介護保険サービスは要支援状態にある65歳以上の高齢者と40歳~64歳までの特定疾患の患者であれば誰でも受けることができます。
介護保険サービスを利用した場合の費用はどうなっているのでしょうか?利用者の自己負担額について詳しく見ていきましょう。
介護保険サービスを利用する時にかかる費用は、サービス利用者が支払う分と、社会保険制度全体で負担する「介護給付」の2つから成り立っています。
サービス利用者自身が負担する金額のことを「自己負担額」といいます。利用者が負担する金額は介護保険サービス料金の1割で、残りの9割は介護給付から支払われます。
介護給付のうち半分は介護保険料から支出されています。残りの50%は半分を国、半分をお住まいの都道府県、市区町村で負担しています。
少子高齢化社会が進むにつれて、介護保険費用の増大が深刻な社会問題になっています。そのために近年では、一定以上の収入がある高齢者の自己負担額の割合は2~3割に引き上げられました。
自己負担額の割合が1割なのか、2割または3割なのかは、その人の合計所得金額と65歳以上の世帯人数によって変わります。
現役世代と同じくらいの収入を得ている方については、自己負担額も大きくなります。今後もまた法改正などで自己負担額の増加が検討されているので、制度の改正には注視しておきましょう。
自己負担額は、世帯人数と合計所得金額によって変わります。どのようなパターンがあるか具体的に見ていきましょう。
自己負担割合がいくらになるかは要介護認定と同時に決定し、通知されます。計算根拠となる合計所得金額は、その前年の所得に基づきます。
要介護認定を受けるには市町村窓口に必要書類を提出して申請します。審査を経て約1ヵ月ほどで要介護認定の度合いが決定し、介護保険被保険者証と介護保険負担割合証が発行されます。介護保険負担割合証に自己負担額の記載があるので確認しましょう。
要介護認定の更新は毎年7月におこなわれます。いつ認定を受けたとしても、認定の適用期間は基本的に8月1日から翌年の7月31日までです。
負担割合は毎年その世帯構成や所得状況によって見直され、7月末までには新たな負担割合証が郵送されます。
施設介護サービスは種類が多岐にわたります。それぞれの施設介護サービスを利用した場合の自己負担額について説明します。
特別養護老人ホームや特定施設、グループホームを利用した場合の自己負担額については要介護度によっても変わります。詳しく見ていきましょう。
特別養護老人ホームは要介護度3以上の人を対象とした公的な介護施設です。入居一時金などの初期費用がかからないので、高齢者施設の中でも最も人気があります。
特別養護老人ホームの利用には月々の施設サービス費用がかかります。施設サービス費は介護保険でカバーできますが、施設の体制や居室の広さやタイプによって金額が変わります。
さらに要介護度によっても金額が変わってきますので注意が必要です。要介護の度が高い人ほど金額は上がります。
また日々の食費や日用品費などは実費ですが、おむつ代は施設利用料金に含まれています。下記は従来型個室の場合の料金です。
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
有料老人ホームやケアハウスなどの民間の介護施設の中で、介護保険法の基準を満たし事業指定をうけている施設のことを「特定施設入居者生活介護」といいます(略して「特定施設」と呼びます)。特定施設でのサービスの利用料金も、介護保険の対象になります。
「特定施設入居者生活介護」は日常生活上の世話、機能訓練、療養上のケアが中心で、入浴や食事のサポートなどがあります。費用は定額料金になりますが、やはり要介護度によって金額は変わります。
要介護度 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
---|---|---|---|
要支援1 | 5,490円 | 10,980円 | 16,470円 |
要支援2 | 9,390円 | 18,780円 | 28,170円 |
要介護1 | 16,260円 | 32,520円 | 48,780円 |
要介護2 | 18,270円 | 36,540円 | 54,810円 |
要介護3 | 20,370円 | 40,740円 | 61,110円 |
要介護4 | 22,320円 | 44,640円 | 66,960円 |
要介護5 | 24,390円 | 48,780円 | 73,170円 |
出典:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
グループホームとは、認知症の方だけを対象とした小規模な介護施設。地域密着型サービスのひとつで、入居すると1ユニット9人という少人数の単位で共同生活をおくります。
認知症になると、新しい人や場所を怖がる傾向にあります。ユニットは同じメンバー、同じ介護スタッフで対応しているので、認知症の方にも安心して生活してもらえます。
入居できるのは認知症と診断された要支援2、または要介護1以上の高齢者。グループホームの介護保険サービス料も要介護度によって段階があります。またユニットがいくつあるかによっても金額に差がつけられています。
要介護度 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
---|---|---|---|
要支援2 | 22,830円 | 45,660円 | 68,490円 |
要介護1 | 22,950円 | 45,900円 | 68,850円 |
要介護2 | 24,030円 | 48,060円 | 72,090円 |
要介護3 | 24,720円 | 49,440円 | 74,160円 |
要介護4 | 25,230円 | 50,460円 | 75,690円 |
要介護5 | 25,770円 | 51,540円 | 77,310円 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
要介護度 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
---|---|---|---|
要支援2 | 22,470円 | 44,940円 | 67,410円 |
要介護1 | 22,590円 | 45,180円 | 67,770円 |
要介護2 | 23,640円 | 47,280円 | 70,920円 |
要介護3 | 24,360円 | 48,720円 | 73,080円 |
要介護4 | 24,840円 | 49,680円 | 74,520円 |
要介護5 | 25,350円 | 50,700円 | 76,050円 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
居宅サービスとは、施設ではなく住み慣れた自宅で受けられる介護サービスのことです。
居宅サービスは大きく分けて3つ。ひとつは介護者が自宅を訪問してサービスをおこなう「訪問サービス」。利用者が介護施設に通って利用する「通所サービス」。そして一ヵ月以下の短期間利用する「短期入所サービス」です。
居宅介護サービスの利用には要介護度に応じた利用限度額が設定されています。要介護度が高くなるほど、限度額もあがります。
自己負担額の詳細はこちらの表でご確認ください。
要介護度 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
---|---|---|---|
要支援1 | 5,032円 | 10,064円 | 15,096円 |
要支援2 | 10,531円 | 21,062円 | 31,593円 |
要介護1 | 16,765円 | 33,530円 | 50,295円 |
要介護2 | 19,705円 | 39,410円 | 59,115円 |
要介護3 | 27,048円 | 54,096円 | 81,144円 |
要介護4 | 30,938円 | 61,876円 | 92,814円 |
要介護5 | 36,217円 | 72,434円 | 108,651円 |
出典:「サービスにかかる利用料」(厚生労働省)
居宅介護サービスの利用時はケアマネジャーが利用者の状況に応じて「サービス提供票」というサービス利用のスケジュールを策定します。
基本的に「サービス提供票」は自己負担額内で作られることになっていますが、なんらかの事情でこの上限を超えてしまった場合、その超えた金額は全額自己負担になります。
訪問介護とはホームヘルパーと呼ばれる訪問介護員などが自宅を訪問。入浴や排せつ、食事などの「身体介護」をおこなったり、調理、洗濯や掃除といった家事の「生活援助」をおこなうサービスのことです。
自己負担額(円/回) | ||
---|---|---|
身体介護 | 20分未満 | 163円 |
20分以上30分未満 | 244円 | |
30分以上1時間未満 | 387円 | |
1時間以上 | 567円 | |
生活援助 | 20分以上45分未満 | 179円 |
45分以上 | 220円 | |
通院等乗降介助 | – | 97円 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
看護師1名を含めた2〜3名のスタッフが自宅に来て、専用の浴槽を使い入浴のサポートをする介護サービスです。
介護される方だけでの入浴が困難な場合や、家族の介助だけでは入浴が難しい場合に利用されます。自宅の浴槽が狭かったり体調の急変が心配な方も安心して入浴できます。
全身浴 | 部分浴・清拭 | |
---|---|---|
要支援1 | 856円 | 770円 |
要支援2 | 856円 | 770円 |
要介護1 | 1,266円 | 1,139円 |
要介護2 | 1,266円 | 1,139円 |
要介護3 | 1,266円 | 1,139円 |
要介護4 | 1,266円 | 1,139円 |
要介護5 | 1,266円 | 1,139円 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
病気や障がいのある方が、住み慣れた地域や家で自分らしい療養生活が送れるように支援するのが訪問看護サービスです。
介護される方の住んでいる地域にある訪問看護ステーションから、看護師や理学療法士・作業療法士などの専門家が自宅を訪問。医療的ケアを施します。
要介護度 | 自己負担額(1割の場合) | |
---|---|---|
要支援1・2 | 20分未満 | 303円 |
30分未満 | 451円 | |
30分以上1時間未満 | 794円 | |
1時間以上1時間30分未満 | 1,090円 | |
要介護1~5 | 20分未満 | 314円 |
30分未満 | 471円 | |
30分以上1時間未満 | 823円 | |
1時間以上1時間30分未満 | 1,128円 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
自己負担額(円/回 | |
---|---|
20分未満 | 266円 |
30分未満 | 399円 |
30分以上1時間未満 | 574円 |
1時間以上1時間30分未満 | 844円 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
訪問リハビリテーションとは、主治医によって訪問リハビリテーションが必要と認められた方の場合、利用者の自宅でおこなわれます。リハビリ専門職である理学療法士や作業療法士などが訪問してリハビリを提供します。心身の機能の維持回復や日常生活の自立を目的としています。
自己負担額(円/回) ※1単位10円の地域 | 単位 |
---|---|
308円 | 308単位 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
要介護認定を受けた方が、自宅で生活を続けられるよう身体機能の維持や向上を目指して機能訓練をおこなうサービスです。機能訓練だけでなく、他の利用者と交流することで社会的な孤立感を解消したり、認知症の予防を目的としています。
施設で健康チェックや排せつや入浴の介助、昼食やレクリエーション、機能改善などのサービスを受けます。その時間は家族が自由な時間になるので、介護する側も肉体的、精神的にリフレッシュすることができます。
要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 | |
---|---|---|---|---|---|
3~4時間未満 | 370円 | 423円 | 479円 | 533円 | 588円 |
4~5時間未満 | 388円 | 444円 | 502円 | 560円 | 617円 |
5~6時間未満 | 570円 | 673円 | 777円 | 880円 | 984円 |
6~7時間未満 | 584円 | 689円 | 796円 | 901円 | 1008円 |
7~8時間未満 | 658円 | 777円 | 900円 | 1023円 | 1148円 |
8~9時間未満 | 669円 | 791円 | 915円 | 1041円 | 1,168円 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
デイケアとは医療機関や介護老人保健施設などに通い、リハビリを受けられる介護サービスです。医師の指示のもと、国家資格を持つ専門家からリハビリを受けることができます。
デイサービスは日常生活のための機能訓練が目的ですが、デイケアはおもにリハビリテーションに特化したサービスといえます。
デイケアの利用時間帯は約6~8時間ほどの一日型が一般的です。集中的にリハビリをおこないたい方だけではなく、胃ろうや痰吸引などの医療的ケアが必要な方も多く利用しています。
要介護度 | 自己負担額(1回あたり) ※1単位10円の地域 |
単位 | |
---|---|---|---|
1時間以上2時間未満 | 要介護1 | 369円 | 369単位 |
要介護2 | 398円 | 398単位 | |
要介護3 | 429円 | 429単位 | |
要介護4 | 458円 | 458単位 | |
要介護5 | 491円 | 491単位 | |
2時間以上3時間未満 | 要介護1 | 383円 | 383単位 |
要介護2 | 439円 | 439単位 | |
要介護3 | 498円 | 498単位 | |
要介護4 | 555円 | 555単位 | |
要介護5 | 612円 | 612単位 | |
3時間以上4時間未満 | 要介護1 | 486円 | 486単位 |
要介護2 | 565円 | 565単位 | |
要介護3 | 643円 | 643単位 | |
要介護4 | 743円 | 743単位 | |
要介護5 | 842円 | 842単位 | |
4時間以上5時間未満 | 要介護1 | 553円 | 553単位 |
要介護2 | 642円 | 642単位 | |
要介護3 | 730円 | 730単位 | |
要介護4 | 844円 | 844単位 | |
要介護5 | 957円 | 957単位 | |
5時間以上6時間未満 | 要介護1 | 622円 | 622単位 |
要介護2 | 738円 | 738単位 | |
要介護3 | 852円 | 852単位 | |
要介護4 | 987円 | 987単位 | |
要介護5 | 1,120円 | 1,120単位 | |
6時間以上7時間未満 | 要介護1 | 715円 | 715単位 |
要介護2 | 850円 | 850単位 | |
要介護3 | 981円 | 981単位 | |
要介護4 | 1,137円 | 1,137単位 | |
要介護5 | 1,290円 | 1,290単位 | |
7時間以上8時間未満 | 要介護1 | 762円 | 762単位 |
要介護2 | 903円 | 903単位 | |
要介護3 | 1,046円 | 1,046単位 | |
要介護4 | 1,215円 | 1,215単位 | |
要介護5 | 1,379円 | 1,379単位 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
短期的に施設に入所して介護支援を受けられるのがショートステイです。介護する方が冠婚葬祭や出張などで数日間留守にしなければならなかったり、体調を崩してしまった場合に便利です。予定がなくても単なるリフレッシュでも利用できます。
要介護度 | 自己負担額(円/日) ※1単位10円の地域 | 単位 |
---|---|---|
要介護1 | 645円 | 645単位 |
要介護2 | 715円 | 715単位 |
要介護3 | 787円 | 787単位 |
要介護4 | 856円 | 856単位 |
要介護5 | 926円 | 926単位 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
要介護度 | 自己負担額(円/日) ※1単位10円の地域 | 単位 |
---|---|---|
要介護1 | 645円 | 645単位 |
要介護2 | 715円 | 715単位 |
要介護3 | 787円 | 787単位 |
要介護4 | 856円 | 856単位 |
要介護5 | 926円 | 926単位 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
要介護度 | 自己負担額(円/日) ※1単位10円の地域 | 単位 |
---|---|---|
要介護1 | 746円 | 746単位 |
要介護2 | 815円 | 815単位 |
要介護3 | 891円 | 891単位 |
要介護4 | 959円 | 959単位 |
要介護5 | 1,028円 | 1,028単位 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
要介護度 | 自己負担額(円/日) ※1単位10円の地域 | 単位 |
---|---|---|
要介護1 | 746円 | 746単位 |
要介護2 | 815円 | 815単位 |
要介護3 | 891円 | 891単位 |
要介護 | 959円 | 959単位 |
要介護5 | 1,028円 | 1,028単位 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
介護施設に短期間入所して介護サービスを受けるショートステイの中でも、医療的ケアに対応しているショートステイは「短期入所療養介護」と呼ばれます。在宅で療養していく中で医療面や機能面の回復とともに介護する方の負担軽くする目的もあります。
介護度 | 自己負担額(円/日) ※1単位10円の地域 | 単位 |
---|---|---|
要介護1 | 753円 | 753単位 |
要介護2 | 801円 | 801単位 |
要介護3 | 864円 | 864単位 |
要介護4 | 918円 | 918単位 |
要介護5 | 971円 | 971単位 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
要介護度 | 自己負担額(円/日) ※1単位10円の地域 | 単位 |
---|---|---|
要介護1 | 830円 | 830単位 |
要介護2 | 880円 | 880単位 |
要介護3 | 944円 | 944単位 |
要介護4 | 997円 | 997単位 |
要介護5 | 1,052円 | 1,052単位 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
要介護度 | 自己負担額(円/日) ※1単位10円の地域 | 単位 |
---|---|---|
要介護1 | 836円 | 836単位 |
要介護2 | 883円 | 883単位 |
要介護3 | 948円 | 948単位 |
要介護4 | 1003円 | 1003単位 |
要介護5 | 1,056円 | 1,056単位 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
要介護度 | 自己負担額(円/日) ※1単位10円の地域 | 単位 |
---|---|---|
要介護1 | 836円 | 836単位 |
要介護2 | 883円 | 883単位 |
要介護3 | 948円 | 948単位 |
要介護4 | 1003円 | 1003単位 |
要介護5 | 1,056円 | 1,056単位 |
参考:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
サービス利用者自身が負担する金額のことを「自己負担額」といいます。利用者が負担する金額は介護保険サービス料金の1割で、残りの9割は介護給付から支払われます。ただし、一定以上の収入がある高齢者に対しては自己負担額の割合を2~3割と定めているので注意が必要です。
自己負担割合がいくらになるかは要介護認定と同時に通知されます。計算根拠となる合計所得金額は、その前年の所得に基づきます。また、自己負担割合は更新されます。毎年その世帯構成や所得状況によって見直されるので、自己負担割合が2~3割の可能性もあります。
介護サービスを一度も利用しなかった場合でも、納めた介護保険料の返還はありません。介護保険料は、介護保険制度の財源に充てられ、介護を必要としている人のサービス費として利用されます。
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