介護離職とは、家族の介護を理由として所属していた会社を辞めてしまうこと。「家族の介護のために…」と言えば聞こえは良いかもしれませんが、決しておすすめできるものではありません。
そこでこの記事では、なぜ介護離職をおすすめできないか?の理由に加えて、介護離職の現状や原因、介護離職後の問題点、国や企業が取り組む防止策を紹介していきます。
Contents
介護と仕事の両立が難しくなり、家族のために会社を退職や転職をすることを介護離職と言います。
介護と仕事の両立は負担が非常に大きいのが現状です。しかし介護をするために仕事を離れ、安定した収入源がなくなり経済的に困窮し、生活保護に頼らざるを得ない…といったケースが多く、社会問題となっています。
両立をサポートするための仕組みはいくつかあるので、介護離職をする前に状況に応じて利用できる介護サービスや制度を積極的に活用することをおすすめします。
「介護と仕事の両立が難しい職場だった」という理由が介護離職の多くを占めています。
総務省統計局の2017年の調査によると過去1年間に介護離職した人は約9.9万人、転職した人は2.5万人で無業者は7.5万人です。介護しながら仕事に就くことの難しさが数字からうかがえます。
高齢社会の日本では、今後ますます介護離職者が増えることが予想されます。国や企業が介護と仕事の両立支援についてさまざまな対策を講じているにも関わらず、正しく理解され、運用されているとは言い難い状況です。
介護離職の原因や理由についてしっかりと理解して、安心して仕事をできる環境を労働者と企業、国とが協力して整備することも大切です。
介護離職をすることで起こるメリット・デメリットに関して見ていきましょう。
介護離職のメリットは以下の通りです。
それでは詳しく説明していきます。
仕事をしながら介護も並行していくには心身ともに疲弊し、落ち着かないことがほとんど。ときには仕事中に要介護者が行方不明になったり、仕事の合間に訪問系サービスの手配や配達弁当の不着の対応などに追われることもあるでしょう。
介護離職すれば、介護のみに集中することができるため、さまざまな負担が軽くなります。
遠方の要介護者であれば短期間泊まり込みも可能に。加えて、要介護者と一緒にいる安心感や親孝行しているという実感、コミュニケーションも深まるため、スムーズな介護に繋がると言えるでしょう。
仕事と介護を並行させるために、一般的な訪問介護やデイサービス、ショートステイや配達弁当サービス、有料の見守りサービスを利用されている方もいらっしゃるでしょう。介護のプロに任せれば、その分、出費も増えます。時には数百万円と高額になることも。
介護離職すれば、介護保険を利用しつつも家族中心の介護になるため、外部の介護サービスの金額は抑えられるメリットがあります。日中動きやすくなるため、余計な通信料や時間外のサービス費なども抑えられます。
介護離職のデメリットは以下の通りです。
以下で、詳しく見ていきましょう。
介護離職が多いのは40~50代。中堅社員としての安定した収入が途絶えるので、今までの生活を維持することは難しくなります。
収入がなくなるので、当然ですが貯蓄はできなくなります。また、再就職できたとしても年収は大幅にダウンするケースが多いのが実情。介護の必要がなくなった後のことを考え人生100年時代を見据えて準備をしましょう。
体力的・精神的・時間的負担の大きい介護と仕事の両立の負担から解放されると、介護にかかる費用を軽減し、落ち着いた介護生活を送れるように思えるのですが、それは少々ムシがよすぎるかもしれません。
離職すれば安定した収入源がなくなり、社会との交流も少なくなります。その結果、誰にも頼れず孤立することにより、精神的なダメージで不安定になる介護者も多いのが現状です。
介護離職すると今までのキャリアを中断することになり、離職期間が長引くほど再就職は困難になります。収入源がないので貯金を切り崩したり、親の年金での生活が続くことも考えられます。
介護保険を利用しても紙おむつなどの消耗品や介護用品を揃えるための費用は発生し、介護費用は想像以上に家計を圧迫します。
介護はいつか終わりを迎えますが、唯一の収入源だった年金がなくなってから再就職をと思っても、再就職先を見つけるのは大変に困難です。
高齢化に伴い介護離職者も増えています。国も介護と仕事を両立する労働者を救済するための制度を設けています。
介護休業制度とは、家族が身体または精神上の障害などにより2週間にわたって介護を必要な場合、対象家族1人につき93日まで介護のために休みを取得できる制度です。
1年以上の雇用など一定の条件を満たしている労働者は国から「介護休業給付金」が支給されます。介護休業給付タイミングは復職後。介護休業を希望する場合は、原則事業主を経由して申請を行うので、早めに周知しておくことをおすすめします。
申し出を受けた事業者は、介護休業の開始日と終了予定日を厚生労働省に通知しなければいけません。
介護休暇制度は家族の介護のために休暇を取る制度で、介護休業制度よりも単発で利用できます。
対象家族が1人だと1年につき5日まで、半日だと10回まで取得可能。当日の申請が可能で1日か半日単位で取得できます。
6ヵ月以上の雇用、要介護状態にある家族を介護しているなどが条件にあります。この場合、食事や排泄サポートなどの直接の介護だけではなく、ケアマネジャーとの面談や福祉用具レンタルのための打合せ、介護保険の手続きなども対象となります。
介護との両立をするため勤務時間を制限する制度もあります。労働者の請求により、1回につき所定外労働と時間外労働で1ヵ月以上1年以内の期間、深夜業は1ヵ月以上6ヵ月以内の期間残業を制限できます。
なお事業者は請求を拒むことができ、入社1年未満や1週間の所定労働日数が2日以下などは対象外となるケースもあります。労働者は請求をする際、事前に要件を確認しておくことが大切です。
職場の中心的存在の突然の退職は、本人だけでなく企業にとっても大きな損失です。ここでは一般的に企業で行っている介護離職防止策を紹介します。
企業が制度を設けていても、労働者に周知・活用されていなければ意味がありませんよね。
確かに以前では、育児・介護休業法の両立支援制度を知らないまま介護と仕事との両立に苦しむ労働者も少なくありませんでした。
しかし昨今では、介護に関わる制度についてしっかり周知し、支援制度によって労働者の負担軽減に繋げようという企業も増えてきました。
活用事例として過去に制度を取得した人がいるのか?など、お勤めの会社に確認してみても良いかもしれません。
育児・介護休業法では「所定労働時間短縮制度」「フレックスタイム制度」「時差出勤制度」「介護サービス費用助成、その他準ずる制度」のいずれかで対応措置を設ける必要があります。
育児・介護休業法の内容を理解することは、介護離職を防ぐために必要不可欠です。難しく思えるかもしれませんが、制度の内容をしっかりと理解することも大切です。
複数の制度を設け、介護しながら働く労働者に合った制度を選択して労働者が無理なく柔軟に働ける企業も増えてきていますよ。
新型コロナウイルスをきっかけに、リモートワークが普及しました。
リモートワークをすることで、通勤時間の削減をはじめとして日中の時間が柔軟に使えるように。介護と仕事のスケジュールを効率良く組むことで、両立の負担軽減に繋げられる可能性も高まったはず。リモートワークを実施したい方はまずは可能かどうか会社に相談してみましょう。
介護と仕事の両立で無理をしていると感じたときは、早めに対策を講じましょう。ここでは介護離職をする前にできる軽減策を紹介します。
介護に関わる制度や介護サービスを使っても無理をしていると感じた場合は、介護離職をする前に、老人ホームへの入居を検討しましょう。
人気が高い施設は待機期間が発生するので早めに準備をすることが大切です。費用面で折り合いをつけるのが大切なのはもちろんですが、家族である介護者と要介護者が安心した生活が保障されなければ意味がありません。
仕事を辞めずに安定した収入を確保し、介護の専門スタッフに任せた方が、お互いの幸福度が上がるケースも多くあります。家族でよく話し合って判断して、気持ちを切り替えることも大切です。
在宅介護でも使える介護サービスがあります。
デイサービスやデイケアは送迎がついており、食事や排泄などのサポートを受けるだけでなく、レクリエーションに参加して交流を持ったり、リハビリテーションを受けることもできます。
もちろん、介護の専門スタッフに相談することもできます。介護者が息抜きをするためにも、在宅介護サービスをうまく活用しましょう。
介護と仕事を長く続けるためのコツは、無理をしないことです。要介護者はもちろん、介護者の体調や精神が安定していることが必要で、そのためにもレスパイトケアを活用することが重要です。
レスパイトとは「小休止」という意味で、介護者が一時的に開放され休息をとることです。ショートステイが一般的で、介護保険の適用が可能です。
介護は一人で抱え込まないことが大切です。家族を相談相手とすることはもちろんですが、協力的であるとは限りません。
家族以外に社会の中でも相談ができる窓口があり、各市区町村に設置されている地域包括支援センターの介護相談窓口を利用することもできます。かかりつけの病院のソーシャルワーカーなどの専門スタッフやケアマネジャーも貴重な相談相手です。
特にケアマネジャーには守秘義務があり、介護生活の中でも身近な相談相手として考えることができます。ケアマネジャーは要介護者だけでなく介護者の心身の状況を配慮してケアプランを立てることが主な仕事です。
在宅介護で無理を感じるのは、介護者一人に負担がかかっていることが理由として挙げられます。
長く在宅介護生活を続けるためには介護ストレスや疲労を介護者一人で抱え込まないことが重要です。社会から孤立しないよう、日頃から相談できる相手や窓口を見つけるなどして、サポート機関を利用することが大切です。
最適な介護は、その時の状況によって異なります。無理をして完璧な介護を続けて“共倒れ”をするより、介護者は自分自身の心身を労りながら、大切な家族の介護を長く続けることが望ましいと言えます。
「介護と仕事の両立が難しい職場だった」という理由が最も原因として多いです。
高齢社会の日本では、今後も介護離職者が増えることが予想されており、企業による支援制度が益々必要です。介護を理由に離職を考えている場合は、介護に対しての支援制度がないかを一度確認してみましょう。
「収入の減少が激しい」「精神的なダメージが大きい」「再就職が難しく生活が困窮する」などが挙げられます。
特に介護離職の多い40~50代は安定した収入が途絶えることで生活の維持が難しくなり、離職した年齢によっては再就職が大変困難です。また離職をしたことで、社会的に孤立することも考えられ、場合によっては介護うつなどの疾病を発症する可能性もあります。
まずは在宅介護サービスの利用や老人ホームへの入居も検討してみましょう。
老人ホームに関しては、満室のため待機期間が発生する施設もあるので早めに資料を取り寄せ、見学することをおすすめします。
また介護と仕事を長く続けるためには、一人で抱え込まず周りに相談をし、時には在宅介護サービスのショートステイを利用しながら一時的に介護から離れるといったことも重要です。
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。