認知症の治療法には薬物療法と非薬物療法の2つの種類があり、それぞれの治療法にメリットやデメリット、合う合わないがあります。
この記事では、薬物療法と非薬物療法の双方について、それぞれの特徴を比較しながら説明します。治療を長く続けるための心構えについても覚えておきましょう。
現在の医学では、認知症を完治することは不可能です。認知症の治療は病気の進行を遅らせて、少しでも症状を和らげることを目的としています。
認知症の治療は薬をつかっておこなう薬物療法と、薬を使わない非薬物療法があります。それぞれの内容を見ていきましょう。
認知症に使われる薬は中核症状に対するとBPSDに対応しているものと2種類あります。
中核症状とは、認知症によって起こ記憶障害、見当識障害、実行機能障害などの一次的な障害のことです。中核症状に対しては認知機能改善薬、抗認知症薬などが使われます。
これらの薬は中核症状をできるだけ抑えて、緩和することが目的です。代表的なものはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬や、NMDA受容体拮抗剤です。
一方でBPSD(行動・心理症状)は、認知症によって二次的に引き起こされる心理的な不安や興奮、うつ症状のことです。
BPSDの処方薬は睡眠導入剤や向精神薬、抗不安薬といった精神を安定させるものが中心です。ただし、これらの薬は副作用があったり、その人に適合しないと症状を悪化させてしまうケースもあるので注意が必要です。
非薬物療法は薬を使わずにおこなわれる認知症の治療法です。
その人が好きだった音楽を聞かせたり(音楽療法)、昔の思い出話を話したりすることで脳を活性化させたり(回想法)。脳にほど良い刺激を与え続けることで認知症の進行を遅らせることができます。
身体を動かすことも、脳に良い刺激を与えることがわかっています。適度な距離の散歩や体操、ストレッチも非薬物療法のひとつです。
認知症の治療は継続しておこなうことが大切です。治療を続けるポイントについてまとめました。
薬物療法を始めたら、副作用が起きていないか、本人に合っているかをしっかり観察しましょう。本人がどのような状態なのか確認して、日付や状態、起きたことをメモや記録を残しておくことをおすすめします。
メモや記録があれば、何かあった場合に医師に正しい情報を伝達することができます。家族と医師、薬剤師が同じ情報を共有して、信頼関係を構築することは薬物療法を続ける上で非常に重要です。
認知症の治療をしているだけではなく、ほかの病院にもかかっている場合は、薬の情報をまとめておきましょう。
それぞれの病院で情報を連携していないまま薬が処方されていると、飲み合わせによる副作用や悪影響が起きる可能性があります。薬局の窓口でお薬手帳を見せて、薬剤師の方がすべての薬を把握しておくことが重要です。
もし可能であれば、病院や薬局も一元化しておくと、情報の伝達もスムーズで管理しやすくなります。
非薬物療法はさまざまな方法がありますが、重要なポイントは本人が好むものを上手に療法に取り入れることです。
一般的に効果が高いといわれている非薬物療法でも、本人の気が進まないものであれば効果は半減してしまいます。本人が楽しみながら前向きに取り組める内容にすることが大切です。
非薬物療法に取り組むときは、無理をせずマイペースで続けることが大切です。少しでも良くなってもらいたくて家族や周囲の人はどうしても熱くなりがちです。
しかし本人は、普段から認知症によって不安やストレスを感じています。新しいことに取り組むことにもエネルギーが必要なので、少しの療法でも大きな負担になっているケースもあります。
必要以上に頑張りすぎず、少しずつ取り組んでいきましょう。
頑張りすぎないことは大切ですが、治療は毎日休まず取り組むことが大切です。一日休んでしまうことで、認知症は少しずつ進行してしまいます。
必要なのは、できるだけ毎日、一定の刺激を脳に与え続けることです。本人と家族だけではくじけてしまいそうなときは、外部の介護サービスを利用すると良いでしょう。
日常生活の中で、今までやってきた家事や趣味に取り組むことも、大事な非薬物療法のひとつです。
認知症になると、それまで普通にできていたことができなくなり、本人も大きなストレスを感じています。やろうとしてもできないことも多いでしょう。同居している家族の人もイライラしたり、声を荒げることがあるかもしれません。
家族や周囲の人が本人とどう接するかは、症状の進行にも影響します。家族の方は落ち着いた優しい態度を心がけて、認知症の方が安心を感じられるように心がけましょう。
少し前までは認知症の方も在宅介護が中心でした。しかし現在では、認知症の方でも入れる介護施設が増えたこともあり、約半数が在宅、残りの半数が施設入居という状況です。
施設は特別養護老人ホームや介護老人保健施設、医療施設が多くなっています。
在宅での認知症介護は、介護する家族の負担が非常に大きくなります。大事な家族をいつまでも自宅で過ごさせてあげたい、みんなで見守りたいと思っても、介護する側の疲労も増していきます。
認知症は完治することなく、少しずつ悪化していくものです。認知症の症状が進んで、在宅介護に限界がきているようであれば、施設入居についても検討することをおすすめします。
ここからは、自宅で在宅介護をおこなう場合のメリットとデメリットについて考えていきます。介護される方と介護する家族の関係がポイントです。
認知症の人は慣れない場所や慣れない人に大きなストレスを感じます。在宅介護の一番のメリットは、本人が住み慣れた環境で、最も信頼できる家族に介護してもらえることです。
家族以外にも、顔なじみの近隣住民の存在も大切です。どこかで道に迷ってしまっても、誰かが気づいて声をかけてくれることもあります。
また、在宅介護は費用面で施設に入居するよりも低コストで済みます。施設に入居した場合は入居費だけではなく、付随する料金の負担もあります。その点、在宅介護であれば、在宅介護サービスの利用料金だけで収めることができます。
在宅介護のデメリットは、なにより家族の負担が大きいことです。認知症になると感情のコントロールができなくなって、介護者に対して暴力や暴言が出てしまうこともあります。
同居する家族には身体的、精神的ストレスが大きくなります。家族は認知症の専門家ではないので、時として不適切な対応をしてしまい、症状を悪化させることもあります。
また本人にとっても、ずっと家の中にいることは刺激が少なく、脳のために良くありません。
認知症の人を施設に預けた場合のメリットとデメリットについて説明します。在宅介護ではできない対応も施設に入居することでできるようになります。
施設介護の最も大きいメリットは、家族の負担がなくなり、専門知識を持つ職員に介護を任せられる点です。
認知症の介護スタッフは専門の研修を受け、専門知識を有している方が中心です。家族が介護するよりも適切に、専門的なケアを受けられるのです。
また、施設では他の入居者との交流やレクリエーション、イベントなどもあります。ずっと家で寝ているよりも、脳を刺激して活性化してくれます。
デメリットとしては、本人が入居を嫌がったり、家から離れることにショックを受けることがある、ということが挙げられるでしょう。このような場合は、家族も入居させて良いか葛藤が生まれます。
自宅を離れて施設に入ったことが逆にストレスになって、症状が悪化する可能性もあります。また、施設に入居することで金銭面の負担が大きくなることもデメリットと言えるでしょう。
認知症とは、脳細胞の死滅によって引き起こされる脳の不具合の症状のことです。認知症にはたくさんの種類がありますが、その中でも数が多い「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」は3大認知症と呼ばれています。
認知症の症状は、障害が出た部位にあらわれる症状や治療法も変わってきます。また認知症の原因が脳梗塞や脳内出血といった病気によるものなのか、頭の怪我などの外的要因によるものかによって進行度合いも異なります。
残念ながら今のところ認知症を完治させる治療方法は見つかっていません。ただし正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫などの内科的疾患が原因の認知症だけは治療が可能です。
それ以外の認知症の治療は、症状の進行を緩和させて、患者の生活の質を高め、安定した日々を送ることを目的としています。
認知症の治療は早期発見、早期治療が大原則です。症状が軽いうちに治療をスタートすることで、症状の進行を抑制して介護負担も軽くすることができます。
認知症の治療には「薬物療法」と「非薬物療法」の2種類があります。治療といっても現在の医学では、認知症を完治することは不可能です。認知症の治療はあくまで進行を遅らせることを目的としています。
認知症に使われる薬は中核症状に対してのものと、周辺症状に対してのものと2種類あります。
中核症状に対しては認知機能改善薬、抗認知症薬などが使われ、周辺症状に対しては睡眠導入剤や向精神薬、抗不安薬といった精神を安定させるものが処方されます。
非薬物療法が薬を使わない方法として挙げられます。主に、その人が好きだった音楽を聞かせる音楽療法、昔の思い出話を話したりする回想法などさまざまで、脳に良い刺激を与えることで認知症の進行を遅らせます。
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