介護保険ではカバーしきれない範囲を介護保険外サービスで補う「混合介護」が注目されています。
「混合介護」にはどのようなサービスの組み合わせがあるのでしょうか。またそのメリットやデメリットについても説明します。
混合介護とは、高齢者のニーズにあわせて介護保険対象のサービスと対象外のサービスを柔軟に組み合わせて介護をおこなうことを言います。それぞれのサービスでは対応できない部分を補完しあうことができるので、介護の幅を広げることができます。
ただし現状では、介護保険内・外のサービスを明確に分けることが難しく、混合介護の提供は進んでいません。介護保険対象のサービスは自己負担額1割ですが、対象外サービスは全額自己負担です。
どこまでが介護保険の対象で、どこは対象ではないかの区分けは難しいもので、請求面などでトラブルが起きやすくなるからです。
介護保険の対象サービスは、介護保険法で明確に定められています。一方で、介護保険の対象にならない介護保険外サービスはサービスの種類も広く、時代や高齢者のニーズにあわせた新しいサービスもたくさんあります。
ただし介護保険外サービスを利用した場合の費用は全額自己負担になります。
訪問介護の介護保険サービスを例に、よく利用されている介護保険外サービスの内容を紹介します。
いずれも介護保険対象外ですが、介護を受けている高齢者にとっては非常に利用価値の高いサービスです。
最近では、政府の間でも混合介護についての規制緩和の議論が進んでいます。その理由については以下のような点が挙げられます。
介護保険対象サービスは制約が多いために融通が利かず、実際の介護現場では実践したくてもできないサービスもあります。介護保険対象外サービスとの組み合わせによって制約を減らし、利用者のためにできるサービスを増やすことが可能です。
訪問介護を例にすると、介護保険のサービスでは対象者の食事を準備することはできますが、同居している家族の食事を作ることはできません。しかし実際は、同居する家族の分も一緒に作ることは介護スタッフにとってそれほど大きな違いではありません。そしてなにより、家族のみなさんに喜ばれます。
混合介護が実現すれば、追加料金を払って同居する家族分の食事を作ることができるようになります。
介護に携わる介護スタッフは大変な仕事の割に、収入はあまり高くありません。今後さらに高齢化が進むにつれて財源の確保は難しく、また介護報酬を上げることも難しい状況です。
混合介護の可能性が広がることで、介護報酬以外の収入減を確保でき、介護スタッフに入る収入も増えることになります。サービスの幅が広がることによって、なじみの介護スタッフに指名料を支払うようなことも実現するかもしれません。
介護保険法に基づく保険内サービスでは、多様化する高齢者のニーズを反映することは難しいのが現状です。そのために、保険内・外、それぞれのサービスの良さを組み合わせることで、利用の幅を広げようとする意図もあります。
混合介護を利用することで考えられているメリットは以下の通りです。
超高齢社会を迎え、高齢者やその家族のニーズはますます多様化する傾向にあります。
今後はパソコンやスマートフォンといったIT機器を活用した高齢者サービスも増えてきました。
混合介護を積極的に導入することでサービスの幅が広がって、介護の現場が活況することは間違いないでしょう。また、介護サービスにビジネスチャンスを見つけて参入してくる企業や事業者も増えていく可能性もあります。
介護保険ではあくまで最低限の介護が対象になっているので、それ以外はすべて家族の負担になっています。
最近では、働き盛りの40代50代の介護離職が社会問題にもなっています。混合介護でできることが広がれば、家族の負担も軽減して仕事を続けることができます。
介護スタッフの勤務体制についても、現在は介護保険法によりいろいろな面で制限を受けています。混合介護の利用が進めば、業務時間の短縮や業務フローの改善につながり、介護スタッフの働き方も改善することが期待できます。
また、介護保険で対応できない部分を有料で対応することによって、介護サービスの質もあがり、高齢者やご家族の満足度もあがります。
混合介護は良い点を多く説明してきましたが、もちろんデメリットも存在します。混合介護のデメリットを3つまとめました。
介護保険内サービスを利用した場合は自己負担額1割程度で済みますが、保険外サービス費用は全額自己負担になります。サービス料金に規制がないので、高額の費用が請求されてトラブルが起きることも懸念されます。
そもそも社会保険制度として介護保険は一律誰もが利用できることが基本理念です。高額な保険外サービスが登場することによって、高齢者間のサービス格差を助長してしまうというリスクが考えられます。
混合介護では保険内・外サービスが混合されやすく、認知症などで自己判断能力がない高齢者が不必要なサービス提供を受けてしまう危険があります。
悪質な事業者が十分な説明のないまま不要なサービスを高額で押し付ける。そのようなことが起きないための防止策について検討することも必要です。
高齢者の自立のためには、なるべく補助なく自力でおこなうことが望ましいこともあります。特に食事や着脱、入浴面などの日常生活に関することを過度にサポートしてしまうと、高齢者が自分でおこなう機会を奪ってしまい、自力でできることもできなくなってしまいます。
保険外サービスが拡大されたとしても、自立支援を阻害するようなサービスについては目を光らせておく必要があります。
混合介護についてはメリットが大きい反面、判断力の弱い高齢者が適切に利用するためにはまだまだ気を付けるべき点も多いのが実情です。
自由度が高く、新しいサービスが多い介護保険外と介護の基礎となるべき介護保険対象サービスを上手に組み合わせられるよう、国や事業者は議論をしていかなければいけないでしょう。
混合介護とは、介護保険対象のサービスと対象外のサービスを柔軟に組み合わせて介護をおこなうことを指します。それぞれのサービスでは対応できない部分を補うことで生活しやすくします。
介護保険対象外のサービスを利用した場合、費用については全額自己負担です。便利なサービスではあるものの、利用しすぎた場合、気づけば予算をオーバーしてしまう可能性もあります。介護保険対象外のサービスを利用する際は、ケアマネジャーに相談しましょう。
混合介護によって、介護の幅が広がれば家族の負担を軽減させることができ、昨今、社会問題にも挙げられている介護離職のリスクも下げることができます。
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