介護をする上で「介護疲れ」は誰もが避けて通れない問題です。特に家族を介護する場合、介護疲れが深刻な問題に発展することもあります。ここでは介護疲れの原因や負担を軽減する方法、介護者のタイプ別ストレス対策を紹介します。
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介護疲れの原因は、状況や人によってさまざまです。以下ではどのようなことが原因となるのかをまとめました。
介護では多くの場合、身体的介助が伴います。「ベットや布団からの寝起き」「座る場所への移動介助」「衣服の着替え」「トイレや入浴の介助など」多種多様な場面で身体的介助が必要になります。
大人を身体介助するのは予想以上に重く、場合によっては自分よりも大きな人を介助しなくてはなりません。そのため、介護を続けることで、介護者が腰、ひざ、腕などを痛めてしまうことがあります。
また、トイレの介助が必要な場合は、就寝後のトイレ介助などで睡眠不足に陥ることも。身体的負担と睡眠不足が重なると、最終的に精神的負担につながってしまいます。
介護をしていると、介護による疲れや睡眠不足などで心の余裕がなくなってしまうのは誰にでも起こりうることです。
「慣れない介護によってストレスが溜まる」「被介護者から心ない言葉を浴びせられる」「ストレスから介護者が酷い態度をとってしまう」「余裕のない介護に自己嫌悪を抱いてしまう」など、介護における精神的負担は実にさまざまです。
また、介護・被介護者という立場になることで家族関係が変わる、家族とケアマネジャー、ヘルパーといった介護の専門職との関係性など、介護に関わる人たちとの人間関係も精神的負担につながります。
介護における精神的負担を放置していると、深刻な場合“介護うつ”になってしまうこともあります。そのため、小さな精神的負担も見逃さないようにしましょう。
認知症を発症した人の介護は、介護の中でも特に精神的負担を感じやすいものです。
認知症の影響で、「同じ内容の話を何度もする」「探し物がないと言い張る」「失禁や排便障害」「周囲の人に暴言や暴行をする」など、精神的負担の種となる行動は多種多様です。
発症することで、性格が変わってしまったり、意思疎通が難しくなる場合も多いのが認知症の特徴です。関係の深い家族であればあるほど、その変化に対する精神的負担も大きくなります。
いつ終わるとも知れない介護では、経済的負担も無視できません。
訪問介護やデイサービスなどの介護サービスは介護保険を利用することができても、在宅の場合、紙おむつやパッドなどの介護用品が別途費用としてかかってきます。
介護自体に費用がかかるのはもちろん、介護離職で収入自体が減少すると、さらに経済的負担が精神的負担につながります。
また、市区町村によっては、オムツ代支給サービスなど市区町村独自のサービスをおこなっている場合もあります。一度お住まいの市区町村に確認してみるのも良いでしょう。
介護疲れやストレスは本人だけの問題ではなく、老老介護や虐待など社会問題に発展する深刻な問題です。ここでは代表的な問題について見ていきましょう。
介護と仕事の両立が難しくなり、家族のために会社を退職や転職をすることを介護離職といいます。
介護と仕事の両立は負担が非常に大きいのが現状です。しかし介護をするために仕事を離れ、安定した収入源がなくなり経済的に困窮し、生活保護に頼らざるを得ない…といったケースが多く、社会問題となっています。
両立をサポートするための仕組みはいくつかあるので、介護離職をする前に状況に応じて利用できる介護サービスや育児介護休業法による介護休業・休暇といった制度を積極的に活用することをおすすめします。
超高齢社会に突入した日本では、高齢者が高齢者を介護する“老老介護”が大きな問題になっています。
老老介護では高齢者が介護をすることで、介護者自身に体の衰えが見られ、大きなリスクになるということが懸念され、また、知らないうちに介護者が認知症を発症し、介護者自身に介護が必要になる場合もあります。
介護による身体的負担・精神的負担が発展することで、“介護うつ”につながることがあります。
「在宅での介護にこだわって全て自分でやろうとする」「介護による悩みや愚痴を相談できない」「身体的負担や精神的負担を我慢する」など、全て自分でやろうとしてしまうと、知らないうちに精神的限界を迎えて、介護うつになってしまうケースが多々あります。
介護疲れや介護ストレスから、介護者が被介護者に虐待してしまったり、最悪の場合、殺人や心中につながるなど、痛ましい事件は後を経ちません。
施設での虐待もありますが、在宅での虐待・殺人は人の目が少ない分、事件に発展してやっと周囲の人がその深刻さに気づくケースもあります。
「おかしいな」と感じたら行政や地域包括支援センターなどへすぐに相談しましょう。
介護をする上で介護者の身体的負担は大きな問題です。介護者にとっての身体的負担を減らすために、介護保険サービスを積極的に利用しましょう。
介護による身体的負担を減らすために、まず最初に試したいのが“介護保険サービス”です。介護保険サービスとは、要介護認定を受けた被介護者のために利用できる介護サービスのことです。
介護サービスを利用するためには、各自治体の“介護保険の相談窓口”や“地域包括支援センター”、“ケアプランセンター”に行って相談しましょう。
ケアマネジャーは被介護者の介護度や心身の状態、生活環境、介護者の状況などを総合的に考慮して、最適なケアプランを作成してくれます。
ケアマネジャーへの相談は無料なので、現在の介護状況や率直な心境などを素直に相談してみましょう。
訪問介護とは、ホームヘルパーが利用者の自宅を訪問。入浴や排泄といった身体介護から、洗濯、掃除といった生活援助までを提供してくれる介護サービスのことです。
ホームヘルパーは初任者研修、実務者研修、介護福祉士のいずれかの資格を取得しているため、知識や技術が充分にあり、安心してサービスを受けることができます。
訪問入浴とは看護師1名を含めた2〜3名の介護スタッフが入浴のサポートをおこなってくれる介護サービスのことです。
要介護度が高く自力では入浴が困難な人や、家族の手だけでは入浴が難しい場合などさまざまなケースで利用されています。
訪問入浴サービスは専門の浴槽が使われるため寝たきりの人でも安心して利用できます。さらに看護師による入浴前後の健康チェックがおこなわれるなど、入浴サポートだけではないサービスがあるのも魅力です。
デイサービスとは、機能訓練・入浴・食事といった介護サービスを日帰りで利用する、高齢者の生活の質の向上を目指す通所型サービスです。
デイサービスを利用する場合は施設から車で自宅まで迎えにきてくれるので、誰でも安全に利用できます。
ただし、施設の送迎範囲が決まっているので、その範囲外の場合はその施設を利用したくても利用できません。
デイサービスでは、介護スタッフや看護師などの専門スタッフがサービスを提供。決められた時間に高齢者の機能訓練や集団・個別でのレクリエーションなどをおこないます。
自宅にこもりがちになる高齢者にとっては、外部との交流が持てることも嬉しいポイントです。
デイサービスを利用することで、日中の介護負担が減り、休息時間を確保することができます。
ショートステイとは短期間だけ介護施設を利用して、食事や入浴補助といった介護サービスを受けられる宿泊サービスです。宿泊期間は1泊2日から数週間可能で、最大30日間利用できます。
ただし、利用日数には原則上限があるので、担当のケアマネジャーに相談しましょう。
仕事の事情や冠婚葬祭などで「介護者が家を空けなくてはならないとき」「介護者が体調不良になったとき」「介護疲れでリフレッシュしたいとき」「将来の施設入居を見据えて施設に慣れておきたいとき」「退院が決まっているが在宅介護に不安を抱えているとき」など、被介護者と介護者の状況に合わせて利用しましょう。
小規模多機能型居宅介護(以下、小規模多機能)は、地域密着型サービスであり、ひとつの事業所でデイサービスを中心にショートステイや訪問介護といった3つのサービスをまとめて提供しています。
そのため、24時間・365日利用できるように休業日を設けていません。
また、空きがあれば「デイサービスを利用した後、そのままショートステイを利用」といった対応も可能です。
どのサービスを利用しても馴染みの職員が対応してくれる、そんな信頼関係を重視したサービスです。
介護保険外サービスとは、その名の通り介護保険の対象にならないサービスのことです。介護保険の対象ではないので、当然、費用は全額自己負担です。
介護保険の対象になるサービスが介護をおこなう上で最低限必要なサービスであるのに対し、介護保険外サービスは、より自由度の高いサービスになります。
介護保険の対象サービスは要介護の高さによって利用に制限があったりしますが、介護保険外サービスはその制限がありません。
介護保険外サービスは、被介護者の外出支援や配食、ヘアカットやネイルなどの訪問美容、紙おむつやパットの配達など、多種多様です。介護度や介護状態に合わせて、必要なものを利用しましょう。
また、どんな介護保険外サービスがあるかは、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談すると良いでしょう。
介護支援や高齢者支援を目的として、独自の介護支援サービスを提供している自治体もあります。
紙おむつやパッドなど介護用品に対する助成をはじめとして、手すりやスロープ設置のための住宅改修費用の補助、緊急連絡装置などの設置、外出支援サービスなど、サービス内容は自治体によってさまざまです。
また、介護費用が高額になった場合は、経済的負担を軽減する制度もあるので上手く活用しましょう。
介護が始まったら、各自治体の介護支援サービスを一度チェックしたり、介護保険の担当課で無料で配布されている介護保険のパンフレットを参考にするのもおすすめです。
「高額介護サービス費制度」は、1カ月の介護保険サービス自己負担額が限度額を越えた場合、越えた分の金額が戻ってくる制度です。支給対象の人には自治体から「支給申請書」が送られくるので、忘れずに申請しましょう。
高額介護サービス費の支給を受ける際は、各自治体の窓口に申請しましょう。以下、申請時に必要な主な書類をまとめました。
「高額医療・高額介護合算制度」は、同一世帯で支払った介護保険サービスと医療費の自己負担額の合計が基準を越えた場合、越えた分の金額が戻ってくる制度です。
合算期間は8月1日から翌年の7月31日で、利用するには自治体の国民健康保険窓口で申請します。
ただし、同一世帯内でも「夫が75歳以上で後期高齢者医療保険、妻が75歳未満で国民健康保険」など、加入する保険が異なる場合は合算することができません。さらに、基準を500円以上越えない場合は適用外です。
高額医療・高額介護合算制度を利用する際は、各自治体の窓口に申請しましょう。以下、主に必要な書類をまとめました。
日常的に介護をしていると、被介護者を抱きかかえたり、起こしたりする場面が多くあります。大人一人を抱きかかえるのは腰や膝に負担がかかり、体力的にも厳しい作業です。
「どんな態勢なら被介護者が違和感なく移動できるか」「どのように体を動かせば介護者の身体の負担を減らせるか」といった介護におけるスキルを身につけておけば、おむつ替えや着替え、排泄介助や入浴介助が楽になります。
自治体や地域によっては、家族向けの介護教室や、初めて介護する人向けのイベントなどが開催されることもあるので確認しましょう。
介護における精神的負担は、ときとして身体的負担以上に深刻なものとなります。介護者の精神的負担が増えれば、介護どころか介護者自身が普通に生活を送ることすら難しくなることもあります。
ここでは、精神的負担が増える前に今からできる対策について見ていきましょう。
精神的負担を減らすために最初にできるのは、“介護の話を誰かに聞いてもらう”ことです。介護における悩みや辛さ、愚痴を第三者に話すことで、介護による孤立を防ぐことができます。
主に下記の相手に相談すると良いでしょう。
例えば、介護保険サービスのケアプランを作成する“ケアマネジャー”には守秘義務があります。そのため、他人に相談できない介護の悩みを打ち明けることができますし、悩みをケアプランに反映してくれます。
また、認知症専門医は認知症に関する知識だけでなく、認知症介護における辛さや悩みに対する知見があるので、被介護者への接し方などのアドバイスも期待できます。
被介護者が認知症を抱えている場合には、町内会や民生委員、マンションの管理人など、近所の人に状況を知らせておくと、いざというときに助けを求めることもできます。
家族や親族であっても、介護をするのは容易ではありません。特に介護期間が長くなったり、在宅介護をしている場合は、介護疲れが蓄積されることで、介護によるストレスが増大します。
介護生活でストレスを強く感じたり、ネガティブな感情が生まれた場合は、短時間でも良いので自分の時間を持ちましょう。
介護から離れられる時間を定期的にとることで、ストレスが溜まり過ぎるのを防げます。
自分の時間を持つのが難しい場合は、介護サービスを積極的に利用するのがおすすめです。介護を他人に任せることに罪悪感を抱える人は多いですが、大切なのは、被介護者と介護者がともに良好な関係で介護に望めることです。
介護に限定した話ではありませんが、適度な運動はストレス発散に効果があるとされています。運動によって血流が良くなれば、自律神経の調整や心身のリラックスにつながるとも考えられています。
運動が苦手な人は、軽いジョギングやウォーキング、ストレッチなど、簡単な運動を試してみましょう。
自治体や施設によっては、介護者のためのセミナーや家族会が開催されています。介護に関する知識を得ることができたり、介護における悩みを話すなど、内容はさまざまです。
中でも認知症に関する介護家族の会は充実しており、「認知症介護者家族会」などといった専門の会も開設されています。
介護家族の会では、介護における日頃の想いを語り合ったり、情報交換ができるだけでなく、認知症という病気自体への理解や対応方法も学ぶことができます。
被介護者や介護者の意思を尊重して在宅での介護を選択する人は多いでしょう。しかし、在宅での介護は負担が大きいので、介護者が心身ともに疲れきってしまうケースは少なくありません。
介護者が倒れてしまっては元も子もないので、状況に合わせて介護施設への入居も考えましょう。
いきなり入居が難しい場合には、デイサービスやショートステイなど介護保険サービスを利用して、自宅以外での生活に徐々に慣らしておくのも得策です。
介護者がポジティブに介護に向き合うために、ストレス発散は必要不可欠。ここでは介護者のタイプ別にストレスを溜めこまない方法を紹介します。
悩みや問題を抱えていても、誰かに話すことでストレスが緩和するのはよくあることです。信頼できる人物や同じように介護に悩んでいる人に介護の悩みを相談してみましょう。
ただ、介護の悩みは身内の恥をさらすようで誰にも相談できない、と感じる人は多いもの。知り合いに相談するのが難しい場合は、ケアマネジャーや介護家族の会など、プライバシーが守られる機関を利用しましょう。
一人で介護をおこなっている人や家族の協力が得られない場合は、介護生活に“レスパイトケア”を取り入れてみましょう。
レスパイトケアとは、休息や息抜きを意味する言葉。介護者が一時的に介護から解放されるよう、外部サービスを利用することを指します。
真面目な人ほど、介護の全てや家事を一人でおこなおうとしてしまいます。定期的に休息をとり、ストレスを溜め込まないようにしましょう。
慣れない介護が始まったり、介護生活が長くなると、やる気が起きにくくなったり、周囲への関心が薄れたりと、さまざまなことに消極的になってしまう場合があります。
そんなときは新しいことにチャレンジしたり、趣味を持つことがおすすめです。介護とは関係のない、自分のためだけの時間を持つことで充足感を感じることができます。
介護生活が長くなると、「いつまでこの生活が続くんだろう」「どれだけ介護しなくてはいけないのか」とどうしてもネガティブな気持ちが生まれてしまいます。
ネガティブな感情を我慢する必要はありませんが、溜め込み続けることで精神的負担に直結してしまいます。介護生活に限界を感じたら、介護施設への入居も選択肢に入れましょう。
限界を感じてから施設を探すのはさらに負担となるので、介護が始まった段階で施設への入居検討や見学をしておくのがおすすめです。
介護生活を送る上で大切なのは、“無理をしないこと”。身体的負担や精神的負担が積み重なると、介護疲れや介護うつにつながってしまいます。
利用できる介護保険サービスは利用する、必要に応じて介護保険外サービスを取り入れるなど、他者の力を借りて介護の負担を減らすのは、介護疲れを予防するための有効な方法です。
介護者の中には介護保険サービスを利用することに罪悪感を感じる人もいますが、すべて自分たちでおこなおうとして、介護者が疲れきってしまっては元も子もありません。
自分だけの時間を持ち、定期的にストレスを発散するなど、自分を大切にしながら無理せず介護をおこないましょう。
「身体的負担」「精神的負担」「認知症介護の負担」「経済的負担」などが挙げられます。
介護の状況によっては、夜間も介護しなくてはならず介護者への負担が身体的、精神的なものへと現れてきます。
また、認知症の介護となると被害妄想であったり、徘徊などにも対応しなくてはならず、危険を回避することを考えると自ずと介護サービスの利用量が増え、経済的負担にもつながります。
まずは在宅介護サービスを利用し、少しでも身体的負担を減らすことが重要です。ただし、介護度に応じた自己負担額を超えてしまうと10割負担となってしまい経済的負担へとつながるので在宅介護サービスを利用する際は注意しましょう。
また、精神的負担を取り除く方法として、介護についてケアマネジャーや周囲の人に話を聞いてもらったり、ストレス発散に運動を取り入れてみたり、少しでも自分の時間を持つことが介護疲れを解消する方法として効果的です。
それでも介護疲れが解消されない場合は、老人ホームへの入居も検討しましょう。
「介護離職」「老老介護」「介護うつ」「介護虐待」などが挙げられます。
介護疲れによる問題は今や社会問題として取り上げられることが多く深刻です。
また2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、高齢者の人口が増加し、新たな問題が出てくる可能性も考えられます。現状、日本が抱えている介護の問題をいかに早く解決できるかが今後の鍵と言えるでしょう。
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