要介護5であると認定された場合に、受けることができる介護サービスはどのようなものがあるのでしょうか。
利用可能な介護サービスの種類や内容、気になる費用について。また、要介護5で入居できる介護施設について説明します。
Contents
要介護5は要介護認定の全7段階のうち、最も介護負担が大きい状態を言います。要介護5になると、ほぼ寝たきり状態で、本人とのコミュニケーションもあまりできない状態です。
身体的な症状に加えて、認知症などの精神的な症状も目立ってきます。動作のほとんどを自分で行うことができないので、最も介護の支援が必要です。一人暮らしの場合は家の中を清潔にたもつことも難しくなります。
要介護5が具体的にどのような状態か見てみましょう。
要介護5になると、立ち上がったり歩いたりすることはほとんどできないので、ほぼ寝たきり状態になります。認知症の方が要介護5になると徘徊の危険は減りますが、ずっとベッドに寝ているだけなので症状が進行してしまいます。
要介護4の人よりも必要な介護も増えてきます。ベッドに長時間寝たまま自力で身体を動かすことができないので、床ずれ防止のため定期的な体位変換が必要になります。
また、飲み込む力も弱くなるので、必要な栄養を食事から摂取しづらくなり、経管栄養や吸引といった医療行為が必要になることもあります。
要介護度の認定基準は、厚生労働省が定めた「要介護度認定基準時間」がひとつの基準となっています。
「要介護度認定基準時間」というのは介護の手間にかかる時間を表したもの。介護を受ける方ができることや介助の方法、障がいがあるかないかなどから、統計データによって時間を推計しています。
要介護度により、以下のように定められています。
出典:「要介護認定はどのように行われるか」(厚生労働省)
例えば要支援1なら「要介護度認定基準時間」は25分以上32分未満、要支援2と要介護1なら「32分以上50分未満」と定められています。
この基準に該当する、または相当すると判断された場合にそれぞれの要介護度が認定されます。
厚生労働省が発表した『平成28年国民生活基礎調査の概況』に要介護5になった原因についての調査結果があります。
それによると要介護5の認定につながる一番の要因は「脳血管疾患(脳卒中)」の発症で、全体の約30%にもなります。脳卒中とは、脳の血管が破れたり詰まったりして、脳に血液が届かなくなる病気です。
脳卒中は死亡よりも後遺症のリスクが高く、再発しやすいので、繰り返すうちに脳に障害がおこって要介護5になるケースが多くなっています。
訪問介護とはホームヘルパーと呼ばれる訪問介護員などが自宅を訪問。入浴や排せつ、食事などの「身体介護」をおこなったり、調理、洗濯や掃除といった家事の「生活援助」をおこなうサービスのことです。
看護師1名を含めた2〜3名のスタッフが自宅に来て、専用の浴槽を使い入浴のサポートをする介護サービスです。
介護される方だけでの入浴が困難な場合や、家族の介助だけでは入浴が難しい場合に利用されます。自宅の浴槽が狭かったり体調の急変が心配な方も安心して入浴できます。
訪問リハビリテーションとは、主治医によって訪問リハビリテーションが必要と認められた方の場合、利用者の自宅でおこなわれます。
リハビリ専門職である理学療法士や作業療法士などが訪問してリハビリを提供します。心身の機能の維持回復や日常生活の自立を目的としています。
病気や障がいのある方が、住み慣れた地域や家で自分らしい療養生活が送れるように支援するのが訪問看護サービスです。
介護される方の住んでいる地域にある訪問看護ステーションから、看護師や理学療法士・作業療法士などの専門家が自宅を訪問。医療的ケアを施します。
要支援又は要介護に認定された方を対象に、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士などが通院が困難な要介護者の自宅を訪問し、介護予防を目的とした療養上の管理や指導をします。
また、ケアマネジャーに対してケアプランの作成に必要な情報共有をします。
18時から8時までの時間帯に提供される訪問介護サービスのことです。在宅で過ごす介護が必要な方が、夜も安心して過ごせるよう提供されます。
離れて住んでいる一人暮らしの方を対象に、就寝準備や起床準備、夜のトイレ介助やおむつ交換に対応しています。家の中での転倒や急病といった体調の変化に対応する連絡先や救急車の手配も夜間対応型訪問介護のサービス対象です。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、定期的に介護スタッフが自宅を訪問してくれる「定期巡回訪問サービス」と、要望を受けて自宅を訪問する「随時対応サービス」があります。
日中〜夜間を通じて24時間365日サービスを受けることが可能。「定期巡回サービス」「随時対応サービス」「随時訪問サービス」「訪問看護サービス」を組み合わせて利用します。
サービス内容が重複する通院等乗降介助を除いて、訪問介護や夜間対応型訪問介護と併用することはできません。
要介護認定を受けた方が、自宅で生活を続けられるよう身体機能の維持や向上を目指して機能訓練をおこなうサービス。機能訓練だけでなく、他の利用者と交流することで社会的な孤立感を解消したり、認知症の予防を目的としています。
施設で健康チェックや排せつや入浴の介助、昼食やレクリエーション、機能改善などのサービスを受けます。その時間は家族が自由な時間になるので、介護する側も肉体的、精神的にリフレッシュすることができます。
デイケアとは医療機関や介護老人保健施設などに通い、リハビリを受けられる介護サービスです。医師の指示のもと、国家資格を持つ専門家からリハビリを受けることができます。
デイサービスは日常生活のための機能訓練が目的ですが、デイケアはおもにリハビリテーションに特化したサービスと言えます。
デイケアの利用時間帯は約6~8時間ほどの一日型が一般的です。集中的にリハビリをおこないたい方だけではなく、胃ろうや痰吸引などの医療的ケアが必要な方も多く利用しています。
福祉用具のレンタルは介護される方だけでなく介護する方にとってもありがたい存在です。貸与対象となる福祉用具の一例を挙げると、車いすや特殊寝台、床ずれ防止用具や歩行補助杖があります。
特定の福祉用具を購入する場合には購入費の助成があります。サービスの対象となる福祉用具には下記のようなものがあります。
短期的に施設に入所して介護支援を受けられるのがショートステイです。
介護する方が冠婚葬祭や出張などで数日間留守にしなければならなかったり、体調を崩してしまった場合に便利です。予定がなくても単なるリフレッシュでも利用できます。
介護施設に短期間入所して介護サービスを受けるショートステイの中でも、医療的ケアに対応しているショートステイは「短期入所療養介護」と呼ばれます。
在宅で療養していく中で、医療面や機能面の回復とともに介護する方の負担を軽くする目的もあります。
小規模多機能型居宅介護は、同一の介護事業者が通所介護(デイサービス)を軸に、訪問介護や短期入所生活介護(ショートステイ)を一体的に提供する介護サービスです。
在宅でいくつもの介護サービスを利用する中で、介護される方の状況の変化による契約変更などの手続き。介護する方の負担や不安を解消できるというメリットがあります。
また、通所・訪問・ショートステイを組み合わせても月額料金が定額なので、介護保険利用限度額を超過する心配がないのも大きな特徴です。
認知症の方のための専門デイサービスで、自宅から施設までの送迎があり、食事や入浴など生活サポートやレクリエーションを施設に通っておこなうことができます。
引きこもりがちな認知症の方のために、職員や利用者間、地域の方との交流の場を設けながら社会的孤立感を緩和する目的があります。また介護する方の孤立感や介護負担を軽減する面もあります。
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)とは、認知症の方に特化した小規模の介護施設です。
これまでと同じ地域で暮らし続けることができる地域密着型サービスとなっています。ユニットと呼ばれる5~9名のグループ単位で、家事などの役割を分担しながら共同生活を送るのが最大の特徴です。
認知症介護の知識や技術を持ったスタッフも担当制なので、いつも同じメンバーでそれぞれの状況に合わせた認知症ケアを受けられます。
介護保険の対象になる住宅改修工事には、手すりの取り付けや段差や傾斜の解消、ドアから引き戸への扉の交換、和式便器から洋式便器への交換などがあります。
屋内だけでなく玄関から道路までの段差解消なども対象となる場合があります。
介護サービスの利用には、介護度に応じた支給限度額が決められています。特定施設入居者生活介護、特別養護老人ホーム、在宅介護(居宅介護サービス)の場合で支給限度額は変わります。
特定施設入居者生活介護 | 24,390円 |
---|---|
特別養護老人ホーム | 26,130円 ※2 |
居宅介護サービス | 36,217円 |
出典:「介護報酬の算定構造」(厚生労働省)
※1,自己負担額が1割負担/30日の場合です。居住地の地域等で変動します。
※2,多床室での金額
在宅介護で要介護5の人の支給限度額の上限は1ヵ月あたり362,170円です。そのうちの1割を自己負担額として計算すると、36,217円が自己負担額上限になります。
要介護5で特定施設入居者生活介護に入居した場合の自己負担額は24,390円、特別養護老人ホームに入居した場合は26,130円になります。
施設に入居した場合は、施設利用料の介護サービス費用1割のほかに、医療費や食費や居住費、生活費がかかります。これらは全額自己負担です。合算すると施設入居にかかる費用負担はそれなりに大きくなるので、注意が必要です。
特別養護老人ホームでは要介護3以上が入居対象になりますが、要介護3、4に比べて要介護5はもっとも介護の重要性が高く優先的に入居を認めてもらえます。特に認知症などで本人や家族の日常生活に大きな影響がでている場合は入居できるケースが多いようです。
ただし、特別養護老人ホームも数に限りがありますし、申し込みも多く競争率の高い施設です。特別養護老人ホームと並行して民間の施設なども検討しましょう。
要介護5の場合は、施設を選ぶときに医療行為が可能かどうかも確認することが必要です。
要介護5の人は自力でものを飲み込む力がない人が多く、「胃ろう」という医療行為が必要になります。胃ろうはおなかに開けた穴にチューブを通し、胃の中に直接栄養を注入する方法。胃ろうは医師の指示のもとに、看護職員や研修をうけた介護スタッフが行うことになります。
もし現状は医療行為が必要ではない状態だとしても、入院してから必要になった場合、対応できない施設だと転院しなければいけません。
胃ろうやその他医療行為が必要な時に、どのような対応をしてくれるかは、利用者が要介護5であれば事前に施設に確認しておきましょう。
介護サービス費用 (1割負担の場合) |
月額費用相場 | 合計(目安) | |
---|---|---|---|
介護付き 有料老人ホーム |
24,390円 | 200,000円 | 224,390円 |
住宅型 有料老人ホーム |
36,217円 ※1 |
200,000円 | 236,217円 |
サービス付き 高齢者向け住宅 |
36,217円 ※1 |
150,000円 | 186,217円 |
グループホーム ※2 |
25,770円 | 110,000円 | 135,770円 |
特別養護 老人ホーム ※3 |
26,130円 | 69,000円 | 95,130円 |
老人保健施設 ※4、※5 |
30,360円 | 54,660円 | 85,020円 |
※1 支給限度額の上限までサービスを利用した金額
※2 2ユニットの場合の費用
※3 多床室での金額
※4 「住まい」ではないので、一定期間のみ利用可能です。
※5 多床室(従来型)での金額。分類により料金が変動します
在宅介護と施設入居では、当然ながら在宅介護の方が費用を抑えることができます。
在宅介護では住居費や管理費が不要ですが、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の場合は約100,000円。介護付き有料老人ホームでは約120,000円が必要です。
しかし、だからといって在宅が必ずしも良いとは限りません。在宅で生活する場合は、単身なら利用者自身が家事などをすべておこなわなくてはなりません。また家族と一緒に住んでいる場合も、家族に介護負担がかかります。
たとえ要介護1でも、生活環境や家族構成、持病によって現在の状態や今後の状態がそれぞれ大きく異なります。
ケアマネジャーと相談しながら、介護される方と介護する方にベストな介護を選択しましょう。
自治体によっては要介護認定を受けてた方におむつ代を支給する「おむつ代助成制度」というものがあります。
おむつ代助成制度は、おむつを現物給付するものとおむつの支払い額に対して助成金が出るものがあります。お住まいの自治体がどのような助成をしているかは、担当の窓口で確認してください。
現物給付では、自治体が提示する商品カタログの中から選ぶかたちになります。大人用紙おむつだけではなく、おしり拭きや消臭剤、防水シーツも対象のところもあります。
現金給付の場合では、現金だけではなく、おむつ購入券や介護用品と交換可能な給付券を支給している自治体もあります。
「高額介護サービス費制度」は、1ヵ月の介護保険サービス自己負担額が限度額を越えた場合、越えた分の金額が戻ってくる制度です。支給対象の方には自治体から「支給申請書」が送られくるので、忘れずに申請しましょう。
要介護5は、自力で立ち上がったり歩いたりすることはほぼできず、寝たきりの状態か車椅子が必須の状態と言えます。また要介護5の認知症の人については、筋力の低下に伴って徘徊の危険度は下がる一方で、寝ている時間が多くなり症状の進行がより早くなってしまいます。
寝たきりの状態が続くと、身体機能が低下するだけでなく、内臓の機能も低下し廃用症候群を引き起こします。廃用症候群は主に、関節拘縮や誤嚥性肺炎、うつ状態など症状はさまざまです。また寝たきりになると、常に同じ姿勢で寝ているため床ずれを起こす可能性も高いので注意しましょう。
要介護5の人の場合、要介護3、4の人に比べ介護の重要性が高く優先的に入居を認めてもらえる傾向にあります。ただし、要介護5だからといって確実に入居できるわけではありません。情報収集など早めの行動を意識し、特別養護老人ホームと並行して民間施設なども検討しましょう。
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。