介護される方にとっても介護する方にとっても、自宅を暮らしやすくリフォームしたいと考える人も多いでしょう。
そんな疑問にお答えするべく、介護リフォームの始まりから完成までの流れをご説明します。
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介護される人がこれまで暮らしてきた自宅に安心して住み続けられるよう、家の中の危険な場所をリフォームして安全な環境に整えることを「介護リフォーム」と言います。
介護される人が安心して暮らせるように考えるのはもちろん、介護する方の視点も忘れてはいけません。トイレや浴室など一緒に入って介助できるスペースを確保したり、車いすの使用が考えられる場合は、安全に介助できる動線の確保も必要です。
介護リフォームをいつ検討すればいいのか悩む人も多いでしょう。それは、実際に介護や介護予防が必要になったときがベストです。
これまでは年齢の割に元気だった方が、脳梗塞などのような突然の病気や骨折などの怪我に見舞われることもあるでしょう。
病院から退院したあとに、自宅で安全に暮らしていけるよう、危険な場所のリフォームを検討しなくてはなりません。
また、これまでは問題なく暮らしていけるほど元気であっても、年齢を重ねていけば体力や運動機能も低下していくのが一般的です。ちょっとした段差をなくしたり、階段に手すりを設置するなど。自宅での危険が見えてきたときも介護リフォームを検討するタイミングです。
介護認定を受け介護保険を利用すると、上限20万円まで介護リフォームの工事に対して補助金が支給されます。この補助金は介護保険制度では「住宅改修費」と呼ばれ、他の介護保険サービスの支給限度額には含まれません。
したがって、毎月利用している介護サービスとの限度額を気にすることなく利用できます。また介護認定度によって限度額に差はないので、要支援認定であっても要介護認定であっても同様のリフォームをすることができます。
介護保険を利用し、介護リフォームの工事に対して補助金が受けられる要件は以下の通りです。
介護保険を使って住宅改修をおこなう場合、介護給付を受ける方法には「償還払い」と「受領委任払い」の2種類があります。
「償還払い」の場合は、工事完了後に工事費の全額を施工業者に払う必要があります。
その領収書を申請書とともに窓口に提出すると、自己負担分を除く金額が自治体から払われるという仕組みです。
「受領委任払い」では、業者への支払いは自己負担分のみ。必要な書類を窓口に提出することで、給付金が業者に直接支払われます。
では、実際に自宅のどの場所の介護リフォームを検討すればいいのでしょうか。具体的に、介護リフォームに適した箇所は、以下のようなところです。
具体的な事例を挙げて紹介します。
玄関・廊下の介護リフォームで考えられるのは、以下のようなものです。
玄関から廊下には段差があることが多く、介護される方もする方も危険だと感じることも多い場所です。
段差は高くても15cm以内に収めると玄関の出入りもしやすいですが、もっと安全にするためにスロープを設置するのも一案。段差があるよりも肉体的な負担も少なくてすみます。
立ち上がったり歩き始めの際、体を支えられる手すりがあると転倒防止にもつながります。靴を脱いだり履いたりする玄関だからこそ、手すりがあると安心です。
現在の住宅に多い外開きのドアの場合、ドアの前で鍵を開け、一度下がってからドアをあけます。そのため、ドアを開けるときに、扉を開けるスペースを確保しないといけません。
歩行が困難な状態になったり車いすを使用するようになると、この少しの行動も負担に感じてしまうでしょう。
引き戸にリフォームすることで、扉を横に開くだけの最小限の行動ですみます。ただし引き戸へのリフォームは引いた扉を収納するスペースが必要となります。住宅の構造上リフォームできない場合もあるので、リフォーム業者に相談してみてください。
浴室の介護リフォームで考えられるのは、以下のようなものです。
濡れると滑りやすい浴室は自宅の中でも事故が多い場所です。
浴室の床がタイルの場合は特に滑りやすく、介護される方だけでなく介護する方も事故に合わないよう注意する必要があります。床材を滑りにくいタイプにリフォームすると良いでしょう。
浴槽に入る際には段差があったり、足をあげたりと行動も大きくなるので浴槽のそばに手すりがあると安心です。
もちろん浴槽の近くだけでなく、浴室の出入口や洗い場などにも手すりを設置できるスペースがあれば設置しましょう。
入浴介助が必要の場合は、大人が2人で入るスペースが必要になります。体などを洗うときは特に狭いと十分に作業ができません。今の浴室で広さが足りないようであれば、浴室の拡張を検討してみましょう。
浴室では温度差によるヒートショックが起きやすい場所と言われています。脱衣スペースに暖房を置いたり、浴室暖房を設置するなどして体に負担がかかる温度変化を少なくするようにしましょう。
トイレの介護リフォームで考えられるのは、以下のようなものです。
トイレは座ったり立ち上がったりするので、手すりは欠かせません。トイレは事故が起こりやすいので早めに対策しましょう。
浴室と同じく、トイレもヒートショックが起きやすい場所と言われています。温水便座の設置やトイレ内に暖房を置くなど、トイレ内でも温度変化が起きにくい対策を取っておくと安心です。
トイレは1日に何度も利用するだけでなく、深夜にも利用する場所です。和式トイレを使っている家はなるべく洋式トイレに交換することをおすすめします。
洋式トイレのほうが使いやすく、介護する方の負担も軽減される場合が多いでしょう。
階段の介護リフォームで考えられるのは、以下のようなものです。
階段の手すりは、階段の片側にのみ設置されている場合も多いです。毎日、階段の上り下りをするようであれば、階段の両側に手すりを設置することをおすすめします。
例えば、右側のみに手すりを設置した場合、上るときは利き手側に手すりがありますが、下りる場合には利き手側に手すりがありません。
年齢を重ねると、階段を上るよりも下りるときの方が危険な場合も多くなります。階段の両側に手すりがあると安心です。
ふつうの住宅では階段の照明は天井部分についています。しかし天井の照明は高さもあるため、明るさが足りないと感じていることがあります。
足元に照明を設置することで転倒を予防できます。足元の照明は人を検知して点灯する人感センサーが搭載されている照明を選ぶと便利です。
介護リフォームにはどれくらいの費用がかかるのか心配な方もいるでしょう。具体的なリフォーム場所と金額を例示します。
段差の多い玄関は介護リフォームが必要になることが多い場所です。車いすでも出入りできるようスロープを設置したり、体を支える手すりやベンチを設置することもあるでしょう。開き戸のドアから引き戸へのリフォームや、滑りやすいタイルから滑りにくい床材へ変更される方も多いです。
浴室は滑りやすく事故もおこりやすいため、安全面を考慮したリフォームがよくおこなわれます。特に寒い季節には、室内と浴室との温度差からヒートショックを起こし、高齢者が亡くなることもあります。
浴室暖房を設置することで温度差がなくなり、体への負担も少なくなります。浴室を広げたり、手すりの設置やドア交換、滑りにくい床材への変更は以下の金額が目安となっています。
トイレを使いやすく負担が少ないようにリフォームしたいと考える方も多いでしょう。ヒートショックを防ぐために温水便座に交換したり、和式から洋式トイレにリフォームしたり。
体への負担が少なく快適に用を足せるようなリフォームに必要な金額の目安は以下の通りです。
戸建て住宅に住んでいる方にとって階段のリフォームは欠かせません。
階段で転倒すると大けがにつながります。階段の両側に手すりを設置したり、すべりにくい床材に変更するなどが考えられます。以下の通り数万円から数十万円かかるリフォームまで。階段のリフォームの料金の幅は広くなっています。
申請には、申請書、理由書、工事の見積り書、改修図面、改修前の写真など資料の提出が必要で審査には時間がかかります。少なくとも工事の2週間前までには申請を終えるようにしましょう。
また給付金を受け取るために必ず着工前に申請し、審査が通ってから工事を開始してください。
支払いの仕方には「償還払い」と「受領委任払い」の2種類があります。「償還払い」は、工事完了後に工事費の全額を施工業者に払う必要があるので注意が必要です。
また、「受領委任払い」では、業者への支払いは自己負担分のみになり持ち出しが少額で済みます。
申請が受理され承認されると、給付金が支払われます。支給のタイミングは自治体によってルールが異なりますが、1~2ヵ月かかることもあるので注意が必要です。
介護リフォームに限らず、リフォームは良い業者を選ぶことが大切です。リフォーム業者にはそれぞれ得意分野がありますので、介護リフォームに強い業者を選ぶと良いでしょう。
福祉関連の専門知識を持つ福祉用具専門相談員や福祉住環境コーディネーターが関わっているかどうかを確認するのもひとつの方法です。
介護リフォームの作業実績を確認したり、担当のケアマネジャーに業者選びを相談するのも良いでしょう。
自治体によっては自治体主催の住宅改修研修会などに参加した業者を公開している場合もありますので、お住まいの自治体のホームページもチェックしてみてください。
介護保険サービスを使用して介護リフォーム、つまり「住宅改修費」を利用する場合には、工事前に必ず自治体に事前申請する必要があります。工事が始まっていたり完了してしまってからでは、原則「住宅改修費」として介護保険サービスを受けられません。
介護リフォームは、介護される方の身体の症状や家の状態によってそれぞれ異なります。介護リフォームする前に、必ずリフォーム業者やリフォーム個所についてケアマネジャーなど介護のプロに相談しましょう。
介護保険の上限支給額以上の金額を請求されたり、不必要な工事が含まれてしまうなど余計なトラブルを防ぐことができます。
これまで暮らしてきた家でも、年齢を重ね体力や身体機能が低下すると玄関、浴室、トイレ、階段などで思わぬ危険が出てきます。
介護保険サービスを使って介護リフォームをすることで、経済的な負担を抑えながら安心な住環境を整えることができます。
ケアマネジャーにきちんと相談しながら、適切なリフォームと「住宅改修費」の申請をおこない、これまで暮らした家で快適な生活を送りましょう。
家の中の危険な場所をリフォームして安全な環境に整えることを「介護リフォーム」と言います。介護される側だけではなく、介護をする家族のためにも介護リフォームは有効な手段です。
主に「玄関・廊下」「浴室」「トイレ」「階段」などが挙げられます。例えば、玄関へスロープを設置したり、浴室には手すりを設置、トイレは和式から洋式への変換をおこなったり、階段には照明を設置したりとさまざまです。
介護リフォームをする箇所や依頼する事業所によってさまざまです。
例えば、玄関へスロープを設置した際は約2万円~、浴室の床材の変更は約4万円~、トイレの便器交換は約10万円~、階段の勾配を調整した場合は約50万円~と金額に差があります。介護リフォームを検討する際は、事業所とよく話し合い決めましょう。
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