高齢者の脱水症とは、のどの渇きや温度に対する感覚が弱くなり、体内の水分量が不足している状態を指します。脱水症のリスクが高まるのは夏場だけでなく、高齢者の方にとっては常に危険が潜んでいることを忘れてはいけません。 この記事では、脱水症によって起きる特徴的な症状や原因、脱水症になってしまった場合の対処法と今からできる予防法を解説しています。 家族の介護に携わっている方、これから家族の介護に携わる方は、是非、参考にしてみてください。 脱水症の症状 高齢者は、脱水症に陥ったとしても自身で気づかない場合が多いです。そのため、周囲の人が注意深く見守る必要があります。以下では、脱水症による症状を軽度から重度までまとめました。 軽度 皮膚のかさつきが見られ、口内が乾燥している場合は、軽度の脱水症を疑いましょう。また、脱水症は行動にも表れ、以下の症状がある場合は脱水症の可能性があります。 ボーっとしているうとうとしているふらついている 中度 脱水症が進行すると、以下のような症状が表れます。 トイレへ行く回数が減少頭痛吐き気微熱下痢 中度へ進行すると明らかな体調異常が見られるので、尿の量・尿の色などをチェックしておきましょう。 重度 症状が重症化すると、軽度・中度の症状に加え以下が表れます。 意識が朦朧としている話しかけても反応がない 酷い場合は、意識を失ったり痙攣を引き起こしたりと命に関わる症状も出ます。 高齢者の脱水症への対処法 脱水症に陥った場合でも、早急に対処することができれば症状を軽くできます。以下では、脱水症の症状が見られたときの対処法をまとめました。 軽度 軽度の場合、水分を摂取することで症状が改善されることがほとんどです。水分補給は水やお茶でも充分ですが、水分と塩分を同時に補給できる経口補水液がおすすめです。経口補水液はドラッグストアで手に入りますが、自宅で簡単に作ることもできます。 経口補水液の作り方 水に食塩とブドウ糖を溶かしたもので、水分と塩分を同時に補給できます。作り方は簡単で、500mlの水に砂糖20g、食塩1.5gを入れて、よくかき混ぜたら完成です。レモン汁を加えると爽やかな風味になり、飲みやすいです。 .point { position: relative; border: 3px solid #f08d18; margin-top: 40px !important; } .point::before { background: #f08d18; content: "POINT"; color: ...
2022/05/19
2020年の総務省の統計によると日本では65歳以上が全人口の25%の3617万人を超え、4人に1人は65歳以上の高齢者という状況です。 急速に進む高齢社会は日本の深刻な社会問題となっています。この記事では日本の高齢社会の現状や起こりがちなトラブル、介護疲れを軽減するコツなどを紹介します。 主な介護トラブルは5種類 高齢化が進むことで、介護に関してのトラブルが年々増加しています。中でも深刻なのが以下の5つ。 老々介護 ダブルケア 介護難民 高齢者への虐待 老後破産 それぞれの原因を詳しく見ていきましょう。 老老介護・認認介護 老老介護とは、65歳以上の高齢者が65歳以上の高齢者を介護している状態のことで、認認介護とは、認知症の高齢者が認知症の高齢者を介護している状態を言います。 どちらも高齢社会に伴って増加傾向にあります。これらの問題は今後多くの人にとって自分事になる可能性が十分考えられます。 ダブルケア ダブルケアとは育児と介護を同時に担っている状態を言います。背景には女性の社会進出による晩婚化と出産年齢の高齢化があります。 例えば40歳前後で出産をした場合、親世代は60代、70代が主流になります。子どもを出産してから手のかかる育児時期に、さらに高齢になった親の介護が必要になる。 そのような状態をダブルケアと呼び、主に女性に大きな負担がかかる可能性があります。 介護難民 介護難民とは、介護が必要とされる高齢者や障がい者が、家庭、病院、施設のどこにおいても支援、介護サービスを受けられない状態を指します。 介護難民も高齢社会である現在の日本が抱える問題のひとつです。 2012年時点では約550万人もの人が介護難民とされており、「2025年問題」と称される団塊の世代が75歳以上になる2025年には、介護難民数が700万人にのぼると推測されています。 高齢者への虐待 高齢者への虐待が起きる理由として、在宅介護者の介護疲れやストレスの蓄積などが挙げられます。 ゆっくりと休息できる時間も社会との関わりも減り、介護にかかりきりになり、その上、いつまで続くかわからない不安な状態で追いつめられ、虐待に至ることも多いです。 虐待を防ぐ方法として、「怒らない」「否定しない」を意識した「相手の気持ちを尊重し、やりやすい介護」を一人でおこなうのではなく、家族で協力し「家族間で情報共有をする」ことを心がけましょう。 老後破産 老後破産とは、定年後の年金生活において、収入以上の支出が続いて生活が困難になってしまう状況のことを指します。 企業勤めをしていた現役生活から生活水準を変えられなかったり、医療費や介護費の負担も大きな問題となっています。 老後破産を防ぐために今からできることは、老後資金を増やすための準備です。まず、老後生活の収入面と支出面を把握しましょう。 居住費や保険料といった固定費をライフステージの変化をきっかけに見直すことがおすすめです。 親族間で起こりうる介護トラブル そろそろ親の介護が必要だとわかっていても、いざ始まると予想外のトラブルが発生します。介護で考えられる問題について解説します。 親の介護は誰がする? 法の観点で、子どもには親の介護をする義務があります。 兄弟姉妹がいると、役割分担をしながら面倒を見られると思っていても、いざそのタイミングが来たときに、遠方に住んでいたり、共働き、子育てをしていたり誰しもすぐ引き受けられない事情があるでしょう。 また、介護を引き受けてくれた兄弟姉妹がいたとしても、介護を任せきりになり、兄弟姉妹間が急に険悪になるなどのトラブルに発展する場合も多いです。 介護をすると相続で有利になる? 親が亡くなり、遺産相続の分割に関して親族間でトラブルに発展したという話はよくあるケースです。 一番多い理由に「親の介護」に関する問題があります。親の介護をすると相続の遺産分割で有利に働くか?というと答えは「No」です。相続の遺産分割は民法に定めがあります。 介護の貢献度合いを数値化することは非常に困難です。そんなときに有効な手段として、親が存命の場合に「介護している人を指定して遺産を多く遺す」という遺言書を記してもらうことにより貢献をした分、遺産を増やすことができます。 セルフネグレクトとは セルフネグレクトとは、意欲や能力の低下によって自分に対して関心がなくなることです。 その先には、掃除や洗濯、ごみ捨てなど身の回りのことができなくなり、結果としてごみ屋敷化し、孤独死へ…と発展してしまう恐れがあります。 解決策としては、まずは本人と信頼関係を築くことが大切です。セルフネグレクトの状態に対し、怒ったり否定することなく本人を尊重し、想いに耳を傾けましょう。 心を開いてくれた後、抜け出るための提案や支援を聞き入れてくれるでしょう。 介護疲れを軽減するコツ 介護は突然始まり、終わりが見えません。介護疲れを溜め込むと疲れ果ててしまい心身共に限界を迎えてしまいます。 介護疲れを軽減する上で一番大切なのは、まずは自分を労わること。お風呂にゆっくり浸かる、深呼吸をするなど、たった3分ほどでも良いので、少しでも自分の時間を持つことを心がけてください。 また、無理をしていると感じたら、介護施設への入居も検討しましょう。介護施設に問い合わせて、準備をしておけば、いざというときに頼れる先があるので安心です。 「どんな介護施設に問い合わせれば良いのかわからない」という方は、一度、私たちにご相談ください。「いい介護」には、キャリア10年を超える入居相談のプロフェッショナルが在籍しており、皆さまのお悩みをお伺いして適切なアドバイスをいたします。 介護のトラブルに関するよくある質問 日本が抱えている介護のトラブルとは何ですか? 現状では「老老介護」「ダブルケア」「介護難民」「高齢者への虐待」「老後破産」などが挙げられます。 しかし、2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、それにより医療費や介護費が増大し、またしても日本が抱える介護のトラブルが増えると予想されています。現状、日本が抱えている介護のトラブルをいかに早く解決できるかが今後の課題です。 親族間での介護のトラブルはどんなものがありますか? 主に「親の介護を誰がするのか」「介護をすると相続で有利になるのか」といったトラブルが挙げられます。 介護を引き受けてくれた兄弟姉妹がいたとしても、つい任せきりになり関係が険悪になってしまったり、また逆に、自分は親の介護をしたのに兄弟姉妹と同じ又はそれ以下の遺産を受け取ることになりトラブルに発展するといったケースも多々あります。 2025年問題とは何ですか? 2025年問題とは、団塊の世代が後期高齢者となり日本が超高齢社会になることを指します。 団塊の世代全員が75歳以上になることで後期高齢者人口が爆発的に増加し、医療、介護、年金をはじめとした社会保障費の急増や介護人材の不足なども社会問題として挙げられます。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "日本が抱えている介護のトラブルとは何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...
2022/02/08
老後に生活していくのに必要な資金が尽きてしまい、破産状態に陥ってしまう「老後破産」。最悪の事態を防ぐには、今から準備しておく必要があります。 この記事では老後破産に陥ってしまう原因と、今からできる7つの対策を解説します。 老後破産とは? 老後破産とは、老後に年金や貯蓄だけでは生活資金が足らず、破産してしまうことです。具体的に「老後」が何歳以上であるかは定められていませんが、定年退職後、年金や貯金などを切り崩して生活する時期と考えるのが一般的です。 老後破産は、貯蓄の少ない人や退職金の出なかった人が陥ってしまうイメージがあります。しかし、収入があるときと同じ水準で生活したり、想定外の医療費や介護費が発生すれば、誰にでも起こる可能性があります。 困窮した状態に陥らないためにも、老後破産の原因を把握し、しっかりと対策しましょう。 老後破産の主な原因 老後破産に陥る原因はさまざまです。一体どのようなことが原因になるのでしょうか。以下では詳細に関して見ていきましょう。 生活水準を維持してしまったこと残している住宅ローンの支払いに家計が逼迫されていること子どもへの教育にお金をかけすぎてしまったこと医療費・介護費が増加してしまったこと退職金を投資や資産運用に使ってしまったこと受給できる年金が不十分なこと悪徳商法などの詐欺被害に遭ってしまったこと 生活水準を維持してしまったこと 給与のピークは40代・50代が多く、退職後の年金生活では一気に収入が激減してしまいます。収入が減ったにも関わらず、定年前と同じような生活をしていれば、当然家計が回らなくなります。 実際に年金収入だけでは生活ができず、現役時代の貯金や退職金を切り崩しながら老後を過ごす人もいます。しかし介護や入院など、予想外の支出も考えられるため、ある程度余裕を持った生活が必要です。 老後は収入に合わせて、生活水準を見直しましょう。 残している住宅ローンの支払いに家計が逼迫されていること 老後破産に陥る理由として「定年後も住宅ローンの支払いが残っていること」が挙げられます。住宅ローンが残っている場合、貯金や退職金などの老後資金や、生活費となる年金を返済に充てざるを得なくなります。 また、すでに住宅ローンを完済していたとしても固定資産税や修繕費、マンションであれば管理費や修繕積立金などの費用が発生します。こういった住宅に関する費用が払いきれず、老後破産に追い込まれてしまう人もいます。 定年後の負担とならないよう、しっかりと支払いのシミュレーションをおこない、返済していきましょう。 子どもへの教育にお金をかけすぎてしまったこと 近年では、晩婚化や高齢出産が増加しているため、子どもが高校生や大学生の内に定年を迎えることも増えています。そうなれば教育費がかかり、老後の生活が苦しくなる可能性もあります。 さらに子どもが自立していても、教育費が原因で貯蓄が不十分になり、老後破産に陥るケースもあります。 また、子どもが自立していない場合にも、子どもへの費用がかかるでしょう。無職や、非正規雇用・低い給料などが理由で生活が安定しないと、貯蓄や年金から援助することになるからです。 さらに、離婚などの理由で子どもが孫を連れて帰ってくることも、費用が大きくなる要因です。そうすれば子どもだけでなく、孫の生活費や教育費を負担し、老後破産となる可能性も考えられます。 医療費・介護費が増加してしまったこと 高齢になると、予期せぬ怪我や病気のリスクが高まります。負担額が少ないとはいえ、治療やリハビリは継続が必要なため、かかる費用はどうしても家計を逼迫してしまいます。 また、介護が必要になれば、さらに負担が増えることに。介護度や生活状況に合わせ、訪問型や通所型サービス、居住サービスなどがあり、費用もさまざまです。とくに老人ホームなどは高額で、長期間の入居が多いため、老後破産に陥りやすくなります。 年金や貯蓄で賄うのは難しいため、きちんと費用を準備しておく必要があります。 退職金を投資や資産運用に使ってしまったこと 退職金をもらっても投資や資産運用に使ってしまい、老後破産になる可能性もあります。例えば、知識がないまま株に手を出してしまい、損をするなどのケースが考えられます。 ほかにも、賃貸物件やビルを購入する不動産投資もありますが、実際に運用していくのは難しいものです。物件の維持やリフォームに費用がかかったり、空室でなかなか家賃を回収できなかったりと、さまざまなリスクを伴います。 しかし、老後破産を避けるために資産運用をおこなうこと自体は悪いことではありません。老後費用と投資に使うお金をわけて資産を運用したり、リスクの低い少額投資から始めたりと、しっかりと知識をつけて対策しながら運用しましょう。 受給できる年金が不十分なこと そもそもの受給される年金額では不十分で、生活ができなくなるという問題もあります。 金融庁から報告された「老後2000万円問題」では、定年を迎えた高齢夫婦の平均収入額から平均支出を引くと、30年間で2,000万円ほど不足すると言われています。 これは毎月5.5万円赤字になる計算で、もはや年金だけで老後生活していくのは厳しいと考えられるでしょう。 さらに、自営業などで国民年金のみに加入していた場合、厚生年金に加入していた人よりも、給付額は下がってしまいます。年金の受給金額は今後も下がることが予想されます。年金だけを頼りにせず、自分で老後の資金を増やすことが大切です。 悪徳商法などの詐欺被害に遭ってしまったこと 老後破産に陥る悲しいケースには「悪徳商法やオレオレ詐欺の被害に遭うこと」もあります。 健康に関する商品や怪しい儲け話など、高齢者の不安につけこむ商法に騙されてしまうのです。ほかには、娘や息子を名乗り金銭を要求され、つい振り込んだり渡してしまうこともあります。 こういった詐欺被害では数百万円~数千万円の被害に遭うこともあり、損失が大きい分、老後破産に陥りやすくなります。 老後破産しやすい人の特徴 誰にでも起こる可能性のある老後破産ですが「老後破産しやすい人」の特徴もあります。ここでは、その行動の傾向を見ていきましょう。 貯金や老後に使える貯蓄がない自分の資産や家計状況を把握していない大きな病気をしてしまう熟年離婚をしてしまう国や制度に頼ることを恥ずかしいと感じる 貯金や老後に使える貯蓄がない 50代2人以上の世帯の貯金額の平均は1,704万円です。しかし、貯金がないと老後破産のリスクは高まります。 貯金がないだけであれば、年金収入で暮らしていくこともできないわけではありません。ただし、年金保険料を通算10年以上滞納していれば、老齢年金を受け取ること自体が難しくなります。 また、10年以内の滞納であっても、納付期間が短いと受け取れる年金の額が減ってしまいます。 年金保険料の支払いは重要で、支払っていない場合は、障害年金や遺族年金を受け取れない原因にもなります(保険料の支払いを免除されたケースを除く)。 さらに老後破産を回避するために、生命保険や医療保険に加入しておくこともおすすめです。病気や怪我など、いざというときにお金が必要なとき、強い味方となってくれます。 自分の資産や家計状況を把握していない 自分の資産や家計状況を把握できていないことも、老後破産しやすい人の特徴です。老後の資金がどれくらい必要かを計算し、家計状況の見直しや計画的な資産形成をおこないましょう。 また銀行口座を複数持ち、貯蓄を分散している人は総額の把握が大切です。貯蓄だけでなく、NISAやiDeCoなどの積立投資、株式投資などをおこなっている人は、その資産残高も確認する必要があります。 大きな病気をしてしまう 大きな怪我や病気になってしまった場合、多額の医療費を必要とします。さらに継続的な治療やリハビリが必要になれば、負担はより大きくなります。 想定外の怪我や病気が起こると、老後資金をしっかり準備していても、破産してしまうケースがあります。 経済的に余裕がなければ治療やケアに専念できないため、結果的に治療期間が延びてしまうことも。治療期間が長ければ長いほど、老後破産のリスクも高まります。 常日頃から健康的に過ごすことを心がけ、体調管理をすることが大切です。 熟年離婚をしてしまう 熟年離婚をしてしまうと、老後破産につながる可能性もあります。とくに専業主婦・主夫やパートであった人は、受け取れる月々の公的年金が少ないため、よりその危険が伴います。 年金分割制度はありますが、あくまで婚姻期間中の厚生年金のみの分割です。さらに、自営業などで国民年金しかなければ制度は適用されません。 また、家賃や食費・公共料金などを考えると、一人よりも2人暮らしの方がコストを抑えることができます。 反対に、1人であれば生活が苦しく、家計が回らなくなってしまう可能性も。離婚をする場合は貯蓄をしておいたり、私的年金を利用したりと、計画的におこなうことが大切です。 家族や友人に相談することができない 離婚やパートナーが先に亡くなってしまうことが原因で、身近な相談相手や心の支えとなる存在がいなくなった場合も注意しましょう。また「子どもに迷惑をかけたくない」「恥ずかしくて友人に言えない」などの理由で、苦しい生活状況を周囲に相談できない高齢者も多くいます。周りからの助言やサポートが得られず、結果的に老後破産に陥る可能性もあります。 .point { position: relative; border: 3px solid #f08d18; margin-top: 40px !important; } .point::before { background: #f08d18; content: "POINT"; color: ...
2022/02/07
親の介護が必要になった場合に、家族間でトラブルになることはよくあることです。親の介護をしたくても、金銭的、身体的、精神的などの負担も多いため、子どもの間で揉めたりすることもあります。 この記事では、よくあるトラブルの内容やその回避法について説明していきます。 親の介護は子どもに義務がある 子どもには親の介護の義務があるのでしょうか?その答えは「ある」です。ただし、子どもにもさまざまな事情があるので、義務ではあっても強制ではありません。 義務とは経済的支援を指す ここで言う義務というのは、身の周りの世話をしたりする身体的な介護の義務を指してはいません。介護の義務というのは、介護に必要な医療費や介護費などの金銭面の支援を指しています。 例えば、直接介護のサポートなどをしていなくても、介護施設や訪問介護などにおいて金銭面で支援をしていれば、介護の義務を果たしていることになります。 義務は強制ではない また、介護の義務は、あくまでも義務であり強制ではありません。介護が必要な親の子どもも、状況によっては自分の家族の生活だけで精一杯で、金銭面でも義務を果たすことが難しい場合もあります。 このような状況において、親の面倒を看なければいけないということはありません。介護のための金銭面の余裕があるかないかは、家庭裁判所が判断します。 また、この目安となる基準に厚生労働省が定める「生活保護基準額」というものがあります。 家族間でトラブルになりやすい内容 出典:「2019年 国民生活基礎調査の概況」(厚生労働省) 厚生労働省の調査によると、介護が必要な家庭のうち半数以上で、「同居の家族」が介護を担っているのが現状です。中でも最も多いのが配偶者ではありますが、次いで子、子の配偶者となっています。 当然のように感じるかもしれませんが、介護の主体として「子」が選択されています。では、この「子」は誰を指すのでしょう?長男・長女でしょうか。それとも次男・次女でしょうか。 今までは仲が良かった兄弟姉妹が、親の介護が必要になったタイミングで、その関係が悪化したりトラブルが発生してしまったという話はよく聞きます。ここからは、具体的にどんなトラブルが起きやすいかを説明していきます。 介護の主体者を誰にするのか? シンプルに最もトラブルになりやすいのが、兄弟姉妹のうち「誰が親の介護をするのか」という問題です。今まで仲がよかった間柄でも、いざ介護が必要になった場合に、それぞれの事情によって介護に消極的になるケースも出てきます。 場合によっては介護の押し付け合いが起きて、関係が悪化してしまうこともよくある話です。また、「誰が介護を担うか」が決まった後に、それ以外の人がその人に任せっぱなしで、全く協力的ではないなどでトラブルに発展することもよくあるようです。 古い風習のせいで長男・嫁への負担が大きい 昔からの風習でこれまでは、兄弟のうち長男は親と一緒に住み、長男の嫁が夫の親の世話をしているというケースが多かったようですが、現在は共働きをする夫婦も多くなってきており、状況も変わってきています。ただ、未だに「長男の嫁が長男の親の世話をするもの」という風習に固執し、介護を長男の嫁に押し付けようとするケースもあり、トラブルになってしまうことがあるようです。 .point { position: relative; border: 3px solid #f08d18; margin-top: 40px !important; } .point::before { background: #f08d18; content: "POINT"; color: ...
2022/02/07
介護をする上で「介護疲れ」は誰もが避けて通れない問題です。特に家族を介護する場合、介護疲れが深刻な問題に発展することもあります。ここでは介護疲れの原因や負担を軽減する方法、介護者のタイプ別ストレス対策を紹介します。 介護疲れの原因 介護疲れの原因は、状況や人によってさまざまです。以下ではどのようなことが原因となるのかをまとめました。 身体的な介助による負担心の余裕がなくなる精神的負担意思疎通ができない認知症介護の負担先の見えない介護生活による経済的負担 身体的な介助による負担 介護では多くの場合、身体的介助が伴います。「ベットや布団からの寝起き」「座る場所への移動介助」「衣服の着替え」「トイレや入浴の介助など」多種多様な場面で身体的介助が必要になります。 大人を身体介助するのは予想以上に重く、場合によっては自分よりも大きな人を介助しなくてはなりません。そのため、介護を続けることで、介護者が腰、ひざ、腕などを痛めてしまうことがあります。 また、トイレの介助が必要な場合は、就寝後のトイレ介助などで睡眠不足に陥ることも。身体的負担と睡眠不足が重なると、最終的に精神的負担につながってしまいます。 心の余裕がなくなる精神的負担 介護をしていると、介護による疲れや睡眠不足などで心の余裕がなくなってしまうのは誰にでも起こりうることです。 「慣れない介護によってストレスが溜まる」「被介護者から心ない言葉を浴びせられる」「ストレスから介護者が酷い態度をとってしまう」「余裕のない介護に自己嫌悪を抱いてしまう」など、介護における精神的負担は実にさまざまです。 また、介護・被介護者という立場になることで家族関係が変わる、家族とケアマネジャー、ヘルパーといった介護の専門職との関係性など、介護に関わる人たちとの人間関係も精神的負担につながります。 介護における精神的負担を放置していると、深刻な場合“介護うつ”になってしまうこともあります。そのため、小さな精神的負担も見逃さないようにしましょう。 意思疎通ができない認知症介護の負担 認知症を発症した人の介護は、介護の中でも特に精神的負担を感じやすいものです。 認知症の影響で、「同じ内容の話を何度もする」「探し物がないと言い張る」「失禁や排便障害」「周囲の人に暴言や暴行をする」など、精神的負担の種となる行動は多種多様です。 発症することで、性格が変わってしまったり、意思疎通が難しくなる場合も多いのが認知症の特徴です。関係の深い家族であればあるほど、その変化に対する精神的負担も大きくなります。 先の見えない介護生活による経済的負担 いつ終わるとも知れない介護では、経済的負担も無視できません。 訪問介護やデイサービスなどの介護サービスは介護保険を利用することができても、在宅の場合、紙おむつやパッドなどの介護用品が別途費用としてかかってきます。 介護自体に費用がかかるのはもちろん、介護離職で収入自体が減少すると、さらに経済的負担が精神的負担につながります。 また、市区町村によっては、オムツ代支給サービスなど市区町村独自のサービスをおこなっている場合もあります。一度お住まいの市区町村に確認してみるのも良いでしょう。 介護疲れが引き起こす深刻な問題 介護疲れやストレスは本人だけの問題ではなく、老老介護や虐待など社会問題に発展する深刻な問題です。ここでは代表的な問題について見ていきましょう。 介護離職老老介護介護うつ介護虐待・殺人 介護離職 介護と仕事の両立が難しくなり、家族のために会社を退職や転職をすることを介護離職といいます。 介護と仕事の両立は負担が非常に大きいのが現状です。しかし介護をするために仕事を離れ、安定した収入源がなくなり経済的に困窮し、生活保護に頼らざるを得ない…といったケースが多く、社会問題となっています。 両立をサポートするための仕組みはいくつかあるので、介護離職をする前に状況に応じて利用できる介護サービスや育児介護休業法による介護休業・休暇といった制度を積極的に活用することをおすすめします。 老老介護 超高齢社会に突入した日本では、高齢者が高齢者を介護する“老老介護”が大きな問題になっています。 老老介護では高齢者が介護をすることで、介護者自身に体の衰えが見られ、大きなリスクになるということが懸念され、また、知らないうちに介護者が認知症を発症し、介護者自身に介護が必要になる場合もあります。 介護うつ 介護による身体的負担・精神的負担が発展することで、“介護うつ”につながることがあります。 「在宅での介護にこだわって全て自分でやろうとする」「介護による悩みや愚痴を相談できない」「身体的負担や精神的負担を我慢する」など、全て自分でやろうとしてしまうと、知らないうちに精神的限界を迎えて、介護うつになってしまうケースが多々あります。 介護虐待・殺人 介護疲れや介護ストレスから、介護者が被介護者に虐待してしまったり、最悪の場合、殺人や心中につながるなど、痛ましい事件は後を経ちません。 施設での虐待もありますが、在宅での虐待・殺人は人の目が少ない分、事件に発展してやっと周囲の人がその深刻さに気づくケースもあります。 「おかしいな」と感じたら行政や地域包括支援センターなどへすぐに相談しましょう。 身体的負担を軽減する方法 介護をする上で介護者の身体的負担は大きな問題です。介護者にとっての身体的負担を減らすために、介護保険サービスを積極的に利用しましょう。 介護保険サービスを利用する介護保険外サービスも活用する行政サービスを理解しておく介護のスキルを身に付ける 介護保険サービスを利用する 介護による身体的負担を減らすために、まず最初に試したいのが“介護保険サービス”です。介護保険サービスとは、要介護認定を受けた被介護者のために利用できる介護サービスのことです。 介護サービスを利用するためには、各自治体の“介護保険の相談窓口”や“地域包括支援センター”、“ケアプランセンター”に行って相談しましょう。 ケアマネジャーは被介護者の介護度や心身の状態、生活環境、介護者の状況などを総合的に考慮して、最適なケアプランを作成してくれます。 ケアマネジャーへの相談は無料なので、現在の介護状況や率直な心境などを素直に相談してみましょう。 訪問介護 訪問介護とは、ホームヘルパーが利用者の自宅を訪問。入浴や排泄といった身体介護から、洗濯、掃除といった生活援助までを提供してくれる介護サービスのことです。 ホームヘルパーは初任者研修、実務者研修、介護福祉士のいずれかの資格を取得しているため、知識や技術が充分にあり、安心してサービスを受けることができます。 訪問入浴 訪問入浴とは看護師1名を含めた2〜3名の介護スタッフが入浴のサポートをおこなってくれる介護サービスのことです。 要介護度が高く自力では入浴が困難な人や、家族の手だけでは入浴が難しい場合などさまざまなケースで利用されています。 訪問入浴サービスは専門の浴槽が使われるため寝たきりの人でも安心して利用できます。さらに看護師による入浴前後の健康チェックがおこなわれるなど、入浴サポートだけではないサービスがあるのも魅力です。 デイサービス(通所介護) デイサービスとは、機能訓練・入浴・食事といった介護サービスを日帰りで利用する、高齢者の生活の質の向上を目指す通所型サービスです。 デイサービスを利用する場合は施設から車で自宅まで迎えにきてくれるので、誰でも安全に利用できます。 ただし、施設の送迎範囲が決まっているので、その範囲外の場合はその施設を利用したくても利用できません。 デイサービスでは、介護スタッフや看護師などの専門スタッフがサービスを提供。決められた時間に高齢者の機能訓練や集団・個別でのレクリエーションなどをおこないます。 自宅にこもりがちになる高齢者にとっては、外部との交流が持てることも嬉しいポイントです。 デイサービスを利用することで、日中の介護負担が減り、休息時間を確保することができます。 ショートステイ(短期入所生活介護) ショートステイとは短期間だけ介護施設を利用して、食事や入浴補助といった介護サービスを受けられる宿泊サービスです。宿泊期間は1泊2日から数週間可能で、最大30日間利用できます。 ただし、利用日数には原則上限があるので、担当のケアマネジャーに相談しましょう。 仕事の事情や冠婚葬祭などで「介護者が家を空けなくてはならないとき」「介護者が体調不良になったとき」「介護疲れでリフレッシュしたいとき」「将来の施設入居を見据えて施設に慣れておきたいとき」「退院が決まっているが在宅介護に不安を抱えているとき」など、被介護者と介護者の状況に合わせて利用しましょう。 小規模多機能型居宅介護 小規模多機能型居宅介護(以下、小規模多機能)は、地域密着型サービスであり、ひとつの事業所でデイサービスを中心にショートステイや訪問介護といった3つのサービスをまとめて提供しています。 そのため、24時間・365日利用できるように休業日を設けていません。 また、空きがあれば「デイサービスを利用した後、そのままショートステイを利用」といった対応も可能です。 どのサービスを利用しても馴染みの職員が対応してくれる、そんな信頼関係を重視したサービスです。 介護保険外サービスも活用する 介護保険外サービスとは、その名の通り介護保険の対象にならないサービスのことです。介護保険の対象ではないので、当然、費用は全額自己負担です。 介護保険の対象になるサービスが介護をおこなう上で最低限必要なサービスであるのに対し、介護保険外サービスは、より自由度の高いサービスになります。 介護保険の対象サービスは要介護の高さによって利用に制限があったりしますが、介護保険外サービスはその制限がありません。 介護保険外サービスは、被介護者の外出支援や配食、ヘアカットやネイルなどの訪問美容、紙おむつやパットの配達など、多種多様です。介護度や介護状態に合わせて、必要なものを利用しましょう。 また、どんな介護保険外サービスがあるかは、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談すると良いでしょう。 行政サービスを理解しておく 介護支援や高齢者支援を目的として、独自の介護支援サービスを提供している自治体もあります。 紙おむつやパッドなど介護用品に対する助成をはじめとして、手すりやスロープ設置のための住宅改修費用の補助、緊急連絡装置などの設置、外出支援サービスなど、サービス内容は自治体によってさまざまです。 また、介護費用が高額になった場合は、経済的負担を軽減する制度もあるので上手く活用しましょう。 介護が始まったら、各自治体の介護支援サービスを一度チェックしたり、介護保険の担当課で無料で配布されている介護保険のパンフレットを参考にするのもおすすめです。 高額介護サービス費制度 「高額介護サービス費制度」は、1カ月の介護保険サービス自己負担額が限度額を越えた場合、越えた分の金額が戻ってくる制度です。支給対象の人には自治体から「支給申請書」が送られくるので、忘れずに申請しましょう。 高額介護サービス費の申請方法 高額介護サービス費の支給を受ける際は、各自治体の窓口に申請しましょう。以下、申請時に必要な主な書類をまとめました。 高額介護サービス費支給申請書介護保険被保険者証振込先が確認できるもの 高額医療・高額介護合算制度 「高額医療・高額介護合算制度」は、同一世帯で支払った介護保険サービスと医療費の自己負担額の合計が基準を越えた場合、越えた分の金額が戻ってくる制度です。 合算期間は8月1日から翌年の7月31日で、利用するには自治体の国民健康保険窓口で申請します。 ただし、同一世帯内でも「夫が75歳以上で後期高齢者医療保険、妻が75歳未満で国民健康保険」など、加入する保険が異なる場合は合算することができません。さらに、基準を500円以上越えない場合は適用外です。 高額医療・高額介護合算制度の申請方法 高額医療・高額介護合算制度を利用する際は、各自治体の窓口に申請しましょう。以下、主に必要な書類をまとめました。 高額医療・高額介護合算申請書健康保険証介護保険証振込先が確認できるもの 介護のスキルを身に付ける 日常的に介護をしていると、被介護者を抱きかかえたり、起こしたりする場面が多くあります。大人一人を抱きかかえるのは腰や膝に負担がかかり、体力的にも厳しい作業です。 「どんな態勢なら被介護者が違和感なく移動できるか」「どのように体を動かせば介護者の身体の負担を減らせるか」といった介護におけるスキルを身につけておけば、おむつ替えや着替え、排泄介助や入浴介助が楽になります。 自治体や地域によっては、家族向けの介護教室や、初めて介護する人向けのイベントなどが開催されることもあるので確認しましょう。 精神的負担を軽減する方法 介護における精神的負担は、ときとして身体的負担以上に深刻なものとなります。介護者の精神的負担が増えれば、介護どころか介護者自身が普通に生活を送ることすら難しくなることもあります。 ここでは、精神的負担が増える前に今からできる対策について見ていきましょう。 介護について話を聞いてもらう少しでも自分の時間を持つストレス発散に運動を取り入れてみる介護家族の会に参加する介護施設への入居検討をする 介護について話を聞いてもらう 精神的負担を減らすために最初にできるのは、“介護の話を誰かに聞いてもらう”ことです。介護における悩みや辛さ、愚痴を第三者に話すことで、介護による孤立を防ぐことができます。 主に下記の相手に相談すると良いでしょう。 介護保険の担当課職員・地域包括支援センターケアマネジャー認知症専門医民生委員信頼できる近所の人 例えば、介護保険サービスのケアプランを作成する“ケアマネジャー”には守秘義務があります。そのため、他人に相談できない介護の悩みを打ち明けることができますし、悩みをケアプランに反映してくれます。 また、認知症専門医は認知症に関する知識だけでなく、認知症介護における辛さや悩みに対する知見があるので、被介護者への接し方などのアドバイスも期待できます。 被介護者が認知症を抱えている場合には、町内会や民生委員、マンションの管理人など、近所の人に状況を知らせておくと、いざというときに助けを求めることもできます。 民生委員とは? 民生委員とは、民生委員法に基づいて、厚生労働大臣から委嘱された非常勤の地方公務員で、ボランティアとして活動しています。民生委員は自らが住む地域の一員として、それぞれが担当する区域において、住民が抱えるさまざまな相談に応じてくれます。介護の分野に関しては、高齢者の見守りや安否確認などをおこなっています。 .point { position: relative; border: 3px solid #f08d18; margin-top: 40px !important; } .point::before { background: #f08d18; content: "POINT"; color: ...
2022/02/04
高齢者の生活に関する問題として、「セルフネグレクト」の文字を目にすることもあるでしょう。 セルフネグレクトとは、基本的な生活を維持するための意欲や能力を失ってしまうことです。自分の身体や身の回りのことに対して関心がなくなってしまうので、生活環境や栄養状況も悪化してしまいます。 セルフネグレクトに陥ってしまう原因として、高齢者本人の身体機能の低下や社会との孤立などが考えられます。 この記事では、高齢者が起こしやすいセルフネグレクトの原因について詳しく解説します。また、セルフネグレクト状態に陥ってしまった場合の対処法や、予防する方法も紹介するので参考にしてください。 この記事を読めばこれがわかる! セルフネグレクト状態になってしまう原因がわかる! セルフネグレクトになってしまった際の対処法がわかる! セルフネグレクトの予防方法がわかる! セルフネグレクトとは? ネグレクトとは「無視する」「世話を怠る」という意味の言葉です。養育しなければいけない子どもの存在を無視する育児放棄や、高齢者への介護放棄を指す言葉としてよく用いられています。 セルフネグレクトとはこのような無関心、放置といった状態が自分自身に向いてしまうことを言います。セルフネグレクトになると生きていく意欲や能力が減退するので、普通の生活を維持することが困難になってしまいます。 セルフネグレクトの主な事例は以下です。 家の前や室内にゴミが散乱した状態で暮らしている極端に汚れている衣類を着用したり、失禁があっても放置している窓や壁などに穴が開いている家や、家の構造が傾いている状態で住み続けている認知症であるにも関わらず介護サービスを拒否している怪我を負っているにも関わらず治療を拒否している セルフネグレクト状態に陥った人は自分自身でSOSを出すこともしないために、周囲の人も気付きにくく、どんどん状況は悪くなります。自治体なども実際にどれほどセルフネグレクト状態の人がいるのかを把握しておらず、今後の対策の強化が求められています。 セルフネグレクトの原因 セルフネグレクト状態に陥ってしまう原因と考えられるのは以下です。 身体機能や判断力の低下 ショックな出来事 社会的孤立 経済的貧困 家族による虐待 原因不明 それぞれ詳しく見てみましょう。 身体機能や判断力の低下 セルフネグレクト状態に陥ってしまう原因として、身体機能や判断力の低下が考えられます。 高齢者は加齢と共に身体機能が低下していきます。本人には普通の生活をする意思があるにも関わらず、身体的な理由で満足にできない状態が続き、セルフネグレクトへと発展してしまう場合があります。 具体的には、「筋力が低下したことで重たい物を持ち運ぶことが困難になり、掃除や片付けができなくなる」「視力が低下して周囲が見えづらいために、細かな片付けや家事などがおろそかになる」などがあります。 また、高齢者の中でも認知症を発症している場合、判断力が低下していくことでセルフネグレクト状態へと陥る場合も。一人で暮らしているために、認知症になっていることを誰からも気づかれずに生活に必要な行動をとることが困難になってしまい、セルフネグレクト状態になってしまうのです。 ショックな出来事 セルフネグレクト状態に陥ってしまう原因として、配偶者や親しい家族の死、病気、リストラなどのショックな出来事も考えられます。 親しい人の死や病気、リストラなどは、とても大きなショックを受けるため、生きる意欲が失われてしまい、最終的にセルフネグレクトにつながってしまうのです。 また、今まで家事などをしていなかった人が突然一人になった場合に、生活を維持できなくなってしまったり、「人の世話になりたくない」というプライドや「人の世話になるのは申し訳ない」という遠慮・気がねから支援を受け入れず、結果的にセルフネグレクトにつながってしまうこともあります。 社会的孤立 セルフネグレクト状態に陥ってしまう原因として、社会的孤立が考えられます。 高齢者の場合、配偶者との死別や離婚、退職などを経験して、社会との接点がどんどん希薄になる可能性が高くなります。 社会とのつながりがなくなることでセルフネグレクトが進んでいても、誰にも気づいてもらえずに、エスカレートしてしまう恐れがあります。セルフネグレクトの人が受けられるはずの適切なケアも受けられなくなり、社会的な孤立がさらなる悪循環に招きます。 経済的貧困 セルフネグレクト状態に陥ってしまう原因として、老後の蓄えがなく年金だけで基本的な生活を維持できない高齢者や、認知症を発症して金銭管理ができなくなったなどの経済的貧困も挙げられます。 経済的な貧困状態にある人の場合、国民健康保険などに未加入のケースも多く、その場合は医療費が全額自己負担になります。病院に行くお金がない、行っても望む治療が受けられないということでますます無力感を感じてセルフネグレクトが進行してしまいます。 家族による虐待 家族から精神的、身体的虐待を受けているとセルフネグレクト状態に陥る可能性がとても高くなります。特に加害者が自分の子供の場合は、育てた本人である自分自身を責めてしまうことも多く、誰にも助けを求めることができなくなります。 暴力や暴言を受けていたり、脅されたりする日々が続くだけで、「自分はいらない存在だ」「役に立たない人間だ」「生きていても仕方がない」と思い込むようになり、誰にも迷惑をかけずに黙って死んでいこうと考えてしまう人もいるようです。 原因不明 セルフネグレクト状態に陥ってしまう原因がはっきりしていない場合もあります。セルフネグレクト状態になる原因については、本人も思い当たるふしがないことがあります。また、セルフネグレクト自体について、まだ不明点が多いのが現状です。 セルフネグレクト状態になっても早めに対処すれば深刻化する前に、セルフネグレクトの問題を解決できます。大切なのは、誰もがセルフネグレクトになる可能性があることを知っておき、問題が起きたときにすぐに対処できるようにしておくことです。 セルフネグレクトのチェックリスト セルフネグレクトになってしまっても、家族や周りの人、本人も気付かない場合があります。家族や自分自身の生活に以下のような点が現れたら、一度、セルフネグレクトについて考えてみましょう。 ゴミが捨てられず、生活に支障が出るほど溜め込んでいる 窓や壁に穴が開いていてもそのままの状態で住んでいる 郵便物を確認せずに溜め込んでいる いつも同じ服を着ている 服が汚れても着替えない 何日も風呂に入らない 歯磨きをしない 散髪しない ひげを剃らない 爪を切らない 失禁しても放置している ごはんを食べない 栄養を考えずお菓子やインスタント食品だけを食べる 病気をしていても、治療を拒否する 処方された薬を飲まない 人との関わりを拒否する 介護サービスが必要であるにもかかわらず、介護サービスを拒否する 金銭管理ができず家賃や公共料金を滞納している セルフネグレクトの対処法 セルフネグレクト状態に陥ってしまった際の対処法は主に以下です。 本人の想いを聞く 地域包括支援センターへ相談する 介護サービスを利用する 認知症など疾患がある場合は治療する 家事手伝い代行サービスを利用する それぞれ詳しく見てみましょう。 本人の想いを聞く まずは、本人がどう思っているのかをきちんと聞き取り、サポートをする人と本人の間で信頼関係を築くよう心がけましょう。 どうしてゴミを溜めてしまうのか、介護サービスの利用を拒否するのは何故なのか、など、一度話し合う場を設けて本人の想いに耳を傾けてみてください。 話を聞く際には怒ったり、相手の言葉を否定をすることは避け、心を開いてくれるように穏やかに話しやすい雰囲気を作ることを意識しましょう。そのような話し合いを続けることで、セルフネグレクトから脱却するための提案も受け入れてくれるようになるはずです。 地域包括支援センターへ相談する 自分の親がセルフネグレクト状態に陥ってしまい、どうすれば良いかと悩んでいる場合は地域包括支援センターなどを活用しましょう。地域包括支援センターは、全国の自治体に設置されており、誰でも相談できる無料相談窓口があります。 地域包括支援センターでは、実際に要介護状態にあるにも関わらず介護認定を取得していない人に対して、要介護認定の申請をおこなうことも可能です。申請していない人は相談してみると良いでしょう。 介護サービスを利用する 介護認定を受けている場合には、訪問介護や訪問入浴、デイサービスといった介護サービスを受けることができます。 これらの介護サービスは自己負担額が原則1割となっているため、民間のサービスを利用するより費用を抑えて利用できることに加え、介護のプロに身の回りのことを任せられるので安心して利用することができます。 ただし、これらの介護サービスはあくまでも介護を目的としていますので、掃除や食事の準備といった家事サービスはおこなってくれません。 また、介護サービスの利用だけではなく、将来的に老人ホームのような介護施設の入居を検討するのも良いでしょう。 介護施設は、常に居住空間を清潔に保ってくれるのはもちろんのこと、栄養バランスの良い食事やレクリエーションによる適度な運動、定期的な入浴など身の回りのことをサポートしてくれます。 セルフネグレクト状態にある人にとって健康的で安定した生活を送るきっかけになってくれるでしょう。 認知症など疾患がある場合は治療する 認知症や精神疾患などを患っている場合、病気が進行するにつれ判断力も低下し、セルフネグレクト状態になることもよくあります。 そうならないようにするために、まずは医師に相談しましょう。認知症は完治する病気ではありませんが、医師の適切な治療を受けることで、進行を遅らせたり、緩和させたりすることが可能です。 なお、病院で診断を受けた後は、今後の生活についてどのような支援が必要かを家族の中できちんと相談することが大切です。 家事手伝い代行サービスを利用する 身体機能が低下し、身の回りの家事が難しくなってしまった場合は家事代行サービスを利用するのもセルフネグレクト状態から脱却する方法となります。 掃除はできるが、料理をすることができないという場合には定期的に食事の宅配サービスを利用しても良いかもしれません。 また、サービスを利用するだけではなく家族や親族、ボランティアの人などの協力を得て部屋を綺麗に保つことも効果的です。清潔に、健康的な状態でいることでセルフネグレクトからの脱却が期待できます。 いろいろなサービスを組み合わせて活用することで、居心地のいい環境を整えていくと良いでしょう。 セルフネグレクトを予防するには セルフネグレクト状態になる前に予防しておくのも重要です。気をつけるポイントは主に以下です。 本人が気持ちを話しやすい環境をつくる 周りの人が本人の様子に気付きやすい環境をつくる それぞれ詳しく見てみましょう。 本人が気持ちを話しやすい環境をつくる 本人が自分の気持ちを話せる場がないと、だんだん心を閉ざすことになり、やがて日常生活を送る気力を失ってしまいます。本人が辛いことを我慢せずに、本音を話せるような環境づくりを心がけましょう。 セルフネグレクトが進行する前に、カウンセラーなどに相談できればセルフネグレクトの症状が改善する場合があります。本人が相談に行けるようなサポートも考えるのがおすすめです。 周りの人が本人の様子に気付きやすい環境をつくる 晩婚化や核家族化の進む日本では、ますます孤独な高齢者が増えることが予想されています。孤独な生活を送るなかで、誰にも気づかれずにセルフネグレクト状態になってしまった場合はそのまま悪化してしまう可能性が高いです。 セルフネグレクトを予防するには、日頃から本人が一人にならないこと、ひとりにさせない、社会全体で一人にさせないことが大事です。 「社会との関わりをつくる」「一人暮らしの高齢者や家族がいる場合にはなるべく気にかけるようにする」などを少しずつおこなうことで、心身ともに健康的な生活を送れます。 セルフネグレクトに関するよくある質問 セルフネグレクトはどんな人に多いですか? 高齢者の場合、周囲に頼ろうとせず社会的に孤立してる状態の人がセルフネグレクトに陥りやすいです。誰かが手助けをしようとしても拒否する傾向が強いのも特徴と言えるでしょう。 セルフネグレクトの対策はありますか? まずは本人がどう思い、どうしていきたいのかを聞き取ることが重要です。本人の思いを聞いた上で、各自治体や地域包括支援センターなどに相談をして、必要に応じて介護サービスを利用し、社会的孤立をさせないようにすることが重要です。 セルフネグレクトは男女どちらが多いですか? セルフネグレクトの男女比を見ると半数以上が女性です。また家族構成も本人のみの独居が多く、交流が少ない戸建て住みの人がセルフネグレクトになりやすいとされています。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "セルフネグレクトはどんな人に多いですか?", "acceptedAnswer": { ...
2022/02/02
年齢を重ねるにつれ、両親に介護が必要になったらどうしようと不安になることはありませんか。ましてや、すぐに会える距離におらず、様子がわからないと余計に不安は募るものです。 この記事では、突然介護が必要になったときに慌てることがないよう、遠距離介護をおこなうポイントをまとめました。 遠距離介護に備える8つのポイント 今は介護が必要ないという場合でも、いつどのようなタイミングで介護が必要になるかは誰にもわかりません。いざというときに役立てることができるように、以下の8つのポイントを紹介します。 生活リズムの把握交友関係の把握経済状況の確認本人の介護の希望をヒアリング介護施設などの情報収集介護にかかる費用の把握住宅改修の検討ICT機器や緊急通報システムの設置 生活リズムの把握 まず、親の起床時刻や就寝時間、食事を摂る時刻など生活リズムについて把握しましょう。また、その中で「日常どういった困りごとがあるのか」「何か不安に思っていることはないか」なども確認しましょう。 交友関係の把握 近所付き合いや親戚との関係、また普段から参加している集まりなどがあるかについて把握しておくことはとても大切です。 というのも、普段から関わりを持って助け合い、信頼関係を築いてきた人であれば、何かあったときに助けてくれる心強い味方となってくれるからです。 そういった人が親の近くにいる場合は、緊急連絡先を交換したり、ときどき様子を見に行ってもらうなどのお願いをしてみるのも良いでしょう。 経済状況の確認 介護が本格的に必要になると、介護保険サービスの利用や施設への入居、病院の通院あるいは入院など一定の費用がかかることになります。 これらの費用は基本的に親の年金や貯蓄でまかなうことになるので、経済状況について確認しておくことは重要です。 具体的に下記のような内容は聞いておくべきでしょう。 年金額預貯金借金の有無加入している保険の種類 金銭面に関してはたとえ親でも聞きにくい話題なので、タイミングを見計らって確認しましょう。 本人の介護の希望をヒアリング いざ介護が必要になると、介護を受ける本人が意思決定をしなくてはならない場面が多くなります。 親の意思と反するような介護サービス、介護施設を選ぶことを避けるために「どのような介護を受けたいのか」「どこで生活をしていきたいのか」というような老後生活の希望を家族の中できちんと共有しておきましょう。 またその際には、あとで誰が見返しても共通認識としてわかるように記録を残しておくことをおすすめします。 介護施設などの情報収集 遠距離介護の場合、要介護者の状態を細かく確認することはできません。知らないうちに容態が悪化してしまったり、認知症が進行した場合は介護施設への入居を検討する必要があります。 介護施設の種類はひとつではありません。値段もサービス内容もさまざまです。通える範囲でどのような施設があり、どれくらいの費用感なのかを調べておくと良いでしょう。 介護が必要な段階ではない人でも地域包括支援ケアセンターでは相談を受け付けています。情報収集をかねて一度出向いてみるのも良いでしょう。 介護にかかる費用の把握 介護が長期化して大きな経済的負担につながることも多いです。「介護費用はどのくらいかかるか」「誰が負担するか」などについても家族の間できちんと話しておきましょう。 一般的には親の資産や年金でまかなうことが多いのですが、それでは足りないこともあります。本人以外の家族が負担しなければならない場合は、家族間のトラブルを避けるためにも早めに納得できる形で話し合いをしましょう。 住宅改修の検討 自宅の生活環境が生活するのに不向きである場合は、リフォームをおこなう必要も出てきます。 要介護認定を受けている場合は、高齢者一人あたり20万円までの助成金が支給されます。手すりの取付けやスロープの設置、和式便器から洋式便器への変更などをしておくと安心して過ごせるようになります。 また、助成金の申請方法や必要書類などは地域や条件により異なるため、まずは担当のケアマネジャーに相談しましょう。 ICT機器や緊急通報システムの設置 最近では、離れた家族の見守りができるICT機器もいろいろと登場しています。照明や冷蔵庫などの家電に通信機器機能が付いており、一定時間使われていないと家族に通知がいくようになっています。 監視カメラとは違い、緊急事態の場合にのみ作動して連絡がいくのでプライバシーにも配慮できます。 そのほかにも、体調が悪化したときに緊急ボタンを押すと警備会社が駆けつけてくれるといった緊急通報システムもあります。自治体によっては緊急通報システムを無料で設置してくれるところもあるので、このような自治体サービスを活用してみるのもおすすめです。 遠距離介護のメリット 遠距離介護をおこなうメリットについて紹介していきます。 転居の必要がない 遠距離介護をおこなう場合は転居する必要がないため、介護を理由に住み慣れた土地から離れないで済み、仕事を辞める必要もありません。 特に介護を理由に退職をしてしまうと再就職をすることも難しく、そうなった場合に、介護者本人の老後の蓄えや年金を減らすことにもなります。そのため、遠距離介護で自分自身の生活を守りながら介護生活を送ることができる点は大きなメリットとなっています。 介護者のストレス軽減 在宅介護の場合は基本的に24時間要介護者と一緒に生活をすることになります。介護者にとっては、常に心が休まらず介護中心の生活スタイルを送ることになります。 そのような生活を続けていると、介護者にとって身体的にも精神的にも大きな負担になります。苦しい状況が続くことで追い詰められ、介護うつになってしまうこともあります。 遠距離介護は適度に距離をとって介護をおこなうことができるので、介護者自身の健康を良好に保つ意味でも大きなメリットがあります。 介護保険サービスが受けやすい 遠距離介護をしている場合は、在宅で介護者がいる場合と比べて生活援助サービスが受けやすいというメリットがあります。 掃除や洗濯、家事などをおこなってくれる生活援助サービスは、介護をおこなう人が同居している場合には原則として利用することができないからです。 また、入居待ちになるケースが多い特別養護老人ホームも、遠距離介護をしていると入居の優先順位が高くなり入居しやすいケースもあるようです。 遠距離介護のデメリット 続いて遠距離介護をおこなうデメリットについて紹介していきます。 費用負担が大きい 遠距離介護をする上で、交通費や宿泊費がかさんでしまう点は経済的な負担になります。 定期的な行き来だけではなく、突発的な移動が発生することもあり、その度に飛行機や新幹線、高速代などがかかります。 また、交通費以外にも通信費や近隣の人への手土産代、親の自宅をリフォームするときは改修費用など、遠距離介護には付帯してさまざまな費用がかかります。 遠距離介護をする上で、「どの程度の費用をかけられるのか」「限度額はどれくらいか」などは事前に考えておきましょう。 緊急時に早急な対応ができない 離れた場所に住んでいる場合、予期せぬトラブルや急な体調不良が起きたときすぐ駆けつけるといった対応は当然できません。普段から親とこまめに連絡をとったり、見守りシステムを導入したりするなどの対策が必要です。 近隣の人やケアマネジャーとしっかり連携をとって、何かあったときにすぐ助けてもらえるような関係を構築しておくことも大切です。 仕事を休む可能性が出てくる もし親が入院する場合は、身の回りの世話や病院の手続きなどをする必要があります。そのようなときは必然的に仕事を休む、あるいは介護休暇や介護休業などを選択しなければなりません。 親が近隣に住んでいる場合には仕事と両立しながらおこなうこともできるかもしれませんが、遠方となると両立は難しいでしょう。遠距離介護を続ける場合は、仕事を休む可能性があることも念頭に置きましょう。 遠距離介護を成功させるための6つのポイント いざ遠距離介護が必要になった際に押さえておきたいポイントについて紹介します。 家族で役割分担を決める周囲の人を頼る勤務先に介護休業制度について確認する交通費は「介護割引」を利用する高齢者向けサービスを活用する老人ホームへの入居も検討する 家族で役割分担を決める 兄弟姉妹がいる場合は、介護をする上で誰がどのようなサポートをするのか、役割分担を決めておきましょう。それぞれの生活状況からできること、できないことを明確化し、誰か一人に負担が集中しないように協力する姿勢が大切です。 介護をおこなうことが難しいのであれば資金面でサポートするといった役割分担の方法もあります。 また、本格的に介護サービスを利用したり、施設へ入居した場合、ケアマネジャーや介護サービス事業所と連絡をとることが増えます。誰が代表して対応するのかについても決めておくと良いでしょう。 周囲の人を頼る すぐに駆けつけることができない距離で介護をおこなう場合は、近隣の人や近くに住む友人の協力は必要不可欠です。 「日頃の見守りや声かけをおこなってもらえないか」「災害時には避難のサポートをしてもらえないか」など、遠くに住んでいるとなかなかできない不安なことをお願いしておくと安心です。 協力してもらう人には帰省した際に、手土産を持参しお礼に出向くなど、日頃から友好的な関係を築いておきましょう。 また、介護のプロであるケアマネジャーとはこまめに連絡をとり、利用する介護サービスの相談や親の健康状態の確認など遠距離介護に協力してもらいましょう。 勤務先に介護休業制度について確認する 現在、勤めている会社の介護休暇や介護休業制度について確認し、できるだけ活用しましょう。 現行の制度では、介護休暇は介護の対象となる家族が一人の場合は年間で5日まで、2人以上の場合は年間で10日までとなっています。一方の介護休業は介護の対象となる家族一人につき3回まで、通算93日まで休業できます。 なお、介護休業をする場合には条件を満たしていると介護休業給付金を受け取ることができる場合もあります。 ただし介護休暇や介護休業中の給与については、法的な定めがないため会社によっては無給の場合もあります。制度を利用する際は事前に確認しましょう。 交通費は「介護割引」などを利用する 遠距離介護をおこなう上で一番問題になるのは、帰省のための交通費ではないでしょうか。 移動には身体負担が少なく、移動時間も短く済ませることのできる飛行機や新幹線を使いたいという人も多いでしょう。 そんなときに便利なのが交通各社の「介護割引」サービスです。条件によっては3〜4割引きになることもあります。詳しくは交通各社のホームページなどを確認しましょう。 高齢者向けサービスを活用する 超高齢社会となっている日本では高齢者向けのサービスも年々種類が増えています。 近年では遠距離介護をおこなう人向けのサービスも展開されており、これらを活用し、介護負担を少なくすることも大切です。 また、自立した生活を継続するためには、本人ができることは自分でおこなってもらうことも大切です。その上で何か困っていることがあれば、サポートしてくれるサービスを活用するという方法も良いかもしれません。 具体的なサービスの例としては以下のようなものがあります。 自宅に食事を届けてくれる「配食サービス」安否確認をしてくれる「見守りサービス」IoTを活用した「見守りサービス」買い物や掃除、食事作りなど必要な家事をしてくれる「家事代行」サービス 老人ホームへの入居も検討する 遠距離介護は何かあったときにすぐ駆けつけることができません。親の介護度が上がったり、認知症が悪化した場合は、自宅で生活を継続することが難しくなる場合もあるでしょう。 そのような場合は、老人ホームへの入居も検討しましょう。入居する際の費用はかかりますが、介護のプロに身の回りのことを任せることができて、安心して過ごすことができます。 なお、費用が比較的安い施設に関しては人気が高く、入居待ちになる可能性もあります。自宅での生活が難しいと感じた段階で早めにケアマネジャーに相談しましょう。 遠距離介護は事前の準備とコミュニケーションが大事 遠距離介護のポイントやメリット・デメリットなどを説明しました。遠距離介護をする際には、常に近くにはいられないからこそ、しっかりとした事前準備と、親とのコミュニケーションが大切になってきます。 また、近隣の人や近くに住んでいる友人のサポートも必要不可欠です。こまめにコミュニケーションをとり、信頼関係を築くようにしましょう。 介護する人も介護される人も、それぞれが納得できる環境で生活していくために家族みんなで、介護の備えについて考えておくことをおすすめします。 遠距離介護に関するよくある質問 遠距離介護に疲れてしまう原因は何ですか? 「費用負担・時間的負担」「緊急時の対応ができない」「仕事を休む可能性がある」などが挙げられます。 特に、遠距離となると片道2時間以上かかることも珍しくなく、費用と時間の負担は非常に大きいです。遠距離介護が長引くことで、帰省の度に費用をどのようにして捻出するか、時間がどれだけとれるかを考えなくてはいけない状況が介護疲れにもつながります。 介護休業は何日取得できますか? 休業できる日数は介護の対象となる家族一人につき93日とされていて、その日数を最大で3回に分割して休業することが可能です。また93日とは休業中の土日祝日も含めた日数なので、営業日ではないことに注意しましょう。 遠距離介護をおこなう上で費用負担を軽くする方法はありますか? 遠距離介護をおこなう上で、帰省のための交通費が一番の負担です。 交通各社では、介護割引というサービスを取り入れているところも多く、条件によっては3〜4割引きになる場合もあります。遠距離介護では飛行機や新幹線を利用する人も多く、大変重宝するサービスです。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "遠距離介護に疲れてしまう原因は何ですか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...
2022/02/02
高齢社会に伴い、「老老介護」や「認認介護」という言葉を聞いたことがある人も増えているでしょう。また、これらは今後、多くの人にとって自分事として問題になっていくことも十分に考えられます。この記事では、老老介護、認認介護について説明していきます。 老老介護とは 老老介護とは、高齢者が高齢者を介護している状態のことを言います。具体的には、介護する人も介護される側の人も65歳以上の高齢の場合で、さらに、共に75歳を超えている場合には「超老老介護」とも言われます。 日本では、老年人口と呼ばれる65歳以上の高齢者の割合が25%を超えてきており、完全に超高齢社会となりました。要介護者の人数が増加に伴って老老介護のケースも増えており、問題になってきています。 認認介護とは 認認介護とは、認知症の高齢者が認知症の高齢者を介護している状態を言います。老老介護と同様に高齢社会に伴って増加の傾向にあります。 厚生労働省が2019年に実施した調査の結果では、介護が必要になった理由として一番多かったのは認知症であり、認知症患者の増加が認認介護が増えてきている要因となっています。 また、要介護申請をしていない人は現在800万以上いるといわれており、実態は調査結果などの数字以上に増加している可能性もあります。 MCI(軽度認知障害)が増加傾向にある 認知症の診断は受けていないが、軽い記憶障害が出始めて、認知症の一歩手前の状態をMCI(Mild Cognitive Impairment)と言います。 現在、65歳以上の人のうち14%程度、約400万人以上がMCIになっているというデータもあり、認知症ではない状態でも、何らかの認知障害を持っている人が増えています。その結果、MCIの人が介護をしている状況も増加してきており問題視されています。 老老介護・認認介護によって生じるリスク 老老介護、認認介護はともに増加傾向にありますが、高齢者同士による介護にはさまざまなリスクがあります。注意したい点について見ていきましょう。 介護者にかかる負担が増大する 介護は、被介護者の身体を起こしたり支えたりすることも多く、健康な若者でも体力的な負担は大きいもの。これを高齢者がおこなうとなると、その負荷の大きさは相当なものになってしまいます。 場合によっては、無理をすることによって自分の身体を痛めて、その後の介護が難しくなってしまうことも考えられ、高齢者による介護の大きなリスクのひとつと言えます。 共倒れに注意 介護する人の体力面の負担によって、何らかの身体的な問題を抱えてしまったり、精神的な負荷により介護の継続が不可能になってしまうと、まさに共倒れの状況となり、介護する人と介護される人の双方にとって大きな問題となります。老老介護においては、このような共倒れが起きないように注意しましょう。 .point { position: relative; border: 3px solid #f08d18; margin-top: 40px !important; } .point::before { background: #f08d18; content: "POINT"; ...
2022/01/27
超高齢社会である日本では、高齢者への虐待が年々増加し、問題視されています。 高齢者への虐待は介護者(家族や介護スタッフ)に「虐待している」という自覚がない場合もあります。高齢者虐待を防ぐためには介護を一人で抱え込まないことが大切です。 この記事では、どのような行為が虐待にあたるのか、具体的な内容や、虐待が起こる理由などを解説します。さらに、虐待を防ぐための方法や専門機関も紹介しますのでぜひ参考にしてください。 この記事を読めばこれがわかる! どの行為が高齢者虐待になるのかがわかる! 高齢者虐待の現状がわかる! 高齢者虐待を防ぐために大切なことがわかる! そもそも高齢者虐待とは 「高齢者虐待」とは、高齢者が親族や介護事業所のスタッフなど他者からの不適切な扱いを受けることです。不適切な扱いとは、命の危険や健康の被害、安心した生活が損なわれるなどの状態に置かれること全般を指します。 高齢者虐待は暴力などのわかりやすい場合もあれば、介護者(家族や介護スタッフ)に「虐待している」という自覚がない場合もあります。例えば、「夜にトイレに行く回数を減らすために水分を控える」「転落すると危ないからベッドから出られないように柵で囲む」「徘徊(はいかい)を防ぐために部屋に鍵をかける」などです。 本人のために良かれと思っておこなう行為も場合によっては高齢者虐待と判断されることもあるのです。 高齢者虐待の種類 高齢者への虐待の種類は主に以下です。 身体的虐待 介護等放棄 心理的虐待 性的虐待 経済的虐待 それぞれ詳しく見てみましょう。 身体的虐待 身体的ダメージを与える虐待とは、殴る・蹴るなどの暴力行為をはたらくことです。具体的には以下があります。 叩く、殴る、蹴るなどの暴力行為 部屋に鍵をかけて閉じ込める 食事を無理やり口に入れる ベッドなどに身体を縛りつけて拘束する 身体的ダメージを与える虐待には、高齢者の意思を無視し、必要以上の身体拘束をおこなうことも含まれます。身体拘束はベルトやひもでの拘束だけでなく、脅迫や威嚇など、言葉で高齢者の行動を制限することも該当します。 しかし、身体拘束がすべて虐待にあたるわけではありません。高齢者本人や介護者の怪我や命に関わる場合や、身体拘束の代替になる方法がない場合、拘束が一時的である場合には虐待とはいえないため、覚えておきましょう。 介護等放棄 高齢者の介護をおこなわない、介護放棄(ネグレクト)による虐待も発生しています。介護放棄(ネグレクト)は、子どもに対しておこなわれる育児放棄を、高齢者に置き換えることでイメージしやすくなります。 具体的には以下があります。 長期間にわたり入浴や排泄ケアをしない 十分な食事や水分を与えない 医療機関などへ受診する機会を与えない 劣悪な環境で生活させる 介護を必要とする人を適切にサポートしないことは、高齢者の生活環境や心身状態の悪化につながります。さらに、介護放棄から死に至ったり、身体的虐待に発展するケースもあります。 心理的虐待 精神的疲労を与える虐待とは、侮辱する、脅すなどの言葉の暴力、無視、嫌がらせなどです。高齢者を言葉や態度で傷つけたり、尊厳を踏みにじったりするような行為は、すべて心理的虐待にあたります。 具体的には以下があります。 大きな声で怒鳴る・ののしる・悪口を言う 意図的に無視をする 侮辱をこめて子どものように扱う また、精神的疲労を与える虐待では、介護者が気づかないうちに虐待をしてしまっていることもあります。介護によるストレスを無意識のうちに高齢者にぶつけ、虐待をしてしまうのです。 心理的な虐待は目に見えず、外からわかりづらいため注意が必要です。 性的虐待 高齢者に対してわいせつな行為をはたらく、性的な虐待がおこなわれることもあります。具体的には以下です。 性行為の強要 同意なしに性器を触る・キスをする 下半身を裸にして放置する たくさんの人の前で服を脱がす 性的な虐待は、わいせつ行為だけでなく、懲罰的に裸にして放置するなど、高齢者を辱める行動や言動も性的な虐待です。さらに、入浴の介助や着替えのサポート、排泄ケアの際に、プライバシーの配慮をしないままおこなうことも性的虐待のひとつです。 経済的虐待 高齢者への虐待は、心身にダメージを与えるものだけでなく経済的なものもあります。具体的には以下です。 本人の合意なく財産や金銭を使用・処分をする 家や土地などの資産を無断で売却する 本人にとって必要な金銭の使用を制限する 生活に必要なお金を渡さない 認知症で判断能力の低下した高齢者であれば、家族が金銭管理をおこなうケースもあります。その際には、お金や財布をむやみに取り上げないことが大切です。 高齢者虐待の現状 高齢者虐待の件数 出典:「令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」(厚生労働省) 厚生労働省の調査によると、2020年度の養護者による高齢者虐待に関する相談や通報は35,774件、高齢者虐待と判断された件数は17,281件とあります。養護者とは高齢者へ介護をしている家族、親族、同居人などを指します。 年々増加している理由として、昨今では新型コロナウイルス感染症の流行により高齢者が外出を控え、自宅で長い時間を過ごすことが多くなり、養護者の生活不安やストレス、介護疲れなどが増えたことが影響していると考えられます。 虐待をおこなった人との間柄 出典:「令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」(厚生労働省) 被虐待者からみた虐待者の続柄は全体の、息子39.9%、夫22.4%と、半数以上が男性介護者です。この結果は、これまで仕事をしていた男性が慣れない介護や家事をすることによってストレスを感じ、虐待に発展したことが要因のひとつと考えられています。 昨今では、生涯未婚率は男女ともに上昇しており、未婚の人が実家で暮らして親の介護をおこなうことも増えています。 また、子どもが仕事や結婚によって家を出て、夫婦のどちらかが介護をおこなうケースもあります。核家族化や未婚率の上昇により、男性介護者が増加しているのが現代の特徴です。 高齢者虐待の種別 高齢者虐待でもっとも多いのが身体的虐待です。身体的虐待の割合は圧倒的に高く、そのあとに身体的拘束、心理的虐待、ネグレクトと続きます。 出典:「令和2年度「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」に基づく対応状況等に関する調査結果」(厚生労働省) また、認知症などの意思疎通やコミュニケーションが容易ではない高齢者に対し、虐待が発生するケースが多くなっています。認知症に対しては、気持ちの理解や正確な対応が求められます。しかし、これらが十分でないと適切な対応ができず、虐待へと発展することがあります。 高齢者への虐待が起きる理由 高齢者への虐待が起きる理由として考えられるものは主に以下です。 介護者の介護疲れやストレス 認知症による症状に対応できない 経済的な不安 それぞれ詳しく見てみましょう。 介護者の介護疲れやストレス 高齢者への虐待が起きる一番の理由は、介護者の介護疲れやストレスです。介護は食事、入浴、排泄の介助など、身体的に負荷がかかるものが多く、肉体的な疲労が精神的疲労にもつながりやすいものです。 現代では核家族化が進み、ひとりの介護者にかかる負担が大きくなっています。介護は長期に渡っておこなうことが多く、長い介護の中で疲れやストレスが溜まってしまい虐待に繋がってしまう可能性があります。 また、介護施設では人手不足といった理由から若手のスタッフは業務に慣れないうちから戦力として求められ、疲労やストレスが溜まってしまいがちになります。 認知症による症状に対応できない 高齢者本人に認知症の症状があり、介護者に認知症への正しい理解がない場合は、大きなストレスから虐待につながってしまうこともあります。 本人の認知症の症状から、心ない罵倒をされたり、「物を盗んだ」などと疑いをかけられたり、暴力やセクシャルハラスメントを受けることがあります。 認知症による本人からの言動に対して、介護者が「認知症だから仕方ない」と割り切れる場合は良いですが、対応する方法がわからずストレスを溜めてしまい、つい罵声を浴びせたり、無視をしたり、場合によっては手が出てしまうこともありえます。 経済的な不安 高齢者への虐待が起きる理由のひとつに経済的な不安も挙げられます。 在宅介護をする場合、家族は介護のために離職や転職をしなければいけない場合もあります。介護に時間を使うことで収入が減り、経済的な不安から虐待につながることもあります。在宅介護は閉鎖的な環境で、一人で抱え込みがちになってしまうため注意が必要です。 高齢者への虐待を防ぐ方法 高齢者への虐待を防ぐ方法は主に以下があります。 介護を一人で抱え込まない 相手の気持ちを尊重し、やりやすい介護をする 介護サービスを利用して介護者の負担を減らす それぞれ詳しく見てみましょう。 介護を一人で抱え込まない 介護を一人でおこなうと、介護者が悩みを抱え込んでしまったり、プレッシャーを感じてしまったりすることもあります。家庭での介護は一人に任せきりにするのではなく、家族で協力する体制をつくることが大切です。 そのときには、対応する人でケア方法が変わらないように、必ず家族間で情報共有をしましょう。 相手の気持ちを尊重し、やりやすい介護をする 認知症の人は、怒られたり否定されたりしても、その内容を忘れてしまうことがほとんどです。しかし「怒られて怖かった」「否定されて嫌だった」といった、マイナスの感情記憶は残ってしまいます。 それが繰り返し続くと、本来できることが萎縮してできなくなってしまったり、不安を紛らわすために怒ったりと、より症状を悪化させる可能性もあります。 スムーズな介護をおこなうために、「怒らない」「否定しない」を意識しましょう。イライラしたときは、「一旦部屋を出て気持ちが落ち着くまで待つ」「こまめにストレスを解消する」などの対策がおすすめです。 介護サービスを利用して介護者の負担を減らす デイサービスやデイケアは、高齢者が日帰りで介護サービスを受けたり、リハビリをおこなう施設です。こういった介護サービスを利用して、介護者の休息や気分転換の時間を作ることも大切です。 さらにショートステイであれば、最短で1日から入所することができます。冠婚葬祭や出張、介護者の体調不良など、一時的に介護ができないときに利用する人が多いです。 在宅介護には休暇がありません。上手に制度を利用して負担を減らし、身体的・精神的安定を図ることが、結果的に虐待防止へとつながります。 周囲の人が高齢者への虐待を防ぐためにできること 高齢者への虐待を防ぐためには、周囲の人が高齢者本人やその家族へ声をかけあい、高齢者とその家族が孤立しないように見守ることが大切です。 家庭内で起こる高齢者への虐待は表面化しにくく早期発見が難しいという特徴があります。周囲の人が虐待の兆候に気づいたときには専門機関に相談しましょう。周囲の人が高齢者本人やその家族に対して「虐待かもしれない」「このままでは虐待につながってしまうかも...」など、虐待のおそれがあると気づいた段階で相談・通報することで高齢者虐待の早期発見や防止につながります。 高齢者虐待の相談窓口は、地域包括支援センターや法務省の常設する人権相談所など、公的な窓口が複数用意されています。 他人の家庭の場合、つい相談をためらってしまいますが、虐待を防ぐためにも早めに相談することが大切です。 高齢者を虐待から守るための法律 高齢者への虐待が年々増加し、高齢者を虐待から守るための法律である「高齢者虐待防止法」が2006年に施行されました。 現在の日本は超高齢社会を迎えており、家族や介護サービスに携わる人々に、介護の負担が押し寄せているのが現状です。さらに、虐待は、施設内や家族内などの閉鎖的な環境でおこなわれるため、周囲からわかりづらいことも問題です。 これら高齢者虐待の増加や、虐待の事実が知れ渡りにくい課題を解決するため、高齢者虐待防止法が制定されました。 高齢者虐待防止法とは? 高齢者虐待防止法とは、正確には「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援に関する法律」と言います。高齢者の尊厳を保持するため、高齢者虐待を防止することを目的として施行されました。 また、高齢者虐待防止法の特徴に「虐待の早期発見・早期対応」があります。介護施設や介護サービス従事者には、虐待の早期発見が努力義務として規定されました。 介護施設で働いている人が自身の働く施設などで虐待が発生した際には、市町村へ必ず通報しなければいけません。さらに、通報者が通報することによって不利益な扱いを受けないよう、ルールが定められています。 高齢者への虐待に関するよくある質問 自宅で高齢者虐待が起きる原因は何ですか? 介護で虐待が起こる一番の理由は、虐待者の介護疲れやストレスです。 介護を自宅でするとなると昼夜問わず付き添いが必要で、次第に外部との交流が減ります。介護がいつまで続くかわからない状況化に陥ると、身体的負担と精神的負担から虐待に発展する可能性があります。 最も多い虐待はどのようなものですか? 在宅介護、施設介護ともに最も多いのは身体的な虐待です。 身体的な虐待とは、殴る・蹴るなどの暴力行為をはたらくことで、社会問題としてメディアにも取り上げられるほどです。また、高齢者の意思を無視し、必要以上の身体拘束をおこなうことも身体的な虐待に含まれます。 誰から虐待を受ける可能性が高いですか? 被虐待者からみた虐待者の続柄は、息子が最も多く、次いで夫と続き、半数以上が男性介護者です。核家族化や未婚率の上昇、これまで仕事をしていた男性が慣れない介護や家事をすることによってストレスを感じ、虐待に発展していると考えられています。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": 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2022/01/24
「ダブルケア」という言葉を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。ダブルケアとは育児をしながら介護もこなしている状態を指すことが多く、その背景と問題点、さらにはダブルケア対策を解説します。 ダブルケアとは? 出産後から数年間の手がかかる育児期間と、高齢になった親の身体機能や認知機能低下により手助けが必要になる介護期間が重なることをダブルケアと言います。 育児と介護の期間が重なることだけがダブルケアと思われがちですが、両親が2人同時期に介護が必要な状態になることや、親と配偶者が同時期に介護を必要とすることもダブルケアと言います。 ダブルケアの社会的背景 ダブルケアが増えている社会的背景には、女性の社会進出などによって起こる晩婚化や出産年齢の高齢化があります。 結婚や出産時期が早ければ、育児と介護をおこなう時期に時間差がありますが、例えば40歳前後で出産した場合には、育児期と親の介護時期が重なる可能性が高くなります。 ダブルケアは、現代日本の深刻な社会問題である「少子高齢化」とも深く関係しています。 ベビーブームが起こった1970~80年代とは違い、介護を担う世代の兄弟姉妹が少ないケースが多くなっています。また、親戚関係や地域との関わりも当時に比べると密接ではありません。 ダブルケアをおこなう人は25万人以上 2016年4月に発表された内閣府の調査によると、日本全国でダブルケアをおこなっている人は少なくとも253,000人に達することがわかっています。 この調査では育児の対象とされているのは未就学児まで。まだまだ手が離れたとは言いがたい小学生までを育児の対象に含めると、現実的にはさらにダブルケアをおこなっている人が多いと推測されます。 年齢別では30~40代が80%を占めており、253,000人の性別の内訳を見ると、女性が168,000人に対して男性は85,000人となっています。 出典:「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書」(内閣府) 晩婚化・晩産化・少子高齢化が影響 ダブルケアの社会的背景でも触れましたが、社会全体の晩婚化、晩産化、少子高齢化が影響しているのは否定できません。 結婚や出産はライフプランとして計画的におこなえる場合もありますが、介護は突然やってきます。出産した後にすぐ介護が始まりダブルケアになったというケースもかなり多いようです。 第一次ベビーブームに生まれた団塊の世代全員が75歳以上となる2025年以降には、その子どもたちである団塊ジュニア世代にダブルケアという負担が重くのしかかるとも言われています。 ダブルケアの種類 以下に記したように、ダブルケアにはさまざまな形があります。 育児と親の介護育児と配偶者の介護障がいのある子の介護とその兄弟の育児両親が2人同時に介護が必要親と配偶者が同時に介護が必要 また、孫の育児と親や配偶者の介護というダブルケアや、育児に加えて両親の介護や両親と配偶者の介護といったトリプルケアというケースもあります。 ダブルケアの問題点 介護する人にとって肉体的にも精神的にも負担の大きいダブルケア。具体的な問題点を挙げて説明します。 女性への負担が大きい ダブルケアをおこなう世代は子どもの教育資金や、家や車のローンなど。生活していく上で非常にお金が必要な世代です。 昔から介護や育児は女性の仕事と考えられ、それを当然とする社会構造が長く続いてきました。しかし現在は仕事を持つ女性も多く、育児、介護、仕事と女性にこれまで以上の負担がかかっているのが現状です。 内閣府の調査では、ダブルケアの状況下で業務量や労働時間を減らしたと答えた人は、男性が約2割、女性が約4割。そのうち仕事を辞めて無職になった人は男性で2.6%、女性で17.5%と女性の負担が大きいことが調査からもわかっています。 ダブルケアは女性だけの問題なのか? 家事や育児、介護は女性の仕事という考え方はまだまだ根深く存在します。最近では家事代行サービスやベビーシッター、デイサービスや訪問介護など外注できるサービスも増えています。しかしそれでも、経済的負担を考え「頑張れば外注しなくてもできる」と育児や介護を女性一人に任せてしまう家庭も多いようです。また、男性がダブルケア解消のため育児や介護を担いたくても、管理職や長時間労働をこなしている場合は、結局女性にしわ寄せがいっているのが現状です。 離職や転職を余儀なくされる 育児と仕事、介護と仕事の両立だけでも大きな負担がかかりますが、育児、介護、仕事の3つが重なってくると、すべてをこなすのはかなり難しいと言えます。 負担を軽くするために保育園や介護施設を利用しようとしても、条件が合わなかったり入所できなければ育児や介護を自分で担っていくしかありません。 そのため、フルタイムの仕事を続けるのが難しくなって離職を選んだり、経済的な理由から派遣社員やパートなどへの転職を余儀なくされることも問題となっています。 経済的負担にも繋がる 育児だけ、介護だけの状態でも経済的負担は生じますが、育児と介護のダブルケアとなればさらに大きな金銭的な負担が生じます。 ダブルケアによって離職や転職を選択しなければならなかった場合には、収入も減少して経済的な不安が日常生活にも大きな影響を及ぼすことになります。 適切な支援を受けられず孤立してしまう 各自治体には育児の窓口や介護に関する窓口は設置されていますが、ダブルケア専門の窓口が設置されている自治体はほとんどありません。 育児だけ、介護だけでなくダブルケアを担っている方は、肉体的にも精神的にも疲労していたり、そもそも相談に行く時間を確保すること自体が難しいこともあるでしょう。 さらには、ダブルケアを経験した女性の約3割は「家族の支援を受けられなかった」と回答しており、家族の中でも孤独感を感じて孤立していることがわかります。 精神面での負荷が大きい 介護や育児は慣れないことが多く、複雑な家族関係が絡んだり、終わりが見えないなど精神的な疲れがたまりやすくなります。夜間の授乳やトイレ介助などで夜間の睡眠時間を確保できず、慢性的に疲労がたまっている状態の方も多いようです。 ただでさえ肉体的、精神的に大きな負担がかかるダブルケアは、地域や家族の協力や理解を得られず孤立してしまうことでさらなる精神的負担を負わせてしまうのです。 介護うつに陥り無気力化も ダブルケアは、転職や離職による経済的不安や家族や地域での支援が得られない状況などで、介護している方が追い詰められてしまいます。心身の負担が増して、介護うつや無気力になってしまい、子育てや介護を放棄してしまうネグレクトの状態になることもあります。また、子どもや介護されている方に暴言や暴力行為などを行う虐待にまで発展してしまうことも考えられます。介護が原因で殺人や家族心中が起こってしまうのも最近では珍しい話ではありません。 ダブルケアへの対策 ダブルケアになってしまったら、どのようなことに注意して介護をすれば良いのでしょうか。必要な対策をご紹介します。 支援制度について情報収集 ダブルケアが始まってしまうとどうしても、生活に追われてしまい、支援制度についての情報を集める時間を確保するのも難しくなってしまいます。ダブルケアになりそうだと感じたら、早めに自治体の相談窓口や介護保険制度について調べ、支援申請方法なども確認しておくと安心です。 介護する方と介護される方が住んでいる自治体が別の場合もあります。手続きや相談窓口など、いざというときにすぐに相談できるよう調べておくだけでも違います。 また、介護と育児への支援を一体的に行っている「社会福祉協議会(社協)」では、育児でも介護でも利用できるさまざまな福祉サービスがあります。まずはホームページなどを調べるところから始めてみてはいかがでしょうか。 介護のことは地域包括支援センターに相談 ダブルケアであっても、介護の相談であれば、まずは介護を必要としている方が住んでいる地域の地域包括支援センターに相談してみましょう。 「まだ両親は元気だから介護の相談は必要ない」などと思わずに、帰省したタイミングで兄弟姉妹と話を聞きにいくのも良いでしょう。地域包括支援センターでは介護サービスだけではなく、介護予防についても相談することができます。 子育てのことは子供家庭支援センターに相談 子育てについての悩みは地域の子育て支援センターに相談してみましょう。子育ての相談はもちろん、ショートステイや一時預かりなど在宅サービスの提供もおこなっています。 子育ての相談だけでなくストレスを一人で抱えこまないように、家庭全般の相談をすることもできます。子どもを遊ばせながら、経験豊富なスタッフや育児の専門家に日々の不安や悩みを聞いてもらうだけでも、気分転換することができます。 ダブルケアのコミュニティに参加 ダブルケアをしていると、自分の時間もなく、誰にも相談できずに孤立感を強めてしまうことが問題視されています。自治体の相談窓口への相談だけでなく、ダブルケアをしている人が集まるコミュニティやダブルケアに関するNPO団体と繋がることで、情報収集やつらい気持ちを共有しあうことができます。 同じような状況の方と繋がることで気持ちが落ち着いたり、精神的負担を軽減してくれる助けとなるでしょう。 家族との話し合いを設ける 両親や配偶者が元気なうちに介護に関して話し合っておくのが理想的ですが、元気なうちは切り出し方も難しく、トラブルの元になってしまうことも。まずは夫婦で相談したり、両親や兄弟姉妹に連絡をとる回数を増やしてみることから始めてみましょう。そこから今後の生活についての話などの話ができるかもしれません。 また、夫婦や兄弟姉妹で育児や介護への考え方、在宅介護や介護施設など介護の方向性、費用分担や仕事との両立に関する話もしておくと良いでしょう。 家族との話し合いの場をつくっておけば、突然ダブルケアという状況になっても混乱することなくスムーズに対応できるのではないでしょうか。 適切な介護サービスを利用しよう 育児と介護のダブルケアをしている場合も、介護保険を利用して在宅介護サービスを受けることができます。介護を受ける方が住んでいる自治体の介護保険課や地域包括支援センターに相談してみましょう。 地域包括支援センターには、ケアマネジャーだけでなく社会福祉士や精神保健福祉士も在籍しています。ダブルケアの悩みにアドバイスをもらったり、相談窓口を紹介してもらうこともできます。 ケアマネジャーに対しても「育児の時間を大切にしたい」「自分の時間を持ちたい」など希望を伝えた上で、適したケアプランを作成してもらうのがおすすめです。 自宅から施設へ通うデイサービスや短期間の宿泊を伴うショートステイなどの介護サービスを活用して、自分自身の生活も大切にしましょう。 老人ホームへの入居を検討 在宅での介護が難しいと感じたら、介護施設への入居も検討しましょう。 特別養護老人ホームは入居希望者が多く、入居までに時間がかかるケースが多いのですが、ダブルケアという状況を説明すると優先的に入所できることもあります。お困りの状況を自治体の窓口に相談したり、希望する施設に問い合わせてみましょう。 社会全体でダブルケアを認知していくことが今後の課題 育児や介護を同時に担ったり、両親や配偶者などの介護を同時におこなうダブルケア。性別に関係なく仕事を持つ方が増えた現在では、介護する方に大きな負担がかかってしまいます。 一人だけに重い負担がかかってしまうことのないよう、家族や兄弟姉妹と協力し、近隣の方や職場にも理解してもらえると安心です。 決して無理をせず、積極的に育児や介護サービスなどを利用しましょう。自分から周りに支援を求めることでダブルケアの認知が高まり、厳しい状況を改善していくきっかけにもなるはずです。 ダブルケアに関するよくある質問 ダブルケアは何故起こりますか? ダブルケアが起こる理由として、女性の社会進出などによる晩婚化と出産年齢の高齢化があります。またダブルケアは、少子高齢化とも深く関係しています。 現代では、1970~80年代とは違い介護を担う世代の兄弟姉妹が少ないケースが多く、親戚や地域との関わりも薄れており、介護について一人で抱え込むケースが多々あります。 ダブルケアへの対策はありますか? ダブルケアになる可能性を感じたら早めに自治体の相談窓口や支援制度について情報収集することが重要です。介護のことについては地域包括支援センター、子育てのことについては子供家庭支援センターへ相談しましょう。 またダブルケアをしている人が集まるコミュニティなどに参加することで、情報収集はもちろんのこと、普段話せない辛い気持ちも共有することができます。 ダブルケアは女性だけの問題なのでしょうか? 男性がダブルケア解消のため育児や介護を担いたくても、管理職や長時間労働をこなしている場合は難しいとされています。 2016年のデータでは、日本全国でダブルケアをおこなっている人は約25万人いるとされていて、その中で女性の割合は約17万人でした。家事や育児、介護は女性の仕事という考え方はまだまだ根深く存在し、女性一人に任せてしまう家庭も多いです。 { "@context": "https://schema.org", "@type": "FAQPage", "mainEntity": [{ "@type": "Question", "name": "ダブルケアは何故起こりますか?", "acceptedAnswer": { "@type": "Answer", ...
2022/01/18
介護施設への入居について、地域に特化した専門相談員が電話・WEB・対面などさまざまな方法でアドバイス。東証プライム上場の鎌倉新書の100%子会社である株式会社エイジプラスが運営する信頼のサービスです。