胃ろうが必要な方も入居できる老人ホームは以前に比べると増えています。しかし、施設を選ぶ際は住み心地や立地の良さだけではなく受け入れ態勢もしっかり確認しましょう。
この記事では胃ろうのメリットデメリットや胃ろうが必要な方の老人ホーム選びのポイントを徹底解説。さらに、胃ろうが必要な方を介護する上での注意点も紹介しています。
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胃ろうとは、手術で腹部に穴を開けてカテーテル(チューブ)を胃につなぎ、栄養剤を直接注入する栄養摂取方法です。
胃ろうを含む経管栄養は医療行為のため、老人ホームでの実施は看護師にしか認められていませんでした。しかし、2012年に「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が施行されたことで、「喀痰(かくたん)吸引等研修」を受けた介護福祉士も、胃ろうを含めた特定の医療行為がおこなえるようになりました。
喀痰吸引等研修を受けた介護福祉士がおこなえる特定の医療行為とは、次の2つを指します。
ただし、研修を受けた介護福祉士が特定の医療行為をおこなうには、所属する事業所が「登録特定行為事業者」として各都道府県に登録している必要があります。
胃ろうへの対応は以前は看護師にしか認められていなかったため、胃ろうの方が入れる施設は限られていました。
しかし、看護師が24時間常駐する老人ホームが増えたことや、2012年の介護保険法改正により研修を受けた介護福祉士も対応できるようになったことで、胃ろうを理由に入居を断られることは少なくなりました。
ただし人員体制や設備は施設ごとに異なるため、すべての老人ホームで胃ろうが必要な方を受け入れられるわけではありません。入居施設を選ぶ際は、まずは胃ろうに対応できるかを確認しましょう。
胃ろうが必要な方の入居先選びは、住み心地や立地の良さだけではなく受け入れ態勢もしっかり確認しましょう。ここからは、老人ホーム選びの3つのポイントをご紹介します。
胃ろうにすると嚥下(えんげ)機能が低下し、自力でたんを吐き出すのが難しくなる場合があります。たんには細菌が多く含まれており、放置すると誤嚥(ごえん)性肺炎の原因となるため吸引による除去が必要です。
胃ろうもたんの吸引も看護師または研修を受けた介護福祉士のみが対応できるため、どちらかの職員が24時間常駐する施設を選びましょう。また、胃ろうにより皮膚トラブルが起きることもあるため、提携医療機関による訪問診療体制も入居前に確認します。
胃ろうでは、嚥下機能維持のためのリハビリも重要です。専門的なリハビリへの対応やリハビリの内容、リハビリにより改善した事例などについても質問してみましょう。
胃ろうにすると口からの食事をおこなわないため、口腔ケアは不要と思われがちです。しかし、唾液は消化だけでなく、口の中を清潔に保つ役割も持っています。このため、胃ろうにすると唾液の分泌量が落ちてしまい、口の中が乾燥して細菌が繁殖しやすくなります。
口の中の細菌の増殖は誤嚥性肺炎などの原因にもなります。このため、胃ろうでも口腔ケアをしっかりしてくれる施設を選ぶことが大切です。
胃ろうで使われる栄養剤には、「半消化状態栄養剤」と「消化態栄養剤」の2種類があります。半消化状態栄養剤はタンパク質の消化が必要なため、消化機能が正常または軽度の障害がある方に適しています。一方、消化態栄養剤はタンパク質が分解されており、消化吸収能力が低下した方に用います。
利用する方の消化能力で適した栄養剤が変わるため、医師や看護師と連携してその人に合った栄養剤を選択してくれる施設を選びましょう。
加齢や病気などによって口から食事を取れなくなった場合、口以外から栄養補給をおこなうための方法のひとつとして胃ろうを提案されることがあります。
胃ろうの手術はPEG(経皮内視鏡的胃瘻造設術)と呼ばれます。手術には内視鏡を用いるため比較的身体への負担が少なく、順調なら15~30分程度で終わります。また経過にもよりますが、入院期間は一般的に1~2週間程度と短期間で済みます。
身体機能の低下や重度の認知症などにより、口からの食事が難しくなることがあります。胃ろうは口から栄養を取れなくなった方が栄養不足で衰弱するのを防ぐためにおこなわれます。
また、飲み込む力が低下してむせ込んでしまうと、誤嚥性肺炎を引き起こす恐れがあります。誤嚥性肺炎は命にかかわるため、リスクを減らす目的で医師から胃ろうを勧められることもあります。
胃ろうにしても、口からの食事が可能です。さらに、口から必要な栄養量を確保できるようになれば、胃ろうのカテーテルをを抜くこともあります。
ただし、ゼリー食やペースト食などでなんとか栄養量を確保できている状態であれば、ちょっとしたトラブルで栄養量が足りなくなることもあります。胃ろうを残しておけば、口からの摂取量が落ちたときだけ必要量を補給することも可能なうえ、発熱時の水分補給にも利用できます。
さらに、いったん抜いてしまうと短期間で閉じてしまい、再度食べられなくなった場合は再手術が必要です。抜かないでおくことが本人の負担軽減につながることもあるため、カテーテルを抜くかは慎重に判断する必要があります。
胃ろうの手術を受けても、リハビリによって口からの食事に戻せる可能性があります。さらに、症状や栄養状態が改善すればカテーテルを抜くことも可能です。ただし、専門家のサポートが欠かせないことから、口からの食事に戻すための取り組みは医療・介護体制が十分に整った施設を中心におこなわれています。
胃ろうにはメリットはもちろんデメリットもあるため、しっかり確認しておきましょう。
胃ろうをすることでのメリットは、主に以下の3つです。
口から食事を取れなくなった方の栄養摂取方法には、鼻から胃に通したチューブで栄養を送る「経鼻胃管栄養」もあります。経鼻胃管栄養は手術を必要としませんが、鼻からチューブを入れるため痛みや息苦しさなどを感じます。
胃ろうはチューブが鼻やのどを通らないため、経鼻胃管栄養と比べて痛みや不快感、身体への負担が少なくて済みます。
胃ろうにすることで、口から食事を取れない方でも必要な栄養を摂取できるようになります。また、食事によってむせることがなくなるため、栄養補給と誤嚥性肺炎予防を両立できるのもメリットです。
胃ろうのカテーテルは口やのどを通らず、腹部から直接胃に通します。このため、再び口から食事をするための訓練がしやすいという利点もあります。
一方で、胃ろうのデメリットは以下の通り。
胃ろうの手術は短い時間で終了し、身体への負担も少なく済みます。しかし腹部に穴を開けるため、身体に傷をつけることに抵抗がある方には手術そのものがデメリットとなります。
また、認知症の方は自分でカテーテルを引き抜いてしまうことがあります。カテーテルが抜けると穴は比較的短時間で閉じてしまい、再手術が必要になることもあります。
胃ろうにすると、口から食べる機会が減って唾液の分泌が少なくなります。これにより口腔中が乾燥しやすく、口腔ケアを怠ると細菌が繁殖しやすくなります。
口腔内を不潔にしていると細菌の混じった唾液を誤嚥し、口から食事していなくても誤嚥性肺炎を引き起こすことがあるため注意が必要です。
栄養剤を注入する際の姿勢によっては、液が逆流してしまうことがあります。逆流した栄養剤を誤嚥することで誤嚥性肺炎につながる恐れがあるため、注入中から注入後しばらくは上体を起こした体勢を維持する必要があります。
自己抜去とは、自分自身でカテーテルを引き抜いてしまうことをいいます。特に認知症の方は、抜いてはいけないことを忘れてしまうため注意が必要です。
胃の粘膜の回復は早く、カテーテルが抜けると短時間で穴がふさがってしまうため、自己抜去してしまったらすぐに病院に連絡して処置してもらいます。
また、引き抜く可能性がある場合は、チューブが露出していないボタン型カテーテルへの交換も検討してみましょう。さらに、ひっかけて抜いてしまうことを防止するため、カバーなどで注入口を覆うなどの対策も大切です。
胃ろうが必要な方が快適に過ごすには、介護する方が次の点に注意する必要があります。
前途でも述べたように、胃ろうの方にとって口腔ケアは非常に重要です。口から食事をする機会が少なくなると唾液の分泌量が減り、嚥下機能の低下につながります。また、唾液が減少して口腔内が乾燥すると細菌が繁殖しやすくなり、誤嚥性肺炎を引き起こす恐れもあります。
このため、口から食事をとっていなくても口の中を清潔に保ち、嚥下機能を維持するための適切なリハビリをおこなうことが大切です。
栄養液の逆流は誤嚥性肺炎の原因になります。逆流は注入時の姿勢が悪いと発生しやすいため、注入中は上体を30度以上起こします。また、注入後もしばらくは上体を起こした体勢を保つと良いでしょう。
姿勢を整えることは、胃ろうだけでなく通常の食事でも誤嚥防止に役立ちます。介護する方は、意識して姿勢を正すよう促しましょう。
胃ろう周辺部を不潔にしていると、皮膚トラブルの原因になります。カテーテルをつけたままで入浴できるので、石鹸などを使って周辺部をていねいに洗い、清潔に保つよう意識しましょう。
また、胃ろうは異物を差し込まれた状態のため、人によっては拒否反応を起こすこともあります。皮膚に腫れや赤みが出た場合は必要に応じて医師に相談し、適切な処置を受けましょう。
胃ろうが必要な人でも看護師が常駐している施設であれば入居できます。看護師が24時間常駐する老人ホームが増えたことや、2012年の介護保険法改正により研修を受けた介護福祉士も対応できるようになったことで、受け入れの幅も広がりました。
「対応できる職員体制が整っているか」「口腔ケアにしっかりと対応してくれるか」「その人にあった栄養剤を選んでくれるか」などが挙げられます。
特に職員体制の部分では、看護師がどの時間帯に勤務しているか、嚥下機能維持のためのリハビリ専門職がいるのかなど施設へ確認する必要があります。
2012年に「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が施行されたことで、「喀痰(かくたん)吸引等研修」を受けた介護福祉士も、胃ろうを含めた特定の医療行為がおこなえるように認められました。
ただし、研修を受けた介護福祉士が特定の医療行為をおこなうには、所属する事業所が「登録特定行為事業者」として各都道府県に登録している必要があります。看護師に胃ろうをしてもらいたい希望があれば、24時間看護師が常駐している施設を選ぶのもひとつの手段です。
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