「お泊りデイサービス」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
お泊りデイサービスとは、デイサービス(通所介護)の施設で利用できる宿泊サービスのこと。介護者の帰宅が遅くなってしまう場合などにも便利なサービスです。
この記事では、お泊りデイサービスのサービス内容や利用方法などを解説します。
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お泊りデイサービスは、通常のデイサービス利用後に、そのまま同じ施設に宿泊できるサービスです。通い慣れた親しみのある場所に宿泊できるため、利用者の精神的な負担は少ないといえます。
介護保険制度は適用されませんが、サービスの質を確保するために厚生労働省からガイドラインが出されており、安心して利用できる環境です。また、ショートステイ(保険適用の短期入所介護)の空きが慢性的に少ないことからも、その需要は高まっています。
介護者の体調不良や出張、冠婚葬祭などの緊急時に便利なサービスですが、介護のレスパイト(ひと休み、息抜き)を目的に利用を検討するのもおすすめです。
利用者が安心してお泊りデイサービスを利用できるよう、施設には以下の3つの基準が設けられています。
以前は、介護の知識がない職員でも、夜間専門人員として介護にあたることが認められていました。しかし、ガイドライン策定により、現在は介護職員または看護師を1名以上常駐させることが規定されています。
また、利用人数にも定員があり、日中の利用定員の半分以下で、最9名までという決まりになっています。
宿泊室は個室で、基本的に1名での利用となりますが、希望する場合は2名まで利用可能です。相部屋の場合は、プライバシー確保の観点からパーテーションなどで区切ることにより、最大で4名まで利用できます。
宿泊室の面積にも規定があり、一部屋あたり最低7.43㎡で四畳半以上の広さが確保されていなければなりません。
また、希望や必要があると認められる場合を除き、原則男女が同室で宿泊しないことも基準のひとつです。
災害などの非常時のために、保存食や飲料水、懐中電灯など、いざというときに必要なものを備蓄することも規定されています。また、消防法に規定されている、消火器やスプリンクラー、火災報知器などの消火設備を設置していなければなりません。
お泊りデイサービスは介護保険が適用されないため、費用は全額自己負担となります。利用料金は施設が独自に設定できるためばらつきはあるものの、デイサービス利用料金の10割程度になっていることがほとんどで、相場は3,000円〜5,000円程です。ただし、要介護度によって料金が異なることもあります。
また、利用料金のほか、以下の費用が別途加算される場合があります。
施設によって利用料や諸費用の詳細は異なりますので、事前に確認しておくと良いでしょう。
宿泊する際に受けられる一般的なサービスを解説していきます。また、対応していないことも紹介します。
基本的には、宿泊する当日の夕食と翌日の朝食が提供されます。利用者一人ひとりの体調や状態に合わせた、柔らかく飲み込みやすい食事であることはもちろん、栄養バランスやカロリー、塩分などにも配慮したメニューになっています。
また食事の提供をコースやビュッフェ形式にして、利用者が宿泊中の食事を楽しめるように工夫している施設もあります。
食費は利用料金には含まれないため、別途費用を支払うこととなります。施設によって異なりますが、1食500円前後と考えておくと良いでしょう。
日中のデイサービスで入浴を済ませる場合が多いですが、人員体制によっては、夜間も入浴可能な場合があります。就寝前に入浴することでリラックスでき、寝つきが良くなる効果も期待できるため、利用を検討しても良いでしょう。
なお、施設によってサービス内容は異なるため、夜間の入浴を希望する場合は事前に施設またはケアマネジャーに確認しておくと安心です。
利用者が宿泊中も安心・快適に過ごすためにも、排泄の介助は重要なサービスのひとつです。
ひとりでは排泄の動作が難しい方や、排泄がうまくいかない方を適時介助します。一人ひとりの状態を確認しながら、決まった時間にトイレへ誘導したり、パッド・オムツの交換をおこないます。
就寝前には、利用者の状態に応じて、歯磨きや入れ歯洗浄などの口腔ケアをおこないます。口腔内には、咀嚼や嚥下をはじめ、言葉を発するためにも重要な機能が備わっているので、しっかりと正しくケアすることが大切です。また、口腔機能が向上することで誤嚥性肺炎の予防にも繋がります。
余命わずかな方が穏やかな時間を過ごせるよう、看護・介護的なケアをおこなうことをターミナルケアといいます。
お泊りデイサービスは短期間の利用が前提になっており、自治体によっては利用期間の上限も設定されています。また、医療処置もおこなえないため、ターミナルケアや見取りの対応は原則不可となっています。
お泊りデイサービスには、主に以下のようなメリットが挙げられます。それぞれ詳しくみていきましょう。
初めての場所や人など、環境の変化が高齢者へ与える影響は大きく、体調不良に繋がる場合もあります。お泊りデイサービスは、日中利用しているデイサービス施設にそのまま宿泊するため、利用者の精神的負担も少なく、安心感をもって過ごせるのがメリットです。
また、日頃から慣れ親しんでいるスタッフが対応するため、利用者がリラックスしやすいのもひとつのポイントです。利用者の状態や性格を理解した上で、気持ちや希望に寄り添ったサービスを提供できるのは、お泊りデイサービスならではといえます。
外泊は、普段と違う環境を楽しめる時間でもあるため、リフレッシュにもなります。また、家では普段食べない食事メニューを楽しめたり、ほかの利用者と長い時間一緒に過ごすため、交流を深めることもできます。
お泊りデイサービスは、介護者のレスパイトも目的のひとつです。日中のデイサービスからそのまま宿泊することができるので、泊まりがけの旅行に出かけるなど、ゆっくり自分の時間を過ごすことができます。
お泊りデイサービスを予約する場合は、日中のデイサービスと一緒に申し込む必要があります。宿泊のみでの予約は受け付けておらず、申し込みできる人が限られていることから、予約が取りやすくなっています。
ショートステイは慢性的に空きが少ないため、急用時に予約することが難しかったり、希望の日程で予約ができないことが多いです。一方、お泊りデイサービスは予約が取りやすいため、急な予約でも柔軟な対応が可能です。介護者にとっても利用者にとっても、いざというときに安心して頼れるサービスといえます。
お泊りデイサービスのデメリットとして挙げられるのは、以下の3つです。ひとつずつ解説していきます。
お泊りデイサービスは介護保険が適用されないため、費用が全額自己負担になるのはデメリットといえます。ショートステイが介護保険適用で自己負担1〜3割で済むのと比べると、負担は大きいと感じてしまうでしょう。
単発の利用であれば費用は抑えられますが、数十日単位で利用する場合はその分コストも上がってしまいます。利用日数が多いほど介護者の負担は軽減されますが、金銭面でのデメリットが大きいことは知っておきましょう。
長期間利用したい場合は、ショートステイなど介護保険適用サービスの利用が決まるまでの、繋ぎとして考えるのもひとつです。
設備基準では宿泊室1室につき1名で利用することが基本とされていますが、宿泊サービスを前提に考えられている施設ではないため、個室を用意するのが難しい場合もあり、相部屋になるケースも多いのが現状です。
各施設ではプライバシーを考慮し、パーティションなどで仕切るなど最大限の対策をおこなっていますが、完全に区切ることはできないため、利用者がストレスを感じてしまう場合もあります。
お泊りデイサービスの利用を検討する場合は、事前に施設のプライバシー保護対策について確認しておくと良いでしょう。
お泊りデイサービスは長期間の利用を想定したサービスではありません。長期間の利用を希望する方にとっては、原則短期間しか利用できないことはデメリットのひとつです。自治体によっては利用可能日数の上限が設定されている場合もあります。
また、宿泊サービスを利用する方が少なくないことから、入所施設化しつつある点が問題視されています。
似通ったイメージのあるお泊りデイサービスとショートステイですが、それぞれのわかりやすい違いは以下の通りです。順にみていきましょう。
お泊りデイサービスとショートステイの違いとして、まず介護保険適用の有無が挙げられます。ショートステイは介護保険適用になるため、自己負担は1~3割で済むのに対し、お泊りデイサービスは保険適用外のため、全ての費用が自己負担になります。
ただし、ショートステイでも保険適用にならない費用があります。保険適用になるのは、利用料である基本料金です。滞在費や食費、理美容代などは全額自己負担になるため注意しましょう。
お泊りデイサービスの場合、宿泊を前提にした施設ではないため、個室には限りがあります。相部屋となり、ほかの利用者と宿泊するケースも少なくないため、十分なプライバシー保護の対応は難しい場合があります。
一方、ショートステイは、特別養護老人ホームあるいはショートステイ専門の施設を利用します。お泊りデイサービスに比べ、ショートステイの場合は個室も多く、プライバシーが確保された環境で過ごせるといえます。
ショートステイは、介護保険適用サービスのため人気があり、施設自体が少ないことからも、常に空きが少なく予約が取りづらいのが現状です。また、ショートステイを利用する際は、事前にケアマネジャーがケアプランを作成する必要があるため、利用開始までに時間がかかります。
それに比べ、お泊りデイサービスは利用者が限定されており予約もとりやすいため、急な場合でも利用しやすくなっています。また、日頃から通っている場所にそのまま宿泊できるので、利用者にとっても安心感があるでしょう。
ここでは、お泊りデイサービスの利用に役立つ方法を2つ紹介します。自分に合った方法を活用してみましょう。
介護のスペシャリストであるケアマネジャーに相談し、お泊りデイサービスが利用できる施設を紹介してもらうのもおすすめです。
ケアマネジャーは、介護サービス事業者との調整をおこなう役割も担っています。利用者の状態や希望などをあらかじめ伝えておけば、希望に沿う最適な施設を探して提案してもらえるはずです。
現在担当のケアマネジャーがいる場合は、利用者の状態をすでに把握しているため、利用までスムーズに進めることができるでしょう。
自分でインターネット検索をおこない、お泊りデイサービスを実施している施設を探してみるのもひとつの手です。
施設のホームページを見れば、サービス内容や費用などの詳細を知ることができます。自分で納得のいくまでじっくり調べることができるので、希望に沿った施設を選べるでしょう。
また、お泊りデイサービスを実際に利用したことのある人に相談し、紹介してもらうのもおすすめです。そのほかにも、地域包括支援センターなどの公的な相談窓口を利用する方法があります。さまざまな場所から情報を得て、比較検討してみましょう。
お泊りデイサービスを利用できるのは、デイサービスを実施している施設です。日中のサービス利用後、そのまま施設に宿泊することができます。注意しておきたいのは、日中のデイサービスは介護保険適用ですが、お泊りデイサービスは適用外になることです。
お泊りデイサービスは介護保険適用外となるため、費用は全額自己負担になります。一般的な費用相場は、1泊3,000円〜5,000円程度です。日中のデイサービス費用のおよそ10割程になると考えておくと良いでしょう。
自治体によって連続利用可能日数はさまざまですが、最大で30日までとなっている場合が多いです。お泊りデイサービスは長期間の利用を想定していません。原則、短期間の利用になることを知っておきましょう。
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