介護、特に認知症の方との関わりを持っている方の中には、「ユマニチュード」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
フランス人の体育学の専門家、イヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが開発したこの認知症ケアのプログラム。当然ですが、言葉だけを知っていても、方法や進め方を知っていなければ意味はありません。
そこでこの記事では、ユマニチュードについて詳しく解説。4つのアクション&5つのステップでより実践的に理解できるとともに、ユマニチュードの効果についても解説していきます。ぜひ参考にしてください!
ユマニチュードとはフランス語で「人間らしさを取り戻す」という意味をもつ造語です。フランス人の体育学の専門家、イヴ・ジネストとロゼット・マレスコッティが開発した認知症ケアのプログラムのことで、最近では日本でも介護施設などで取り入れられています。
「見る」「話す」「触れる」「立つ」という4つのアクションで、人間がもともと持っている能力をできる限り引き出すことを、ケアの基本姿勢としています。
ケアを行う人は「あなたは大切な存在です」という心からのメッセージを相手に発信し続けることが重要です。
ユマニチュードには「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの基本的なアクションがあります。それぞれどのようなアクションか。具体的に見ていきましょう。
認知症の方をよく「見る」ということはユマニチュードにおいて非常に重要です。相手の立場にたって、相手の求めていることを理解することは、人間と人間の関係性のベースになります。
認知症の方は、新しい人や慣れない人に対して大きな不安感を抱きます。また、寝たきりの状態で見下ろされることによって、自分が見下されたと思うこともあります。
相手の目線と同じ高さから見ることで、敵ではなく大事な人だと相手に伝えることができると、ユマニチュードでは考えられています。
認知症の方のお世話をするときは、忙しさからつい命令口調になったり、ただ指示をするだけになりがちです。しかしユマニチュードでは「話す」ことも「見る」ことと同様に、相手に対して親愛の気持ちを持った存在であることを伝えます。
なるべく低めの安定した声で、言葉を選びながら話すことを心がけましょう。本人から返事や反応がない場合は、「オートフィードバック法」という技法を試してみると良いですよ。
認知症の方を介助するとき、介助者は身体のどこかをつかんだり、さわったりすることになります。介助のために必要ではありますが、つかむことで相手の身体の自由を束縛していることにもなります。
触れるとき、は認知症の方を不安にさせないように気を付ける必要があります。そのためには敏感ではない足や背中、肩などから触ったり、なるべく広い面積を触ることで、患者の負担を軽減できます。
人間は元来、直立して「立つ」ことが基本なので、身体の機能も立った時の状態をベースに設計されています。
一日20分程度でも立つ時間を作ることで、寝たきり状態を防ぐことになります。トイレに行くときや食堂への歩行など日常生活の中に意識的に「立つ」ことを心がけましょう。
ユマニチュードの4つのアクションを実践するためにはどのようなことをすれば良いのでしょうか。基本は以下の5ステップです。
以下、それぞれについて詳しく説明します。
部屋に入る前にまずは外から、認知症の方に来訪を伝えて、入室して良いか許可をもらいます。
突然、人が入ってきたという恐怖心を与えないように、本人が「自分が許可した」と認識することが大切です。ノックして反応を待ち、返事がないようならまたノックしてみましょう。それでも反応がないようであれば、ノックしながら部屋に入りましょう。
ケアの準備とは、認知症の方に「あなたに会うために来た」というメッセージをしっかりと伝えて、信頼してもらうことです。相手が警戒心をとくような態度をとることが大切で、相手の目線で目と目をあわせて、ゆっくりと話しかけましょう。
なるべくポジティブな言葉をつかって、これから行うケアについて説明します。もし相手が拒否するようであれば無理に行うことは良くないので、一旦やめることもあります。このような段階を経ることで、認知症の人の攻撃的な行動は減少すると言われています。
「見る」と「話す」と「触れる」のうちの2つ以上の方法を使って、「あなたを大切に思っている」というメッセージを送り続けることです。
話しかける時は、行動と一貫性を持たせながら接することが重要です。優しい笑顔を見せながら、「身体を起こしますね」言ってから身体に触れるといった感じです。相手の五感すべてにこちらのポジティブな心が伝わるように、心地良いケアの実施を心がけましょう。
認知症の人は、ケアを受けた内容は忘れていても、その時どのような気持ちになったのかという感情的な記憶は残っています。ケアが終わったら「気持ち良くなりましたね」とポジティブな声掛けをしましょう。
また、「ケアをさせてくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝えることで、本人には良い記憶としてインプットされます。
認知症の人のはケアを受けたことを忘れてしまうことが多いので、次にまたケアに訪れたとしても初めて会った人のように接してきます。しかし、ケアが終わったら必ず次に来ることを約束することが大切です。
ケア自体が気持ちの良い体験として感情記憶に残されているので、「また来ますね」と相手と約束することによって、次回のケアをスムーズにすることができます。
言葉でいうだけではなく、メモを渡したり、ホワイトボードなどに書いておくのも良いでしょう。「自分に親切にしてくれた人がまたきてくれる」ということは、その時からワクワクする喜びに変わります。それを繰り返すことで、認知症の人の中でケアはさらに幸せな時間になります。
フランスで生まれたこのユマニチュードは最近では日本の介護現場でも積極的に取り入れられるようになりました。
ユマニチュードのアクションやステップを実践することによって、認知症患者の心が穏やかになり、介護もスムーズになったという声が増えています。
認知症の人が暴力的になったり、介護者を敵視するのは、心の中に大きな不安を抱えているからです。相手の目をしっかり見てケアをしたり、優しい声掛けをすることで、認知症の人の不安感をやわらげ、暴力や暴言を減らすことになります。また、少しでも「立つ」ことで、寝たきり防止にもつながります。
ユマニチュードの効果は人によって差はあります。しかし認知症の人の尊厳を守り、尊重することで一定の効果をあげることができます。
ユマニチュードを実践するためにはどのようなことに注意すれば良いのでしょうか。以下では、ユマニチュードの注意点をまとめました。
ユマニチュードを実施する際は、一つひとつ確認をしながらケアを進めるため、時間に余裕を持つことが必要です。人員が少ない施設では、ケアの時間が限られるので、ゆとりのある時間を確保するための工夫が重要です。
ケアを進めるための時間がなく、利用者に無理をさせてしまい、転倒してしまうリスクもあります。利用者の気持ちを尊重し、理解することもユマニチュードを実施する上で必要な要素です。
ユマニチュードとはフランス語の造語で「人間らしさを取り戻す」という意味です。またケアをする上での基本姿勢として「見る」「話す」「触れる」「立つ」というアクションが重要だとされています。
認知症の人の態度が攻撃的になるのは心に不安を抱えていることが原因とされています。
しかしユマニチュードのアクションなどを実践することによって認知症の人の不安感を和らげ、暴力や暴言を減らすこともできるとされています。
また、認知症の人だけではなく、介護職、看護職にもユマニチュードの効果はもたらされ、人手不足にも効果的であると考えられています。
ユマニチュードを導入してもすぐに効果は現れません。ユマニチュードに関しては継続して長期間おこなうことが大切で、最低でも3年は継続する必要があります。
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