生活保護でもケアハウスに入居できる?必要な手続き・相談先も紹介

生活保護でもケアハウスに入居できる?必要な手続き・相談先も紹介

更新日 2024/04/09

生活保護の受給者が介護施設への入居を考えたとき、生活保護を受給しながら入居できるのか気になる人もいるでしょう。

介護施設のひとつである「ケアハウス」では、生活保護を受けていても入居できます。しかし、すべてのケアハウスに入居できるわけではありません。

生活保護の受給者が入居できるのは、施設の費用が生活保護の扶助額に収まるケアハウスのみです。

この記事では、生活保護の受給者がケアハウスに入るために必要な手続きを紹介します。また、生活保護の扶助や施設の探し方も解説しますので、ぜひ参考にしてください。

生活保護を受けながらケアハウスに入居できる

生活保護を受けている人もケアハウスに入居できます。しかし、ケアハウスに入居するためには以下の条件があります。

  • 扶助の範囲内に費用が収まっている
  • 入居には受給額明細が必要
  • 転居をする際は移管手続きが必要

それぞれ詳しく見てみましょう。

扶助の範囲内に費用が収まっている

生活保護の受給者がケアハウスに入居するには、生活保護で支給される扶助額の範囲内の費用で住めるケアハウスを探す必要があります。対象となる主な費用の内訳は以下です。

  • 居住費(賃料+管理費)
  • 生活費(食費+水道光熱費+日用品など)
  • サービス提供費
  • 介護サービス費

これらの費用が扶助額の範囲内に収まっているケアハウスであれば、生活保護を受給していても入居できます。しかし、費用が扶助額の範囲内のケアハウスは多くないので注意が必要です。

生活保護の扶助額の上限は自治体で異なります。希望のケアハウスがある場合は、そのケアハウスがある地域で定められている生活保護の扶助額と、希望のケアハウスの費用を事前に確認しましょう。

入居には受給額明細が必要

生活保護の受給者がケアハウスへ入居する際には、生活保護の受給額明細をケアハウス側へ提示する必要があります。入居を希望している人が入居にかかる費用を問題なく負担できるのか、ケアハウス側が判断するためです。

転居をする際は移管手続きが必要

もともとの住まいがある自治体と入居先のケアハウスがある自治体が違う場合は、「移管手続き」が必要です。

移管手続きとは、現在の住まいがある自治体からほかの自治体へ生活保護の管轄を移すことを言います。管轄を移動しても継続して生活保護を受給するためのものです。

生活保護は、原則として住民票のある自治体から受けます。ケアハウスに入居した際は、そのケアハウスがある自治体に住民票を置くことになるので、自治体をまたぐときには移管手続きが必要になるのです。

生活保護で受けられる扶助

生活保護で受けられる「扶助」とは、最低限度の日常生活を送るうえで必要な費用を補助する制度のことです。一律の金額ではなく、受給者が住むそれぞれの地域や世帯の状況によって支給額が決まります。

生活保護で受けられる扶助は以下の8種類です。

  • 介護扶助(介護サービス費)
  • 医療扶助(医療費)
  • 住宅扶助(家賃)
  • 生活扶助(食費、被服費、光熱費などの生活費)
  • 教育扶助(義務教育に必要な学用品、給食費などの教育費)
  • 生業扶助(高校や専門学校などの学費、技能や資格の修得費などの就労費)
  • 出産扶助(出産費)
  • 葬祭扶助(葬祭費)

介護に関わる代表的な扶助を詳しく見てみましょう。

介護扶助

介護扶助は、生活保護の受給者が自己負担なく介護サービス(現物支給)を受けられる制度のこと。居宅介護(居宅介護支援計画の範囲内)や施設介護、福祉用具の貸与、バリアフリー目的の住宅改修費用、移送などが含まれます。

医療扶助

医療扶助は、生活保護の受給者が医療サービスを受けられる制度のこと。病院での診察や通院、入院、移送などが現物支給され、福祉事務所が指定した医療機関で受診する必要があります。

整骨院や整体院は、医師から「整骨院や整体院に通う必要がある」と診断された場合のみ、医療扶助が適用されます。緩和が目的の場合は原則として適用されません。

住宅扶助

住宅扶助は、 アパートの家賃や土地代が支給される制度のことで、定める額の範囲内で実費が支給されます。ケアハウスの費用のうち、住宅扶助に該当するのは居室賃料です。

世帯員の状況や人数、住宅事情や転居など、やむを得ない場合は、特別基準額が支給されることがあります。また、生活保護の受給者が居住する建具や水道設備などの修理も住宅維持費が支給されることもあります。

生活扶助

生活扶助は、食費や光熱費、被服費といった生活保護の受給者が日常生活に必要な費用が支給される制度のこと。ケアハウスでは食費や光熱費、被服費のほかに管理費も生活扶助に該当します。

介護施設に入居している生活保護の受給者が、テレビやパソコンなどの教養娯楽費、たばこなどの嗜好品、理美容品などを購入したいときに生活扶助の費用が足りなかった場合には「介護施設入所者加算」といった加算が付くこともあります。

生活保護を受けていても入れる他施設

生活保護の受給者でも入居できる施設は、ケアハウス以外にもあります。しかし、入居可能な施設は限られます。

候補の施設は主に以下の4種類です。

それぞれ詳しく見てみましょう。

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホーム(以下、特養)とは、地方自治体の助成を受けている公的な介護保険施設のこと。所得に応じた負担軽減もあるため、生活保護の受給者も安心して入居できます。

特養の入居条件は65歳以上、要介護度3以上。寝たきりの人も多く、手厚い介護サービスが良心的な金額で受けられます。

特養は人気が高く、ベッドに空きがない場合がほとんどです。入居希望を出しても待機時間が長く、数ヵ月から何年も待つこともあります。

有料老人ホーム

有料老人ホームとは民間が運営する介護施設のことです。入居条件として、要介護度の指定がない施設もあります。

有料老人ホームは施設の設備や雰囲気も多種多様で、費用体系もさまざまです。民間運営の介護施設ではありますが、リーズナブルな金額設定をしている有料老人ホームもあるため、生活保護受給者でも入居できる可能性はあります。

グループホーム

グループホームとは、認知症高齢者のための介護施設です。グループホームでは、認知症の専門知識と技術を持ったスタッフの援助を受けながら、要支援2以上の認知症高齢者が共同生活を送ります。

グループホームでは、「ユニット」と言われる少人数のグループで生活し、入居者はそれぞれ家事などの役割を分担をします。入居者は調理や食事の支度、掃除や洗濯など自分の能力に合った家事をすることで認知症の症状の進行を防ぎ、能力をできるだけ維持するのです。

グループホームの入居条件は「施設がある市区町村に住民票がある」「医師から認知症と診断された65歳以上の高齢者」です。

地域密着型施設のため、施設と入居希望の人の住民票が同じ所在地である必要があります。入居したいグループホームが他の市区町村にある場合は、住民票を移してから入居の手続きをおこなう必要があります。

サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅(以下サ高住)は、主に要介護度が高くない高齢者を対象にしたバリアフリー賃貸住宅です。一般の住宅のように自由に過ごせるうえ、安否確認や生活相談などのサービスが受けられます。

バリアフリーが施されているので、自宅では住みにくくなってしまった人や病院の近くに住みたい人などに選ばれています。

施設を探す際の注意点

生活保護の受給者が入れる施設はとても少ないので、探すには注意が必要です。

公益社団法人全国有料老人ホーム協会が発表した「有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅に関する実態調査研究事業報告書」によると、生活保護の受給者の受け入れをしている施設は住宅型有料老人ホーム一番多くて約3割、サ高住が約2割、介護付き有料老人ホームが約1割ほど。そのため、希望の施設、あるいはすでに入居中の施設が、生活保護を受給しても入居できるとは限りません。

また、生活保護受給者が入居可能な施設でも、受け入れ人数を制限している場合もあります。生活保護受給者の定員が埋まっていれば入居できません。

「生活保護受給者を受け入れてくれる施設は少ない」「定員が制限されている」ということを考えて、希望の地域だけではなく広い地域の施設を検討しましょう。

施設入居や生活保護の受給をするための相談窓口

生活保護を受給している人が「ケアハウスに入りたい」と思ったら、まずは専門家に相談するのがおすすめです。主な相談窓口は以下です。

それぞれ詳しく見てみましょう。

ケースワーカー

生活保護の受給者が入居できる介護施設を見つけるためには、まず生活保護の担当をしているケースワーカーに相談しましょう。

ケースワーカーとは、日常生活を送るのが困難な人の相談やサポートをする職員のことです。生活保護の手続きや受給後の生活の支援をおこないます。

ケースワーカーに介護施設の入居の相談をすると、予算内で利用できる施設の紹介をしてもらえるかもしれません。

自治体をまたぐ施設への入居の場合の移管手続きも、元の自治体のケースワーカーと転居先の自治体のケースワーカー同士でおこなってくれます。

ケアマネジャー

既に介護サービスを利用しており、担当のケアマネジャーがいる人は、ケアマネジャーに相談するのも良いでしょう。

ケアマネジャーの正式名称は「介護支援専門員」。利用者の心身状態に合わせたケアプランを作り、適切な介護サービスが提供されるよう支援してくれます。

ケアマネジャーは、居宅介護支援事業所や特別養護老人ホームなどの施設、自治体の介護相談の窓口となる地域包括支援センターなどに配属されています。日々、それらの事業所や施設、自治体との連絡や調整をおこない、利用者の介護サービス全体をマネジメントしています。

市区町村の窓口「地域包括支援センター」「高齢者総合相談センター」

これから介護を始める人やその家族がまず利用することが多いのが、地域包括支援センターや自治体、社会福祉協議会などの地域の相談窓口です。生活保護や介護施設への入居の相談もできます。

地域の相談窓口には、以下のものがあります。

  • 地域包括支援センター
  • 自治体の窓口
  • 社会福祉協議会

市町村の役所には、地域包括支援センターをはじめ、高齢者向けの相談窓口が複数設置されているところも多くあります。役所のホームページには窓口の案内が載っているので、ホームページで生活相談や介護施設への入居相談の窓口を探してみましょう。ホームページで探すのが不安な場合は、役所に電話をして内容を伝えれば相談内容に合った窓口へ繋いでくれます。

地域包括支援センターや高齢者向けの相談窓口では、生活保護などの手続きはもちろん、ケアマネジャーも紹介してくれます。何からすれば良いかわからない場合は、まずは地域の相談窓口を利用してみましょう。

よくある質問

生活保護を受けてもケアハウスに入居できますか?

生活保護を受けている人もケアハウスに入居できます。しかし、ケアハウスに入居するためには「扶助の範囲内に費用が収まっている」「入居には受給額明細が必要」「転居をする際は移管手続きが必要」という条件があります。

ケアハウス以外にも生活保護を受けながら入れる施設はありますか?

生活保護の受給者でも入居できるケアハウス以外の施設には、主に「特別養護老人ホーム」「有料老人ホーム」「グループホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」があります。しかし、どこの施設でも入居できるわけではなく、生活保護の受給者を受け入れる体制が整っている必要があります。

生活保護を受けながら入れるケアハウスを探すには、どこに相談したらいいですか?

生活保護の受給者が「ケアハウスに入居したい」と思ったならば、専門家の相談窓口を利用しましょう。主な相談窓口は「ケースワーカー」「ケアマネジャー」「地域の窓口」などです。

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