2018年度の診療報酬改定後から、改定長谷川式認知症スケールは医療保険の対象になりました。物忘れ外来などの専門外来がある医療機関を受診しましょう。
いきなり受診することに抵抗がある場合は、かかりつけ医に相談して専門医がいる医療機関を紹介してもらう流れが一番スムーズです。
前述したように改定長谷川式認知症スケールは医療保険を利用しての検査が可能です。保険の負担割合によって自己負担額は1~3割と変わりますが、改定長谷川式認知症スケールは認知症検査の中でも比較的安い費用で受けることができます。
自宅で家族が改訂長谷川式認知症スケールで検査する場合の注意点やチェックポイントを紹介します。
認知症の早期発見、早期治療は重要ですが、家族が簡易認知症検査を行う場合は細心の注意が必要です。本人が嫌がっているのに、無理に行うことは避けましょう。
検査の点数で判断するより、日常生活の中での違和感や兆候を見つけることが重要です。家族が認知症検査をする場合、最終的な診断は必ず専門医に実施してもらうようにしてください。
当日の体調や精神が安定していない場合、結果が低く出ることもあります。自宅で検査して点数が20点未満だった場合は自己判断で断定せず、早急に専門医の診察を受けて正確な診断を待ちましょう。
病院で受診する前に自宅の認知症検査でスクリーニングをしたいと考えている人も多いでしょう。長谷川式認知症スケールは10~15分で自宅で簡単に行うことができます。その際の5つのポイントを紹介します。
検査をする際、家族が検査に集中できる環境を整えてください。テレビなどの騒音があったり人がいると気が散って正しく測定ができません。本人がリラックスしている状態であることも必要です。静かな落ち着ける場所で検査を受けることをおすすめします。
質問が速かったり声が小さかったりすると耳の具合が悪い場合は聞き取りにくく、正確な認知症の判断ができないかもしれません。耳が遠かったり難聴が疑われる場合は大きな声でゆっくりはっきり質問を伝えるようにしてください。
精神状況によっても正しく測定できない場合があるので配慮が必要です。うつ状態など精神症状による認知機能の低下が見られる場合は、医療機関に相談することをおすすめします。
短期間で同じ質問を繰り返ししていると、質問内容自体を覚えてしまい答えがワンパターン化され、その結果正しい結果が出なくなる可能性があります。
認知症検査を受けることは本人にとって大きな精神的ストレスがかかります。認知症の早期発見は大切ですが、本人の自尊心を尊重し、検査を強制しないようにしましょう。
認知症の検査をするというと、ショックを受けたり、診断されたくないと検査を拒否する人もいるでしょう。
しかし、認知症には早期発見、早期治療に越したことはありません。本人にしっかりと理解してもらい、協力をとりつけることが大切です。認知症状が進んでいて本人の理解が難しい場合は、認知症検査ということは言わずに、普通の健康診断として受診することも良いかもしれません。
また、認知症検査の結果については、本人だけではなく家族も一緒に確認するようにして、今後の対応についても話し合えるようにしておきましょう。
認知症には3大認知症といわれる「アルツハイマー型認知症」、「レビー小体型認知症」、「脳血管性認知症」があり、発症の仕組みによって分類されています。
認知症で最も多いのが「アルツハイマー型認知症」で、アミロイドβやタウタンパクというたんぱく質が脳にたまることで神経細胞が減少し、脳全体が委縮することで起こります。
もの忘れや時間の見当識障害、料理がうまくできなくなるなどの実行機能障害実行機能障害が見られ、これらの症状からうつや無気力、幻覚、や妄想、暴言や暴力などの二次的な行動・心理症状が生じることがあります。
適切な支援や環境が整えば、二次的な症状を防げる場合があります。
「レビー小体型認知症」は、レビー小体というたんぱく質のかたまりが脳にたまり脳の神経細胞の数が徐々に減少することで起きる認知症です。
「レビー小体型認知症」では、認知機能の低下よりも先に、手足が震える、筋肉が硬くなるといったパーキンソン症状があらわれます。幻視やレム睡眠行動障害といった特有の症状が見られるのが特徴です。
「アルツハイマー型認知症」と「レビー小体型認知症」には根本的な治療法はなく、薬によって症状の進行を遅らせることはできます。
「脳血管性認知症」は脳の血管に出血やつまりが生じ、脳細胞が死滅することによって引き起こされる認知症です。アルツハイマー型認知症に比べて男性の割合が高く、女性の2倍近い報告があります。
「脳血管性認知症」ではもの忘れなどに加え、できることとできないことの差が大きかったり、1日のうちでも症状の変動が大きかったり、感情をコントロールしにくいなど特有の症状が見られます。
症状に波があり、障がいを受けていない機能は保たれているので症状の発見が遅れる傾向があるので注意が必要です。
いずれの認知症でも、発症された方自身ができないことにいらだちを覚えたり、自尊心を傷つけるような方法を取ってしまうと、認知症以外の二次症状を起こしかねません。
本人の認知症の特性を理解し、適した対応を取ることで症状の安定へと繋がります。
認知症を発症しても、初期の段階ではご家族と一緒にこれまでと同じようにご自分の家で日常生活を送っても問題ありません。
しかし、症状の進行にともない、身体的な介護負担が増えていくと介護する方の精神的な負担も大きくなります。
認知症を発症したらまずは介護認定を受け、ケアマネジャーに依頼して必要な介護サービスの利用を検討しましょう。
介護サービスにはホームヘルパーが自宅を訪れ身体介護や生活支援をおこなってくれる「訪問介護」や、自宅に専用の浴槽を持ち込みスタッフが入浴介助をおこなってくれる「訪問入浴介護」、食事や入浴などの生活支援やレクを介護施設で日帰りでおこなう「デイサービス」、介護施設などに宿泊する「ショートステイ」などがあります。
介護の形は家庭によってそれぞれ違います。介護する方の負担を減らし、介護疲れを防ぐことも大切な介護支援と考えられていますので、積極的に利用しましょう。
愛する家族が認知症を発症することは、とてもショックなことです。家族が変わっていく姿を見ることは辛いですし、ストレスを感じてしまいます。
介護をするときに重要なのは、必要以上に頑張りすぎたりせずに、自分自身の健康や時間も大切にすることです。
認知症の家族を介護する中で、不満や悲しみは生まれてきます。その気持ちをずっと自分だけでしまっておくと、いつか爆発してしまいます。
負の感情は溜め込まないことが一番です。時々は友人に愚痴をいったり、家族につらいと本音をこぼしたり、カラオケで発散させたり。気持ちを切り替えながらやっていきましょう。
介護をしているときは大変すぎて、自分一人に抱えてしまいがちです。しかし、介護を一人でするのは不可能です。周りの人や外部のサービスを上手に利用して、まわりに頼りながらやっていきましょう。
「自分は認知症なのかな?」「家族が認知症かも」と不安になったら、下記のチェックリストで、まずは認知症の可能性がありそうかをチェックしてみるのも良いでしょう。
簡単な質問に答えていくだけでチェックできますが、医学的診断に代わるものではありません。
チェック結果が合計20点以上の場合は、認知機能の低下や社会生活に支障が出ているなど認知症の可能性が疑われます。かかりつけ医や医療機関の受診や地域包括支援センターへ相談しましょう。
長谷川式認知症スケールは、簡易的な認知症テストです。多くの医療機関でも実施されており、信頼性が高い評価法でもあります。
また現在では、改訂長谷川式認知症スケールと呼ばれており、所要時間は10~15分程です。また言語性知能検査であるため、難聴や失語症の人は検査が困難になる場合があるので注意が必要です。
改訂長谷川式認知症スケールは10~15分ほどの口頭形式が一般的です。主に名前や生年月日、年齢、場所、人間関係、簡単な計算などの設問に点数が振りわけられており、30点満点中20点以下の場合だと認知症の可能性が高いとされます。
改訂長谷川式認知症スケールの検査項目は9つの設問で構成されています。
例として、「年齢はいくつですか?」「今日は何年何月何日何曜日ですか?」「私たちが今いる場所はどこですか?」などといった設問が出されます。自身の状況を理解する能力、注意力、記憶力などを主に確認しています。
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