高齢社会に伴い、「老老介護」や「認認介護」という言葉を聞いたことがある人も増えているでしょう。また、これらは今後、多くの人にとって自分事として問題になっていくことも十分に考えられます。この記事では、老老介護、認認介護について説明していきます。
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老老介護とは、高齢者が高齢者を介護している状態のことを言います。具体的には、介護する人も介護される側の人も65歳以上の高齢の場合で、さらに、共に75歳を超えている場合には「超老老介護」とも言われます。
日本では、老年人口と呼ばれる65歳以上の高齢者の割合が25%を超えてきており、完全に超高齢社会となりました。要介護者の人数が増加に伴って老老介護のケースも増えており、問題になってきています。
認認介護とは、認知症の高齢者が認知症の高齢者を介護している状態を言います。老老介護と同様に高齢社会に伴って増加の傾向にあります。
厚生労働省が2019年に実施した調査の結果では、介護が必要になった理由として一番多かったのは認知症であり、認知症患者の増加が認認介護が増えてきている要因となっています。
また、要介護申請をしていない人は現在800万以上いるといわれており、実態は調査結果などの数字以上に増加している可能性もあります。
認知症の診断は受けていないが、軽い記憶障害が出始めて、認知症の一歩手前の状態をMCI(Mild Cognitive Impairment)と言います。
現在、65歳以上の人のうち14%程度、約400万人以上がMCIになっているというデータもあり、認知症ではない状態でも、何らかの認知障害を持っている人が増えています。その結果、MCIの人が介護をしている状況も増加してきており問題視されています。
老老介護、認認介護はともに増加傾向にありますが、高齢者同士による介護にはさまざまなリスクがあります。注意したい点について見ていきましょう。
介護は、被介護者の身体を起こしたり支えたりすることも多く、健康な若者でも体力的な負担は大きいもの。これを高齢者がおこなうとなると、その負荷の大きさは相当なものになってしまいます。
場合によっては、無理をすることによって自分の身体を痛めて、その後の介護が難しくなってしまうことも考えられ、高齢者による介護の大きなリスクのひとつと言えます。
老老介護のような高齢者による介護は、介護をする人が社会とのつながりを失いやすいと言われています。主に、介護は自宅でされることが多く、時間も多く取られるため、介護をする人が社会とのつながりを持つことが困難になってくるのです。
また、介護に時間を取られることにより、テレビを見たり趣味に時間を使ったりする時間も制限されて、介護以外の情報が入ってこなくなることも考えられます。老老介護は、介護する人と介護される人の双方が、社会から孤立してしまう可能性があるので注意が必要です。
介護する人と介護される人がともに認知症の状態である認認介護は、より注意が必要です。
介護する人が認知症の場合、体調や食事の管理はもちろんのこと、例えば、服薬の管理において、必要な薬を飲ませるのを忘れてしまったり、間違った薬を提供し誤薬してしまうケースも出てきます。
認知症により被介護者の重大な体調の変化に気づけないことも考えられ、大きな問題につながります。
老老介護の場合、地震などの災害が突然発生したときに、すぐに対応ができないというリスクがあります。そのような緊急事態に対して日頃から備えておくことも難しいかもしれませんし、孤立していることにより新しい情報を得ることができず、適切な行動がとれないかもしれません。
迅速な行動が必要なときも、介護する人と介護される人が高齢の場合には、思うように災害を回避することができず、危険にさらされてしまうことも考えられます。
そもそも、老老介護や認認介護が増加している原因は何なのでしょうか?その要因について説明していきます。
老老介護状態の人が増加している大きな理由のひとつとして、長寿社会、少子高齢化が挙げられます。
医療の進歩により、年々平均寿命が延びているため高齢者が増え続けており、一方で、子供の数が減少傾向であれば、必然的に高齢者同士での介護が多くなります。
また、平均寿命は延びてきていますが、介護なしで日常生活を過ごすことができる「健康寿命」との差は広がってきており、これも老老介護状態の人が増加している要因です。
生活のスタイルが変化してきていることも、老老介護が増えてきている理由のひとつです。
例えば、核家族化によって、同居している家族の数が減ったり、子が親から離れた場所に住んでいるケースも多くなってきました。
また、晩婚化により子供が自分の子供を産むタイミングが遅くなってきていることで、子育てのために親の介護がしづらくなっているなども考えられます。女性の社会進出なども、親の介護がしづらくなってきている要因のひとつと言えます。
日本人は、他人を頼ることに抵抗感のある人が多いというのも要因のひとつと言えます。
自分の家族のことは、人に頼るようなことではなく、自分でなんとかしなくてはいけないという責任感を持っている人も多いです。
また、他人が自分の家に入って世話をすることに対する警戒心や、プライバシーを他人に見られたくないなどといった気持ちを持つ人が多いことも、老老介護をが増えている理由と言えます。
介護には何かと費用が発生します。介護施設に入所したり、介護サービスを利用したいけど、金銭的な理由により、自ら介護をしないといけない場合や、生活保護を受給しながら、やむをえず老老介護の状態になってしまっているケースも多いようです。
第三者にサポートをお願いしたくてもできない人が多いというのも実情です。
老老介護や認認介護の状態にならないようにしたいものです。ここからはその対策について説明していきます。
健康第一の毎日を送ることが、老老介護や認認介護で苦労しない一番の対策となります。日頃から適度な運動を心がけ、身体に良いものをよく噛んで食べるなど、食生活にも気を使う必要があります。
また、趣味など、自分が楽しいと感じることができるものを見つけ没頭することで、脳の活性化にもつながります。できる限り人とコミュニケーションをとる機会を増やすことも大切です。
介護は、高齢になれば誰にでも必要になってくる可能性があります。もし家族に介護が必要になった場合にどうするか、日頃から家族間で話し合っておくことが大切です。
介護する人、介護される人のそれぞれの状況や要望などを家族間で共有し、どのように対応するかを決めておくことで、いざ介護が必要になった際に、スムーズに対応することが可能です。
いろいろな人と日々コミュニケーションをとることは、高齢者が認知症になりにくくするための対策のひとつと言えます。
逆に、高齢者が社会から孤立している状態にいると、認知症になりやすいとも言われています。近所の人たちとできる限り関わりを持ち続けることで、認知症の対策になるだけでなく、家族では気づかないような様子の変化などにも気づいてもらえる場合もあります。
社会との関係性が途切れないように意識することは、老老介護を防ぐための手段のひとつです。
介護をする人が、介護の知識やスキルを持っていると、介護が必要になったときに、余計な負荷やストレスを軽減できる場合があります。
例えば、おむつ交換や排泄介助、歩行介助などは、事前に知識や経験を持っていないとすぐに対応することが難しいものです。
各自治体で開催されている介護教室に参加したり、介護に関する本やインターネットなどで情報を収集することにより、いざ介護が必要になった場合でも焦らず対応できます。
ここからは、実際に老老介護や認認介護の状態になってしまった場合に、どうするべきか説明していきます。
老老介護や認認介護の状態になり、被介護者が介護認定された場合は、居宅介護支援事業所に所属するケアマネジャーに相談することができます。
ケアマネジャーは、介護される人や介護する家族の状況などをヒアリングして、適切なケアプランを作成したり、各施設やサービス事業者との調整をしてくれます。まずは近くの居宅介護支援事業所を探してみましょう。
高齢者の暮らしをサポートする目的で、各自治体に地域包括支援センターという施設が全国で5000カ所以上作られています。
この施設には、ケアマネジャーを含め、介護、医療、保健や福祉などの専門職員が在籍しています。この地域包括支援センターは、高齢者のための総合相談窓口の役割を持っているので、介護や介護の予防などに関する不安や困りごとも相談をすることが可能です。
地域包括支援センターは、原則、市区町村に1カ所以上は設置されています。
老老介護や認認介護の負担を軽減するために、訪問介護や訪問看護のサービスを活用するのもひとつの方法です。
例えば、訪問介護では、介護スタッフに自宅を訪問をしてもらい、食事や排泄、入浴、掃除などの介護サポートをしてもらうことができます。定期的に来てもらうことにより、介護される人だけでなく、介護する人の様子もチェックしてもらえるので、共倒れのリスクを軽減することも可能です。
利用できるサービスの中には、介護保険外サービスというサービスもあります。
介護保険サービスは、サービス内容やサービスを受けるための条件が限定されていますが、介護保険外サービスでは、同居家族がいる場合の買い物や洗濯、食事の準備などの生活支援を受けることができたり、外出や旅行の付き添いなどもサービスの対象となります。
必要に応じて、介護保険外サービスについても地域包括支援センターやケアマネジャーに相談してみましょう。
老老介護や認認介護の負担を最も軽減できるのが、老人ホームなどの介護施設への入居です。介護施設では、生活のほとんどをプロに任せることになるので安心感もあります。
最近では夫婦で入居できる施設も増えてきているので、これまでの夫婦生活に近い状態を維持することも可能です。
サービスの内容や費用は、施設によって大きく異なるので、不明な点は施設の担当者に事前に確認しましょう。
ここまで、老老介護と認認介護について説明してきました。
老老介護と認認介護は、介護する側、介護される側の双方にとって深刻な問題になりうる可能性がありますが、対策次第では事前に防ぐことができ、各自治体、ケアマネジャーなど悩みや不安を相談する相手も存在します。
自分の家族のことで他人の手を借りることに対して罪悪感を感じる必要はありません。当事者のみで抱え込んだりせず、周囲のサポートを積極的に活用していきましょう。
老老介護は、高齢者が高齢者を介護している状態のことを言います。介護する人も介護される側の人も65歳以上の高齢の場合を指し、高齢社会の日本にとって問題のひとつとして挙げられます。
また認認介護は、認知症の高齢者が認知症の高齢者を介護している状態を言います。厚生労働省が2019年に実施した調査で、認知症患者の増加が認認介護が増えてきている要因だということがわかりました。超高齢社会が進む中で、今後も認知症患者は増え続けると予想されています。
「少子高齢化で介護者の年齢が高くなっている」「生活スタイルの変化」「他人を頼ることへの抵抗感」「経済的余裕がない」などが挙げられます。
特に、医療の進歩により平均寿命と健康寿命の差があることや、核家族化が進んだことが大きな理由として挙げられます。今後いかに高齢者夫婦をサポートできるかが老老介護問題の課題とも言えます。
「健康な生活を送る」「家族との相談」「近所と関わりを持つ」「介護について知識を蓄える」などが挙げられます。
まず、健康な生活を送るというのが一番の対策と言えるでしょう。日頃から適度な運動を心がけ、栄養バランスを考えた食事をすることが大切です。
また一人で抱え込まず、他の家族、ケアマネジャー、近所の頼れる人に今の状況を話し、相談することも対策として挙げられます。
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