【医師監修】軽度認知障害(MCI)とは|症状や発症後の対策、認知症との違い

【医師監修】軽度認知障害(MCI)とは|症状や発症後の対策、認知症との違い

更新日 2024/04/15

認知症とよく似た症状として軽度認知障害(MCI)と呼ばれるものがあります。

軽度認知障害とはどのようなものなのでしょうか。認知症との違いや具体的な症状、診断された場合の取り組みについて解説します。

軽度認知障害(MCI)とは?

認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)についての解説

軽度認知障害=MCI(Mild Cognitive Impairment)は、認知症になる一歩手前のグレーゾーンの段階のことです。そのまま見落としたままにしてしまうと、認知症へと進行する可能性があります。

ただし、適切な予防と対策をすれば、発症を遅らせたり、健常な状態へ戻ることもできます。

認知症との違い

認知症と軽度認知障害の違いは、自立した生活を送れるかどうかです。認知症になると頻繁な記憶障害や機能障害が起きて、生活全般に支障が生まれます。

それに対して軽度認知障害の場合は、食事をしたり出かけたりといった日常生活をひとりで普通に送ることができます。

もの忘れの頻度はあがりますが、認知症と違って自分が忘れているという認識があるので、メモをとったりして自分自身で対策ができます。

放置すると認知症へ進行

早期発見、早期治療が大切

軽度認知障害の早期発見・早期治療の重要性

軽度認知障害には早期発見、早期治療が大切です。何も対策をしないで放置すると、そのまま認知機能が低下して、半数以上が5年以内にアルツハイマー型認知症に進行すると言われています。

アルツハイマー型認知症は、発症すると完治させられない病気です。しかし軽度認知障害の状態であれば、発症を防いだり、早めに治療を開始すれば元の状態にもどることも可能です。

軽度認知障害の疑いがある場合は、放置しないで早期発見、早期治療を心がけましょう。

軽度認知障害(MCI)の特徴

軽度認知障害にはどのような特徴があるのでしょうか。また認知症との違いはどのような点でしょうか。

厚生労働省の「みんなのメンタルヘルス」というサイトでは、軽度認知障害の特徴は下記のように定めています。

  • 同年代の人に比べて、もの忘れが頻繫におきている
  • もの忘れが多いという自覚はある
  • 日常生活に大きな支障はでていない

思い当たることがあれば、念のために専門医を受診することがおすすめします。

軽度認知障害(MCI)の原因と症状

軽度認知障害(MCI)の原因

軽度認知障害は、アルツハイマー型認知症の前段階とも言われています。原因についてもアルツハイマー型認知症と同様に、特定のたんぱく質が脳内に蓄積されて、脳の細胞が破壊されることにあるようです。

軽度認知障害の予防や治療法についても、残念ながら現在のところ確立されていません。

軽度認知障害(MCI)の症状

症状についても、記憶障害、実行機能障害というアルツハイマー型認知症と似たものが現れます。初期症状なので、それほど目立ったものではありません。しかし下記のようなことに思い当たる場合は注意が必要です。

  • 何度も同じ話をすることが多くなった
  • お金や予定の管理ができなくなった
  • 友人の名前が分からなくなった
  • 料理の味付けが変わった
  • 運転の仕方が変わった
  • 頭がぼんやりして、無気力になった
  • 疲れやすくなり、何もしたくなくなった

「健忘型」「非健忘型」の大きく2種類ある

軽度認知障害は、記憶障害があるかないかで2つのタイプに分類されます。記憶障害がある場合を「健忘型」、記憶障害がない場合は「非健忘型」といいます。

記憶障害は、軽度認知障害やアルツハイマー型認知症の典型的な症状です。記憶障害がない場合は物事を順序だてておこなうことが難しくなる実行機能障害が目立ってきたりします。

また、「健忘型」でありながら、実行機能障害や見当識障害などを併発している場合もあります。どのタイプにあてはまるかによって、進行した場合の症状もある程度予測できます。

軽度認知障害(MCI)の診断方法

軽度認知障害の診断方法は今のところ確立されていません。あくまで面談や認知機能検査、脳画像検査などの結果から、医師が総合的に判断します。

医師は軽度認知障害かどうかを判断する根拠として、主に下記のような検査をおこないます。

  • 認知機能検査(「長谷川式スケール」や「ミニ・メンタルステート試験」)
  • 一般検査(血液検査や尿検査など)
  • MRI検査、CT検査(脳の状態を調べるための画像検査)
  • その他検査(アルツハイマー病との関連物質の量を調べる脳脊髄液検査など)

軽度認知障害は、脳内出血、甲状腺機能低下症などと症状が似ています。そのため軽度認知障害と判定するためには、脳の画像などで脳内の出血がないか、甲状腺に異常はないかについても調べる必要があります。

最終的には「認知機能レベルの低下が見られる」「認知領域での障害と思われる症状が1つ以上ある」「生活機能が自立している」「認知症とはいえない」といった判断になります。

軽度認知障害(MCI)と診断されたら

軽度認知障害は放置するとアルツハイマー型認知症に発展する症状ですが、早期に発見して対処することで、症状を緩和したり改善させることが可能です。

もし診断がおりた場合でも、あせらず対処していきましょう。具体的になにをすると良いかまとめました。

食生活の改善

軽度認知障害(MCI)と診断されたときの食事療法

軽度認知障害の対策に食生活の改善は非常に重要です。糖質はなるべく控えて、たんぱく質やビタミンを意識して摂取するようにしましょう。年をとると食事が面倒になったり、ついつい簡単に食べれるものに偏ってしまうことがあります。

健康な身体になるには、ごはんと一緒に肉や魚・野菜・牛乳・乳製品・果物などをバランスよく食べることが大切です。これは認知症だけのことに限りません。

また、新鮮な食材を定期的に届けてくれるサービスを利用して、栄養バランスを考えた献立を考えることも脳に良い影響を与えてくれます。

適度な運動

軽度認知障害(MCI)と診断されたときの運動療法

ヨガや体操といった軽い運動で身体を動かすことは、軽度認知障害だけではなく、生活習慣病の予防にもなります。

突然ハードな運動をしようとせずに、まずは散歩やストレッチといった軽いものから始めてみましょう。無理ない範囲で継続していくことで、自然と運動することに抵抗がなくなります。

身体を動かすことは病気の予防だけではありません。心身を刺激することで、気分もリフレッシュできて毎日を明るく過ごすことができます。

口腔環境の改善

見逃されがちなのが口腔環境の改善です。口腔環境を保つことは、健康に年をとるためにとても重要な役割を果たしています。口の健康は、噛む力を長く維持するだけではありません。きれいな発語はコミュニケーションを楽しくしてくれます。

口の力が弱まることで、誤嚥性肺炎などの危険もあります。美味しいものが食べられなくなると、生きる楽しみも減ってしまいます。

定期的に歯科に通うなどして、口腔環境を良い状態にキープするようにしましょう。

人とのコミュニケーション

軽度認知障害(MCI)と診断されたときには他者とのコミュニケーションが大切

人と良い関係を築いて、コミュニケーションをとることは非常に大切です。軽度認知障害と診断がおりることで、人付き合いに消極的になってしまうこともあります。しかしそれでは、症状は悪化してしまいます。

たくさんの人と話をすることは、脳へ良い刺激を与えてくれます。家族や友人と明るい会話をすることをおすすめします。

ときには趣味のサークルや町内会などの活動に参加するのも良いでしょう。ただし、人と話すことがストレスになるという人の場合は、無理をしないで大丈夫です。自分のペースで気持ちの良いコミュニケーションを心がけましょう。

脳の活性化

脳の活性化というとクイズやゲームのような脳トレが思い出されますが、それだけではありません。好きな音楽を聴いたり、楽しい映画をみたりということも脳の活性化のエネルギーになります。

趣味の世界を広げてみたり、好きなものを見たり聞いたりするだけでも十分です。病気の進行におびえて、くよくよして過ごすことは脳にも良くありません。脳に良い刺激を与えながら、前向きに生活することが大切です。

軽度認知障害(MCI)に関するよくある質問

軽度認知障害(MCI)とは何ですか?

軽度認知障害(MCI)は、認知症になる一歩手前の段階を指し、症状を見落とすと認知症へ進行する可能性があります。認知症とは違い、食事をしたり出かけたりといった日常生活をひとりで送ることもできます。

どんな症状が出たら軽度認知障害を疑った方が良いですか?

主に「何度も同じ話をすることが多くなった」「お金や予定の管理ができなくなった」「友人の名前が分からなくなった」「頭がぼんやりして、無気力になった」などが挙げられます。歳をとったからという理由でそのままにせず、異変を感じたら早めに病院を受診しましょう。

何も対策しない場合はどうなりますか?

何も対策をしない場合、そのまま認知機能が低下して、半数以上が5年以内にアルツハイマー型認知症に進行すると言われています。

アルツハイマー型認知症は、発症すると完治することはありません。しかし、軽度認知障害の状態であれば早期の治療で元の状態に戻ることも可能です。

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