老人ホームでは、インスリン注射が必要な入居者に対し看護師が投与することも可能です。ただし、注射の回数や時間帯によっては対応できない場合もあるため、施設を選ぶ際は注意が必要です。
この記事では、施設選びのポイントとともに、インスリン注射の種類や副作用についても解説。インスリン注射が必要な方やこれから必要になる可能性がある方の施設選びにお役立てください。
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糖尿病の症状が進行すると定期的なインスリン注射が必要になります。注射の頻度は週に1回程度で済む方もいれば1日に数回必要な方もいるなど、人によって異なります。
インスリン注射は医療行為にあたるため、本来は医師や看護師がおこないます。ただし自宅などでおこなう必要がある場合は、医師による指導を受けた本人や家族による投与も可能です。
しかし、老人ホームなどの入居者に介護職員がインスリン注射を打つことは認められていません。このため施設に入居した場合、本人または看護師が投与をおこないます。
本人がおこなう場合と施設に依頼する場合について、注意点などを見ていきましょう。
認知症や体のまひなどがなければ、施設入居後も本人の管理のもと自分自身でインスリンを注射することも可能です。この場合は、看護師が24時間常駐していない老人ホームでも入居できます。
ただしインスリン投与を忘れたり、投与しても血糖値が安定せず高血糖が続く場合などは命に関わります。
また、加齢や健康状態の悪化により自分で注射できなくなった場合、施設側が対応できないと退去を求めらることもあります。このためインスリン注射が必要なことは入居前に施設側に相談しておきましょう。
自分でインスリン注射ができない場合は、老人ホームに依頼して看護師に打ってもらいます。注射の頻度にもよりますが、食事の量などによっては必要以上に血糖値が下がりすぎてしまうこともあるため、24時間看護師が常駐している老人ホームを選ぶと安心です。
また、看護師にはインスリンの投与だけでなく投与前後の血糖値管理もおこなってもらい、血糖値のコントロールを連携医療機関と継続的に共有してもらいましょう。
老人ホームの入居条件には、一般的にインスリン注射についての規定はありません。ただし施設によって医療体制が異なるため、注射の回数や必要な時間帯によっては対応できない場合があります。
このため、インスリン注射が必要な場合は次の点を意識して老人ホームを選びましょう。
老人ホームでは、医師の指導のもと介護・看護職員が一定の医療的ケアをおこなうことが認められています。しかし、専門性が必要な医療行為は施設内で対応できないため、提携する医療機関などで受ける必要があります。
このため、入居希望者が医療的ケアを必要とする場合、施設の医療体制によっては受け入れを拒否されることがあります。老人ホームを探す際は、まず必要な医療的ケアに対応できるか確認しましょう。
老人ホームでは、厚生労働省の定める「特別職員配置基準」により医師・看護師の配置義務や医療行為の可否が決められています。
特別職員配置基準は施設の種類により次のように異なります。
施設の種類 | 医師の配置義務 | 看護師の配置義務 | 医療体制の充実度 |
---|---|---|---|
有料老人ホーム | なし | あり | 施設による |
グループホーム | なし | なし(任意) | 充実していない |
老人保健施設 | あり | あり | 充実している |
特別養護老人ホーム | あり(非常勤可) | あり | 施設による |
インスリン注射は食前におこなうため、その時間帯に看護師が勤務している老人ホームを選ぶことが大切です。例えば1日1回朝食前の投与が必要な方は、朝食前の時間帯に看護師の勤務シフトが設定されているか確認します。
投与が必要な時間帯に看護師がいない場合は、食事の時間をずらして対応してもらうこともあります。ただし、1日3回以上投与が必要な場合や食事の時間調整が難しい場合は、看護師が24時間常駐する老人ホームを選んだほうが良いでしょう。
糖尿病はインスリン注射だけでなく、継続的な食事療法や運動療法によって血糖値を下げることも大切です。このため、インスリン注射が必要な方の受け入れ実績があり、糖質制限食やカロリー制限食に対応できて運動療法にも力を入れている老人ホームがおすすめです。
インスリンを投与している方は、空腹時や夜間に血糖値が下がりすぎてしまうことがあります。このため看護師が日中のみ勤務している施設を選ぶ場合は、夜間の急変にどのように対応するかが大切です。
具体的には、夜間も医師の呼び出しが可能か、または看護師の夜間オンコール体制があるかを確認しましょう。
インスリンは、糖尿病の治療に利用されるホルモンの一種です。健康な人は体内で分泌されるインスリンによりブドウ糖の量が自動で調節され、血糖値の安定がはかられます。この血糖値を安定する働きが失われてしまった状態が糖尿病です。
糖尿病には体内でインスリンがほとんど分泌されない1型糖尿病と、血糖コントロールがうまくできない2型糖尿病の2種類があります。インスリン注射による治療は、現在どちらの糖尿病でも積極的に推奨されています。
1型糖尿病はインスリンを分泌するβ細胞が破壊されて発症するのに対し、2型糖尿病は遺伝的な体質や食生活、運動不足などにより発症します。日本人の糖尿病患者のうち9割以上は2型糖尿病が占めるといわれています。
1型糖尿病はインスリンがほとんど分泌されないため注射による投与が欠かせませんが、2型糖尿病でもインスリンの分泌が減ったり働きが悪くなった場合には医師の指示で投与することがあります。
また、血糖値が高い状態が続いてインスリンの分泌が悪くなり、さらに血糖値が高くなる悪循環を引き起こしている場合の治療にもインスリン注射は用いられます。
インスリン注射は、効果が出るまでのタイミングや持続時間によって「超即効型」「即効型」「混合型」「中間型」「持続型」の5種類に分けられます。種類ごとの特徴を見ていきましょう。
食後の高血糖状態を改善するため、食事を摂取する直前に投与します。
食後の高血糖状態改善のため、食事の30分前に投与します。ほかの種類のインスリン注射と異なり、筋肉や静脈への注射が可能という特徴があります。
超即効型や即効型に中間型をブレンドした製剤です。混合比率により効果が出るまでの時間は異なりますが、作用時間は中間型とほぼ同等です。
空腹時血糖の上昇を抑えるため朝食前に皮下注射をおこないます。作用時間によっては、朝食前と夕食前の1日2回投与する場合もあります。
空腹時血糖の上昇を抑えて1日の血糖値を全体的に下げる一方で、食後高血糖の改善効果は強くありません。1回の投与で効果はほぼ1日続きます。
インスリン注射は血糖値を下げるために使用します。しかし、普段より食事の量が少なかったり運動量が多くなると副作用として血糖値が下がりすぎてしまうこともあります。
低血糖症状は多くの場合すぐにブドウ糖を摂取することで改善できますが、放置すると命に関わるため初期症状の段階での対応が肝心です。
低血糖症状は、血液中の糖分が少なくなることで起こります。低血糖症状には前兆が見られ、血糖値が70mg/dLを下回ったあたりから体が糖分を欲し、空腹感を感じます。
その後、生あくびが出たり吐き気を感じるようになり、血糖値が50mg/dLを切ると無気力になるなどそのほかの症状も現れます。
低血糖症状の前兆は病気がなくても起きる症状が多いですが、インスリン注射をしている方がこのような症状になった場合は早めに対処することが大切です。
低血糖症状が進行すると、発熱や冷や汗、動悸や震え、顔面蒼白などの症状が現れます。症状が悪化すれば、意識をなくしたり昏睡状態になったりするなど命に関わることもあります。
低血糖は認知症や心臓・血管疾患などほかの病気のリスクにもなります。また、特に高齢者の場合は気を失って転倒し、けがをする危険もあるため注意が必要です。
自身でインスリン注射ができる人、施設に看護師が常駐している場合であれば入居できます。ただし看護師に投与してもらう際は、注射の回数や時間帯によっては対応できない場合もあるため、事前に施設へ確認しましょう。
インスリン注射は食前におこなうため、その時間帯に看護師が勤務している老人ホームを選ぶことが大切です。ただし、1日3回以上投与が必要な場合や食事の時間調整が難しい場合は、看護師が24時間常駐する老人ホームを選んだほうが良いでしょう。
認知症や体のまひなどがなければ、医師による指導を受けた本人でもインスリンを注射することが可能です。自分でインスリン注射ができない場合は、老人ホームに依頼して看護師に打ってもらいます。
また1日3回以上投与が必要な場合は、自身でインスリン注射をおこなうか、24時間看護師が常駐している施設でインスリン注射をしてもらいます。
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